ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス
- 住宅購入は増税を意識せず、資金計画を優先すべき
- 住宅取得の優遇制度は増税後によりメリットが多い
- 無理のない住宅ローンを最優先に考える
できれば、消費税が10%に上がる前に住宅を購入したかったのですが、当時は自己資金が300万円ほどで、資金的に無理があると考え、結局、実現しませんでした。希望していたのは、物件価格3,800万の新築一戸建て。今後は物件価格を下げるべきか、購入を先に延ばしても自己資金をさらに増やしていくべきか、いろいろと迷っています(女性/32歳)
ご相談者が増税前に住宅購入をしなかったことで、予定されていたライフプランは実現しませんでしたが、結果的に間違いではなかったと思います。
そのもっとも大きな理由は、資金的に無理をしなかったという点。購入したことで貯蓄が大きく減ってしまう。あるいは、返済による家計負担が想定以上に重く、その後、貯蓄ができなくなる。それらは今後のマネープランにとっては大きなリスクとなるからです。
また、住宅購入の際にかかる消費税は建物の部分だけで、土地に対してはかかりません。販売価格3,800万円の一戸建てについて、その半分が建物の価格とすれば、増税後は約35万円アップの3,835万円となります。この金額差を大きいと思うか小さいと思うかは人それぞれでしょうが、仮に返済期間30年、全期間固定の金利1.5%で住宅ローンを組むと、増税によるアップ分は月1,200円ほど。増税前に駆け込みで慌てて購入するほど、毎月の家計負担にさほど大きな差はないと考えます。
さらに言えば、住宅取得の負担軽減制度は、増税後の方がよりメリットが多いのです。
そのひとつが「住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)」。増税前、その適用期間は10年間でしたが、消費税10%が適用される住宅を一定期間内に契約し、2022年12月にまでに入居した場合、その期間は3年延長され、13年間となります。
控除期間が13年間となった場合、最初の10年間は現行の控除内容と同じですが、11年目以降は、(1)現行と同じ住宅ローンの年末残高(上限4,000万円)×1%、(2)建物購入価格(上限4,000万円)×2%÷3、のいずれか小さい額が控除額となります(一般住宅の場合)。もし(2)となった場合、延長された3年間の控除期間で、結果的に消費税2%相当分の負担が住宅ローン減税という形で還元されることになるわけです。
もうひとつ、「すまいの給付金」も増税後に購入した方が有利となります。「すまいの給付金」とは、消費税が5%から8%にアップした際、住宅取得者の負担軽減策として創設された給付金制度のこと。一定の要件を満たした住宅を取得した場合、収入に応じて最大30万円の給付金が支給されますが、10%に増税後は最大50万円に拡充されました。さらに給付対象となる年収も510万円以下までだったのが、775万円万以下にまで広がりました(表参照)。給付額としては、とくに年収500万円台の人にメリットが大きくなっています。
さて、今後、物件価格を下げて購入するか、それとも住宅資金を増やした上で希望する物件を購入するべきかについてですが、それは購入したい時期と希望する住宅、住環境のどちらを優先するかということになります。したがって、ご相談者とそのご家族のライフプランや価値観で決めていけばいいでしょう。
ただし、どちらにしても大事なことは、その購入プランが、無理なく返済できる住宅ローンとなっているかということです。
教育資金の準備や老後の備えも考慮し、毎月いくらまでなら住宅ローンを支払うことが可能なのか。持ち家になると維持コスト(固定資産税やマンションであれば管理費、修繕積立金など)が別途発生します。それも加算した上で、支払い可能な住宅コストを具体的に割り出すことが必要です。
住宅ローンの返済期間も重要です。老後を迎えても長くローンを返済することは、大きなリスクにつながります。できれば60歳、長くても65歳にまでには完済したいところ。
また、物件価格にかかわらず、一般に自己資金は多い方が望ましいとされています。超低金利の場合、借入額が多少増えたとしても支払利息の差はさほど大きくはなりません。それでも借入額を抑えることで、例えば減収によってローン返済が苦しくなるといった家計リスクをより軽減できるからです。
消費税8% | 消費税10% | ||
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年収額の目安(※1) | 給付基礎金額(※2) | 年収額の目安 | 給付基礎額 |
425万円以下 | 30万円 | 450万円以下 | 50万円 |
425万円超 〜 475万円以下 | 20万円 | 450万円超 〜 525万円以下 | 40万円 |
475万円超 〜 510万円以下 | 10万円 | 525万円超 〜 600万円以下 | 30万円 |
— | — | 600万円超 〜 675万円以下 | 20万円 |
— | — | 675万円超 〜 775万円以下 | 10万円 |
(※1)都道府県税の所得割額によって決定
(※2)実際の給付金額は、給付基礎金額に登記上の持ち分割合を乗じた額
※ このページは、2021年9月1日現在の法令等にもとづき記載しています。