テーマ:金融リテラシー、生活設計・マネープランゲーム平成28年6月29日(水)・30日(木) 13:30~16:20

レポート

 千葉県総合教育センター主催の中学校技術・家庭科研修に講師を派遣し、県内各地区の中学校家庭科教員35名を対象として、2日に分けて「消費者として必要な金融リテラシーと発達段階に応じた金融教育について」の講話、「生活設計・マネープランゲーム」の教材体験、「金融経済教育の充実のために」の講話を行いました。

 始めに、中学生、高校生のお金に関する認識度について、三択クイズを通して確認していきました。生徒は生活の中でお金と密接に関わっているが、お金を使ったり自ら管理したりするという意識は乏しいこと、高校生では、お金との関わりは増えるが、暮らしで生かせる金融の知識は不足しているということが分かりました。また、社会に出ても金融の知識を学ぶ機会は少ないことから、学校段階で「金融リテラシー」を身につける必要性があることが講師から伝えられました。
 「金融リテラシー」は、「金融知識+暮らしに活かす力」であり、「最低限身に付けるべき金融リテラシーの4分野15項目」が政府の金融経済教育研究会で取りまとめられています。学校における金融教育については、「金融教育プログラム」(金融広報中央委員会)に学ぶべきことが示されています。同プログラムでは、金融教育を「お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりより社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」と位置づけています。その上で、学ぶべき内容を「生活設計・家計管理に関する分野」「経済や金融の仕組みに関する分野」「消費生活・金融トラブル防止に関する分野」「キャリア教育に関する分野」の4つに分け、それぞれの分野において年齢層別に何を学ぶべきか具体的に示しています。教科書だけでは自分とお金との関わりについて実感を持って学ばせることが難しい場合もあることから、政府、自治体、諸団体、企業等が提供する外部教材の活用が有効とされています。
 
 そこで、自分とお金との関わりについて、生徒が実感を持って理解を深めることができる「生活設計・マネープランゲーム」の教材体験を行いました。通常は、生徒4~5人で1つのグループになりますが、今回は2~3人で1つのグループになり、20歳代~60歳までの人生を体験するカードゲームを行いました。
 このゲームは、生徒に配布するカードセットと資料集、教師が使用する進行スライドを使って進めていきます。生徒が引くカードによって収入や基本生活支出が決まり、その収入に応じて差し引かれる非消費支出は資料集で確認します。20歳代では自動車の購入、30歳代では結婚・子育て・住居の購入・保険加入の選択、40歳代では転職など生活の見直しや景気変動、50歳代では子育てが終了した後の収支の変化など、各年代で起こる様々なライフイベントとその費用について体験していきます。
 講師からは、授業における様々なポイントが伝えられました。「非消費支出」「人生の三大資金」「ローン」など、生徒が初めて聞く言葉や仕組みについては、授業の前後に資料集を使った確認時間を設定するとスムーズに進行できること、収入と家族構成により非消費支出が変わることなど、生徒に気づいて欲しいポイントが説明されました。
 20歳代~60歳までの人生の体験が終了すると、これまでの人生を振り返り、人生のタイトルと感想をまとめ発表し、結果を共有します。今回は先生方にゲームの感想を発表していただきました。「収入と支出のバランス」、「選択と責任」について生徒に考えさせることの重要性や、グループ活動とすることで生徒同士が将来について話し合い、さまざまな価値観に気づくことができる効果が紹介されました。また工夫された授業の例として、江戸川区立瑞江中学校神戸市立原田中学校の授業実践事例が紹介されました。
 生活設計・マネープランゲームのほかにも、中学校の家庭科で活用できる教材として、家計管理や生活設計、ローンとクレジットなどについて学ぶ「知ろう!学ぼう!お金の使い方」、講義型、アクティブ・ラーニング型、動画の3種類の教材を揃えた「シリーズ教材 お金のキホン」、これらの教材を活用した金融経済教育の実践や金融商品、銀行の仕事をテーマにした講師派遣授業の取組みについて紹介をしました。
 また、これからの金融経済教育の充実には欠かせない分野である「金融商品の適切な選択と消費者保護」について、自己責任による金融行動の重要性と金融行動に必要なことについて説明がありました。

 最後に講師から、それぞれの学校や生徒たちの状況に合わせた外部支援(教材提供や出張講座など)を活用することで、消費者として必要な金融リテラシーを身に付けるための授業を実施してほしい旨伝えられ、研修は終了しました。

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