Q. 相続など、自分が死んだ後のことが心配です

<私、悩んでいます>

「長年勤務していた企業も来年退職の予定。そろそろ老後準備をと思っています。そこでまず始めたいのが、自分の死後、家族が経済的に困らないよう身辺を整理すること。とは言え、すべて初めてのことばかり。とくに相続は、何から手を付けていいものかわかりません……(男性/64歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 資産内容が遺族にわかるよう整理しておこう
  • 相続税がどの程度発生しそうか試算した上で準備にとりかかる
  • 「遺言書」は相続をよりスムーズに行うツールと考えよう
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「相続税とは無縁」とも言い切れなくなった……

相続をスムーズに行うには、生前の本人の準備が欠かせません。相続への備えは、ここ数年話題となっている「終活」の大事な要素ともなっています。

では、実際に何をすべきでしょうか。すぐに着手できることとしては、資産内容の整理があります。「口座がどこにあるかわからない」「どんな死亡保障があったのか知らない」という遺族のトラブルを未然に防ぐことができるからです。
整理とは、保有している預金、株式、債券、不動産など、また加入している保険、年金(企業、個人)、あるいはローンもあればその内容をまとめて記しておくということ。加えて、金融機関の通帳、カード、印鑑、保険証券、年金手帳等の保管場所の明記も忘れずにしてください。
ノートでもパソコンでも、何に整理しても構いません。大事なのは遺族が確認できるようその存在を、時期を見て伝えておくことです。

さらに遺族の生活に関わるという点では、相続について十分な準備が必要です。2015年から相続税の基礎控除額が4割低下し、「自分は関係ない」と考えていた世帯でも発生する可能性が高まりました。まずは、相続税がどの程度発生しそうか、試算をしておくことをおすすめします。

相続をトータルに管理する「遺言信託」

実際の相続については、民法によって相続人の範囲と法定相続分が定められています。ただし、法定相続分は相続人の間で遺産分割の合意ができなかった場合の遺産の取り分であり、そのとおりに行う必要はありません。また、相続は何がトラブルになるかわかりません。遺族が困らないためにも「遺言書」を作成しておく意味はあります。

遺言書は大別して「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
「自筆証書遺言」とは、本人が自筆で内容、氏名、日付を書き、押印するというもの。ただし、遺言書本体に貼付する財産目録はパソコンでの作成が認められています。また、法務局が「自筆証書遺言」を保管する制度を利用すれば、単に預けるだけでなく、法律上の不備や内容に不明確な部分がないかなどのチェックもしてもらえます。
「公正証書遺言」とは、公証役場に出向いて、公証人に遺言内容を話して作成してもらうもので、もっとも一般的で確実な遺言書と言われています。ただし、作成には費用がかかります。
加えて、最近では金融機関による「遺言信託」の利用が増えています。財産の処置等の相談から遺言書の作成、保管、さらには遺言の執行、それにともなう資金管理をトータルに行うというもの。ただし、これも手数料等のコストが発生するため、十分に確認しておきましょう。