全国銀行財務諸表分析

全国銀行概況

以下は、都市銀行7行(みずほ、東京三菱、UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)48行、信託銀行8行(三菱信託、みずほ信託、UFJ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、三井アセット信託、りそな信託)、その他2行の129行ベースで算出、分析したものである。

経理基準の変更等

  1. 特定取引勘定を設置している銀行は26行であった。
  2. 平成14年8月9日付企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」および平成15年10月31日付企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」により、当期は固定資産の減損会計を早期適用することができることとされた。なお、認識測定された減損損失は、損益計算書上「特別損失」に計上している。
  3. 企業会計基準委員会実務対応報告第13号「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い」に基づき、役員賞与の支給見込額のうち、当期に帰属する額を費用計上した場合には、損益計算書上「営業経費」に含めて計上し、その見合額を貸借対照表上負債の部に「役員賞与引当金」として計上している。
  4. 企業会計基準委員会実務対応報告第12号「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」に基づき、当期から「付加価値額」および「資本等の金額」に基づき算定された法人事業税(外形標準課税)については、損益計算書上「営業経費」に含めて計上している。
  5. 平成17年3月16日付企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」により、当期末から未認識年金資産を資産及び利益として認識することを早期適用することができるとされた。これに伴い、一部の銀行は、同日付企業会計基準適用指針第7号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正に関する適用指針」を適用し、当期から未認識年金資産は数理計算上の差異として、損益計算書上「営業経費」中の退職給付費用の減額の対象としている。
  6. 平成16年6月9日法律第97号「証券取引法等の一部を改正する法律」により、投資事業有限責任組合並びに民法上の組合及び匿名組合のうち投資事業有限責任組合に類するものの出資持分が証券取引法上の有価証券と定義されたことに伴い、従来貸借対照表上資産の部の「その他資産」に含めていた当該持分は、当期末から同「有価証券」に含めている。

担当:加藤

概況

以下は、銀行単体の決算をとりまとめたものである。

全国銀行129行の平成16年度決算をみると、資金運用益は、資金調達費用が増加となるなか、資金運用収益が減少したため、8兆6,886億円(前年度比3,167億円、3.5%減)と減益となった。

業務純益は、資金運用益が減益となったものの、役務取引等利益の増加、営業経費の減少に加え、一般貸倒引当金の大幅な純取崩し等から、6兆4,432億円(同9,714億円、17.8%増)と増益となった。

経常利益は、業務純益が増益となったことに加えて、個別貸倒引当金繰入額や貸出金償却といった不良債権処理額が減少したこと等から、1兆9,019億円(同1兆3,891億円、270.8%増)と大幅な増益となった。

当期純利益は、経常利益が大幅な増益となったことに加え、特別収支(特別利益-特別損失)の利益超過額が増加し、法人税等調整額(税金費用)も減少したこと等から、1兆2,943億円となり、5年ぶりに黒字となった(前年度は7,796億円の赤字)。

