平成23年7月14日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、7月1日の理事会において、三菱東京UFJ銀行の永易頭取が会長に選任された。現時点の会長・副会長は、お手許の資料のとおりである。
 2点目は、本日の理事会において、お手許の資料のとおり、平成24年度税制改正の要望書を取りまとめた。今後、関係先に対し要望書を提出し、要望の実現に向けて働きかけてまいりたい。なお、本件に関する内容については、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。
 また、本日はこのほかに永易会長の略歴、写真および今年度の記者会見の日程をお配りしている。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 

 三菱東京UFJ銀行の永易でございます。
 7月1日の理事会において、奥前会長の後を受け、全国銀行協会の会長を務めさせていただくこととなりました。どうぞ宜しくお願いいたします。

 この度の東日本大震災においては、東北地方を中心に、広い範囲で極めて甚大な被害が生じました。その惨状には本当に胸が詰まる思いであり、先ず以って、尊い命を落とされた方々に対して、衷心よりお悔やみを申しあげるとともに、被災された方々には、心からお見舞い申しあげる。
 就任の抱負を申しあげる前に、この場を借りて、奥前会長に一言、お礼を申しあげたいと思う。
 奥前会長は、昨年4月に就任され、今年の3月で任期を全うされる予定だったが、大震災という非常事態への対応のため、3ヶ月間、続投いただいた。
 震災発生後、銀行界は、政府や日銀と一体となって、その対応に全力を挙げてきたが、そうしたなかで、奥前会長は見事なリーダーシップを発揮され、銀行界を牽引していただいた。そのご尽力に心から敬意を表したいと思う。
 現在、わが国では、被災地の早期復興に向けて、政・官・民が一体となって取り組んでいる。私も、この重要な局面で全銀協会長に就任した責任の重さを噛み締め、金融が果たすべき使命を全うすべく、全力を尽くしたいと考えている。
 今、社会のリスク・マネジメント意識の高まりとともに、これまで私たちが「是」としてきた様々な前提が揺らぎ、経済・社会構造が大きく変ろうとしている。
 この歴史的局面にあって、震災からの早期復興は、局地的な復元というだけではなく、わが国にとって、新たな飛躍に向けたスタートラインなのである。まさに、今年度は、未曾有の国難を乗り越え、新しい日本、より強い日本を創りあげていくための「起点となる年」なのだと思う。
 わが国が、新生日本の創造に向けて、「歩み」を強めるために、全銀協は「3つの柱」の実現を通して、最大限の貢献を果たしたいと考えている。
 まず、第一の柱は、「震災復興への貢献」である。今年度は、この柱に最も高いプライオリティを置いて取り組んでまいりたい。
 全銀協では、震災発生以降、被災地域における金融取引の円滑化に万全を期すべく、鋭意対応している。例えば、会員行に対して、預金通帳や届出印鑑を紛失した場合の払戻しのほか、借入の返済に関するご相談等、柔軟に対応するよう、周知徹底してきた。また、「被災者預金口座照会制度」を創設し、被災されたお客さまの口座の有無を、一括して照会できる体制を整備した。
 こうした取組みに加え、足元では「二重債務問題」が喫緊の課題となっている。銀行界では、お客さまの実情に応じて、旧債務の元本返済の猶予や、金利減免といった条件変更はもとより、新規融資における柔軟な返済条件の設定や、金利優遇等、様々なサポートを進めている。
 さらに、全銀協では、関係当局とも協力しつつ、「個人債務者に関する私的整理ガイドライン」の早期策定に向けて、研究会を立ちあげた。
 本ガイドラインは、本来、破産手続き等によって債務整理が行われる被災者に対して、法的手続の長期化や煩雑さを回避し、被災者の早期復興を支援することが、大きな目的である。
 7月8日に続き、明日、第二回目の研究会を開催するが、議論を尽くし、結論に至ることが出来れば、速やかに公表し、8月下旬の実施に向けて、鋭意準備を進めていきたいと考えている。
 ただし、未曾有の大震災に起因したこの問題は、こうした金融機関の取組みだけで解決することは難しく、お客さまの債務負担の軽減に向けた公的支援は欠かせない。そこで、先般発表した「二重債務問題の解決に向けた提言」では、公的機関による旧債務の買い取りや、国による「被災した土地」の買い上げ、新債務に対する利子補給制度の創設のほか、不動産関連税制の特例措置や、金融機関の無税償却の要件拡充といった要望を取りまとめた。
 全銀協は、これらの公的支援が政府等において講じられるよう、引続き求めていくとともに、金融仲介機能の発揮という社会的使命をしっかりと果たし、震災復興へ最大限貢献したいと考えている。
 続いて、第二の柱が「より安心・安全な金融取引環境創り」である。
 大震災を経験し、お客さまや社会のリスク・マネジメント意識が高まっている。全銀協では、銀行界の危機対応能力を高めるべく、会員各行の業務継続計画、いわゆるBCPの実効性向上に向けたサポートを進めてまいりたい。
 具体的には、今回、被災銀行をはじめ、会員各行の震災発生時の対応を分析し、BCPの課題を抽出したうえで、全銀協として「行動指針」を取りまとめ、これを会員行に還元していきたいと考えている。
 同時に、「新たなインフラ創り」も着実に進めてまいりたい。金融取引の土台を成す、より安全な決済サービスの提供に向けて、今年11月には「第六次全銀システム」の稼動を予定しているほか、来年5月には、電子記録債権を記録・流通させる「でんさいネット」を開業する。
 また、昨年10月からスタートした金融ADRについても、手続の迅速化に向けて、あっせん委員会の対応能力の増強に加え、今後は、地方開催やTV会議システムの導入にも、積極的に取り組んでまいりたい。
 さらに、金融犯罪への対策も重要である。振り込め詐欺件数は大幅に減少してきたが、最近では、震災に乗じた新たな詐欺手口が増加する等、予断を許さない。全銀協では、今年度も、「振り込め詐欺撲滅強化推進期間」を設定し、啓発イベントの開催等、警察当局と連携を密に、対応してまいりたい。
 最後に、第三の柱が「新たな法制度の枠組み創り」である。
 折りしも、わが国が新たな飛躍に向けたスタートラインに立った今、経済・金融活動の前提となる内外の法制度が大きく変ろうとしている。
 特に今年度は、バーゼルIIIやG-SIFIsを始め、グローバルベースでの金融規制・監督体制の基本的な枠組みが決まる重要な局面である。さらに、ドッド・フランク法やデリバティブ規制等、諸外国における金融規制強化も進められている。
 また、国際会計基準IFRSの見直しに加え、預金・貸出を始めとする銀行業務やガバナンスへの影響が 大きな「民法」・「会社法」についても、抜本的な見直しに向けた議論が始まっている。
 全銀協としては、こうした新たな法制度の枠組みが、金融仲介機能の一段の発揮、ひいては日本経済の活性化に資するものとなるよう、その枠組み創りに積極的に参画していきたいと考えている。
 新しい日本、より強い日本を創りあげていくための「起点」となる局面で、重責をお引受けすることになった。銀行界は、この歴史的な局面で、自らの役割、社会的使命を改めて強く認識し、新生日本の創造に向けて、最大限の貢献を果たさなければならない。
 私も、関係各位のご協力を仰ぎつつ、全力で取り組んでまいりたい。どうぞよろしくお願い申しあげる。


