平成23年12月15日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会において、来年度の次期会長を、みずほフィナンシャルグループの佐藤社長とすることを内定した。また、来年度の副会長も、本日、お手許の資料のとおり内定した。
 次期会長、副会長いずれも、来年の理事会での正式な選定手続きを経て、4月1日付で就任予定である。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 今年最後の定例会見ということで、1年の振り返りと来年の課題についてお伺いします。国内では東日本大震災が発生して、海外では欧州のソブリン問題が深刻化するなど、今年は内外ともに大変な1年でありました。この1年間を振り返っての感想と銀行業界における来年の課題についてお聞かせいただきたい。
(答)
 本年は、本当にいろいろなことが起きた年であった。内外経済とも未曾有の困難というのか、未曾有の危機と言い直しても良いと思うが、これに直面し、政官民が必死でそれを克服しよう、ないしは持続的成長に向けて頑張ろうとした年であったと言えると思う。ただ、各々はまだ道半ばであり、「生みの苦しみ」を本当に味わった、ないしは、今まさに味わいつつあるのだと思う。
 3月11日の東日本大震災は千年に1度の大災害であろうし、それと原発事故がダブルで起こったというのは、それこそ未曾有という言葉に相応しい、非常に困難な状態に陥ったということだと思う。これに政官民挙げて懸命に被災地の復興に向けて努力を続けてきたわけだが、その途中に、色々な不測の事態、すなわち、日本国内では、電力供給の制限があって産業界が非常に困っていたところに急激な円高、これまでの記録を塗り替える円高が襲ってきた。そのうえ、欧州ソブリン問題が重なってきて、海外景気が減速、ないし減速懸念が強まってきた。こういういくつもの事態が起こり、非常に試練の時を迎えている。懸命にそれらへの対応をしている状態と言えるのではないかと思う。
 一方、海外の典型的な例が、欧州のソブリン問題である。これは去年からリスクがあるということは常に言われてきたが、そのリスクが顕在化し、かつそれがソブリン問題から金融危機に転化し、これを放っておくと経済危機になるというスパイラル的な展開になっている。もちろん、当事者である欧州も首脳会議を重ねる等、努力され、会議を開催するごとにそれ相応の対応を出されている。例えば、先般の12月8、9日の首脳会議においても、いろいろな手立てが打ち出された。典型的なのは、財政の協定を締結しようというもの。これは、従来と比べると、非常に進んだ方策を打たれたということになるのだが、マーケットからは、やはり、「その方向感はよいが、実効性はどうなのか」ということを、各施策を出すたびに問われている。それが繰り返されており、今、まさに正念場だという印象を受ける次第である。
 このように、内外経済とも、未曾有という言葉を使うほどの危機に直面した1年だったと思う。そういうなか、私は7月1日に全銀協会長に就任し、銀行界として取り組む「3つの柱」というのを打ち出したが、とりわけ、1つ目の柱である「震災復興への貢献」を最重要課題として、必死に取り組んできた。2つ目の柱、3つ目の柱については、長くなるので省略するが、やはり被災地における個人・法人の二重ローン問題が喫緊の課題であったことから、ご存知のとおり、8月に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」をスタートした。法人の方は、与野党の協議に時間がかかったが、政府与党案の産業復興機構の方はすでに発足し、岩手県での相談件数もかなり出てきている。かつ、この11月に法制化された東日本大震災事業者再生支援機構についても、既に設立準備室が立ちあがっている。これら2本立てとはなるが、我々金融界としても、岩手県等の産業復興相談センターと新たな機構の設立準備室の両方に、相当程度の人員を派遣している。今後、これらの機構が本格的に動き出すことで、銀行界からの協力が実を結んでくると思う。また、資金供給面では、信用保証協会を始めとするいろいろな公的支援もあるが、我々の会員各行でも、特に中小企業に対し、円滑な金融仲介という観点で精一杯の努力をしていると思う。現実に、地銀・第二地銀の貸出残高はずっと前年度プラスになっているし、全銀ベースでも9月からはプラスになり、そのプラス幅も9月より10月、10月より11月と増えている。やはり各行がそういう大きい方向感のもと努力をしているというのがただ今現在の状況ではないかと総括する次第である。
 来年の課題という質問については、挙げるときりがないが、一言だけ申しあげると、経済についても、金融についても、今、精一杯の努力をしている現在進行形の状態であり、やはり来年も、引き続きこれらに懸命に取り組み、復興に向け政官民を挙げて頑張っていくことが、少なくとも前半戦の最大のテーマであると思うし、金融界としては、何と言っても復興に対する円滑な金融仲介機能を通じた貢献というのを一番の課題として取り組んでいくべきであろうと強く思っている次第である。


