銀行のキホン

これからの金融業界

お金は経済社会の血液

1990年代以降、長期間にわたって、銀行は不良債権問題への対応に取り組んできました。また、この間、金融機関の破綻が発生し、金融システム安定化のために銀行に対して公的資金による資本増強が行われるなど、銀行経営の健全性に対する関心が高まりました。一方で、いわゆる日本版「金融ビッグバン」や規制改革を受け、銀行・証券・保険の相互参入や異業種からの銀行業への参入により競争が激化したほか、銀行の合併・統合や金融グループのコングロマリット化も進展しました。

近年、「金融再生プログラム」等の政府の政策や各銀行の積極的な取り組み、景気回復等により、ようやく不良債権問題の解決にメドがつき、公的資金の返済も進んで、金融界をめぐる環境も大きく転換してきました。
以下では、金融界のこれからについて、最近の制度改正等を踏まえ、解説します。

一層多様化する商品・サービス

日本版「金融ビッグバン」や規制改革の進展により、銀行における保険商品等の販売が拡大しているほか、銀行代理店制度の見直し等により、金融商品・サービスを提供するチャネル(窓口)の拡大が進んでいきます。

銀行における保険商品販売の範囲拡大

銀行等の金融機関における保険商品の販売は、必要な弊害防止措置が講じられたうえで、2001年4月に解禁されました。その後、段階的に取扱商品が拡大され、2007年12月には、平準払終身保険、定期保険、自動車保険等を含む全ての保険商品の販売が解禁されました。

銀行代理店制度の見直し

2006年4月に銀行法が改正され、銀行代理店制度の見直しが行われました。これまでは、銀行代理店は銀行業務しか営むことができませんでしたが、見直しにより、他事業を営んでいる会社も、一定の条件を満たせば、許可を得て銀行代理業者となることが可能になりました。これにより、例えばスーパー等が銀行代理店となり、本業に加えて、預金・ローン商品の申込みを取り次ぐ等の金融サービスも併せて提供できるようになります。

インターネットバンキング等の進展

近年、自宅のパソコンからインターネットを通じて振込を行う等、銀行店舗に足を運ばずに銀行のサービスを利用する人が増加しています。こうしたサービスは、携帯電話等を通じても可能となり、最近では、外貨預金や投資信託の購入など、サービス内容の一層の多様化・充実が進展しています。

利用者保護ルールの整備

2006年通常国会において、いわゆる「金融商品取引法」が成立し、投資者保護のための横断的な法律が整備されました。また、偽造キャッシュカード問題等の金融犯罪が社会問題化したことを受けて、預金者保護のための法整備も行われています。銀行界としても、利用者保護のためのルール整備を一段と進めていきます。

金融商品取引法

「縦割り規制により、法令のすき間で詐欺的業者による被害が発生した」等の指摘に対応して、投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な法律を整備し、利用者保護ルールの徹底等を図ることを目的に、従来の「証券取引法」を改正し、「金融商品取引法」が成立しました。今後、銀行界としても、金融商品の販売に係る自主ルールの整備等を検討していきます。

偽造カード犯罪等の金融犯罪への対応

偽造キャッシュカードによる預金の不正な払出し等が社会問題化したことを受け、金融機関に対し預金の不正な払出しに対する補償を義務づける「偽造・盗難カード預貯金者保護法」が2006年2月に施行されました。これに伴い、銀行界も、補償手続きの迅速化・円滑化に資するため、新たに「カード補償情報センター」を設置したり、偽造・盗難カード預貯金者保護法の対象外である通帳の盗難やインターネットバンキングの不正利用による損害についても、補償するよう自主ルールを制定する等の対応を図りました。また、いわゆる「振り込め詐欺」等の他の金融犯罪への対応についても、検討を進めています。

CSR(Corporate Social Responsibility)活動の充実

2005年11月、全銀協は、従来の「倫理憲章」を「行動憲章」に改定し、銀行は、社会と共に歩む「良き企業市民」として、積極的にその責任を果たしていく旨を明らかにしました。こうした一環として、銀行は、本業である融資業務等を通じて、銀行の特性を活かしたCSR活動を実施し、社会・環境のいろいろな課題の解決に貢献する取り組みを行なっています。環境関連融資等、環境問題等の対応に資する商品も登場しているほか、CSRレポートの刊行や独自の社会貢献活動等、各銀行においてCSR活動の一層の充実に積極的に取り組んでいくものと考えます。

