平成17年11月22日 制定
(平成9年9月制定の「倫理憲章」を改定)
平成25年2月14日 一部改定
平成25年11月14日 一部改定
平成30年3月15日 一部改定
令和4年9月15日 一部改定

一般社団法人 全国銀行協会

 

 銀行は、金融サービス業の中核として、高い公共性を有し、広く経済・社会に貢献していくという重大な責任を負っており、あらゆる分野で改革が進展している今日、その一端を担う存在として、果たすべき役割はますます大きくなっている。

 ここに銀行は、各々が高い自己規律にもとづき、すべての人々の人権を尊重しつつ、社会からの期待に真摯に応え、関係法令、国際ルールおよびその精神を遵守し、持続可能な社会の実現に向けてその社会的責任を果たすべく、不断の努力を払うことを誓い、この行動憲章を定めるものである。

 この憲章およびその精神の遵守に当たっては、まず銀行の経営トップ自らが率先垂範すること、そして、全ての銀行役職員がその意義を理解し実践していけるよう強いリーダーシップを発揮することが重要である。
 銀行ならびにその役職員は、この憲章ならびにその精神を遵守し、行動の指針とするとともに、お客さま本位の業務運営を通じて、真のお客さまのニーズに応じた質の高い金融サービスを提供し、もって経済・社会の発展に貢献する使命を全うすることにより、社会からの揺るぎない信頼の確立・維持を図っていくべきことを、ここに改めて銘記する。
 全国銀行協会は、この憲章の精神に著しく反するような行為等が発生した場合には、健全な自浄能力を発揮すべく、自粛勧告等委員会において当該会員に対する姿勢を示すことにより、厳粛に対処していく。

以上

行動憲章の解説

銀行の公共的使命1.銀行のもつ公共的使命の重みを常に認識し、健全な業務運営を通じて揺るぎない信頼の確立を図る。

(1)銀行の公共的使命
 銀行は、広く預金を受入れ、企業・個人・公共部門等に対し必要な資金を供給すること等により、経済活動にとって不可欠な資金決済・仲介機能を発揮し、ひいては経済・社会の健全な発展に資するべき使命を負っている。
 銀行法第1条においても、「銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする」と規定されている。
 このように、銀行には、重い公共的使命が付託されており、私企業としての存在目的との高い次元での両立が求められる。
(2)銀行に対する信頼の確立
 こうした銀行の公共的使命を全うするためには、銀行業務の健全かつ適切な運営と、それを通じた揺るぎない信頼の確立が不可欠である。
 お客さまや株主・投資家、地域社会等の幅広いステークホルダー(利害関係者)の信頼を確立することには多大な努力と時間を要する一方、信頼を毀損することは非常にたやすい。また、個別の銀行に対する信頼の失墜が金融システム全体の信頼低下にもつながりかねない。
 したがって、ステークホルダーひいては社会からの信頼こそが、銀行が存立しその使命を全うするうえでの礎をなすものであることを常に銘記しなければならない。
(3)企業倫理の構築
 銀行への揺るぎない信頼を維持・向上させていくためには、各銀行において、確固とした企業倫理が構築され、様々な取組みを通じて組織全体に浸透・定着していなければならない。
 企業倫理の構築には、経営トップ自身が率先垂範して徹底的に取り組むとともに、これを全ての役職員が自らのものとし実践しなければならない。
(4)自己責任原則にもとづく経営
 規制緩和が進展し、お客さまのニーズがますます多様化・高度化する中にあって、銀行がその使命を十分に果たし続けるためには、自己規律を備えた自己責任にもとづく経営をさらに徹底していく必要がある。
 こうした経営を進めるに当たっては、財務の健全性、業務の適切性等を確保することが求められる。そのためには、経営上の意思決定の仕組みや経営に対するモニタリングのあり方等を見直しつつ、必要な人員配置を含め、適切な経営管理態勢を構築し、実効的なガバナンス機能を発揮することにより、より健全で効率的な企業運営を図ることが肝要である。
(5)持続可能な社会の実現に向けた責務
 国内外において持続可能な開発目標(SDGs)(注)の達成に向けた取組みが進められており、環境問題、人権問題などの社会的課題への対応や、当該問題に取り組むうえでのガバナンス体制の構築を進めていくことが重要である。