(問)
 さきほどの抱負のなかにもあったが、震災後の二重ローン問題について、総論的になるかもしれないが、銀行界としてどう対応していくのか。その基本的なスタンス、考え方、会長が今後重要なポイントとなるようなものは何か。このあたりをお聞かせ願いたい。
(答)
 二重ローン問題は、政府・金融機関・債務者(顧客)が、痛みを分かち合い、一体となって解決すべき問題と考えている。
 この解決のため、先ほど述べた個人版の私的整理ガイドラインの作成に向けた作業を行っている最中である。
 一方で、与野党3党において、債権の買取機構の議論を深めていただいているところである。個人でローンを有する方々には、私的整理ガイドラインが直接的な効果があり、中小企業の方々には買取機構が大きい影響を与えると思う。
 かかる対応を今、早急に進めているところであるが、これらの対応だけで、二重ローン問題が全て解決するということではない。これに加えて、利子補給制度や、新たな融資の枠組みなど、いろいろな選択肢を、被災者、ないしは、被災企業が選択できるようなメニューをパッケージで作りあげる必要があろうと思っている。
 現段階で早急に取り組んでいるのは今申しあげた最初の2つであるが、最終的には予算措置が必要となる施策もあるため、まず対応できるものから努力していくということが非常に大事であると考えている次第である。