郵政事業の見直し

郵便、郵便貯金および簡易生命保険のいわゆる「郵政三事業」は、明治以来、国が直接運営してきましたが、2003年4月、効率化等を目的として、日本郵政公社が発足しました。その後、経済活性化や行財政改革等を目的として、2005年に郵政民営化関連法が成立し、これにもとづき、2007年10月に日本郵政公社は国が全額株式を保有する純粋持株会社の日本郵政株式会社の下、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行および株式会社かんぽ生命保険に4分社化され、あわせて民営化前の郵便貯金・簡易生命保険を管理する独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が設立されました。

このうち、ゆうちょ銀行およびかんぽ生命保険の株式は、民営化実施後10年以内に売却し、遅くとも2017年10月までに完全民営化されることとなりました。完全民営化までの移行期間においては、新規事業や子会社保有の制限が採られていますが、郵政民営化委員会の審議・意見を踏まえ、主務大臣の認可を条件に新規事業を行うことが可能とされています。これにより、運用対象の多様化として、シンジケートローン(参加型)、特別目的会社への貸付、公共債の売買、貸出債権の取得または譲渡等が可能となり、新規業務としてクレジットカード業務、住宅ローン等の媒介業務等が認可されています。

その後、2009年10月、国民生活の確保および地域社会の活性化等のため、郵政事業の抜本的見直しを行うとする「郵政改革の基本方針」が閣議決定されました。これを受け、同年12月には郵政民営化関連法で定められていた日本郵政グループの株式処分を停止する法律が成立しています。

2010年4月には、「郵政事業に係る基本的な役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにする」こと等を基本理念とする郵政改革関連法案が第174回通常国会で審議されましたが、通常国会の会期終了により廃案となっています。

同法案では、郵便に加えて金融サービス(郵貯・簡保)もユニバーサルサービスとして国の責務と位置付けたほか、日本郵政株式会社と郵便事業株式会社および郵便局株式会社が合併した新会社と郵貯・簡保の金融2社による3社体制に移行し、政府が合併した新会社の株式の3分の1超、新会社が金融2社の株式の3分の1超をそれぞれ保有することで郵政三事業の一体性の確保を目指す等の内容となっています。今後、この法案の内容を基礎として郵政改革の議論が進められることになります。

政策金融改革

政策金融機関の主たる業務は、民間金融機関では対応困難な分野への資金の貸付となります。このため、各機関の根拠法では、民間金融機関の補完を目的としていますが、現実には民間と競合する事例も多くありました。

従来、政策金融機関として、住宅金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、公営企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫および商工組合中央金庫の9機関が活動を行っていましたが、特殊法人等に対する中長期的な財政支出の縮減・効率化、財政投融資改革との関連等も踏まえた抜本的見直しを行うとして、2001年12月に「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、整理合理化の方針が示されました。これを受け、住宅金融公庫は2007年3月末に廃止、証券化支援業務等を行う独立行政法人住宅金融支援機構が同年4月に設立されました。残りの8機関は、2006年5月に成立した行政改革推進法により、政策金融機関の効率的な経営の観点から、政策金融として残る機能を株式会社日本政策金融公庫に統合したほか、撤退すべきとされた分野を担っていた日本政策投資銀行や商工組合中央金庫については、培ってきた信頼関係や金融技術等を活かしつつ、特殊会社化したうえで完全民営化することとされています。

政策金融改革により新体制に移行する一方で、リーマン・ショック以降の経済金融危機の進行を受け、危機への対応のため政策金融のあり方の議論が行われています。危機対応業務の実施主体となった日本政策投資銀行と商工組合中央金庫については、2009年6月に成立した議員立法により、新たな政府出資が可能となったほか、両社の株式の処分も延期され、2011年度末をめどに両社のあり方の見直すこととされ、今後の政策金融について改めて検討が行われることになります。

なお、独立行政法人改革については、2009年12月に政府で閣議決定した「独立行政法人の抜本的な見直しについて」にもとづき見直しが行われることとなり、今後、住宅金融支援機構に関する見直しも行われることになります。