全銀協からの意見書・要望書

意見書・要望書(平成24年)

平成24年6月14日
一般社団法人全国銀行協会

平成25年度税制改正に関する要望

1.金融・資本市場の競争力強化と国際的な取引の推進のために
(1)金融所得課税の一体化の推進等
(2)確定拠出年金税制の見直し
(3)不動産証券化を促進するための特例措置の延長
(4)国際的な金融取引の円滑化
2.経済の活性化と課税の適正化のために
(1)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等
(2)教育資金形成支援制度の整備
(3)印紙税の軽減・簡素化
(4)登録免許税の軽減・簡素化
3.適切な経営環境を確保するために
(1)貸倒れに係る税務上の償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充
(2)国際課税の見直し
(3)公益法人関係税制の整備

1.金融・資本市場の競争力強化と国際的な取引の推進のために

 経済活動のグローバル化や少子高齢化が進展するなか、わが国経済が今後も持続的に成長するためには、金融・資本市場の競争力を強化し、その魅力を向上させていくことが大切である。そのためには、およそ1,500兆円の家計部門の金融資産に適切な投資機会を提供することが重要であり、金融所得課税の一体化の推進や金融資産形成に資する非課税制度の拡充、確定拠出年金税制の見直し等を通じて、個人投資家にとって利便性の高い効率的な金融・資本市場の構築を後押ししていくことが必要である。
 また、国際的な市場間競争が一層激しくなるなか、わが国金融・資本市場が内外の利用者の多様なニーズに応えていく観点から、振替社債や民間国外債に係る利子等の非課税措置の拡充や、デリバティブ取引に係る源泉税の免除等、国際的な金融取引の円滑化に資する税制を整備していくことが求められる。
 さらに、今後とも比較的安定した経済成長が期待されるアジア地域での投資促進のため、同地域を中心に新租税条約の締結国を拡大し、貸付金利息に対する源泉税を免除すること等を通じて、グローバルな金融取引を促進していくことが重要である。

 

(1)金融所得課税の一体化の推進等

  • 金融所得課税の一体化を推進すること。具体的には、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認めること。
  • 納税の仕組み等については、一体化の実施時期に応じて、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関が納税実務面でも対応可能な実効性の高い制度とすること。
  • 少額の上場株式等投資のための非課税措置(日本版ISA)について、措置期間の延長または恒久化を行うこと。また、個人投資家の利便性および金融機関の実務に配慮したより簡素な制度とすること。
  • マイナンバー制度については、金融機関の実務負担等に配慮した制度設計・導入スケジュールとすること。

 少子高齢化の進展から貯蓄率が趨勢的に低下しているわが国では、個人金融資産の効率的な活用が経済活力を維持するための鍵となっており、それに資する金融・資本市場の構築が喫緊の課題である。そのためには、個人投資家が自らのリスク選好に応じて自由に金融商品を選択できるようにする必要があり、金融資産に対する課税は、簡素で分かりやすく、金融商品の選択に当たって中立的であることが求められる。
 政府税制調査会は平成16年に金融商品に対する課税方式の均衡化と損益通算範囲の拡大の方向性を打ち出した。この流れに沿って、平成20年度税制改正では、上場株式等の譲渡損失と配当等の損益通算が平成21年以降可能とされ、さらに平成22年度税制改正では、「金融所得課税の一体化を更に推進する」とされた。また、「平成24年度税制改正大綱」では、「金融証券税制については、投資リスクの軽減等を通じて一般の投資家が一層投資しやすい環境を整えるため、平成26年に上場株式等の配当・譲渡所得等に係る税率が20%本則税率となることを踏まえ、その前提の下、平成25年度税制改正において、公社債等に対する課税方式の変更及び損益通算範囲の拡大を検討」するとされ、金融所得課税の一体化を推進する方向性が明記されている。
 このような状況を踏まえ、金融資産に対する課税の簡素化・中立化の観点から、金融商品間の課税方式の均衡化を図るとともに、預金等を含め損益通算を幅広く認める金融所得課税の一体化をさらに推進していくことを要望する。

 その際、金融所得課税の一体化に係る具体的な納税の仕組みについては、預金等をはじめとする各金融商品の特性を考慮し対象範囲を順次拡大することも想定されることから、一体化の実施時期に応じて、納税者の利便性に配慮しつつ、金融機関のシステム開発等に必要な準備期間を設ける等、金融機関が納税実務面でも対応可能な実効性の高い制度とすることを要望する。