(問)
 震災後の金融仲介機能は、復旧・復興にあたって、極めて大事な要素になってくるかと思うが、例えば中小企業貸出のデータを見てみると、必ずしも貸出が伸びている状況にない。今後、復旧・復興を金融面から後押ししていくなかで、銀行界としてはどのようにリスクテイクしていくか、どのように資金需要に応えていくか。そのあたりのお考えを聞かせてほしい。
(答)
 円滑な金融機能、資金供給は、銀行に課せられた最大の使命である。これはいつの時代も変わらない。ただ、こういう緊急事態においては、特にその役割、社会的使命がさらに大きくなると理解している。
 現に大震災発生直後の3月には、中小企業だけでなく、大企業も含めて非常に大きな資金需要が発生した。その際は、どの金融機関も積極的に対応したと理解している。ただ、その後、4月、5月の動きを見ていると、ご指摘のとおり、現実にはやや減少しているという傾向が読み取れると思う。
 3月に資金需要が増えた原因は、サプライチェーンの寸断から生産がなかなか軌道に乗るまいという見通しが各企業にあった、すなわち、秋口までは生産水準が相当低い状態で進むという前提で各企業が資金繰り計画を立てていたということだと思う。
 一方、4月以降の動きだが、個別行の話になるが、6月までに3兆円程度の資金需要があるという報告を聞いていたが、実際に貸出として実行されたのは、10分の1程度ではなかったかと感じている。
 これは、各企業が生産活動を必死に回復された結果、赤字に基づく資金需要、言うならば、つなぎ資金が非常に少なかったためと理解している。
 今後、少なくとも秋口以降は、復旧・復興に資する、本当の意味の投資がでてくると思うし、売上増加による運転資金や、これまで抑えていた設備投資など、前向きの資金需要が増加するのではないかと期待している。もちろん、そうした資金需要に対しては、積極的に応じていく覚悟である。


(問)
 東京電力の賠償を支援するための法案が審議入りしているが、この法案の成立が仮に遅れた場合、例えば東京電力の賠償債務が膨大になって債務超過に陥るのではないかというおそれも指摘されている。貸出というかたちで東京電力に関与している銀行界としては、この賠償を支援する法案は遅くともいつ頃までに成立すべきかとお考えか。
(答)
 銀行界としても原子力損害賠償支援機構法案については、極力早く成立していただきたいと思っている。先日も国会で参考人として同種の意見を述べてきたが、原発問題発生に伴う一連の問題の解決で重要なのは3点ある。
 一つは、福島原発の安定化というのが非常に大事。これは、まだ沈静化していないが、東京電力を主体とした皆さまが必死に作業しており、これを支援するというのが一つにある。
 また、何と言っても被災者への円滑な補償であり、これが極力早く実行されなければならない。こちらのほうが社会に与える影響、その重さとしては大きいかもしれない。それともう一つは、電力の安定供給である。
 これらを解決するための法律が、原子力損害賠償支援機構法案だと理解しているし、金融界からみても、いろいろな意見はあると思うが、非常に実効性の高い案であると評価している。是非、それが早く成立して欲しいという気持ちが強い。
 一方、今のご質問に沿って言うと、別途文部省の傘下にある紛争審査会のほうで被災者に対する賠償額のガイドラインの中間報告が7月末をめどに作業されている。今まで損害額の大雑把な額はいろいろと議論されていたが、その中間報告により、損害賠償額がどの程度か見えてくる可能性がある。そうすると一方で、その損害賠償に対する支援法案がないと、東京電力が、損害賠償に対する引当金を積んだ瞬間に債務超過になることがあり得るということである。
 したがって、スピード感としては、少なくとも9月中には、是非実現しておいていただきたいと強く思っている次第。そこで実現しないと、東京電力の破綻リスク、それに連鎖する電力業界全体の資金繰りリスク、さらには、それを通じて株式相場を含めたマーケットへのリスクといったようにドミノ式にリスクが波及していくおそれがある。
 そうなると、復興という掛け声で秋口以降、日本経済全体が復活していくであろうという希望のもと、かつそれに向けて日本全国が動いていく方向感に対し、水を差す影響が出てくることを懸念している。
 結論を申しあげると、極力早く成立してもらいたい。少なくとも9月中には実現しておいてほしいと思っている次第である。


