生徒の感想

  • 多重債務の原因のほとんどが、生活費や教育費ということについて、遊びやギャンブルが一番の原因と思っていたので驚いた。
  • どんな人でも、多重債務に陥る可能性があるということが分かった。
  • どんなに言いにくくても、困ったときは家族など身近な人に相談しなければならないと思った。
  • クレジットカードを使うということは、借金をするということなので、契約書の内容をきちんと確認しないといけないと思った。
  • 将来クレジットカードを持った時には、今日知ったことを忘れずに、正しく使いたいと思った。

先生の感想

1.今回の授業について

 高校2年生の政治経済の授業の1つとして、全国銀行協会によるアクティブ・ラーニングに対応した新教材を使用した。冊子型の教材、パワーポイント、書き込み式の授業プリントを併用し、DVDの視聴やポスター作成も盛り込み、50分間という短い中で、「生徒ができる限り活発に意見を出し合う」ということに重点を置いて授業づくりを行った。授業の概要は、以下の通りである。

(1)生徒とのQ&A方式で、クレジットカードの種類や作り方・使い方、そして、多重債務のような関連トラブルについての基礎知識を共有する。
(2)DVDを視聴しながら、ストーリー中の「NGポイント」を探し、発表する。
  「多重債務を踏みとどまらせるための一言」を1人につき最低1つ考案する。
  グループに分かれてグループ内で一番良い「一言」を用いてポスターを作る。
  各グループのポスターを発表し、一番良かったものを決める。

 「情報を受け取る→受け取った情報で考える→自分の考えを言葉にしてみる→他者の意見を受け取って評価する」という流れを明確にし、スムーズにテンポよく授業を進めることを意識した。そのため、あらかじめ授業プリントとパワーポイント教材を連動させて作成し、Q&Aや感想を書くスペースを指定しておくなどの点を工夫した。

2.今回の授業を振り返って

(1)冊子型教材のパワーポイント教材
  以前に使用した教材に比べ、新教材は細かな点で使いやすくなっていた。特にパワーポイント教材は、小項目ごとにダウンロード可能になっているため、使用する部分を選んで50分間という短い授業に対応できるものを素早く作成できた。これまでは、冊子型教材があっても、パワーポイント部分は教員が独自に作成することが多かったが、その負担がかなり軽減された。

(2)DVD映像教材について
 約10分と、見やすい時間で編集されている。あらかじめ生徒に「多重債務に陥る原因になったNGポイントをできるだけ多く見つけながら視聴する」ことを指示していたため、メモを取りながら熱心に視聴していた。

(3)ポスター作成ワークシートについて
 多重債務を踏みとどまらせるために、どのような言葉であれば相手にインパクトを与えられるか。この点をよく考えてアイデアを出し合うという方法が、生徒たちにとって面白いものであったため、皆が活発に意見を出し合っていた。各自のアイデアを見てみると、相手の心に訴えかけるもの、家族や大切な人を思い出させようとするもの、刺激的な言葉で踏みとどまらせようとするものなど、様々であった。ただ単に感想や意見を出させるのではなく、特定の目的を持った「作品」をグループで協力して作るということで、皆が積極的になり、意見も多く出てきたのではないかと思われる。グループワークをさせるにあたって、こうした工夫で生徒達の活動に大きな刺激を与えられるのだと発見できた。

 各グループのポスターの中で、評価が高かったものは以下の通りである。

  •  1位 「考えよう。悲しむ人がいることを。」
     評価:自分の大切な人まで苦しめることを考えると、踏みとどまれると思う。
        家族や友人にきちんと相談しようと思わせる言葉だから。
  •  2位 「信用するな!己の返済力」
     評価:言葉に一番インパクトがある!
        ATMのところにポスターが貼られていたら、ドキッとするはず。
  •  3位 「一瞬の欲望が一生の後悔」
     評価:イラストも言葉も心に残ります。
        「欲望」という言葉が印象的で、踏みとどまれると思った。


(4)全体を振り返って
 今回の授業で良かった点は、生徒が自分の考えを言葉にし、互いに評価し合えたことである。そして、各自が短い時間の中で情報を整理して、問題解決のために何が必要かを具体的に考えることができた。
 反省点は、時間が短かったこともあり、情報を教員から一方的に提供するのみであったことである。生徒自らが情報を探し出すという体験も、今後の授業に組み込んでいきたい。