平成24年2月16日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日の理事会において、お手許の資料のとおり、東日本大震災に伴う手形交換に関する特別措置を、3月末支払分をもって終了することを決定した。
 本特別措置により不渡報告への掲載等が猶予された手形・小切手の枚数・金額が減少したことを踏まえ、被災地の金融機関等に状況を確認し、終了を決めたものである。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 先日、銀行業界の第3四半期決算が出揃ったと思うが、全体としてどのように総括しているのか。また、そのなかで与信とコストの関係、金融円滑化法の関係で、今は、与信コストが抑えられた状態だと思うが、法律の期限が1年後ということになるなかで、今後の与信コストの動向をどのように見ているかも併せて伺いたい。
(答)
 第3四半期決算の総括というご質問だが、全てを集計し、分析をしたわけではないので、どうしてもファーストインプレッションというか、感覚論になって恐縮だが、やはりベースのところは、低金利がずっと続いているということと、景気が低迷していることを背景にして、ボトムライン、業純とも、トータルとしては若干減益というところが多いのではないかと感じている。
 もう少し付言すると、やはり資金収益が、さきほど申しあげた超低金利がずっと続いていることを反映して、なかなか伸びづらい状況になっている。むしろ、ずるずると下がっているのが実態ではないかと思う。これに対して、特に国債だが、低金利になると価格が上がり、マーケットの売却益が増えるというメカニズムもあるので、これが業純レベルまでの収益を支えている。一方、役務収益等はほとんど伸びていないというのが実態ではないかと思う。
 業純以下、経常利益までの話になると、二つ大きな要素がある。一つは、株の減損。片方で与信費用ということである。与信費用について先に申しあげれば、これは落ち着いているというのが実態であると思う。ただし、株の減損というのは、トピックスが去年の3月が860台だったが、12月末は720台に下落しているので、相当の減損が各々の銀行で起こっているということだと思う。今回、さらに言えば、ボトムラインにかけては、やはり法人税下げの影響、いわゆる繰り延べ税金資産の取り崩しということになるが、この影響もあっただろうから、やはり減益になったところが多かったのではないかと思う。
 後半の質問は、金融円滑化法の1年後の廃止という方向感を踏まえて、与信費用の今後の見通しということだが、景気動向もあるが、やはり与信費用は増えていくのではないか。急激に増えていくかどうかは全く別問題であるが、現在の与信費用は大変低い水準であるため、今後は増える方向だろうと思う。
 それと金融円滑化法との関係で申しあげると、1年後に廃止になるから、すぐに影響がでるというものではないが、金融円滑化法をベースにして、実抜計画というか、再建計画をしっかりと作ったところは、債務者区分を要注意債権から要管理債権へ落とさないという運用ルールがあるため、法律がなくなったときにどうなるのかということだと思う。運用ルールであるので、法律とはダイレクトには関係はないのだが、それ相応の準備が必要であろう。現実に私どもを含めて、すでに追加の引き当てをしている金融機関も多々あると思っているし、この3月末にもそういう対応をされるところがあると思っている。


(問)
 東京電力について、現在、総合特別事業計画の策定作業が大詰めを迎えているが、こういったなか、東電への金融支援に関し、総額1兆円規模の支援要請が来ているというような報道もあるが、足元の検討状況について教えていただきたい。
(答)
 確かに、大変驚くほど多くの報道があり、報道を見て、そんなことあるのかと思うことが多々ある。
 ご質問の金融支援について、われわれでは金融協力と申しあげているが、これについて、東京電力、機構、銀行団にていろいろと協議していることは事実である。こういった協議は、通常であれば、よく申しあげるとおり実抜計画が必須であり、それを見させていただいてから判断させてもらうという順序だが、今回の東京電力のケースは非常に影響度が高く、また、3月中に纏めていかないといけないという状況がある。そういったなか、仮に協力するとすれば、どういった内容や金額、条件というものがあり得るかという格好で、事務ベースでいろいろ協議しているというのは事実である。