(注)SDGs(エス・ディー・ジーズ Sustainable Development Goals)
 SDGsとは、2015年「国連持続可能な開発サミット」において採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかで、人間、地球および繁栄のための行動計画として掲げられた17の目標と169のターゲットからなるもの。2030年までに各国はこの目標を達成するよう行動をとることが求められている。目標は、貧困や飢餓などの社会的課題や、環境、ジェンダー平等、エネルギー、労働環境等の問題の解決を掲げている。

質の高い金融サービスの提供2.経済活動を支えるインフラとしての安定的な機能提供とサービスの高度化に向けた不断の創意と工夫に努め、お客さま本位の業務運営を通じて、お客さまのニーズに応えるとともに、市民生活や企業活動に脅威を与えるテロ、サイバー攻撃、自然災害等に備え、セキュリティレベルの向上や災害時の業務継続確保などお客さまの利益の適切な保護にも十分配意した質の高い金融サービスの提供を通じて、内外の経済・社会の発展に貢献する。

(1)経済活動を支えるインフラとしての機能
 銀行は、経済主体間における金融仲介機能を担い、わが国の経済活動を支えている。また、経済活動にとって最も重要なインフラの一つである決済機能の担い手として、利便性が高く安全な各種の決済サービスを提供している。
 経済活動を支えるこうした機能は、経済・社会の発展とともに今後ますます重要性が高まるものであり、持続可能な社会の実現を支える重要な機能として一層の充実を図るべく引き続き努力を重ねていかなければならない。
 また、こうした公共的機能を維持するため、災害や事故、テロやサイバー攻撃等の発生に伴って通常の業務が中断した場合に、可能な限り短い時間で業務を再開できるよう、事前に計画・準備を行い、それを継続的に見直すなどの対策を講じることが肝要である。
(2)お客さまのニーズに応えるとともに、社会的課題の解決につながるような質の高いサービスの提供
 少子高齢化や経済のグローバル化の一層の進展など社会の枠組みの変化を受け、あらゆる分野で様々な改革が進展しつつある。金融の分野においても、金融のコングロマリット化や金融商品・サービスの販売チャネルの拡大などの規制緩和が進む中、金融資産のより効率的な運用や、次代を担う成長産業や世界の国々に対する円滑な資金供給が一層求められるなど、大きな環境変化が生じている。
 さらに、金融技術面においても、資産の流動化やデリバティブ取引等の新たな手法が活用されるとともに、決済サービスについても、情報処理・通信技術のめざましい発展に伴い、一層の高度化が進展しつつある。
 また、企業はESG(注)の考え方を踏まえた取組みが求められている。株主・投資家側からは、企業の社会・環境課題への取組みやガバナンス体制への対応状況を投資分析や投資決定における評価項目とする「ESG投資」の概念が生まれ、投資家はESG要素を考慮することが合理的で社会の要請や運用委託者の利益にもかなうとの考え方が主流になりつつある。さらに、銀行をはじめとする金融機関においては、持続可能な社会の実現と社会的課題の解決に資する資金供給等の金融面でのサポートが期待されている。
 銀行は、このような環境変化に積極的に対応し、それぞれが創意と工夫を活かして、多様化するお客さまのニーズに適合した質の高い金融サービスを提供していくことにより、お客さまの利便の向上を図り、満足を獲得していかなければならない。あわせて、持続可能な社会の実現と社会的課題の解決に資する金融サービスの提供にも積極的に取り組むよう努めなければならない。こうした取組みに当たっては、関係者との連携によるオープンイノベーションや多様なステークホルダーとの協働についても配意することが求められている。
 金融商品・サービスの提供に当たっては、お客さま本位の業務運営を通じて、お客さまの合理的な期待に応えるよう必要な注意を払い、誠実かつ職業的な注意深さをもって、その業務を行わなければならない。
 こうしたサービスの提供を円滑かつ適正に行うためには、金融を巡るリスクの多様化・複雑化を念頭に入れ、業務の規模・特性、リスクプロファイルに見合った適切なリスク管理体制の一層の強化に努める必要がある。
 また、金融市場の経済基盤としての重要性に鑑み、銀行は、当該市場の参加者として重要な役割を果たしていることから、市場全体の機能を向上させ、透明性・公正性を確保するよう行動することも求められる。

