全国銀行財務諸表分析

全国銀行概況

(以下は、東京スター銀行、石川銀行、関西さわやか銀行、新生銀行、あおぞら銀行、の計数を含まない134行ベースで算出、分析したものである。)

1.当中間期決算の特徴

(1)当期中の経理基準の変更等

  1. 特定取引勘定を設置した銀行はさくら銀行と住友銀行の合併により当期中1行減少し、全体で28行となった。
  2. 金融商品に係る会計基準(「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会平成11年1月22日))の適用に伴い、有価証券の評価の方法について、「その他有価証券」に区分されるものは、当期より全行で時価評価の適用が強制されることとなった。「その他有価証券」の評価損益については、原則として、損益計算書を経由せず評価差額(評価差益および評価差損)の合計額を貸借対照表の「資本の部」の「評価差額金」に計上する(全部資本直入法)こととなっている。
  3. 平成10年9月期から、自己査定における破綻先および実質破綻先に対する担保・保証付債権については、債権額から担保の評価額および保証による回収が可能と認められる額を控除した残額を取立不能見込額として債権額から直接減額する経理処理が財務上可能とされているが、当期においては、都市銀行8行、地方銀行30行、信託銀行6行、長期信用銀行1行、第二地銀協地銀34行の計79行が実施している。なお、当該銀行の財務諸表上の貸出金およびリスク管理債権額は当該直接減額後の計数となっている。
  4. 東京都に続き大阪府においても事業税に係る外形標準課税を導入し、平成13年度より適用している(「大阪府における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例」(平成12年大阪府条例第145号))。このため、従来、「法人税、住民税及び事業税」に計上していた大阪府の事業税については、当期より「その他の経常費用」として計上している。

図1 国内主要金利の推移

図2 海外主要金利の推移

(2)当期中の金融情勢等

平成13年度中間期の金融情勢をみると、短期金利については、日本銀行が平成13年3月19日に日銀当座預金残高を5兆円程度に維持するという量的指標による大幅な金融緩和策を決定し、さらに8月14日には日銀当座預金残高を6兆円に増額したことなどを受け、無担保コールレート(オーバーナイト物)は期中を通じて、ゼロ%近辺で推移した。長期金利は、前半は小泉内閣の誕生を受け、財政問題への取組みが期待されたことから1.2%台で推移し、期末に近づくにつれ、景況感の悪化、先行きの国債需給に対する懸念等を背景に若干の上昇が見られ、1.3~1.4%台で推移したが、全体としては安定的な動きであった。

株価は、日本経済の先行きに対する不透明感から軟調に推移し、9月には、大手流通業の倒産や米国同時多発テロ事件の発生に伴う米国経済への不安を反映し、大幅に下落し、当中間期末の株価(日経平均株価)は1万円台を割り込み9,774円68銭と前期末(12,999円70銭)比で3,225円安となった(前中間期末15,747円26銭)。

また、当中間期末の外国為替相場(スポット・レート)は1ドル=119.29円となり、前期末(125.27円)比で5円98銭の円高となった。

2.概況

以下は、銀行単体をベースにとりまとめたものである。

全国銀行の平成13年度中間期決算をみると、資金運用益(算式は後掲(注)参照)は、資金調達費用の減少額が資金運用収益のそれを上回ったことから4兆9,252億円(前中間期比2,529億円、5.4%増)と前中間期の減益から増益に転じた。

経常利益は、株式等償却の大幅な増加や、貸出金償却、個別貸倒引当金繰入額の増加などから、前中間期の黒字(1兆1,376億円)から1兆3,139億円の赤字に転じた。
中間利益は、前中間期の黒字(3,773億円)から9,886億円の赤字に転じた。
業容面では、預金が0.7%減となり、貸出金は、1.7%減と5年連続の減少となった。

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+一般貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 国内業務=国内店の円建取引
  • 国際業務=国内店の外貨建取引+海外店の取引(円建対非居住者取引とオフショア勘定は国際業務に含む)
  • ROA=(当期利益/期中日数)×365/(総資産-支払承諾見返)(平残)
  • ROE=(当期利益/期中日数)×365/資本の部(平残)

