平成24年1月19日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、本日の理事会において、お手許の資料のとおりインターネット・バンキングに関する申し合わせを行った。
 本申し合わせは、インターネット・バンキングにおける預金等の不正払戻し事案が急増している状況にあることを踏まえ、お客さまに安心してインターネット・バンキングをご利用いただくための取組みを一層強化することを目的とするものである。
 2点目は、本日の理事会において、12月16日に金融庁から行政処分を受けたシティバンク銀行への対応を審議し、全銀協として同行を「厳重注意」とする措置を決定した。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 欧州のソブリン問題だが、先般来、フランスなどの国債の格下げや、あるいはギリシャの債務削減交渉難航など、なかなか出口の見えない状況が続いていて、市場ではユーロ売りが進んでいる。この欧州問題の今後の見通しと、日本経済あるいは日本の金融システムに対する影響について、どのように見ているか。
(答)
 欧州債務問題は、ご存じのような展開をしているわけだが、シンプルに言えば、現在、二つの大きな流れ・課題がある。
 一つは、やはりギリシャである。これは一旦は解決に向かうと思っていたのが、再び困難な状態になっている。もう一つがイタリアの問題である。イタリア、スペインと言ってもいいが、この二つの流れがある。これらを注意しないといけないし、是非解決していかなければならないところに立っているということである。まず、ギリシャについては、ご存じのとおり、次のEUの支援がないと破綻するリスクが高い。具体的には、3月20日に国債140億ユーロ程度の大量償還を迎えるが、新たな金融支援は「民間投資家によるギリシャ国債減免」が前提となっている。これは、50%ヘアカットし、新しい国債に入れかえるスキームであり、しかも民間の自主的な参加の形にし、政府はその参加率の前提を90%以上としているものだ。
 ついこの間までは、このスキームはそのとおりいくだろうと私も思っていたが、13日に交渉が一旦途切れるといった状況になっている。また、再開するという報道もあり、IIFも介在しながらやっているようであるが、しっかりと仕上げないといけない。要するに議論だけでなく、仕上げないといけないという段階、まさにそういうところまで来ている。これがうまくいかないと、ギリシャ問題は、もう1度、大きな絵をかき直さないといけない。
 もう一つの問題として、イタリア、スペインは、ユーロ圏経済の3割ぐらいのシェアを占めており、ギリシャの比ではないが、ここに飛び火しつつあるのを消さないといけないという問題がある。
 とくにイタリアは、2月から4月にかけて、非常に巨額な償還が控えており、これがしっかりと返済できない、つまり、ニューマネーを入札で入れてそれを回転させていくというのができないと、金融危機に繋がり、それが実体経済に大変大きな影響を与えるという大きなマグニチュードを持った問題である。
 そのために、EU当局も必死で頑張っているのは分かる。案としては、かなりいいものができている。例の安定化基金も、1兆ユーロは欲しい。その根拠は、要はイタリアとスペインの国債償還額の3年分である。これはいつでも出せるぞということにしないと、マーケットは安心しないだろうということがベースにある。しかしながら、現在、確実に手当て出来るのは、5,000億ユーロ程度とも言われているし、今回の格下げもあったので、さらに少なくなるかもしれないとも言われている。こういう状態のなか、市場は、新しい入札がうまくいくのかどうか、見通しはつかないという疑心暗鬼になっているということだと思う。
 EUは非常に頑張っており、1月末には、また首脳会議が行われるし、3月の頭にも行われる予定だが、要するにキーワードは実効性である。それをマーケットは投げかけている。実効性ありとマーケットが見れるような形の案になるのかどうかというところにかかっている。
 違う観点から見ると、IMFが融資枠を1兆ドルに拡大するという話もあるようだが、こういったことを含めて、イタリアやスペインの国債償還は大丈夫だというのをメッセージとして出さないと、今の状態では、イタリアの国債金利は、何かが起こると7%に上昇し、ちょっと下がったと思ったら、また何かが起こって、という繰り返しになる。そうすると、金融システムが非常に不安定になる、こういう状態から早く抜け出すように、最大の努力をお願いしたいということだと思う。
 一方、日本経済と金融への影響だが、日本経済はもちろん影響を受ける。グローバルベースで、アメリカも受けるし、中国だって受ける。さらに、ユーロ安も進んでいるので、10月、11月を見ても、ユーロ圏に対する輸出が相当落ちている。だから、それはもう端的に影響を受けているということだと思う。
 ただ、ユーロに対する輸出というのは、日本のトータルの輸出からいうと、相対的には少ないということはあるので、もちろん影響はあるが、アジアのNIES、中国も含めて欧州に対する輸出が非常に多いところは、より影響を受けるということだと思う。
 影響を受けることは間違いないし、もうすでに受けているということであるが、日本経済にとって致命的なレベルかというと、少なくとも現在は、そうではないのかなと考えている。金融について言えば、PIIGSとよく言ったが、そういう地域に対するエクスポージャーは非常に限定的であるので、ダイレクトな影響というのは、そんなに心配することはないと思う。
 ただ、心配なのは、先ほどの二つの課題が、本当に逆回転をし始め、悪化するという状況になると、やはりマーケットを通じて、非常な影響を受けるということはあり得ることである。
 もっとも、リーマン・ショックの時には、中央銀行のサポートシステムというのはなかったため、ああいう状態に陥ったわけであるが、今回は、飛躍的に整備されてよくなっているので、マーケットを通じた影響も、リーマン・ショックのときに比べれば、格段に軽度であろうとは思っている。