(注)ESG(Environment(環境)・Social(社会)・ Governance(ガバナンス))
 「ESG投資」とは、環境、社会、ガバナンスの課題を投資分析と意思決定のプロセスに組み込む行動であり、国連が2006年、投資家にESG課題への観点を反映した投資行動を促す「責任投資原則(PRI)」を公表したことをきっかけに、欧米を中心に世界の投資家に浸透してきたものである。
(3)お客さまの的確な判断に資する情報提供
 銀行が、その提供する商品・サービスの内容について正しく開示し説明することは、提供者としての当然の責務であり、お客さまの的確な判断に資する情報やアドバイスをタイムリーに、かつ明確・公平にわかりやすく提供するよう努めなければならない。
 規制緩和の更なる進展に伴い、取扱商品の多様化が進み、その中でリスクの高い非預金商品の取扱いが増加していることなども踏まえれば、こうした商品・サービスの提供者として、お客さまの知識、経験、財産の状況、取引の目的等に応じた商品・サービスを提供すること、提供に当たってリスクやコストを含めた十分な説明を行うこと、優越的な地位の濫用と誤認されかねない説明を行わないこと、問合せ・苦情に対して誠実に対応すること、ならびに金融知識の普及・啓発に努めることについての責務は、強く念頭に置かれなければならない。
(4)預金口座を巡る犯罪の防止
 詐欺等の犯罪による資金の受取りに預金口座を利用するなど、銀行が提供する決済機能等を犯罪に悪用する事件が発生している。銀行は、こうした犯罪行為に対して、関係当局と連携し、適時適切な対策を講じることを通じて、安全・安心な社会の構築に寄与するよう努めなければならない。
 また、銀行は、預金の安全性を確保するため、キャッシュカード、預金通帳、インターネット等による不正な引出しに対するセキュリティレベルの向上に努めなければならない。
 お客さまに対しては、こうした預金口座を巡る犯罪の多様化に対応して継続的に適切な情報提供や啓発を行い、未然防止に努めるとともに、犯罪被害に遭ったお客さまに対しては、各々の事情を勘案し、誠実に対応しなければならない。
(5)包摂的な社会づくりへの貢献
 銀行の施設のバリアフリー化やユニバーサルデザイン化を進めるなど、障がい者や高齢者を含めたすべての人が利用しやすい施設を提供するとともに、商品・サービスや取引形態等の創意工夫によって利用しやすい環境を整備することで、誰もがアクセスしやすい金融サービスの提供を通じて包摂的な社会づくりに貢献するよう努めなければならない。

法令やルールの厳格な遵守3.あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、社会的規範にもとることのない、誠実かつ公正な企業活動を遂行する。