(問)
 金融の円滑化について伺いたい。12月9日に「中小企業等の金融の円滑化に関する意見交換会」が開かれた。来年3月末に期限を迎える円滑化法の再延長の議論も含め、全銀協会長として今後どのような手を講じていくべきなのか伺いたい。
(答)
 12月9日に開催された意見交換会は、金融円滑化法についての意見交換もあったが、年末の資金繰りの問題が主題である。年度末にも再度実施される予定であり、定例会合とお考えいただいて結構である。
 先ほどの回答と重なるが、間接金融機関である銀行にとって、決済機能と並んで重要なのは金融の円滑化であり、銀行の本来的な使命であると思っている。円滑化法は時限立法であり、施行後約2年経つわけであるが、法の有無に関わらず、金融界、銀行界は、金融の円滑化に全力で対応しており、今後も同様に対応していくことをお約束できると思う。
 2年前の円滑化法の制定経緯を考えてみると、リーマンショックが直接的要因ではあるが、それ以前に、本質的にはバブル崩壊以降、日本の金融界が抱えていた不良債権問題がある。金融界が問題解決のため、不良債権の削減に舵を切った結果、「金融の円滑化は本来的な使命である」と言いながらも、不良債権処理のプライオリティが高い状態が数年間続いてしまっていた。そこにリーマンショックが起こり、経済状況が悪化する中、中小企業の資金繰りを守るため法律を制定し、努力目標ではあるが、ある面では法律に基づく義務として、中小企業に対する金融の円滑化を行っていくという発想であったと理解している。
 法施行後の2年間、各銀行とも必死に円滑化に取り組んできたと思うし、今の不良債権の絶対額・不良債権処理額を考えれば、法律延長の可否に対して、両方の意見があって良いタイミングだと思っている。
 被災地域を別にすれば、金融の円滑化に対する考え方はもう十分に浸透しているという意見や、「一定の条件を満たせば条件緩和債権には該当しない」というマニュアルがあるため、潜在的な不良債権が溜まってきているのではないかという意見もある。また、金融においては、債権者と債務者の間にはやはり一定の緊張感がないといけないのではないかという本質的な意見もある。このような考え方を踏まえ、円滑化法は十分に役割を果たしたので、時限立法でもあり、延長せずに終わっても良いという意見は当然あると思う。
 一方、被災地域では今でも返済条件変更の申出は増えているし、被災地域以外でも中小企業の資金繰りは引き続き厳しい。更に欧州債務問題の発生で世界経済の動向も不透明で、景気の先行きも見通せないという状況にある。こういう時期に法律を廃止するという考えが果たして良いのかという意見もあろうかと思う。
 したがって、法律の問題なので、トータルの政策判断として、当局を始め、政治家の先生方が良く議論をして、決められるべきことだと思う。
 今後どのような手を講じていくべきかというご質問については、法律を延長する場合と延長しない場合の両方のケースが考えられるが、いずれも裏腹の関係になっているといえる。延長する場合、モラルハザード問題にどう対処していくべきかという方策が必要かもしれない。一方、延長しない場合、被災地域を始めとして、どのような追加補完策を打つのかなど、必要なことは沢山あると思っている。
 繰り返しになるが、法の有無に関わらず金融界としては全力を挙げて金融の円滑化に対応する。全銀協としても11月17日に各行で申し合わせを行ったところである。