 また、少額の上場株式等投資のための非課税措置(日本版ISA)については、平成22年度税制改正において平成24年からの導入に向けた法制上の措置が行われたが、平成23年度税制改正では、上場株式等の配当所得および譲渡所得等に係る軽減税率が2年延長されたことに伴い、日本版ISAについても、軽減税率廃止による本則税率の実現にあわせて導入が2年延長された。
 日本版ISAは平成26年から3年間の時限付きの措置とされているが、小口の継続的長期投資を通じた個人の金融資産形成を促進する観点から、措置期間の延長または恒久化を要望する。また、取得価額の管理など個人投資家にとって分かりにくい面もあることから、投資家の利便性および金融機関の実務に配慮したより簡素な制度とすることを要望する。
 なお、本制度を長期的な視野に立った個人の幅広い金融資産形成に資するものとするため、将来的には、非課税措置の拡充の検討が望まれる。

 社会保障・税に関わる番号制度(マイナンバー制度)については、平成22年から導入に向けた検討が進められており、「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」、「社会保障・税番号大綱」等の取りまとめを経て、平成24年2月には「マイナンバー法案」が国会に提出されている。
 マイナンバー制度の導入に当たっては、行政のみならず民間においても相当規模の負担・コストの発生が想定されるため、税制の見直しを含む具体的な制度設計や実務の詳細な検討を行う際は、関係者である金融機関との事前協議を行い、十分な準備期間の設定等を含め、金融機関が実務面でも対応可能な制度設計とすることを要望する。
 また、マイナンバー法案では、制度導入当初のマイナンバー制度の利用範囲を税分野等の行政手続に限定することとされているが、利用者と金融機関との双方の利便性向上に資するかたちで、民間分野においても幅広く活用されることが期待される。

 

(2)確定拠出年金税制の見直し

  • 退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃すること。
  • 確定拠出年金に係る拠出限度額を見直すこと。
  • 確定拠出年金の対象者を拡充すること。
  • マッチング拠出制度における従業員拠出額の要件を緩和すること。

 わが国において少子高齢化が進行するなか、自助努力による老後生活の維持向上を図る観点から、公的年金を補完するものとして、確定拠出年金の果たす役割の重要性は高まっている。また、確定拠出年金の一層の普及は、より多くの個人に対して投資性商品を選択する機会を提供し、「貯蓄から投資へ」の流れを後押しすることにもつながる。
 こうした確定拠出年金制度の重要性に鑑みれば、わが国においても、欧米における同種の年金と同様に、拠出時・運用時非課税、給付時課税を基本とする十分な税制上の優遇措置を講じる必要がある。
 平成16年度税制改正では、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられた一方、公的年金等控除の縮小および老年者控除の廃止等、拠出時非課税と給付時課税の措置がなされた。また、拠出限度額は平成21年度税制改正でも一部引き上げられている。しかし、老後に必要とされる生活資金の水準や公的年金の給付縮減可能性等を勘案すれば、引き続き、税制面の整備を推進し、確定拠出年金を私的年金制度の中核として発展させる必要がある。
 したがって、運用時非課税を実現し、国際的に見劣りのない制度とする観点から、退職年金等積立金に対する特別法人税を撤廃するほか、拠出限度額の引上げを要望する。
 また、個人型確定拠出年金の加入対象者を、確定給付型の企業年金のみを実施し企業型確定拠出年金は実施していない企業の従業員まで拡大すること等、確定拠出年金の対象者を拡充するほか、平成24年1月から開始された企業型確定拠出年金のマッチング拠出の限度額要件のうち、従業員拠出額を事業主拠出額の範囲内とする要件の緩和をあわせて要望する。

 

(3)不動産証券化を促進するための特例措置の延長

  • 特定目的会社および投資法人等が不動産を取得する際の不動産取得税の特例措置について適用期限(平成25年3月末)を延長すること。
  • 特定目的会社および投資法人等が不動産を取得する際の所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置について適用期限(平成25年3月末)を延長すること。

