テーマ:教材体験ワークショップ(生活設計・マネープランゲーム、お金のキホン)平成28年8月8日(月) 10:00~12:00

レポート

 神奈川県家庭部会の夏期教員研修に講師を派遣し、県内の家庭科教員19名を対象として、「発達段階に応じた金融教育について」の講話と、「生活設計・マネープランゲーム」 と「シリーズ教材 お金のキホン」 の教材体験を行いました。

 はじめに、高校生のお金に関する認識度について、三択クイズを通して確認していきました。高校生になると、中学生よりもさらにお金との関わりが増えてくるが暮らしで活かせる金融の知識は不足しているということを先生方に確認してもらいました。また、社会に出ても金融の知識を学ぶ機会は少ないことから、学校段階で「金融リテラシー」を身に付ける必要性があることが講師から伝えられました。
 「金融リテラシー」は、「金融知識」とそれを「暮らしに活かす力」であり、「最低限身に付けるべき金融リテラシーの4分野15項目」が政府の金融経済教育研究会で取りまとめられています。学校における金融教育については、「金融教育プログラム」(金融広報中央委員会)に学ぶべきことが示されています。
 教科書だけでは自分とお金との関わりについて実感を持って学ばせることが難しい場合もあることから、政府、自治体、諸団体、企業等が提供する外部教材の活用が有効とされています。
 
 そこで外部教材として、自分とお金との関わりについて、生徒が実感を持って理解を深めることができる「生活設計・マネープランゲーム」 と「シリーズ教材 お金のキホン」 の教材体験を行いました。
 生活設計・マネープランゲームは通常、生徒4~5人で1つのグループになりますが、今回は1人ずつで20歳代~30歳代の人生を体験していきました。
 このゲームは、生徒に配布するカードセットと資料集、教師が使用する進行スライドを使って進めていきます。生徒が引くカードによって収入や基本生活支出が決まり、その収入に応じて差し引かれる非消費支出は資料集で確認します。20歳代では自動車の購入、30歳代では結婚・子育て・住居の購入・保険加入の選択、イベント&アクシデント体験をしていきます。今回は1校時(50分)の体験でしたが2校時(100分)の場合には、40歳代で転職や生活の見直し、そして景気の変動、50歳代では子育てが終了した後の収支の変化など、各年代で起こる様々なライフイベントとその費用について体験することができます。
 講師からは、「非消費支出」「人生の三大資金」「ローン」など、生徒が初めて聞く言葉や仕組みについて、収入と家族構成による非消費支出の変化など、生徒に気づいて欲しいポイントが説明されました。
 20歳代~30歳代までの人生体験が終了すると、これまでの人生を振り返り、人生のタイトルと感想をまとめ発表し、結果を共有します。今回は先生方にゲームの感想を発表してもらいました。
 「収入と支出のバランス」、「限られた時間と収入に対して、どのように優先順位をつけるのか」、「選択と責任」について生徒に考えさせることの重要性が講師から伝えられました。

 生活設計・マネープランゲームの体験終了後、本教材は累計で中学校458校、高校687校で活用されていること、中学校・高校の家庭科や社会科での活用だけでなく、消費者教育やキャリア教育、ライフプラン教育でも活用されていることが伝えられました。また、本年度から京都市の全中学校で主権者教育の導入としての活用も始まったことも伝えられました。

 次に、「シリーズ教材 お金のキホン」 教材体験を行いました。
 この教材は「講義型教材」、「アクティブラーニング型教材」、「動画教材」があります。講義型教材は、高校生が学ぶ金融経済教育の具体的な知識について、学習指導要領の家庭科や公民科の内容をおさえた教材です。アクティブラーニング型教材は、生徒の主体的な活動を促すプログラムで、「家計管理編」と「多重債務編」2つのテーマがあります。動画教材は、講義にもアクティブラーニング型授業にも活用できる内容です。
 今回は、アクティブラーニング型教材の「多重債務編」の教材体験を行いました。
 シリーズ教材お金のキホン動画「導入 ある家族の休日」 を視聴し、多重債務 個人ワークシート に、登場人物の大学生が多重債務になってしまった原因を予想して、記入します。個人の考えが出そろったところで班になって議論し、意見・考えをまとめて発表してもらいます。今回は先生方に数人で班を作ってもらい、班の意見を発表してもらいました。「思いもよらない支出があったり、バイトが休みになったりで収入も減ってしまった」、「お金が足りなくなって、キャッシングをしてしまった」、「安易にクレジットカードの利用を重ねてしまった」などの意見が発表されました。
 ここで講師はお金のキホン動画「多重債務」の4つのストーリー(「ストーリーA無計画な利用で多重債務に」「ストーリーB思わぬ収入の減少で多重債務に」「ストーリーC予期せぬ出費で多重債務に」「ストーリーD詐欺に遭い多重債務に」)の中から、「ストーリーA無計画な利用で多重債務に」を選択し、多重債務に陥る原因を確認していきました。
 動画を視聴した後、講師から生活苦・低所得も多重債務の原因になることが補足されました。その後、お金のキホン動画「クレジットとローンの解説映像」 で「多重債務とはどのような状態のことか」、「多重債務のメカニズム」、「多重債務に陥らないために大切な4つのこと」を視聴し、動画の内容を改めて授業用スライドで確認していきました。
 多重債務について理解が深まったところで、多重債務を踏みとどめさせる一言を考えていきます。
 個人用ワークシートにそれぞれ記入した後、2~3人で班になり、話し合いを進めていきました。どの班も活発に意見を出し合い、ポスター用にはどのような一言がふさわしいかなどを考えていきました。 「待って!家族に迷惑かけてない?」、「(ATMのイラストに)あっ!とどまろう、無茶な出費」、「(ATMのイラストに)そのお金、あなたのお金ではありません」など、心情に訴える一言が発表されました。

 ポスター作成をした後、改めて多重債務についてのまとめを行いました。
 「自分が返せる範囲でお金を借りること」、「借りたお金を返す際には利息がつくこと」、「困ったときには家族や第三者機関に相談すること」を確認し、授業の感想を書いてもらいました。

 教材体験ワークショップの後は、全国銀行協会から無償提供されている消費者教育に関する教材と支援活動について紹介がありました。教材は、一般消費者向けの「簡単レシピでチェック 銀行の金融商品・サービス」、「金融知識入門シリーズ」です。どこでも出張講座は、依頼に応じて講師を派遣し授業を実施するもので、平成27年度は全国207ヵ所で実施されました。

 参加された先生からは、クレジットの審査や債務整理、信用調査の内容など専門的な知識に関すること、講師派遣授業を希望する場合の日程調整について、教材の申し込み方法についてなどの質問がありました。

 最後に講師から、全国銀行協会等、様々な組織・団体が提供する金融経済教育に関する支援を活用しながら、消費者として必要な金融リテラシーを身に付けるための授業を実施してほしい旨伝えられ、研修は終了しました。

使用教材