(問)
 オリンパス問題では、6日に第三者委員会の調査報告があり、14日に決算提出もあった。かかる状況を踏まえ、今後どのような支援方針で臨んでいくか。
(答)
 6日の第三者委員会の報告、昨日の決算提出など、いろいろな発表があったが、準主力行としての支援方針を変える材料はなかったとの認識であり、少なくとも現時点では方針は不変。
 第三者委員会の報告は、委員の皆さんのご努力の結果、もっともな内容であり、また前向きな提言も含まれた内容だったと思う。報告では、極めて多額の損失の先送り、その損失解消のためのM&Aを活用した手法、経営トップの関与・処理などが明らかにされ、どれも非常に遺憾な状態であるということは間違いない。他方、報告では、非常に懸念をしていた反社会的勢力との関係や、損失先送りの類似取引はないという結果であり、また、当社においても、経営体制の刷新や、経営改革委員会、新旧の取締役・監査役の責任調査委員会の設置などの対応策が公表されており、こういった対応を整斉と実現していくことが肝要だと考える。
 昨日公表された決算については、確かにいろいろな反応があったと思うが、冒頭申しあげた結論については、どの時点でも債務超過ではなかったというのは、非常に大きい要素である。損益に関しては、当期利益は300億円超の赤字と、非常に大きく見えるが、その要因は、映像事業の減損の前倒し対応や、繰延税金資産を取り崩しといった内容であり、経常利益で100億円程度、営業利益で200億円程度を計上しており、環境は悪いながらも、相応の期間利益を確保している。また、バランスシートに関しては、相当に純資産が減少したことは実態としてあるが、すぐさま債務超過とはならない水準を確保している。
 以上から現時点では支援方針は変わらないが、引き続き、何回も山があると認識をしている。まずは、昨日の決算提出で、提出遅延による上場廃止の問題はクリアしたが、東証による虚偽記載の重大性の判断はこれからであり、SESCや警察関係といった関連当局がどのような結論を出していかれるのかといった点も注視していく必要がある。
 また、経営再建に向けた実効性の観点からは、今回設置される委員会が、今後開催される予定の株主総会に向け、足許の懸案事項を含め確りと対応しつつ、どのような次の体制の成案をつくっていくかということがある。
 これらの事項はどれをとっても当社にとっては相当の難関ではあるが、現在の経営陣が、引き続き懸命に対処され、これだけの技術力のある企業には、希望としては、上場を維持し、次の展開に向けて歩んで欲しいと思う。
 引き続き、当社には頑張ってもらいたい。


(問)
 本日のオリンパスの記者会見において、高山社長が「ウッドフォード元社長との連携も選択肢の一つだ」と述べたということだが、どう考えるか。また、今後、経営陣に戻った場合、支援姿勢は変わらないか。
(答)
 本日の会見にてそのようなコメントがあったかどうかは、存じあげていないが、今後の当社は、経営改革委員会が主体となって、経営陣とともに、様々な対応を考えていくものと認識しており、ウッドフォード氏との関係もそういった事柄の中の一つではないかと思う。
 高山社長自身は、当社再建にあたっては、色々なアライアンスも含めて、あらゆる選択肢を排除しないということであり、詳細はよく存じあげないが、そういう趣旨での発言ではないかと思う。
 いずれにせよ、経営改革委員会において、今後よく検討されたうえで結論を出されるべきものと考えており、金融機関から、何か云々申しあげるような話ではないと考える。


(問)
 アメリカ議会で現在議論されているイラン制裁関連法案について、仮に可決された場合、イラン中央銀行と取引のある外国金融機関は、アメリカの金融機関と取引が出来なくなってしまうが、法案の中には大統領の裁量がかなり盛り込まれており、実際の発動までにはクッションがある様子。仮に、実際に発動された場合、イラン中央銀行と取引ができないことになると、イランから原油の輸入が10%程度あることを考慮すると、日本経済全体への影響もかなり懸念されると思うが、ご対応等、いかがお考えか。
(答)
 日本経済に大きな影響を与える話と理解している。イランに対する制裁はこれまで何度も行われているが、日本の原油輸入の10%位はイランからであり、歴史的にも日本とイランとの関係は良好であった。
 ただ、アメリカのイランに対する方針は、数年前から年毎に厳しくなってきており、次第に決済方法にも規制を掛けてくるようになったため、現在ではすでにイランの主な市中銀行との間の資金決済は禁止されている状況。米国の規制が厳しくなるたびに、日本の事情を説明し、制裁に協力はするが、最低限ここまでは取引させて欲しいといった申し入れを行ってきた。
 今回は、唯一残っていた中央銀行との取引についても、それをやったときには、アメリカの銀行との取引は出来なくなるという、実質的にはどちらをとるのか、ということを判断せざるを得ない内容の法律だと理解している。
 本件については影響も大きいので、当局に対し我々も意見を申しあげていくが、例外措置をどの程度認めてもらえるか。イランの主な原油輸出先は中国・日本・イタリア・韓国あたり。日本にとって10%を占めるイランからの原油輸入を完全に止めてしまうことは、サウジアラビア等からの輸入で代替出来ないことはないだろうという議論もあるものの、やはりかなりの量になるので、一度にとめてしまうと、供給の安定性や価格等、いろいろな問題から日本の経済への悪影響は不可避であろうと思う。
 したがって、当局に前面に立っていただき、例外措置をどの程度認めてもらえるか、という外交交渉が今後のテーマになってくると思う。当局には頑張っていただきたいと考えている。