 不動産証券化はリスク分散・管理のために極めて有効な手段であると同時に、一般企業や内外投資家に対して多様な資金調達手段や投資商品の選択肢を提供するものである。こうした観点から、平成10年に資産流動化法が施行され、さらに平成12年には、運用対象の拡大等を目的に同法および投資信託法の改正が行われた。同様に、税制面においても、特定目的会社および投資法人等の不動産取得に係る不動産取得税等を軽減する特例措置が講じられている。
 証券化不動産の受皿にすぎない特定目的会社および投資法人等に担税力はなく、課税は直ちにこれらが発行する証券の利回り低下をもたらし、不動産証券化を阻害することになる。経済活性化の観点から、不動産証券化の促進が求められるなか、そのツールである特定目的会社および投資法人等の税負担は、極力軽減されることが必要である。
 したがって、特定目的会社および投資法人等の不動産取得を取得する際の不動産取得税の特例措置について適用期限(平成25年3月末)を延長することを要望する。
 また、特定目的会社および投資法人等が不動産を取得する際の所有権移転登記に係る登録免許税の特例措置についても適用期限(平成25年3月末)を延長することを要望する。

 

(4)国際的な金融取引の円滑化

  • 非居住者等が受け取る振替制度を利用した社債の利子等に係る非課税措置を恒久化すること。少なくとも現行の非課税措置の適用期限(平成25年3月末)を延長すること。
  • 非居住者等が受け取る民間国外債の利子等について、非課税措置の対象範囲を拡充すること。
  • 金融機関等が行うデリバティブ取引に係る付随契約(CSA:Credit Support Annex)にもとづき授受する現金担保から生じる利息について、源泉徴収を免除すること。
  • わが国金融機関の国際競争力強化等のため、アジア諸国との間の租税条約の締結・改定を推進等すること。

 海外の非居住者等の投資家によるわが国公社債への投資を円滑化することは、わが国金融・資本市場の活性化や国際化等に資するものである。こうした観点から、非居住者等が受け取る振替制度を利用した国債および地方債の利子等について非課税制度が措置され、さらに平成22年度税制改正では、振替制度を利用した社債の利子等について、3年間の時限付きで非課税措置が講じられている。
 わが国社債市場への投資の促進による金融・資本市場の活性化、およびわが国企業の資金調達の円滑化を確実に進め、非居住者等が投資しやすい環境を整備し、魅力を高めることは、アジアのメイン・マーケットたる日本市場の実現を目指す政府の方針とも一致するものである。
 したがって、国債および地方債と同様、非居住者等が受け取る振替社債の利子等の非課税措置を恒久化すること、少なくとも現行の非課税措置の適用期限(平成25年3月末)を延長することを要望する。

 平成23年度税制改正では、わが国金融・資本市場にイスラム・マネーを呼び込むため、非居住者等が受け取る国内発行のイスラム債(社債的受益権)の配当(利子相当分)について非課税とする等のイスラム金融に関する所要の税制措置が講じられている。
 わが国におけるイスラム債発行に係る環境整備を促進するため、海外でわが国企業の発行するイスラム債が民間国外債に含まれることを明確化し、非居住者等による海外発行のイスラム債への投資の円滑化を図ることは、わが国企業の資金調達手段の多様化や、わが国金融機関のビジネス拡大等の観点から重要である。
 したがって、非居住者等が受け取るわが国企業が海外で発行するイスラム債の配当(利子相当分)について、非課税であることを明確化することを要望する。

 また、金融機関等はデリバティブ取引を行うに当たり、一般的に国際スワップ・デリバティブス協会(ISDA:International Swaps and Derivatives Association)が定める付随契約(CSA:Credit Support Annex)を締結し、現金・国債等を担保としている。
 現金を担保として授受している場合、担保提供者(ISDAマスター契約の対象取引は本店・支店が混在しており、通常、担保提供者となるCSAは本店のみ)に対し、受入れ期間に応じて現金を支払うが、これについて源泉徴収が行われている。しかし、わが国金融機関が信用リスク削減等のためにデリバティブ取引を円滑に行うことを可能とし、ひいては金融・資本市場の類似取引(例えば、レポ取引のように有価証券取引に関連した現金授受)との整合性の観点から、源泉所得税を課さない扱いとすることが必要である。
 したがって、金融機関等が行うデリバティブ取引に係るマスター契約およびCSAにもとづき授受する現金担保から生じる利息について、源泉徴収を免除することを要望する。