(1)コンプライアンス
 金融取引においては、公正な競争の確保、インサイダー取引の禁止、マネー・ローンダリングの防止など、遵守すべき法令やルールが数多く存在する。こうした法令やルールを厳格に遵守することはもとより、社会的規範を逸脱するような不健全な融資や営業活動を慎み、良識ある営業姿勢を維持しなければならない。また、海外で活動するに当たっては、現地の法令・規則を厳格に遵守し、人権を含む国際規範を尊重するとともに、現地の文化・慣習に配慮し、現地社会の発展に寄与するよう努めなければならない。
 コンプライアンスは、信用が最大の財産ともいえる銀行にとり、経営の健全性を高め、社会からの信頼を揺るぎないものとするうえでの当然の基本原則であり、役職員一人ひとりが、日々の業務運営の中で着実に実践しなければならない。
(2)コンプライアンス実践に向けた取組み
 コンプライアンスの着実な実践を確保するためには、〔1〕業務部門での一次チェック機能、〔2〕業務部門から独立した部門による二次チェック機能、〔3〕公認会計士等による客観的評価・監査機能という3つの機能に着目し、各銀行の実情に合わせて内部管理体制を確立する必要がある。
 また、こうした体制づくりに当たっては、責任の明確化を図るとともに、自立と自覚に支えられた風通しのよい組織風土を築き上げることも重要である。
(3)コンプライアンスの徹底
 法令やルールの逸脱は経営上の危機に直結するものであり、経営者は、コンプライアンスの徹底を自らの責務と自覚したうえで、危機の発生を未然に防止する体制を整備するとともに、危機の実態や問題点を経営トップや幹部が迅速に把握できるシステムを確立しなければならない。このシステムの一つとして、通常の指揮命令系統から独立した通報・相談窓口を整備する必要がある。
 問題となる行為等が発見・指摘された場合には、事実の隠蔽や解決の遅延がリスクの拡大に直結することを強く認識し、経営トップ自らの責任において、実態解明と原因究明を行い、迅速な問題解決と徹底した再発防止に努めるとともに、社会に対して問題の経緯、対応策等について明確な説明を迅速に行うことが重要である。
(4)お客さま等の情報の適正な保護
 銀行は、その業務の性格上、お客さま等の情報を大量に保有しているが、その情報は主として財産や経済的信用に関するものである。高度情報化社会における情報管理の重要性を認識し、お客さま等の情報の取扱いに細心の注意を払う必要がある。
 特に個人情報については、「個人情報の保護に関する法律」や金融庁が定めた「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」、全国銀行個人情報保護協議会が定めた「個人情報保護指針」等の定めおよびその精神に従い、漏えい等の防止に向けた安全管理体制を構築し管理を徹底するとともに、慎重かつ適切に取り扱わなければならない。
(5)仕入先との公正かつ透明な関係の確立
 銀行は、物品・サービスの購入やシステムの発注等に当たっては、公正な市場ルールと適正な商慣習に従って誠実に取引を行うものとし、仕入先との関係において公正性と透明性を確保しなければならない。その際、経済合理性のみならず、仕入先におけるコンプライアンス、環境基準などにも関心を払うよう努めなければならない。
(6)行政との健全かつ正常な関係の構築
 行政とは、健全かつ正常な関係を構築、維持し、公務員等に対し、不当な利益等の取得を目的として贈答や接待を行ってはならない。

社会とのコミュニケーション4.経営等の情報を積極的、効果的かつ公正に開示し、銀行を取り巻く幅広いステークホルダーとの建設的な対話を通して、自らの企業価値の向上を図るとともに、社会からの理解と信頼を確保するべく、広く社会とのコミュニケーションを図る。