(問)
 政治が混迷、混乱しているが、どのようにみているか。
(答)
 政治について、ここでコメントするのはいかがかと思うが、少なくとも報道を聞く限りでは、いろいろな意見が単発で出てきており、トータルの動きになるスピードが減殺されている。一つの方向に向かって全体がまとまっていっている感じがしない。これ以上、コメントするのは差し控えさせていただく。


(問)
 1点目はバーゼルIIIの質問である。バーゼルIIIの概要が固まってきているが、これが邦銀の業務に与える影響について、欧米の金融機関と比べてどうなのか教えていただきたい。2点目は、今朝、米国のムーディーズが、米国債を最上級から格下げする方向で検討することを発表したが、この方向に進んだときに、金融市場に与える影響、そして、金融機関に与える影響について、懸念されている点も含めて教えていただきたい。
(答)
 バーゼルIIIについては、金融当局が、世界金融危機を二度と起こさない規制を、グローバルベースで作りたいということで、足掛け3年議論し、収斂しつつあるものと認識している。特にG-SIFIs向けの規制は中心的なテーマであろう。今回の規制は、自己トレーディング等のハイリスク・ハイリターン型業務を規制したいというのがベースにある。したがって、バーゼルIII上、7%という自己資本比率規制が一様にあるわけだが、自己勘定トレーディング等のハイリスク・ハイリターン型業務を大々的にやっていた金融機関に対しては、非常に厳しい水準で規制をしたいということだ。1~2.5%のサーチャージという議論が出てきているが、そうしたハイリスク・ハイリターン型業務をもともと殆どやっていない我々を規制に巻き込むのはいかがなものか、というのが最初の議論だったが、現在は、グローバルベースで合意に至っているものには対応していこうということである。もちろん1~2.5%程度のサーチャージが負荷されるというのは、我々にとって努力が必要ではあるが、他のグローバルなメジャープレーヤーの影響度に比べれば、負担が軽いと認識している。加えて、レバレッジ比率や流動性比率規制等、複数の規制がパッケージになっており、こうした条件の下、グローバルプレイヤーが従来のビジネスモデルを続けるのは、なかなか苦しいと思う。したがって、彼らの影響のほうが大きく、今後、日本型と欧米型のビジネスモデルが似てくる現象がみられるのではないか。
 米国債のご質問については、確かにそういう報道があったということは認識している。直接的には、日本でいう特例公債法案と類似したケースであり、議会と政府が折り合っていないため、デフォルトリスクが高まった等と言われているようだ。しかし、格下げがあったからといって、直ちに大きな影響が出るとは思っていない。格下げはヨーロッパでも、日本でもあったわけで、トリプルAだったのが、多少リスクがあると言われても、大きな影響が出るとは思えない。ただし、格付機関の眼が、財政規律という中期的な視点に転じてきているということも事実である。日本もこれを他山の石として、財政規律を正す方向感をきちんと作りあげていかないといけない。