 ただし、この1ヶ月とは申しあげないが、この数週間の報道を見ると、こういった協議では、いろいろなキャッチボールが行われるが、その途中経過や協議者間の例えば試案といったものに関する報道が多い。
 したがって、今朝も様々な報道があったが、報道のとおりになるかどうかは全く別物だということを申しあげておきたいと思う。また、やはり銀行団としては、全員が協議に参加しているわけではなく、代表選手が参加し、議論していることを踏まえれば、昨今のような報道のされ方は、当事者としては非常に困るということだけは申し添えておきたいと思う。
 いずれにしろ、3月中の特別事業計画の策定に向け、我々も当事者として精いっぱいの努力をしていくつもりであるが、この時点で中間報告をするような内容はないということを申しあげておきたいと思う。


(問)
 昨日、政府内で被災地支援等で休眠預金を活用できないかという議論がスタートしたが、これまで休眠預金に関しては、いろいろな案が出ては消えと、過去にもそういう経緯はあったと思うが、今回の休眠預金の活用に関して銀行業界としてどのように受けとめているか、お聞かせいただきたい。
(答)
 やや報道先行ではあったが、昨日政府で会合が持たれ、もちろん睡眠預金だけの問題ではないが、一つのテーマになったということは承知している。ご質問にあったとおり、この問題は今まで何回も取りあげられた。ただその実現性、フィージビリティについては多くの課題があり、今まではこれを本格的に検討するというところまで至らなかった。そういう考え方もあるというレベルで終わっていた。今回は、政府の正式な機関で問題提起があったということなのでおそらく十分に検討されることになるであろうが、検討の過程で我々も協力できることは当然のことながら協力していく、というのが基本スタンスである。今まで、いろいろ課題があったから進まなかったということを申しあげたが、睡眠預金というのは、10年間全くトランザクションがなく連絡もつかないものは睡眠預金として扱いましょう、というある意味「フィクション」である。これはずっと昔からあったわけではなく、税法上の問題や会計上の問題という観点から問題提起されたことを踏まえ、睡眠預金という考え方を作ろうとして、全銀協からもガイドラインを出してスタートしたという経緯があった。実態面では、睡眠預金であろうがなかろうが預金者はやはり預金者であり、預金は預金者のものである。したがって、10年経とうが20年経とうが30年経とうが、きちんとバウチャーを持って来られれば、当然のことながら払出しをしている。金融庁の調査によると、新規に認定していくものが年間約850億円あると出ていた。一方で、払戻しも年間350億円程度あり、大体四十数パーセントぐらいの率である。もともと預金者のものであるから当たり前のことであるが、払戻しには常に応じている。睡眠預金の活用にあたっては、いわゆる憲法上の財産権との関係で、そういうことをしていいのか、という考え方がある。この観点から、当然のことながら法的な対応が必要になってくるということは容易に想定できる。また、全国津々浦々の金融機関で総口座数は12億口座あるが、睡眠預金を利用しようとすると、当然、一元管理する組織が必要になる。しかも新たに作るわけだからコンピュータから営業場所から、そういうセンターを作らないといけないし、顧客利便性の観点から丁寧に対応しようとすればするほどコストはどんどん膨らむということになる。一元管理という組織は必須であるが、そういうものを検討した結果、費用対効果がどうなのかというと、実は数字がない。いろいろな前提に立って、そういうものをきちんと詰めないと、これを進めるわけにはいかない。諸外国、特に英国、米国、韓国等、それを利用しているという実例はあるが、何が日本の特色かというと、総数12億口座という巨大な口座数である。おそらく英国に比較したら10倍近くあるのではないか。かつ払戻しが4割と言われているが、昨年の三菱東京UFJ銀行の払戻しの比率は5割近い。