(1)銀行のディスクロージャーの重要性
 銀行は、公共的使命を有していることに鑑み、株主・投資家はもとより社会全般から、広く理解と信頼を得ることを求められている。
 経営情報を公正に開示し、市場やお客さまの選択や判断を仰ぐことは、社会からの理解と信頼の確保に資するとともに、経営の健全性確保に向けての自浄能力を高めることにつながる。また、経営情報など財務面の情報開示のみならず、社会的側面や環境的側面に関わる多様な取組みについて情報開示を積極的に推進し、幅広いステークホルダーの理解を得ることが重要である。
 こうした情報の開示に当たっては、関連法令等を遵守するのはもとより、ステークホルダーの合理的な判断にとって重要で信頼性の高い各種の情報を適時適切に伝えるよう努めなければならない。
(2)ステークホルダーの意見の経営への反映
 銀行の商品やサービスは、社会のニーズに適合した公正で利用価値の高いものでなければならず、お客さまの意見を広く集めることにより、サービスの質的向上に努めていくことが重要である。また、社会や環境への取組みを含め、自らの活動について広く社会と双方向のコミュニケーションを行い、ステークホルダーの期待や要請を知り、自らのマネジメントに生かしていくことが求められている。
 ステークホルダーの声を受け止める努力を通じて、厳しい意見に接することもあるが、こうした意見も参考にしつつ、自らを様々な角度から客観的に見つめ直し、経営の健全性確保や金融サービスの質的向上に向け、たゆまぬ努力を重ねていかなければならない。

人権の尊重5.すべての人々の人権を尊重する。

(1)人権を尊重する責任
 人権の保護は国家の重要な責務であるが、一方で、企業に対してもより幅広い視点から人権侵害をなくすための取組みが求められている。 銀行は、国際的に認められた人権を理解、尊重し、企業としての責任を果たす。また、人権を尊重する方針を明確にし、社内外にコミットメントを表明するなどして、企業活動に反映する必要がある。
(2)人権侵害の予防と是正措置
 銀行は、自らの活動を通じて人権に影響を与える可能性を認識し、人権侵害の発生を未然に防止するための仕組みと手続きを整備し、継続的に見直すとともに、万一人権侵害が発生した場合には、速やかにその是正と再発防止に努めなければならない。

多様な人材の活躍、健康・安全な職場6.多様な人材の活躍を促進する制度や柔軟な働き方を実現する。また、健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を確保する。

(1)多様な人材の活躍を促進するための環境整備
 銀行は、多様な価値観やバックグラウンドを持つ従業員が認め合い、刺激し合うことで新たな価値創造に繋がるとの認識のもと、性別・年齢・国籍・雇用種別等によらず、多様な人材が能力を発揮し、活躍できる環境整備に努めることが重要である。
 そのために、出産・育児・介護に携わる従業員の負担を極力軽減するため、当該従業員に対する支援制度の拡充に努めるとともに、雇用・就労形態の複線化を進め、従業員の仕事内容、成果、組織への貢献度、将来の役割への期待などを十分に考慮した人事・処遇制度の構築とその適切な運用に取り組むことが必要である。
 また、従業員一人ひとりが仕事のやりがい、生きがいを実感でき、仕事、家庭生活、地域生活など様々な活動について自ら希望するバランスで展開できる仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を推進し、多様な就労を可能とする柔軟な働き方を実現するよう努めなければならない。
(2)健康で安全な職場環境の確保
 銀行は、健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を確保するため、従業員と直接あるいは従業員の代表と誠実に対話・協議するよう努めなければならない。また、従業員の人格やプライバシーを尊重するとともに、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなど、職場における不当な取扱いや差別を防止するための措置を講じなければならない。

人材育成への取組み、金融経済教育への貢献7.人材育成や能力開発に積極的に取り組み、従業員の自律的なキャリア形成を支援する。また、金融経済教育への参画等により、社会の金融リテラシー向上に貢献する。

(1)従業員の人材育成の推進
 銀行は、人材を持続的な企業価値の向上と経済成長を支える源泉と認識し、銀行の価値創造や戦略実現、並びに、従業員の自律的なキャリア形成を促進するため、能力開発やスキルアップに資する取組みや機会提供を行う必要がある。
(2)金融経済教育への貢献
 社会全体の金融知識の理解促進に努め、国民の豊かさや日本経済の発展に貢献していかなければならない。そのために、学校教育から社会人教育に至るまでの金融経済教育への参画等を通じて、金融サービスの提供に止まらない銀行の社会的使命を果たすよう努めなければならない。