損益状況

資金運用益
経常利益のうち、資金運用益は、4兆9,252億円(前中間期比2,529億円、5.4%増)と前中間期の減益から増益に転じた。
内訳をみると、資金運用収益は、有価証券利息配当金は増加したものの、ヘッジ会計を適用するデリバティブ取引の損益の計上方法が、従来の総額表示から純額表示に変更されたことに伴い、金利スワップ受入利息の計上額が前中間期比大幅に減少し、国内金利水準の低下により貸出金利息等も減少したことから7兆5,304億円(同1兆269億円、12.0%減)となった。
資金調達費用については、同様の理由により金利スワップ支払利息が大幅に減少したことに加え、預金利息も国内金利の低下により減少し、2兆6,052億円(同1兆2,798億円、32.9%減)となった。
このように、収益・費用ともに減少となったものの、費用の減少額が収益のそれを上回ったため、資金運用益は増益となった。
役務取引等収益・費用
役務取引等収益・費用は、収益超過額が6,217億円(前中間期比243億円、4.1%増)となった。
特定取引収益・費用
特定取引収益・費用は、収益超過額が2,269億円(前中間期比1,126億円、98.6%増)となった。
その他業務収益・費用
外国為替売買損益の収益超過額は減少したものの、国内債券市場が堅調であったことを背景に、国債等債券売却益が大幅に増加する一方で、国債等債券売却損は減少したことなどにより、国債等関係損益の収益超過額は増加した。また、金融派生商品損益は、前中間期の損失超過から収益超過に転じた。この結果、その他業務収益・費用全体の収益超過額は5,049億円(前中間期比3,700億円、274.1%増)と大幅に増加した。
信託報酬
信託報酬は、貸付信託の減少などにより、1,994億円(前中間期比190億円、8.7%減)となった。
その他経常収益・費用
国内株式市場の低迷により、株式等売却益が大幅に減少したことに加え、減損処理などにより株式償却が大幅に増加となったことから、株式等関係損益は大幅な損失超過となった(損失超過額1兆2,891億円)。また不良債権に関しては、引き続き積極的な処理を進めており、その他の経常費用は減少したものの、貸出金償却、個別貸倒引当金の繰入(純繰入額1兆3,021億円、前中間期比2.3%増)が増加した。この結果、その他経常収益・費用全体では、損失超過額は4兆2,071億円と、前中間期(1兆389億円の損失超過)に比べて損失超過額が拡大した。
営業経費
営業経費は、リストラ等の経営全般にわたる合理化が進められたことから人件費は減少したものの、都市銀行などの経営統合により物件費は増加し、全体では3兆5,848億円(前中間期比241億円、0.7%増)の微増となった。
経常利益・中間利益
以上の結果、経常収益は10兆7,110億円(前中間期比1兆5,241億円、12.5%減)、経常費用は12兆249億円(同9,274億円、8.4%増)となり、経常利益は前中間期の黒字(1兆1,376億円)から1兆3,139億円の赤字に転じた(増益31行、減益68行、経常損失35行)。また、税引前中間利益は、1兆3,723億円の赤字となり、法人税等調整額が6,156億円の増益要因となったものの、中間利益は、前中間期の黒字(3,773億円)から9,886億円の赤字に転じた(増益48行、減益51行、中間損失35行)。
参考までにみると、業務純益は、2兆7,858億円(同4,444億円、19.0%増)と増益となった。

なお、全国銀行の業態別の経常利益等は表1のとおりである。

利回り・利鞘(国内業務部門)
資金運用利回りをみると、貸出金利回りが前中間期比0.08%ポイント低下して2.01%となり、また有価証券利回りが同0.18%ポイント低下して1.21%、コールローン等利回りが同0.01%ポイント低下し0.29%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.22%ポイント低下して1.72%となった。
資金調達費用をみると、預金債券等利回りが同0.07%ポイント低下して0.19%となった他、経費率が同0.04%ポイント低下して1.22%に、またコールマネー等利回りも0.33%ポイント低下して0.56%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.24%ポイント低下して1.34%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、同0.02%ポイント拡大して0.38%となった。