(問)
 東京電力に関し、年度末に向けて特別事業計画の策定が大詰めを迎えており、金融機関に対しても追加融資などの支援が求められるということも予想されるが、銀行サイドとしてはどのように対応するお考えか。
(答)
 いわゆる金融協力についての考え方ということだと思うが、金融界としての基本的な認識は、前々から申しあげているとおり、昨年3月の緊急融資にも、その後の残高維持要請にもしっかりと応えてきており、今までもしっかりと金融協力はしてきているという認識である。
 では今後はどうなのかという質問だと思うが、これも前から申しあげているとおり、金融協力というものも非常に多岐にわたる。金融協力に関しては、大局的には電力問題や電力供給そのものに関係することであり、日本国・日本国経済のためにという観点からも、協力しないと言っているわけではない。ただし、金融協力にもいろいろなレベルがあり、また、我々には金融規律や経済合理性といった観点からのチェックも当然に非常に大事な視点としてある。
 したがって、そういう観点も踏まえ、どこまで金融協力に応じられるのかということについては、特別事業計画がどういう形になるのか、また、その時にいわゆる金融協力が必須なのかどうか、というようなことによって決まってくるのではないかと思っている。
 ご質問の中に、ニューマネーの話があったと思うが、このような立場で考えると、やはり特別事業計画が我々のよく申しあげる実抜計画に本当になるかどうかという点と、やはりニューマネーに関しては、しっかり返ってくるのか、回収できるのかというような点が肝要であり、これは先ほど申しあげた経済合理性や金融規律という観点から確りとチェックし、その範囲で我々としての決定をする。
 こういったことに関しては、機械的なやり取りをするだけでは駄目だと思うので、3月に向けて、いろいろ相談しながら、決めていくのではないかと思っている。


(問)
 いわゆる「税と社会保障の一体改革」をめぐって、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げるという政府・与党案がまとまって、野党に協力を呼びかけているという段階であるが、本案に対する評価を伺いたい。それと、消費税が引き上げられた時に日本経済に及ぼす影響をどう見ているか。
(答)
 評価であるが、これは全銀協会長としての立場というより、私個人の意見かもしれないが、やはり直近の10年というのか、7、8年というのか、どうしても国民が嫌う人気のない施策はやらないという状態が、ずっと続いてきたのではないか、という気がする。やはり、やらざるを得ないという覚悟を決めた時には、不人気となることも覚悟しながら、その実現に向けて精一杯頑張っていくという姿勢が非常に大事だと思う。そうした面で今回の案は、非常に個人的には、評価に足る案であると考えている。もちろん、前提はいろいろあり、当然のことながら、増税をするのであれば、精一杯の合理化努力等は必要である。新たに税金を取られて嬉しい人は誰もいないわけだから、国民は増税という言葉が出た瞬間に普通はNOである。ただ、その必要性を訴えて、政界としてもこれだけの犠牲を払いながら精一杯のことをやって、やはり増税をやらざるを得ないというかたちで実施されようとはしている。そういう面で非常に評価に足るのではないかと個人的には思っている。
 ただ、消費税に限らず増税全体がそうだが、経済成長に対しては、マイナス要因になるのは明らかである。減税すれば逆になるわけである。現実に消費税は導入時点と、3%から5%に引き上げた時の二回も実験がある。内閣府からも出ているが、どの程度実質GDP成長率にマイナス影響を与えるのかという試算があり、内閣府の試算によれば、消費税1%の引き上げは以降2年間で0.35ポイント押し下げ、これが絶対的に正しいかどうかは別として、消費税を3%上げれば実質GDP成長率の1%近い下押し要因なるということかと思う。したがって、非常に悪い状態、例えば今のヨーロッパが置かれた状態の時に増税をやると、ますますスパイラルに陥るので、それは避けないといけないと思うが、それがあるがゆえにずっと増税を行わないことは許されない状態になっていることは、割合はっきりしているのではないかと思っている。最初にどじょう内閣として登場されて以来、その辺は非常にしっかりとしたスタンスで望まれているのではないかと思うので、是非、頑張っていただきたいと思う次第である。