 租税条約は、源泉地国における課税の抑制により二重課税リスクを軽減するとともに、投資交流を促進することでクロスボーダー取引を租税面から後押しし、対内・対外投資を促進することにより、わが国におけるビジネス・チャンスの拡大、産業競争力の強化、および雇用の創出等を通じて経済活性化を図り、わが国と世界との資金の流れの円滑化を進めるものである。
 現在、こうした観点から、利子・配当等の税率軽減が措置され、金融機関等が受け取る利子について源泉地国における課税が免除された日米租税条約をモデルとして、わが国と各国との間で租税条約の締結・改定が進められている。
 わが国企業がアジアでの活動を拡大し、政府のアジア経済戦略において租税条約ネットワークの拡充が掲げられているなか、アジア諸国との間においても日米租税条約と同様の租税条約を締結していくことは、わが国およびアジア諸国の経済成長にとって重要であり、わが国金融機関の国際競争力強化にも資するものである。
 したがって、アジア諸国との租税条約の締結や改定を引き続き推進することを要望する。
 なお、上場株式等の配当所得および譲渡所得等に係る軽減税率が本則税率となった場合、租税条約の特典を受けるため海外投資家からの租税条約にもとづく軽減税率適用申請が急増し、カストディ銀行の事務負担が大きくなることが想定される。したがって、租税条約の規定にもとづき利子・配当に対する所得税の軽減・免除を受ける際に提出する「租税条約に関する届出書」の手続を簡素化・合理化することをあわせて要望する。

2.経済の活性化と課税の適正化のために

 わが国経済は、東日本大震災による落ち込みからの緩やかな回復過程にあるが、欧州債務問題の深刻化など世界経済を巡る不確実性は依然として大きく、わが国経済にも悪影響が及ぶ懸念がある。
 このような経済情勢にあっては、民間部門の投資・消費需要を喚起していくことは引き続き重要な課題であり、住宅投資拡大策として住宅取得の促進に資する税制措置を拡充すること等は、自然災害に強く良好な住環境形成のためにも有用である。
 さらに、少子高齢化が急速に進むわが国において、高等教育費の負担感が高まるなかで、将来にわたり活力ある経済・社会を維持する観点から、家計の長期的な教育資金形成を税制面から支援していくことも有用である。
 また、金融取引を含む各種の経済取引には、担税力に着目して印紙税や登録免許税等の流通税が課せられるケースが多いが、こうした税負担は円滑な経済取引に悪影響を与え、経済の活性化を阻害している可能性がある。そこで、これら流通税の軽減・簡素化により、課税の適正化を図ることが必要である。

 

(1)住宅取得の促進に資する税制措置の拡充等

  • 住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化等を図ること。

 住宅は、国民の社会生活や経済活動の基盤となる重要な資産であり、自然災害に強く良好な居住環境を形成するためには、社会経済情勢等の変化に左右されることのない、安定かつ公平な住宅取得の機会が、国民に与えられることが重要である。
 こうしたなか、平成18年に制定された住生活基本法では、政府の責務として、住生活の安定の確保および向上の促進に関する施策を実施するために必要な措置を講じるべきことが規定された。持家取得に伴う初期負担の軽減により住宅投資を促進し、これが景気浮揚にも資するとの観点から、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度は、平成21年度税制改正によって大幅に拡充されたが、わが国経済においては、住宅投資が拡大することに対する期待は依然として大きいところである。
 したがって、住宅取得、住生活の安定確保および向上をさらに進めるため、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度の恒久化、税額控除の拡充を図ることを要望する。
 なお、東日本大震災からの復興および省エネルギー性が優れた住宅の取得促進を図るため、住宅金融支援機構の「【フラット35】S 」の金利優遇措置に代えて、民間金融機関の住宅ローンであるか「【フラット35】S」であるかを問わず、省エネルギー性が優れた住宅の取得を目的とするすべての住宅ローンを対象として、住宅借入金等の所得税額の特別控除制度を拡充することをあわせて要望する。

 

(2)教育資金形成支援制度の整備

  • 教育資金形成を目的とした一定額の金融商品の取得・保有に対する優遇制度を措置すること。

 わが国では少子化傾向に歯止めがかからず、今後も総人口の減少が見込まれている。このような状況下、将来にわたって様々な分野において厚みのある人材層を形成し、活力ある社会・経済を維持するための施策が不可欠であることから、公立高校の実質無償化等が実施され、高等教育における奨学金制度の充実等を進めることとされている。
 子育て世代に対するさらなる支援を図り、家計による長期的な教育資金形成を支援・促進するため、教育資金形成目的で取得・保有する一定額の金融商品の利子等に対し、税制上の優遇措置を講じることを要望する。