日本における4割とか5割といった払戻しに対して、英国の事例では1割とか、どんなに多くても2割程度と聞いている。母集団の大きさ、払戻し率の大きさ、そういったものが日本の特色である。それだけ金融機関と利用者との関係が深いと言った方がいいかもしれない。そういう日本特有の事情があるわけだから、そういうものを全部踏まえたうえで検討していくことになる。したがって、冒頭にも申しあげたとおり、検討していく際に、我々は協力できるところは全面的に協力する、これは間違いなく協力するが、そう簡単に、非常にいいことだね、といって、これを成長ファイナンスのメインテーマにしようかというほどの事項ではないのではないか、というのが、私の率直な感想である。


(問)
 東京電力について、議決権の比率を巡り経済産業大臣と東京電力が激しく対立していると思うが、経済産業大臣は、りそな方式が基本でいいのではないかという意見だが、それに対してどのように思われるか。
 もう1点は、東電の融資に向けて残る最大のハードル、ここをクリアすればという最大のポイントを教えていただきたい。
(答)
 2点目の方から申しあげると、これは一言で申しあげて、実抜計画になっているかどうかであり、この点は以前から申しあげているとおり。要は特別事業計画が金融機関から見てフィージブルであり、貸し出した資金が確りと返済される計画になっているかどうかということに尽きる。
 したがって、先ほど申しあげたとおり金融協力というのは、本来は特別事業計画を見てからというのが普通の順序であり、まずは、それを見させていただくということだと思っている。
 1点目については、国からの資本注入というのは実抜計画の一つの要素なのであろうと思う。これまでも何回か申しあげたが、機構法では、損害賠償の資金は、機構が交付国債で対応するようになっている。ただし、計画を策定するうえでは、代表的な例をあげるだけでも、廃炉費用や燃料費の負担、値上げの問題、また、原発再稼動の問題などがあり、こういったものが全て関連している。こうしたなか、国からの出資という方法が機構法にあり、東京電力において、値上げが少し遅れたり、廃炉費用が確定した場合に債務超過になるおそれがあるというなかにあっては、国からの出資が必要というのは非常に理解できる。
 ただし、資本を注入するときにはいろいろな方法があり、普通株で入れるケース、優先株で入れるケースなど様々なケースがある。比率の議論は直接には存じあげないが、3分の1とか、過半数とか、3分の2とか、いろいろな話があり、質問にあったりそな方式の比率は72%だったことから、3分の2のケースということになろうが、こういうケースも考え方としては当然あるであろう。
 一方、日本社会は、極力民間でできることは民間でというのが大原則である。これはやはり、民間の創意工夫・努力をベースに、社会をやっていこうという憲法のようなものである。したがって、その例外としてやるということであれば、本来的には極力普通株は少ないほうがいいというのは当然ながらある。
 他方で、先ほど縷々申しあげたとおり資本注入が必須であるなか、ではどうするのかということになるが、やはりポイントは国、ないしは機構と申しあげてもよいが、機構と東京電力がしっかりと協力し、この難局を何とか乗り越え、機構法の迅速かつ適切な損害賠償や福島原発の安定化、電力の安定供給という目的を実現するためにやっているということを踏まえ、是非接点を見出してもらいたいと思う。
 そういったなかで、機構と東京電力がこれでいこうという案であれば、我々としてはどういうケースであろうと関係はなく、支援姿勢に影響を与えるということはない。肝要なのは、トータルとして国の関与がどういうかたちになるのか、様々なケースがあるなか、結果として、特別事業計画が本当の意味での実抜計画になっているのかどうかということがエッセンスであるとご理解いただきたい。


(問)
 3月11日に東日本大震災から1年を迎えるが、全銀協が果たしてきた役割の総括を、少し気が早いがお聞かせいただきたい。
(答)