(問)
 オリンパスから、経営陣の退陣や監査役の責任などについて発表があったが、今後の支援のスタンスや提携について、どのようにご覧になっているか。
(答)
 基本的には、現時点で支援姿勢を変える材料はないと考えている。
 ただし、今後の関連当局による処罰などはまだ見えていない。何とも言えない部分は残っているが、ただ今現在では、支援姿勢を変える必要はないと思っていると理解していただきたい。
 今後、新オリンパスとしてやっていくにあたっては、いろいろな対応が必要になるが、それらを3月までに固めて、4月の臨時株主総会において新しい体制に移行するというのが、メインシナリオだと思うので、是非とも頑張ってもらいたいと思う。
 ご質問にあった増資やアライアンスに関しては、これからの対応の中の選択肢の一つとして当然にあると思う。これは、金融機関から言われるからというものではなく、当社自身が自主的に考えるべきことであり、当然、選択肢の中にはあるであろうと思っている。


(問)
 欧州危機について伺いたい。格付会社が複数の欧州国債を格下げした。日本の銀行もフランスやドイツの国債など、比較的優良な国債を保有していると思うが、欧州国債の今後の保有のスタンスについて伺いたい。圧縮する場合は、米国債や日本国債に乗り換えているのかについても教えて欲しい。
(答)
 乗り換えていないと思う。今、動く必要はないという判断である。詳細まで把握していないが、当然そうだろうと思う。
 AAAがAA+になったとして、何か大きく変わるわけではない。アメリカの場合でも変わらなかったし、日本国債の格付けはAA-なので、フランスやアメリカのほうが上である。格付会社によるこの程度の格下げは、保有スタンスの変更を迫るほどの大きな要因にはならないと思う。実際に、最近の入札を見ていても順調である。EFSFの格付がAA+に引き下げられても、今回の入札の応札倍率は3倍。それだけの需要があるのだから、格下げによる悪影響を心配する必要はないと思う。


(問)
 日本国債に関連して伺いたい。金融庁と日銀が、アメリカの当局宛に、ボルカー・ルールに対する懸念を表明したレターを送ったということだが、日本の銀行業界としてボルカー・ルールに対する見解を伺いたい。あと、IMFが3月に日本の銀行に対して10年ぶりくらいにストレステストを行って、その中の項目に国債保有リスクなども含まれていると聞いているが、その点について警戒しているのか。
(答)
 最後の質問からお答えすると、全く警戒していない。
 ストレステストに関しては、これまで、IMFだけではなく、様々な場面で実施されている。その度に設定される基準をもとに、我々も試算を実施している。ヨーロッパでも、保有する国債の評価を引き下げたうえで、6月末までに、中核的自己資本比率を9%とすることが求められている。これらの基準を当てはめても、変な結果は全く出ていない。ヨーロッパにおける中核的自己資本比率の要求水準として9%はとても高いと感じたが、結果として、大きな問題も起きておらず、個別行として10%を超えている。そのような水準であると考えていただいて結構だと思う。
 ボルカー・ルールの件だが、最近のアメリカの政策は往々にして内向きであるから、必然的に外に対して様々な影響を与えている。イランの問題もそうだし、FATCAの問題も、ボルカー・ルールも然りということだと思う。
 ボルカー・ルールについて言うと、日本国債の扱いに関する懸念が、金融庁から表明されている。今、市中協議期間中であり、我々も意見を表明している。我々も基本的には金融庁と同じ考え方である。要は、国債市場に関する問題が議論されている時に、新たな規制を制定して、自国の国債は例外扱いするが、他の国の国債は適用対象とすることに対する懸念である。米銀が関与する取引が非常に多いとは言わないが、それでも市場流動性を低下させる要因の一つであることは事実なので、やはりそういう規制は制定して欲しくない、というのは当然の意見として、金融庁も考えるだろうし、我々も考えている。