資金調達

預金は、国内業務部門では、前半は減少傾向にあったが、期末にかけて法人預金が増加し、末残では458兆2,420億円(前期末比6兆4,294億円、1.4%増)となった(平残では、前中間期比1兆2,772億円、0.3%増)。他方、国際業務部門では、預金は大幅に減少した(末残ベースで前期末比9兆9,207億円、16.6%減)。この結果、預金全体では、508兆412億円(前期末比3兆4,913億円、0.7%減)となった。

譲渡性預金は、末残で50兆3,027億円(同2兆2,042億円、4.6%増)となった。
債券は、末残で20兆1,537億円(同1兆6,582億円、7.6%減)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門では住宅ローンを中心として個人向け貸出が増加したものの、国内の景気低迷を反映して引き続き企業の設備資金需要が後退していることから企業向け貸出は減少し、全体でも減少となった(平残では前中間期比1.0%減)。また、国際業務部門でも、貸出金は減少した。以上の結果、貸出金全体では、末残で466兆612億円(前期末比8兆205億円、1.7%減)と5年連続の減少となった。

リスク管理債権(単体ベース)の残高についてみると、破綻先債権額は銀行勘定で2兆7,509億円(前期末比868億円、3.1%減)、信託勘定で770億円(同240億円、23.8%減)、延滞債権額は銀行勘定で17兆7,954億円(同1兆1,540億円、6.9%増)、信託勘定で2,788億円(同95億円、3.3%減)、3ヵ月以上延滞債権額は銀行勘定で6,946億円(同483億円、7.5%増)、信託勘定で90億円(同16億円、15.2%減)、貸出条件緩和債権額は銀行勘定で12兆280億円(同2兆2,633億円、23.2%増)、信託勘定で1,995億円(同365億円、22.4%増)となった。(信託勘定については、元本補填契約のある信託勘定の計数。)

この結果、リスク管理債権の全体は、銀行勘定で33兆2,690億円(同3兆3,787億円、11.3%増)、信託勘定で5,645億円(同12億円、0.2%増)となった。なお、金融庁が公表(平成14年2月1日)した全国銀行のリスク管理債権額は表2のとおりである。

  • 上記リスク管理債権額は134行ベースの計数であるが、金融庁公表の全国銀行の計数は136行ベースであるため、これらの計数は一致しない。

また、金融再生法に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準ずる債権が6兆9,548億円(前期末比851億円、1.2%増)、危険債権が14兆8,883億円(同8,141億円、5.8%増)、要管理債権が12兆4,408億円(同2兆4,773億円、24.9%増)、正常債権が472兆2,576億円(同12兆8,663億円、2.7%減)であった(信託勘定の計数を除く)。なお、金融庁が公表(平成14年2月1日)した全国銀行の金融再生法開示債権の状況は表3のとおりである。

  • 上記資産査定は134行ベースの計数であるが、金融庁公表の全国銀行の計数は136行ベースであるため、これらの計数は一致しない。

有価証券は、国債の減少(前年度末比7兆5,073億円、10.6%減)および株式の減少(同8兆7,525億円、19.8%減)したことを主因に、160兆6,464億円(同15兆8,242億円、9.0%減)と減少した。

資本金は、10行で増資を行ったほか、8行で転換社債の転換があったものの、合併による減少が1行であったため、12兆1,486億円(同3,987億円、3.2%減)となった。なお、増資には、金融機能早期健全化法に基づく公的資金の引受けによる資本増強に伴う地方銀行1行および第二地銀協地銀1行の優先株式の発行(近畿大阪銀行600億円、岐阜銀行120億円)が含まれている。

また、資本勘定全体では、その他有価証券を時価評価したことによる評価差額金が、国内株式市場の低迷等を受け大幅なマイナス計上となったこと(全国銀行では1兆2,308億円のマナイス計上。うち都市銀行は1兆4,769億円のマイナス計上)、また、赤字決算に伴い多くの銀行で剰余金の取崩を行ったことから、前期末比4兆5,414億円減少して32兆1,200億円となった。