業容面(末残)は、預金が前年度末比で1.4%の増加、貸出金は同2.0%の減少、有価証券は同3.5%の増加となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、8兆6,886億円(前年度比3,167億円、3.5%減)と前年度に引続き減益となった。これは、国内業務部門では資金運用収益の減少が、一方、国際業務部門では、米国金利の上昇等による資金調達費用の増加が影響し、それぞれ減益となったことによる。
資金運用収益は10兆6,518億円(同2,616億円、2.4%減)と減少した。有価証券利息配当金や預け金利息が増加したものの、貸出金利息が7兆7,630億円(同3,897億円、4.8%減)と減少したことから、全体でも減少となった。
 国内・国際業務部門別にみると、国内業務においては、有価証券利息配当金は運用量の増加(平残前年度比10.9%増)から増加したものの、貸出金利息は利回りの低下と運用量の減少(同2.0%減)から減少し、全体でも減少となった。一方、国際業務においては、米国金利の上昇等から貸出金利息や預け金利息が増加し、全体でも増加となった。
資金調達費用は、1兆9,632億円(前年度比551億円、2.9%増)と増加した。債券利息は残高の減少等から減少したものの、預金利息は7,471億円(同837億円、12.6%増)と増加したほか、譲渡性預金利息なども増加したことから、全体でも増加となった。
国内・国際業務部門別にみると、国内業務においては、預金利息は、金利低下から減少した。このほか、債券利息や借用金利息なども減少し、全体でも減少となった。一方、国際業務においては、米国金利の上昇等から預金利息が大幅に増加したほか、譲渡性預金利息や借用金利息も増加し、全体でも増加となった。
役務取引等収益・費用
為替手数料収支は前年度並みであったものの、その他の役務収支が、法人関係ではシンジケートローンの組成等が、また、個人関係では投資信託や年金保険の窓口販売等が好調であったことから大幅に伸び、全体の収益超過額は1兆7,930億円(前年度比2,738億円、18.0%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、収益超過額が3,418億円(前年度比3,029億円、47.0%減)と大幅な減益となった。この要因としては、米国金利の上昇に伴う通貨スワップ取引等の評価損失等が挙げられる。
その他業務収益・費用
為替相場の変動に伴う通貨スワップ取引等の為替換算益等から、外国為替売買損益が大幅な収益超過となる一方、国債等債券関係損益は、米国債の売却損などから国際業務部門で損失超過となり、収益超過額が大幅に減少した。このほか、金融派生商品(デリバティブ取引)関係損益が損失超過となったことから、全体では、7,766億円(前年度比1,530億円、24.5%増)となった。
信託報酬
信託報酬は4,003億円(前年度比192億円、5.0%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益は、国際業務部門で損失超過となったことから、全体でも30億円の損失超過となった。また、この間の不良債権処理の進捗等もあって、一般貸倒引当金繰入額が大幅な純取崩しとなるほか、個別貸倒引当金純繰入額は1兆7,124億円(前年度比7,135億円、29.4%減)、貸出金償却は1兆7,164億円(同3,031億円、15.0%減)と引続き多額であったものの、前年度よりも減少した。以上の結果、全体では、その損失超過額は3兆6,761億円と、前年度に比べて1兆2,524億円減少した。
営業経費
経営合理化努力により人件費等が減少したことから、6兆4,222億円(前年度比3,102億円、4.6%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は16兆9,186億円(前年度比6,400億円、3.6%減)、経常費用は15兆167億円(同2兆290億円、11.9%減)となり、経常利益は1兆9,019億円(同1兆3,891億円、270.8%増)と大幅な増益となった(増益85行、減益24行、黒字転換8行、経常損失12行)。当期純利益は、経常利益が大幅な増益となったことに加え、一部銀行で課税訴訟の還付金や貸倒引当金の戻入れ益等があり、特別収支(特別利益-特別損失)の利益超過額が増加し、法人税等調整額(税金費用)も1兆1,203億円と前年度に比べて4,880億円減少したこと等から、1兆2,943億円となり、5年ぶりに黒字(前年度は7,796億円の赤字)となった(増益80行、減益28行、黒字転換9行、当期純損失12行)。
なお、業務純益は、資金運用益が減益となったものの、役務取引等利益の増加、営業経費の減少に加え、一般貸倒引当金の大幅な純取崩し等から、6兆4,432億円(同9,714億円、17.8%増)と増益となった(増益82行、減益44行、黒字転換3行)。

利回り・利鞘(国内業務部門)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.06%ポイント低下の1.84%、有価証券利回りは同0.02%ポイント低下して0.74%、コールローン等利回りは同0.05%ポイント上昇して0.28%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.06%ポイント低下して1.44%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.02%ポイント低下して0.06%(預金利回りは0.05%)、コールマネー等利回りは同0.03%ポイント低下して0.29%となった。また、人件費率等が低下したことから、経費率は同0.04%ポイント低下して1.07%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.06%ポイント低下して1.05%となった。

以上のように、資金運用利回り、資金調達原価ともに同幅低下したことから、総資金利鞘は前年度比不変の0.39%となった。

資金調達

預金は、国内業務部門では、年度中、定期性預金は減少したが、流動性預金が増加し、全体でも増加した。一方、国際業務部門では、外貨預金を中心に減少した。この結果、末残では540兆7,637億円(前年度末比7兆2,051億円、1.4%増)となった。また、平残では526兆7,893億円(前年度比10兆1,472億円、2.0%増)となった。