(問)
 電力債に関し2点お伺いしたい。1点目は、福島原発事故の発生以降、9電力の起債が止まっているが、市場へのインパクトと起債再開への見通しついて。
 2点目は、電力債の起債が止まっている間、償還で落ちていくのも含めて、銀行融資が実質肩代わりしているが、今後も銀行融資で支えていくことができるのか、その見通しをお伺いしたい。
(答)
 電力債の新規起債が現在の状態では出来ないことは明らかである。
 すなわち、現状は全ての原発が早晩停止する可能性があり、それに伴う燃料費の増加、値上げの見通しも不透明といった状態では、電力会社の債券が市場で受入れられるはずがないという状況にあり、東京電力の問題も本質的には同じだと思う。
 値上げに関しては、利用者がどこまで覚悟するかということだが、それは、各電力会社による精一杯の合理化努力が大前提となる。原発の再稼動は、政府関係者も、中長期的にはさておき、必要なものは、その再稼動が妥当であれば、再稼動していく旨の発言をされている。これらに関し、然るべきステップが踏まれ、電力会社に関する将来に向けての相応の絵姿が理解できる段階になって、初めて電力債は回復していくものと考える。それには、もう少し時間が掛かると思う。
 2点目の質問は、電力債回復までの間は、電力会社の資金調達は間接金融に依存するということに関する議論だと思う。東京電力の問題は少し違う視点があるため置いておくとしても、他の電力会社に対しては、通常の十分な審査を経て、これまではきっちりと対応している。何といっても電力供給の問題は、日本国経済・社会にとっても非常に重要な問題であり、これを支えていく必要がある。また、本来、電気事業法の枠組みでは、最低限の電力会社の収益基盤は維持されていくものと考えられるが、この点に関して、現在いろいろと「ここはちょっと待て」という議論があることから、今のような循環になっている。
 我々としては、現状は一過性の状態であるという認識に立って、電力会社からの支援要請にはしっかりと応えてきているし、当面の間、このような状態であることはあり得るのだろうと考えながらやっている。
 ただし、この状態が今後も続けられるのかということに関しては、自ずとどこかで限界がくるし、1社に対する融資限度の問題もある。いずれにしても、資金計画に関して、半期・1年のタームでチェックし、その後の計画も聞きながら審査しているところであり、当面の間は、引き続き、応えていかなければいけないのではないかと思っている。


(問)
 アメリカの金融大手の第4クオーターの決算が出始めているが、欧州危機の逆風で軒並み減益という厳しい決算になっている。アメリカの銀行の欧州向けエクスポージャーは限定的といわれていたのに、こういうかたちで出てきているということについて、どのように分析されているか。
 もう1つは、日本ももう少しで第3クオーター決算だが、日本に波及してくる懸念はないのか見解をお伺いしたい。
(答)
 大手米銀の決算が次々と発表されているが、結果をみると、投資銀行部門とトレーディングが非常に悪く、欧州危機が非常に足を引っ張っていることは、はっきりしていると思う。非常に影響を受けているという印象だ。欧州へのエクスポージャーは、大したことないという話が前提としてあったが、邦銀に比べれば、はるかに大きい。また、米国から欧州へは、銀行に限らず大規模な直接投資が行われており、そこから上がってくる所得が悪影響を受け、そういうものが結局、投資銀行部門に跳ね返ってきている。これは銀行だけの話ではなく、産業全体として言えることだ。
 日本の場合、どちらかといえば証券会社になるが、やはり投資銀行業務とトレーディングが非常に苦戦しており、おそらく第3クオーターも続いているのだろうと予想できる。私どもフィナンシャルグループ全体で見ると、証券部門はそれ相応に影響を受けるが、全体に占めるウエートは圧倒的に銀行部門が大きいため、影響度合いは米銀に比べて小さいといえると思う。無風ではないが、「相当影響を受けた」というレベルではない。