 

(3)印紙税の軽減・簡素化

  • 印紙税について、金融取引に悪影響を及ぼさないよう軽減・簡素化すること。

 印紙税は、本来軽微であるべき流通税としては極めて高い税率となっており、金融取引に悪影響を及ぼさないよう整理し、軽減・簡素化することを要望する。

 

(4)登録免許税の軽減・簡素化

  • 登録免許税は手数料的な性格を持つことを踏まえ、担保権の信託における抵当権等の信託登記をはじめ、登録免許税の税率を低額の定額税率とする等、軽減・簡素化すること。

 現行の登録免許税は、手数料的な性格を持つ流通税であるにもかかわらず、負担が極めて重い。このため、わが国企業の競争力強化に必要な組織再編成や、資産流動化、担保権の信託を利用するシンジケート・ローン取引等の経済取引に影響し、経済の活性化を阻害している面がある。
 特に、担保権信託に関しては、不動産信託の所有権移転登記に係る登録免許税が非課税にもかかわらず、抵当権設定登記に加え、信託登記についても登録免許税が課されている。
 このため、登録免許税が持つ手数料的な性格を踏まえ、低額の定額税率とする等、大幅に軽減・簡素化することを要望する。

3.適切な経営環境を確保するために

 国内外において経済構造の変化が進行するなか、企業や金融機関を取り巻く環境も急速に変化しており、適切な経営環境を確保するためには、わが国の実情や諸外国の制度に配意した税制面の整備を進めることが一段と重要になっている。
 なかでも、貸倒れに係る税務上の償却・引当基準等について欧米主要国に遜色のないものとし、外国税額控除制度等の国際税制について適切な見直しを図ることは、金融機関の自己資本の強化等の観点からも極めて意義深いものである。
 また、税制全体の抜本改革を検討するに当たっては、消費税の仕入税額控除のあり方等の見直しも含め、適切な税制の構築を検討することが必要である。
 なお、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進する観点から、旧制度における公益法人等が新制度に円滑に対応するための適切な措置を講じることが必要である。

 

(1)貸倒れに係る税務上の償却・引当基準の見直しおよび欠損金の繰越控除・繰戻還付制度の拡充

  • 貸倒れに係る税務上の償却・引当の範囲を拡大すること。
  • 欠損金の繰越控除の制限を撤廃するとともに、繰越期間を延長すること。繰戻還付制度の凍結措置を解除し、繰戻期間を延長すること。
  • 手形交換所における不渡処分制度の取引停止処分と同等の電子債権記録機関の処分が発生した場合には、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入を認めること。

 わが国金融界は長年の懸案であった不良債権問題から脱却したものの、その過程では、貸倒れに係る財務上と税務上の取扱いの差異や繰越欠損金等によって、多額の繰延税金資産が発生し、その資産としての脆弱性が問題視されるという状況が生じた。
 わが国経済の持続的成長に資する金融システムを構築するうえで、不良債権問題の再発防止や自己資本の強化等の観点から、繰延税金資産の発生・解消に係る課題はあらかじめ解決しておく必要がある。そのためには、金融機関が実施している自己査定等にもとづく財務上の償却・引当を税務上も幅広く認める等、貸倒れに係る企業会計と税務上の取扱いの差異はできる限り縮小させていくことが望ましい。少なくとも、貸倒れに係る税務上の償却・引当の範囲や実務上の取扱い等について、債権毀損の実情に応じたものとする観点から見直すことが重要である。
 このような状況を踏まえ、法的整理手続き開始の申立てがあった場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合(現行50%)を引き上げる等、貸倒れに係る税務上の償却・引当の範囲を拡大することを要望する。

 また、法人税における欠損金の繰越控除・繰戻還付制度は、事業年度ごとの課税負担を平準化し、経営の中長期的な安定性を確保するうえで重要な制度である。特に、景気後退期における不良債権の規模は大きく、その処理に伴い発生する欠損金の控除について十分な措置を設ける必要がある。
 しかしながら、繰越控除制度の繰越期間は、欧米主要国との比較において明らかに見劣りする。また、繰戻還付制度については、平成21年度改正において凍結が一部解除されたものの、対象が中小企業等に限定されているほか、繰戻期間が1年とされていることから、十分な措置が講じられているとは言い難い。
 したがって、欠損金の繰越控除の制限(現行、繰越控除前の所得金額の80%相当額)を撤廃するとともに、繰越期間を少なくとも10年に延長することのほか、繰戻還付制度の凍結措置を解除し繰戻期間を少なくとも2年に延長することを要望する。なお、この場合、既存の繰越欠損金についても繰越期間延長の対象とするとともに、合併法人の欠損金を被合併法人にも繰り戻して還付できるようにすることのほか、償却・引当の範囲拡大は本措置とあわせて措置することを要望する。