(問)
 2点質問がある。1点目は、円高についてである。昨日、今日と78円台をつけているが、円高が与える日本経済への影響、復興に向けて進んでいるときに、再び震災直後のような円高になっている影響についてどのように考えるか。
(答)
 円高は、常に大きな影響を日本経済に与えてきた。逆に言えば日本経済というのは、円高には非常に弱い体質であるということである。産業界の立場から言えば、円高が一番きつい。さらに、電力問題のほか、他国に比べて動きが非常に遅い自由貿易協定等、いろいろな面で産業界としてはフラストレーションのたまる状況かなという気がしている。今回の円高の直接的な原因は、欧州のソブリンリスク問題に再び少し煙が立っているのではないかということと、バーナンキ議長が追加金融緩和の可能性を完全には否定しないトーンの発言をされたため、ベクトルが円高の方向に向かったと理解している。いずれにしても、こういう円高状態が続けば、日本経済は非常に苦しいことになることは確かである。


(問)
 2点目は、個人向けの私的整理ガイドラインについてであるが、家を流されて借金も返せなくて収入もないという自己破産せざるを得ない人に対して債権放棄をするということについては理解できるが、例えば家は流されたが収入はある人については、債権放棄をするかどうかについては公平性の観点から難しいと思うが、会長としてはどのように考えているか。
(答)
 従来から申しあげているのでご存知かもしれないが、重要なポイントは公平性の観点。公平性の確保のためには、客観的な第三者機関が必要であるということだと思う。この第三者機関が、いろいろな要素を加味したうえで、妥当性の判断を行うことになる。例えば、前者のような、家を流されて他に資産も無く、収入もないような方々の場合は、計算の仕方にもよるが、全免ということもありうると思う。収入のある方については、収入を勘案して、ガイドラインに添った弁済計画を作成し、弁済を行うという結論が出ることもある。国と金融機関と被災者の方が痛みを分かち合うという観点にもとづき、いろいろなケースごとに、第三者機関が妥当性を判断し、そのうえで債務整理を行うというかたちになると思っている。


(問)
 国際会計基準IFRSの議論について会長にお伺いしたい。先月から金融庁の審議会で、全上場企業のIFRS導入を先送りする方針で審議が進んでいる。一方で、IFRS導入を先送りすることで、日本企業のグローバル化が遅れるのではないか、また、国際的な競争力が失われるのではないか、という指摘もあると思うが、全銀協としてのご意見、ご見解はどうか。
(答)
 そういう議論がなされていることは事実であるし、大臣がそういう発言をされたのも事実であるが、ポイントは「強制適用を2015年3月に実施するということを、2012年までに決める」という枠組みの中で、強制適用の時期だけは少し遅らせた方がいいのではないか、ということである。こういった動きは、アメリカでも出てきている。全銀協の立場というより、その適用を受ける一企業の立場から申せば、正直言って、2015年というのはきつい。何がきついかと言うと、コンピュータシステムを全て変えないといけない。2年位遅らせるということは、ありがたいことと思っている。
 基本的な考え方に対して大々的に異議を唱えているわけではないし、アメリカも同様である。強制適用の時期を少し遅らせてみんなが対応できるようにしようというのが本質である。したがって、日本がものすごく遅れているというような評価を受ける話ではないと理解している。


(問)
 改正貸金業法の施行から1年余りが経過し、銀行のカードローンに対して、総量規制で飽和する資金需要の受け皿となることが期待されている一方、政界の一部では法律見直しの動きも出ている。ここ1年余りの動きを見てのお考えを伺えればと思う。
(答)
 改正貸金業法については、当初から様々な議論があったが、この1年の動きを振り返ると、業界大手が大打撃を受けて実質的な倒産に至ったり、相当程度の貸金業者が廃業するという状況はあったものの、率直に申しあげると、私どもが思っていたよりは非常に平穏に推移しており、その目的としていた総量規制の問題では、大きな混乱は起こっていないものと理解している。事業を継続している貸金業者は、利息制限法の範囲内で事業を継続できる体制を着々と整えられている。これに対応できなかった業者が廃業ないし倒産に至ったということだと考えている。
 一方で、もう一つの課題として過払い利息返還請求の問題がある。この問題については、当初、影響範囲の特定が非常に難しかったが、法律施行以降、請求件数はコンスタントに減ってきていた。業界大手の倒産時に一時的に急増したことで、この3月期は各社とも、引き当ての追加を余儀なくされるなど、苦しい思いをされたと思うが、その後の動きを見ると、従来の減少トレンドに戻っている。したがって、これ以上業者の淘汰が進むことにはならないと思っている。
 今後は、銀行としても積極的に消費者金融業務に取り組む必要がある。個別行の状況を申しあげると、グループ会社であるアコムのノウハウを活用しながら、銀行の消費性ローンとして「バンクイック」という商品を強力に拡販している。引き続き浸透を図りたいと考えている次第である。