(問)
 アメリカのイラン制裁について、今、まさにアメリカ政府と日本政府とが政府間交渉を行っているところだが、イランからの原油の輸入量を減らすことで邦銀が例外措置の適用対象となるような交渉もあるやに聞いている。外交問題なので銀行としてやれることは限られているかもしれないが、今、銀行としてどのようなことを政府に要望しているかということと、この問題の見通しをどう見ているかということを教えて欲しい。
(答)
 今、言われたとおり、イラン制裁法の例外措置というのを獲得するために、我々も当局に対し実務上の論点について相談している。交渉は当局によって行われており、我々がダイレクトに出るような話ではない。
 たとえば、本当に原油の輸入を削減したときにどういう影響が出てくるのか、ということについては、銀行だけの問題ではないので、政府当局は商社や元売からもいろいろとヒアリング・ディスカッションしながら、アメリカとの交渉を行っている最中である。したがって、我々が直接に米国当局と交渉しているわけではないが、常に政府当局には民間の意見を聞いていただきながら、交渉に当たっていただいているという認識である。是非、例外措置の適用対象として欲しいと思っている。


(問)
 先日、日本経済新聞の経済教室に、国際通貨研究所の行天理事長が、人民元との関係で、足下における円の通貨価値を懸念する内容の記事を寄稿された。前回同様の質問となるが、円の通貨価値の向上に向けて、政策面や制度面も含めた検討の必要性について、どのように考えているか。
(答)
 非常に難しいご質問であるけれども、ご指摘いただいているのは、円の通貨価値というよりは、基軸通貨としての価値ということだと思う。現在、日本円は国際通貨として4番目の地位にあると認識しているが、一定の存在価値は維持している。その地位が上がっているわけではないが、低下し続けているわけでもない。基軸通貨としての円の価値について、人民元との比較で懸念を示されているのだろうけれども、やはり日本と中国、おのおのの国力が出発点となっている。貿易量の大きさも関係する。経済成長をして、世界における日本のプレゼンスを高めるという方法が一つ。ただこの点に関しては、芳しくない状況が続いている。少なくともこの20年くらいは不芳な状況が続いている。
 それと通貨としては、東京市場、あるいは日本全体の市場の使い勝手のよさという観点もある。これは規制の強さや通貨の安定性が要素となる。すぐに為替差損を被るような状況では、使い勝手が悪いことになる。そういった要素が全て関わってくるなか、金融界、金融庁、財務省、外務省等は、東京市場のプレゼンスを高める努力について継続的に実施している。ただ、グローバルベースでの国力の相対的地位については、低下を何とか食い止めるのが精一杯というのが現状だと思う。したがって、今後とも政官民で努力をしていくということに変わりは無いが、切り札になるような策が現在検討されているかというとそれは難しい、ということは申しあげられると思う。


(問)
 オリンパス問題に関し、増資やアライアンスも選択肢としてあり得るとの話があったが本当にそうなのか。決まった話ではないと思うが、経営陣も銀行団もそれを前提で走り出しているように見える。財務基盤が弱っているのはその通りと思うが、FAに名を連ねているのは主力銀行、準主力銀行の系列証券会社等であり、株式のサイドから見れば、債権保全のためにエクイティを入れようとしているのではないかというふうに見えたりする。そこは正しいのかお聞きしたい。
(答)
 少なくとも債権保全のために増資を勧奨しているということは一切ない。FAの話に関しても、証券会社とは完全なファイアーウォールがあるなか、あたかも銀行が、証券会社を回し者として使っているというような表現は非常に不本意である。
 企業再生にあたっては、企業組織の問題、BSの問題、PLの問題、資金繰りの問題など様々な問題があり、資金繰りの問題は一番スピードが必要である。ただし、オリンパスの場合、資金繰り問題は、当面全く心配なく、十分な流動性を確保しているなか、すぐにニューマネーが必要といった状態にはない。
 したがって、増資等に関し申しあげているのは、オリンパスの経営改革委員会が自ら考えられ、現時点では少なくとも債務超過ではないが、相対的に低い純資産水準であることから、その水準を高めておいた方が良いとか、新しい投資の観点からも資本が必要ではないかといった発想は当然に出てくるのではないかということである。
 少なくとも申しあげたいのは、増資等を誘導するつもりは全くないし、それは自主的に考えていただくことであると考えている。したがって、正しいのかというご質問に対しては、答えようがないということだと思う。