(問)
 欧州危機に関して、先程、欧州首脳会議での財政統合に向けた動きについて、方向性は示しているものの、実効性が足りないというお話であった。今、ユーロ安が続いていることに加え、格付会社等が、優良であると言われていたドイツやフランス、欧州金融安定化基金(EFSF)の格下げも検討する状況だが、こうした動きが、最悪のシナリオとして、マーケットへどのような影響を及ぼすと考えているか。さらにその場合、日本国債への影響がどの程度あると考えているのか、お聞かせいただきたい。
(答)
 結論から言うと、日本国債への大きな影響はないと考えている。ただし、前半の話については、格付機関による動きが、マーケットへ大きな影響を及ぼす例はこれまで多々あった。流動性が逼迫する事態にはならなくとも、資金調達コストが上昇する等の影響はあった。したがって、格付が一斉に下がることとなれば、程度は不明だが、欧州の状態が今よりも悪化方向に動くことは間違いないだろう。ただし、今まで何回もそのような難局を迎える度に、財務大臣や首脳、中央銀行等が協力しながら、マーケットへの悪影響を最小限に抑えようとする努力がみられた。直近も然りである。やはり影響を最小化するよう半歩でも一歩でも前に出て、マーケットへメッセージを送る努力を継続することは、今後も可能であるし、期待している次第である。


(問)
 震災関連に関して、復興庁のようなものが、震災発生から1年経ってできあがるようだが、それができるタイミングで、金融制度を充実させるべき点がないか、あるいは金融のスキームをもっと活かすために、規制をさらに緩和すべき点はないか、という観点からの議論が必要だと思っているが、どのようにお考えか。メガバンクの再編が終わった結果、間接金融・商業銀行だけになってしまったこの国に、ソーシャルファイナンスのようなものが根付いていないなかで、バーゼルIIIが適用され長期の資金が出しにくくなる環境も想定されるなかで、5年、10年かかる復興に対して、金融制度のあるべき姿を考える必要はないのか、お聞かせいただきたい。
(答)
 おっしゃるとおりの面はあると思う。先ほど、金融円滑化法を止めるときには、被災地域などへの補完策といった配慮が必要である、と申しあげたのも、そういう流れのなかの話である。こういう異常事態のときは、金融以外にもいろいろな選択肢があると思うが、金融のなかでも公的支援等も含めて、いろいろな選択肢を持って対応していかないと、本当の意味での実効性はなかなかあがらないと思う。これから、そういう議論が出てくるのではないかと思っている。


(問)
 国際金融取引の問題に関して、混乱が深まっているなか、ユーロ建て取引やドル建て取引の基盤が揺らいでいる。ドル建て資産が売却されている等、様々な事象が発生しているなかで、邦銀として円建て取引をもっと拡大していく点につき検討の余地があるのか。難しいことはよく理解しているが、来年に向けて検討することはないのか。
(答)
 検討の余地はほとんどないと考えている。何故かと言うと、金融機関の立場からは、お客さまがどの通貨を使いたいかというご意向を踏まえることが原点であるからである。円建て輸出の形態も考えられるが、これは日本の会社が、取引先との力関係において相対的に強い場合に、初めて可能となる。実際にはある時点から、円建て取引が増えない状況となっているが、これはやはり、商取引の世界においては、お客さまが最も使い勝手の良い通貨を選択されるためであり、簡単に増えるものではない。
 また、私ども日本の銀行としては、円建ての預金を潤沢に保有している一方、ドルについては預金の方が少ないため、不足分をマーケットから調達している状況であるものの、ドルの資金繰りで非常に困っている状態ではない。欧州系銀行にとってはドルの資金調達がかなり困難な状況もあるようだが、11月30日に決定された6中央銀行による協調対応策もある。従来からその仕組み自体は我々も使用可能であったが、我々はこれに依存しなければならない状態ではないから現実には使っていない。
 以上のようなことを踏まえると、円建て取引を増やしていくことは、なかなか難しいと思う。