環境問題等への取組み8.地球環境や社会情勢の変化等への耐性の高いサステナブルな環境・社会の構築に向け、主体的に行動する。

(1)金融・社会インフラとしての貢献
 金融・社会インフラとして、銀行に期待されている役割の発揮に努め、我が国のカーボンニュートラルへの移行をはじめとした、サステナブルな環境・社会の構築を金融面で支えていくことが求められる。
(2)多様な関係者との連携
 銀行は、投融資先を含めた気候変動・環境リスクを管理し、自らの健全性を維持するとともにステークホルダーの期待にも応えていく必要がある。国内外の多様な関係者との対話に努めることで、サステナブルな環境・社会の構築に向けた取組みや課題への理解を深め、連携・協力して取り組む必要がある。

社会参画と発展への貢献9.銀行が社会の中においてこそ存続・発展し得る存在であることを自覚し、社会とともに歩む「良き企業市民」として、積極的に社会に参画し、その発展に貢献する。

(1)社会への貢献
 銀行業務は、社会の健全な発展なくして存続できないこと、社会が銀行の存続基盤であることを自覚し、社会の発展に貢献する「良き企業市民」としての役割を果たすよう努めなければならない。
(2)NPO・NGO、地域社会等との連携
 社会貢献活動を行ううえで、NPO・NGOや地域社会のボランティア団体、行政、公的セクターなどのパートナーとの連携が効果的であることから、課題に応じて解決に必要なパートナーと協働することに努めなければならない。
(3)従業員の自発的な社会参加の支援
 従業員がボランティア活動を通じて地域社会や環境保全活動に貢献するなどの社会参加を促すことは、銀行の公正性・透明性を担保していくことにもつながる。銀行は、個人の自発性を尊重しながら、従業員への社会参加の機会の提供や、従業員の社会参加のための支援制度の導入等、環境整備に努めなければならない。

反社会的勢力との関係遮断、テロ等の脅威への対応10.市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力とは断固として対決し、関係遮断を徹底する。また、国際社会がテロ等の脅威に直面している中で、マネー・ローンダリング対策およびテロ資金供与対策の高度化に努める。

(1)反社会的勢力との関係遮断
 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力を銀行取引等から排除していくことは、銀行が永年にわたって築きあげてきた信用を維持し、より健全な経済・社会の発展に寄与するためにも、また銀行やその役職員のみならず、お客さまが被害を受けることを防止するためにも、極めて重要な課題である。
 このため、経営トップ自らが反社会的勢力に対して常に毅然とした態度で臨み、これら勢力とは、銀行単体での取引のみならず、他社(信販会社等)との提携による金融サービスの提供などの取引を含め一切の関係を遮断する方針を示し、このもとに取組みを進めることが重要である。
(2)被害を防止するための一元的な管理体制の整備
 反社会的勢力から不当要求がなされる場合に備え、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理体制を構築し、これを継続的に機能させる必要がある。
 万一、何らかのかたちで反社会的勢力が不当要求を行ってきた場合には、法務などの専門スタッフを含めた関連部署の円滑な連携・協力体制のもと、事実を正確に把握し冷静に対応することが重要である。
 また、反社会的勢力との関係遮断に資する業務運営のあり方や、対応策を取りまとめたマニュアル等を作成し、行内の教育・研修を充実することなどが求められる。
(3)外部との連携強化
 本部のほか、営業店において関係当局等への通報や相談を行う担当を設置し、警察当局等との間で、平素から意思疎通を欠かさないよう緊密な連携を保つとともに、業界や地域レベルでも、反社会的勢力との関係遮断に向けた各種施策に、積極的に取り組むことが重要である。
(4)テロ等の脅威への対応
 マネー・ローンダリング対策やテロ資金供与対策について、不断に高度化を図っていくことが銀行にとっての重要な責務となっており、関係省庁、外国当局等とも密接に情報交換・連携を図りつつ、取り組む必要がある。