 近年、電子記録債権法の施行を受けて設立された電子債権記録機関を通じて、電子記録債権に係るサービスが提供されており、大企業から中小企業までの幅広い事業者による電子記録債権の手形的利用を促進することは、中小企業の資金繰りの円滑化にも資することになる。
 手形交換所では、手形の支払確実性を高めるため、不渡処分制度が設けられており、これにより利用者は安心して手形を受け取ることができる。電子記録債権の手形的利用についても、不渡処分制度と同等の制度を導入することにより、電子記録債権の支払確実性も高められることになる。
 現在、手形交換所における不渡処分制度の取引停止処分が発生した場合の個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入が認められている一方、電子記録債権の手形的利用における不渡処分制度と同等の制度については明文化された規定がない。
 したがって、電子債権記録機関が取扱う電子記録債権について、手形交換所における不渡処分制度の取引停止処分と同等の処分が発生した場合には、当該電子記録債権の税法上の取扱いが手形と比較して劣後することとならないよう、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入を認めることを要望する。

 

(2)国際課税の見直し

  • 外国税額控除制度における繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間(現行3年間)を延長すること。

 外国税額控除制度は、わが国企業の海外展開を支え、国際的な二重課税を排除する制度として重要な役割を果たしている。
 しかしながら、わが国金融機関において、過去に海外子会社の売却等に伴う売却益が発生したものの、現行の外国税額控除制度において繰越控除限度額(余裕額)や繰越控除対象外国法人税額(限度超過額)の対象期間が3年とされていること等の理由から、部分的に国際的な二重課税が発生したケースがあり、こうした問題はあらかじめ解決しておく必要がある。
 したがって、外国税額控除制度における繰越控除限度額および繰越控除対象外国法人税額の繰越期間(現行3年間)を少なくとも7年に延長することを要望する。

 

(3)公益法人関係税制の整備

  • 旧制度における公益法人等が新制度に円滑に対応できるようにする等の観点から、固定資産税等について適切な措置を講じること。

 全銀協ならびに地方に所在する銀行協会は、経済活動を支える手形交換制度や各種決済制度の企画・運営、一般消費者を対象とする相談業務、銀行図書館の運営等、わが国経済の発展と国民生活の安定向上に資する非営利事業を営んでいる。その大多数は、旧民法第34条にもとづく社団法人・財団法人であったが、公益法人制度改革関連法(平成20年12月施行)によって特例民法法人となり、その後、一部の銀行協会は一般社団法人へ移行している。
 平成20年度税制改正では、公益法人制度改革関連法に対応するため、公益法人関係税制が整備され、同法に定める公益社団法人・公益財団法人や、一般社団法人・一般財団法人のうち共益的活動を目的とする法人等について、収益事業課税を適用する等の措置が講じられた。このなかで、固定資産税等に関しては、公益社団法人・公益財団法人の施設について、旧民法第34条にもとづく社団法人・財団法人と同様の非課税措置が講じられるとともに、一般社団法人・一般財団法人に移行した法人の既存の施設(図書館、博物館等)についての非課税措置が平成25年度まで継続するとされているが、平成24年度税制改正において、平成26年度以降の当該非課税措置の対象は、非営利型法人であって、遊休財産額が一定の基準を満たすもののうち、年間収入額5,000万円以下のものに限ることとされた。
 公益法人制度改革の目的は、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進し民による公益の増進に寄与すること等であり、公益的な性格からこれまで非課税措置が講じられてきた施設の性格に、本来、何らの影響を及ぼすべきものではなく、新制度に円滑に対応できるようにする必要がある。
 したがって、旧制度における公益法人等が一般社団法人・一般財団法人に移行する場合、これらの図書館、博物館等の施設に対する平成26年度分以降の固定資産税等については、収入規模に関わりなく非課税とする等、適切な措置を講じることを要望する。

以上