譲渡性預金は、末残では29兆5,302億円(前年度末比2,656億円、0.9%減)となり、平残では32兆7,737億円(前年度比2兆6,092億円、8.6%増)となった。

債券は、末残では9兆9,934億円(前年度末比2兆2,485億円、18.4%減)となり、平残では11兆29億円(前年度比2兆8,902億円、20.8%減)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門では、年度中、住宅ローンを中心とする個人向け貸出や地方公共団体向け貸出が増加した。一方、企業向け貸出は借入需要が引続き低迷していることに加え、不良債権の売却・償却を進めたこと等により減少したため、全体としても減少した。一方、国際業務部門では、年度中、アジア向け貸出の伸び等から増加した。この結果、貸出金全体では、末残で414兆738億円(前年度末比8兆4,324億円、2.0%減)となった。また、平残では412兆5,541億円(前年度比8兆7,307億円、2.1%減)となった。

不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は7,409億円(前年度末比4,744億円、39.0%減)、延滞債権額は10兆5,076億円(同2兆3,991億円、18.6%減)、3ヵ月以上延滞債権額は2,195億円(同908億円、29.3%減)、貸出条件緩和債権額は5兆6,059億円(同3兆9,957億円、41.6%減)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、17兆740億円(同6兆9,600億円、29.0%減)となり、貸出金総額に占める比率も同1.57%ポイント低下して4.12%となった。なお参考までに、金融庁が公表した全国銀行のリスク管理債権額は表2のとおりである。

  • 上記リスク管理債権額の計数は129行(銀行勘定)ベースであるが、金融庁公表の計数は126行ベースで、かつ再生専門子会社を含むため、これらの計数は一致しない。

また、金融再生法第7条に基づき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が3兆1,021億円(同9,371億円、23.2%減)、危険債権が8兆6,411億円(同1兆9,379億円、18.3%減)、要管理債権が5兆7,266億円(同4兆817億円、41.6%減)、正常債権が423兆4,849億円(同1,214億円、0.0%減)であった。なお参考まで、金融庁が公表した全国銀行の資産査定報告書集計結果は表3のとおりである。

  • 上記資産査定の計数は129行(銀行勘定)ベースであるが、金融庁公表の計数は126行(信託勘定を含む)ベースで、かつ再生専門子会社を含むため、これらの計数は一致しない。

有価証券は、年度中、国債および社債が増加したことにより、末残で200兆2,683億円(前年度末比6兆7,070億円、3.5%増)となった。また、平残では195兆7,775億円(前年度比16兆8,071億円、9.4%増)となった。

自己資本

当期中、都市銀行4行、地方銀行1行、第二地銀協地銀2行が増資を行い、地方銀行9行、第二地銀協地銀2行、信託銀行2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われた。この結果、資本金は10兆5,780億円(前年度末比6,610億円、6.7%増)となった。また、資本勘定全体でも、31兆4,348億円(同2兆4,748億円、8.5%増)と増加した。

担当:増田

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
表1 経常利益の業態別内訳 (単位:億円)
  全国銀行 都市銀行 地方銀行 地方銀行II 信託銀行
資金運用益 86,886
(△3,167)
37,441
(△2,378)
32,589
(△775)
10,771
(109)
4,982
(△37)
役務収益等収支 17,930
(2,738)
10,298
(1,672)
4,199
(304)
730
(98)
2,504
(658)
特定取引収支 3,418
(△3,029)
2,815
(△3,306)
144
(58)

(-)
178
(△10)
その他業務収支 7,766
(1,530)
6,490
(2,209)
475
(△72)
270
(96)
285
(△724)
その他経常収支 △36,761
(12,524)
△27,612
(2,896)
△5,056
(9,833)
△2,420
(201)
△1,875
(△677)
信託報酬 4,003
(192)
99
(50)
11
(△17)