(問)
 ボルカー・ルールについて、域外適用や、米国債以外の国債取引をどうするかなど、様々な論点があると聞いている。具体的には、日本の銀行もJGBが買いにくくなるということなのか。あくまで米銀との取引に限定されるのか。
(答)
 米銀との取引に限定される。それが結果として、日本の国債の流動性を低下させることになりかねないので、繰り返しになるが、自国の国債だけは適用除外扱いにして、他国の国債にそういう影響を強いることは良くないのではないかという意味で申しあげた。


(問)
 政府が企業再生支援機構における支援申込の受付期間を1年延長し、昨年の10月に締め切った受付を再開し、来年の春ごろまで継続するとの話を耳にした。金融機関はこのことをどのように考えているのか。
 また、企業再生支援機構に限らず、公的資金がさまざまな機構にエクイティとして入っている状況について、今の経済環境ではやむを得ないと考えるのか。
(答)
 1点目について新聞報道があったことは承知しているが、まだ決定した事実はないと思う。ただ、企業再生支援機構は時限立法に基づき設立されているが、もともと時限の組織でなくてもよかったのではないかと考えている。
 たまたまJAL等の大口案件が目立っているが、当初の趣旨は地域経済を支える中堅・中小企業を支援するための機構であった。その趣旨を踏まえれば、1年延長は決して悪いことではないと思う。また、中小企業金融円滑化法の出口論を考えた場合、企業再生支援機構がオールマイティーとは思わないが、1つの受け皿になるという位置づけもあろうかと感じている。
 2点目は、公的資金が乱舞している状態をどう考えるかというご質問だと思う。民間金融機関として、当然のことながら、精一杯、間接金融の機能を果たし、金融の円滑化に全力を挙げたいと申しあげているが、一方、国内外いずれの案件でも、リスクが高く審査基準を少々超える案件のリスクを補完するという意味であれば、公的資金による機構の存在感は非常にあると思う。ただ、機構の存在感が大きくなりすぎ、問題があると感じる場合は、民間金融機関として意見を発信していくつもりである。
 中小企業金融円滑化法の延長において、今年度末でやめるべきか、もう1年だけ延長するかといった議論の末、微妙な判断に至ったように、機構と民間のあるべき役割に関しても、現在がちょうど過渡期ぐらいかと認識している。公的資金に支えられた機構の役割が増えることが良いとは言わないが、一気に減らすことも現時点において適当ではないのではと感じている。


(問)
 東京大学の秋入学が話題になっているが、実際に導入された場合の影響について考えを伺いたい。
(答)
 やはり、日本の大学というものが曲がり角に来ているのかもしれないということだと思う。よく、グローバルな大学ベスト100というようなものを目にするが、日本の大学は数校は入っているものの、順位を下げているのが実態かと思う。これは、大学のグローバルスタンダードのようなものがあり、日本の大学には、それに合わない部分があるということを意味している可能性がある。
 その1つが、4月と9月の入学時期の問題であろう。外国から留学したいという話があっても、この入学時期の違いは大きい。一方、大学院などでは、すでに9月入学を始めているところがあり、海外の留学生が7割を占めるようなところもあると聞いている。そういう状況を踏まえて、学部についても同じことが必要ではないかとする案であると、私自身は理解している。
 ただ、そうすると中途半端な時期になるため、いろいろと問題もあり、在籍期間が5年になるのか、6ヶ月はどうするのかなどを心配する向きもあるが、私自身は心配していない。私事になるが、私は大学紛争当時の卒業で4月入社ではないし、当時は5月や7月などの事例もたくさんあった。その時には、私は4月入社の人と同じ扱いをするという形で採用をされており、例えば、9月の卒業であれば、10月1日入社というのがあってもおかしくない。
 そうすれば、特に学生にとっても不利益にはならないだろう。狙いとしているところが、グローバルベースで存在感のある大学を目指したいということであれば、評価できる点があるのではないかと考えている。

以上