図3 全国銀行の経常利益・資金運用益の推移

  • 平成元年度中間期以降は地方銀行IIを含む。
表1経常利益の内訳 (単位:億円、上段:13年度中間期額、下段( )内:前年同期比増減(△)額)
  全国銀行 都市銀行 地方銀行 地方銀行II 信託銀行
資金運用益 49,252
(△2,529)
23,114
(2,362)
16,904
(△67)
5,845
(△1)
2,207
(△10)
役務収益等収支 6,217
(243)
3,148
(130)
1,668
(87)
301
(23)
783
(△45)
特定取引収支 2,269
(1,126)
1,913
(956)
16
(5)
0
(0)
67
(27)
その他業務収支 5,049
(3,700)
3,160
(2,530)
709
(350)
166
(67)
643
(381)
信託報酬 1,994
(△190)
183
(△77)
22
(0)

(-)
1,789
(△113)
その他経常収支 △42,071
(-)
△23,386
(-)
△8,754
(-)
△2,717
(-)
△4,568
(-)
営業経費 35,848
(241)
14,857
(373)
12,630
(△33)
4,360
(△121)
3,293
(△13)
経常利益 △13,139
(-)
△6,723
(-)
△2,065
(-)
△766
(-)
△2,373
(-)
表2 全国銀行のリスク管理債権の状況(平成13年9月期) (単位:億円) (出所:金融庁)
区分 機関数 貸出金 リスク管理債権 貸倒引当金
総額 破綻先
債権
延滞
債権
3カ月
以上延
滞債権
貸出条件
緩和債権
総額 個別貸倒
引当金
都市銀行 8 2,320,960 148,740 9,760 78,320 4,980 55,680 49,180 27,310
長期信用銀行 3 313,580 32,890 2,660 12,750 410 17,070 10,490 5,050
信託銀行 6 417,950 35,910 2,260 18,530 190 14,940 9,400 5,470
都銀・長信銀・信託計 17 3,052,490 217,540 14,680 109,600 5,570 87,690 69,070 37,840
地方銀行 64 1,353,420 101,210 10,180 58,390 1,410 31,230 34,120 23,900
第二地方銀行 55 443,880 37,980 4,570 21,620 380 11,420 12,450 9,120
地域銀行計 119 1,797,300 139,190 14,750 80,010 1,790 42,640 46,570 33,020
全国銀行計 136 4,849,790 356,730 29,420 189,610 7,360 130,330 115,640 70,860
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 破綻公表済の金融機関(編注:石川銀行)を除く。
  • 「延滞債権」とは、「元本又は利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により元本又は利息の取立て又は弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかった貸出金であって、破綻先債権及び債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの以外のもの」であり、「3カ月以上延滞債権」とは、「元本又は利息の支払が約定支払日の翌日から3カ月以上遅延している貸出金であって、破綻先債権・延滞債権以外のもの」である。
  • 一部金融機関において部分直接償却(破綻先及び実質破綻先に対する担保・保証付債権について、担保等による回収が不可能な額(第4分類債権額)に対し、個別貸倒引当金の計上ではなく、直接償却すること)が行われており、それによる減少が8兆8,410億円である。
表3 全国銀行の金融再生法開示債権の状況(平成13年9月期) (単位:億円) (出所:金融庁)
区分 機関数 金融再生法開示債権 正常債権 合計
総額 破産更生
債権及び
これらに
準ずる債権
危険債権 要管理
債権
都市銀行 8 155,000 23,510 70,840 60,660 2,420,560 2,575,560
長期信用銀行 3 33,850 5,420 10,930 17,510 359,860 393,710
信託銀行 6 36,260 5,510 15,640 15,110 403,680 439,950
都銀・長信銀・信託計 17 225,120 34,440 97,410 93,270 3,184,100 3,409,220
地方銀行 64 103,520 28,110 44,800 30,620 1,291,820 1,395,340
第二地方銀行 55 38,910 11,460 16,500 10,960 417,410 456,320
地域銀行計 119 142,440 39,560 61,300 41,570 1,709,230 1,851,670
全国銀行計 136 367,560 74,000 158,710 134,850 4,893,320 5,260,880
  • 金融再生法第六条に基づく資産査定等報告書の集計。
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 破綻公表済の金融機関(編注:石川銀行)を除く。