(-)
3,893
(159)
営業経費 64,222
(△3,102)
26,981
(△1,907)
23,131
(△869)
7,511
(△28)
5,475
(△357)
経常利益 19,019
(13,891)
2,551
(3,049)
9,231
(10,201)
1,840
(532)
4,492
(△274)
参考:業務純益 64,432
(9,714)
36,670
(7,061)
15,604
(1,835)
4,645
(320)
6,760
(313)
  • 上段は平成16年度計数、下段( )内は対前年度増減額。なお、地方銀行と地方銀行IIの対前年度増減額は、遡及調整して算出した。
表2 リスク管理債権の状況(平成17年3月期) (単位:億円)
区分 機関数 貸出金 リスク管理債権 貸倒引当金
総額 破綻先
債権
延滞
債権
3カ月
以上延
滞債権
貸出条件
緩和債権
総額 個別貸倒
引当金
都市銀行 6 1,959,940 62,100 1,720 36,850 1,310 22,230 40,770 17,150
長期信用銀行等 2 60,490 1,480 30 1,300 30 120 2,580 1,050
信託銀行 5 340,510 9,320 370 5,070 30 3,850 4,040 1,800
都銀・長信銀等・信託 13 2,360,960 72,900 2,120 43,210 1,370 26,200 47,390 20,000
(うち主要11行)
11 2,300,450 71,420 2,090 41,920 1,340 26,070 44,810 18,950
地方銀行 64 1,374,920 75,840 4,060 47,130 660 23,980 29,380 18,240
第二地方銀行 48 403,400 25,590 2,030 16,640 130 6,790 8,220 5,480
地域銀行計 113 1,831,540 102,480 6,120 64,320 840 31,210 37,960 23,860
全国銀行計 126 4,192,490 175,390 8,240 107,530 2,210 57,400 85,350 43,860
協同組織金融機関 537 1,201,960 83,020 7,980 53,220 450 21,360 27,190 19,980
(うち信用金庫)
299 693,800 55,470 4,350 37,830 240 13,050 15,100 11,360
(うち信用組合)
176 97,360 11,660 1,290 7,120 120 3,130 3,500 2,780
合計(預金取扱金融機関) 663 5,394,460 258,400 16,220 160,750 2,660 78,760 112,540 63,840
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 長期信用銀行等の計数は、16年4月に普通銀行へ転換した新生銀行を含む。
  • 主要11行の計数は、都銀・長信銀等・信託から新生銀行とあおぞら銀行を除いたもの。
  • 地域銀行の計数は、埼玉りそな銀行を含む。
  • 計数は、みずほグループ各行、UFJ銀行、北陸銀行、西日本シティ銀行の再生専門子会社分を含む。
表3 金融再生法開示債権の状況(平成17年3月期) (単位:億円)
区分 機関数 金融再生法開示債権 正常債権 合計
総額 破産更生
債権及び
これらに
準ずる債権
危険債権 要管理
債権
都市銀行 6 64,630 9,270 31,830 23,530 2,112,170 2,176,790
長期信用銀行等 2 1,500 90 1,260 150 60,940 62,440
信託銀行 5 9,470 1,230 4,380 3,860 344,300 353,770
都銀・長信銀・信託 13 75,600 10,580 37,470 27,550 2,517,400 2,593,000
(うち主要11行)
11 74,100 10,500 36,210 27,390 2,456,470 2,530,560
地方銀行 64 76,740 15,220 37,840 23,670 1,327,470 1,404,210
第二地方銀行 48 25,870 6,380 12,610 6,890 384,130 410,000
地域銀行計 113 103,670 21,720 50,900 31,050 1,764,600 1,868,270
小計(全国銀行) 126 179,270 32,310 88,360 58,600 4,282,000 4,461,270
協同組織金融機関 489 69,780 22,350 31,040 16,390 838,290 908,080
(うち信用金庫)
299 56,610 17,260 26,470 12,880 652,070 708,680
(うち信用組合)
176 11,830 4,490 4,050 3,290 87,840 99,670
合計(預金取扱金融機関) 615 249,040 54,660 119,400 74,990 5,120,290 5,369,350
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 長期信用銀行等の計数は、16年4月に普通銀行へ転換した新生銀行を含む。
  • 主要11行の計数は、都銀・長信銀等・信託から新生銀行とあおぞら銀行を除いたもの。
  • 地域銀行の計数は、埼玉りそな銀行を含む。
  • 計数は、みずほグループ各行、UFJ銀行、北陸銀行、西日本シティ銀行の再生専門子会社分を含む。
  • 協同組織金融機関には、信農連等を含まない。