(問)
 消費税の話であるが、現在政治の場で10年代半ばまでに10%程度への引き上げを目指して議論しているが、まとめる素案が新聞的に言うと玉虫色になるであろうと言われている。銀行界の代表として、段階的に引き上げるとすれば例えばいつぐらいからが妥当なのか、引き上げ幅等思うことがあれば教えて欲しい。
(答)
 この問題について、「私はこう思う」と言えるほど自信はない。大きな方向感としては、社会保障と税の一体改革の中で議論されているテーマであるし、今の状況が続けばどうなるのかは皆が分かっていることであるから、そういう意味で消費税増税の方向感は相当程度納得性があるのではないか。国民に聞いても増税は反対であるが、この問題に関しては止むを得ないと思っている人がやはり相当程度いるのではないか。欧州のソブリンリスクの問題というわけではないが、財政の問題も考えればロングレンジで見るとこのあたりで手を打たないと遅きに失するため、今、議論を始めないといけないということかと思う。ただし、引き上げの幅とそのタイミングについては、やはりその時々の経済状況等、いろいろな関数があるため、一概には言えない、というのがご質問への回答であると思う。ある面で玉虫色の回答になってしまったが、そのような問題であるから、今まで何回もテーマに上がりながら実現に至らなかったのではないか。今の内閣はどうしてもやろうという方向感では強い意志が感じられるため、是非頑張っていただきたいと思う次第である。


(問)
 東京電力に関しては、今後、損害賠償のほか廃炉や除染で莫大な資金が必要とされることが予想される。かかる中、民間金融機関としても、今後どういう支援をしていくか考えることになるかと思うが、一方で公的資金の注入や国有化といった報道もある。その場合には、議論の前提が変わってくることになると思うが、現状はどういう状況なのか教えて欲しい。
(答)
 いろいろな記事が出ていることは存じあげているが、ポイントは事業計画であると考えている。現状、来年3月までは、「緊急特別事業計画」となっているが、本来的には、「総合特別事業計画」が必須であり、この計画を3月末までに策定すべく、機構と東電の事務局が検討をしていくという状況にあると認識している。
 事業計画の策定にあたっては、ご質問の項目は、現時点では全て不確定要素と認識している。現状では、電力料金や原発再稼動、除染、廃炉などがどうなるかは見通せない状況にあり、このままでは計画の策定は難しく、これらの大枠が決まってからはじめて、漸く損益や資金繰りがどうなるかが見えてきて、計画の検討ができるようになる。
 そのため、今後この3ヶ月間で、かかる大きな要素を決めたうえで、早急に成案にしていかないといけない。本来的には、最初の賠償金支払の段階で、総合特別事業計画が必要であったものを、緊急特別事業計画として、5~6ヶ月のアローワンスを確保したのはそういった背景があると認識している。
 したがって、現状は機構と東電の事務局での検討段階と思われるが、これまで申しあげたような不確定要素があり、我々が主体的に何かを申しあげる段階にはない。かかる不確定要素をはじめ、議論を早く詰めてもらいたいというのが、現在の状況である。


(問)
 オリンパスの問題に関し、取引銀行の責任についてどう考えているか。銀行に明確に責任があるというのは酷だという意見もある一方、責任がないかと言うと、銀行のチェックというのはそんなに杜撰で良いのか、あるいは広い意味での社会的責任はどうなっているのかという考え方もあるが、どのように認識しているか。
(答)
 貸し手責任に関しては、広い概念と狭い概念の双方のケースで言われるが、非常に広い概念で、例えば、社会的責任や道義的責任という話になれば、取引銀行も関係ないとは言えないかもしれない。
 ただし、通常の貸し手責任という場合、昔のメイン銀行と企業の間の何でも報告し、相談するという関係であれば、相当程度そのようなことはあったかもしれないが、少なくともここ20年ぐらいはそうではない。直接金融による資金調達の進展により、企業との力関係は大きく変わってきている。
 このように関係が変化した状況の中では、今回のような損失の先送りが行われた場合に、私どもは準メイン銀行であるが、メイン銀行を含め、それを本当の意味でチェックし、発見する可能性があったかというとかなり難しいと思われる。したがって、これが通常の貸し手責任であると言われるならば、殆どの大企業との取引は、何かが起これば、そういった貸し手責任の論理に立って考えていかないといけなくなる。


(問)
 オリンパスの監査法人の責任については、どのようなご認識か。また今後、監査法人の制度を強化すべきか、見直すべきかについてのご見解をお伺いしたい。
(答)
 第三者委員会でも指摘されていたが、メイン銀行が不正を発見できる確率と、監査法人が不正を発見できる確率を比べたら、はるかに監査法人が発見する確率の方が高いと思う。あらゆる数字をチェックしているし、データベースを調査することも可能だからである。したがって、監査法人はもう少し機能を果たせたのではないかといわれるのは、ある面では当然かもしれない。ただし、これは処罰に値するかどうかの議論ではない。エンロン等の問題が発生した時もそうであったが、そのたび毎に再発防止に向けて、監査制度や、監査法人の責任が議論され、だんだんそのレベルがあがってきたというのが現状だと思う。今回の一連の問題においても、どういうことをしておけば不正防止が可能であったかという視点からの議論を深めて、あるべき姿に向けてレベルアップをしていくということではないかと思う。