(問)
 第1四半期の個別行の決算が今月末ということで、具体的な数字とかはもちろんお伺いできないが、全体的な収益環境という面で、今年第1四半期が終わった4-6月貸出金、市場関連、どのように推移したとご覧になっているか。
(答)
 これは決算発表の前なので、個別行としては言えないし、全体としては分からない、というのが本当のところだと思う。ただ一点だけ申しあげるとすると、当初は、全体に震災影響を受けて相当程度収益に打撃を受けるのではないかと懸念したが、少なくともそれほどの影響はなかったのではないかというのは共通していると思う。ただこれも、被災地の銀行の状況が本当の意味で分かっているわけではないので、例えばメガバンクとか被災地以外の銀行に関しては、そのようなことが言えるのではないか、ということだと思う。


(問)
 為替の関係で、これだけ急激な円高が進行していて、政府の為替介入が必要だという声もあるかと思うが、それに対してのお考えを伺いたい。
(答)
 政府としてもお考えはあると思うが、これはグローバル情勢も含めての話になるので、特にコメントは差し控えさせていただく。


(問)
 欧州のソブリン危機が邦銀に与える影響について、今、どのようにご覧になっているか。
(答)
 欧州ソブリン危機が邦銀に与える影響には直接的影響と間接的影響の2種類あるが、直接的な影響はあまりないと思う。私ども個別行のポートフォリオを考えてみても、それほどの影響はないと認識している。一方、間接的な影響はさまざま考えられ、例えば、円高の一つの要因となっていることもその一つ。これは、金融業界だけではなく、全産業に対して大きな影響を及ぼしていくものと思われる。


(問)
 個人向けの私的整理ガイドラインに関してだが、やはりこれはあくまでも今回の震災の被災者の方に限ったことになるのか。それと、今後大きな災害が起きた時は、やはりこれがベースとなってまた使われていくことがあるのか。また、今回だけということであれば、どう線引きができるのか。いまひとつ分からない部分があるのでご教授いただきたい。
(答)
 本ガイドラインは、今回の震災の(被災者の)方々のみを対象とするという考え方で創る。ただ、ご質問のとおり、今後、万が一にも同様の規模の震災が起きたときには、本ガイドラインが参考にされることもあるかもしれない。


(問)
 家を失ったが収入があるという方、先ほど会長がおっしゃったように、第三者機関で決めるかと思うが、おそらくそういう方というのが今回非常に多く、この方々をいかに救済できるかというところが、課題だと思うが、この層の方々は本来、通常の法的整理になるような対象ではない。
 かかる方々は、今回のスキームで、早期に対応できるのか。
(答)
 冒頭に申しあげたとおり、このガイドラインだけで全てをカバーできるとは全く思っていない。本ガイドラインに限れば、通常法的破綻をされる方がスピード感を持って、債務整理できるようにするのが本旨。
 今後、そのゾーンを広げるのか議論になる可能性があるが、私的整理のガイドラインである以上は限界があり、それを超えたニーズに対してどのような対応があり得るかについては、別の議論が必要だと考えている。
 繰り返しになるが、私的整理ガイドラインや買取機構だけで、全ての問題を解決できるとは思っていない。
 いろいろなかたちのパッケージを作りあげる、これが重要と考えている。


(問)
 昨日、菅総理が出された脱原発方針というのは、日本の産業界にとってどういう影響を与えると考えているか。
(答)
 これは、日本のエネルギー政策そのものを考えることであり、相当な時間をかけ、本腰を入れて対応すべきことと思う。
 昨日の総理のご発言は新聞報道等で聞いているだけであるが、各論への言及はないことから、ご質問の点については、コメントしようがないと思う。
 総理のご発言は、考え方を示されたものだということだろう。

以上