(問)
 オリンパスの件で、ウッドフォード元社長は、プロキシーファイトの話を一度言及しているが、最近は望ましくないというような話もされている。銀行団は、債権者で株主というところが多いが、一般論でもよいので、プロキシーファイトが銀行側からみて望ましいのかどうか、ご意見を伺いたい。また、もしそうなった場合、現経営陣の方なのか、それとも別の提案なのか、どういうところを見て、どちら側につくと決めるのかお伺いしたい。
(答)
 後者の方は簡単である。少なくとも現段階では、債権者として支援方針でやるといっているわけだから、結論は明らかだと思う。
 ただ、プロキシーファイトが望ましいかという議論は、なかなか難しいところであって、いままでプロキシーファイトをやられた例というのはそれほど多くない。大体外資が絡んでいるケースが多いと思うが、そういう場合も、最終的には何らかの妥協点を見出して決着しているのが普通だと思う。最後まで争った場合、次の新しい体制でなかなかうまくいかないと思われるので、言い分を双方ともよく理解したうえで、お互いが納得する妥協点を見出すという方法が望ましいと思う。


(問)
 イラン中央銀行と取引がある邦銀とは3メガだけという理解でいいのか。
(答)
 3メガは取引があると認識している。その他の銀行については不明。


(問)
 イラン中央銀行と決済取引しなければ、原油の輸入はできないということか、それとも別の経路で決済が可能なのか。
(答)
 それは難しいと思う。というのは、先ほどイラン制裁の歴史について触れたが、中央銀行決済は最後に残った方法である。通常は中央銀行とダイレクトに商取引の決済をすることはない。市中の銀行を通して決済をし、中央銀行はその背後にいる。それだけ手段は限られているということ。現在議論されている規制は、中銀決済に対して網をかぶせようというものだから、現実問題としては、それ以外の経路での決済はほぼ不可能、と理解していただいていいのではないか。


(問)
 東電に関しては、3月に向け、特別事業計画をまとめあげていくという過程にあるが、事業計画の内容次第では、4月以降に銀行がニューマネーを出すということはあり得るのか。その事業計画の内容次第と言った場合、先ほどの4つの不確定要素が決まった場合に、その余地があるということか。
(答)
 一言で申しあげれば、策定される総合特別事業計画が、いわゆる「実抜計画」となっているかどうかに収斂される。各々の不確定要素が決着したとしても、そのことのみに依拠して、資金を出して欲しいという論理であれば難しい。
 例えば、除染費用と損害賠償は機構の交付金の対象であるが、廃炉費用は対象外であることから、その費用が嵩めば債務超過になる可能性がある。その場合、東電を債務超過にしないということであれば、増資という議論もあり得る話であり、結局はそういった全ての要素を包含した事業計画が策定される必要がある。
 すなわち、不確定要素をこのように決めたので、その決め事の中ではこういう計画になりますというものでは不十分であり、その特別事業計画が非常にフィージブル、かつ、実効性があり、抜本的な内容であって、これであれば、しっかりと正常先としてやっていけるという確信が必要である。


(問)
 これまでは残高維持が金融機関の協力であると聞いており、そういう意味では、ニューマネーはありえないと理解をしていたが、今の話では、そのスタンスに若干の変化があったということなのか。
(答)
 スタンスが変わったわけではない。
 これまで、全く想定していないと申しあげてきたのは債権放棄であり、これはあり得ないとの認識。ニューマネーに関しては、非常に難しいという認識であり、その理由は、何の計画も出てきていない段階でニューマネーを出すことはありえないという意味である。
 この点、現段階でも非常に難しい状況であると考えているが、一方で損害賠償への対応も本格化し、機構による体制も構築され、まさに特別事業計画を策定しようとしている状況にある。こういったなかで、どういう条件が整えば、ニューマネーが出る可能性があるかということであるが、策定される計画が実抜計画となっており、少なくとも、我々が安心してお付き合いできる会社になり得るかどうかということを検証できるということが必要だと考える。

以上