 本当はお別れ会見でお答えしたい内容だが、簡単に総括すると、やはりこの1年間の全銀協活動の1番のプライオリティは、震災復興への貢献であったと思う。震災直後はいろいろなことを緊急避難として行い、先程専務理事から話があった手形交換に関する特別措置もその一つであるし、お亡くなりになられた方の預金口座を一括して照会できる被災者預金口座照会制度の体制整備や、取引銀行以外での預金払戻し対応など、立ち上がりの段階では様々なことを一生懸命やらせていただいた。
 後半のポイントは二重ローン問題。個人と法人とあるが、個人の方は、全銀協が主体となり、8月に個人版私的整理ガイドライン作りに貢献し、組織も設立し、人材も投入しながら整斉と進めてきた。現在までに2,000件を超える照会もあり、まずまずの成果を挙げているのではないかと思うし、更に努力していきたいと考えている。
 法人の方は、政府と野党の2つの機構ができる形になったが、もともと7月頃から議論が始まり、政府の方が先に立ち上がった。政府の産業復興相談センター、産業復興機構には、銀行界から70人を超す人材を派遣し、窓口相談から買取支援、センターの運営に至るまで努力してきている。一方、野党の東日本大震災事業者再生支援機構は3月上旬にはスタートするが、その設立準備室にも我々は相応の人材を派遣している。法人の方もスムーズな立ち上げ、運用ができるよう努力をしているというのが現在の状況である。2つ並存する状況をどう考えるかという議論もあると思うが、機構としては復興機構と支援機構の2つになるものの、相談窓口は一元化する方向で検討が進んでいると聞いている。最終的にどちらの機構に行くかは、対象企業が中堅中小なのか小規模・零細企業なのかという規模の違いや、対象地域にも違いがあり、これらを相談窓口で振り分ける形にすれば、棲み分けは十分に可能ということである。ただ、まだ本当の意味で機能しているとはいえないので、今後の課題として、我々も最大限の協力をして機能する形に持っていかなければと思っている。


(問)
 一昨日、日銀が目指すべき物価の目途として1%というものを掲げて、それまでは強力に金融緩和を進めるという表明をしたが、この日銀のアクションに対する評価を聞きたい。また、この日銀の動きがデフレ脱却に向けてどの程度効果があると見ているのかをあわせて聞きたい。
(答)
 いろいろな評価があると思うが、私の評価として聞いて欲しい。「中長期的な物価安定の理解」という言葉を「中長期的な物価安定の目途」という言葉にして何が違うかと言う人は多いが、やはり当局が覚悟を示す場合、よく使われる手法でもあるので、そういう単純な「理解」とか「目途」という言葉だけではなくて、その裏にある覚悟の程を示したと思っている。かつ、同時に米国でQE3という議論が出ているが、それに当たるような10兆円の追加量的緩和を同時に出しているので、その覚悟の一端を見たような気がする。現実に、マーケットの反応を見ても、ある面ではポジティブなサプライズであったという反応をしている。そのような状況を見ても、多少なりとも日本銀行の覚悟の程を汲み取ったのではないかと思う。現在の先進国、欧州、米国、日本も含めて財政支出が非常に厳しいことは皆さまご存知のとおり。そのため、中央銀行に対する期待感が本当に高まっているわけだが、最近の欧州の状況、米国の状況を見ていただくと分かるとおり、金利政策が使えないなか、ECBにしろ、FRBにしろ、日銀にしろ、各国の中央銀行が目いっぱい、剣が峰の対応策として非伝統的な金融緩和策を出していただいている。様々な見方があるかもしれないが、私個人的にはFRBにしろ、日本銀行にしろ、ECBにしろ、懸命に努力され、精一杯の対応を取られていることを非常に心強く思っているし、評価もしている。


(問)
 最近、世界の当局が、LIBOR、TIBORに関する調査を実施している。先日はスイス当局が日本の銀行も含めて複数の銀行に対して調査を実施する旨公表したが、会長から見て一連のLIBOR、TIBORに関する調査についてどのように考えているかということと、全銀協としてTIBORを運営するうえで、対応や対策を考えているか、について教えて欲しい。
(答)
 TIBOR、LIBORに関する調査が、この一年ぐらい行われているとの報道については、承知している。直近スイスがそれを発表したことによる質問だと思うが、すでに米国や欧州でも行われている、とのことである。そういった調査依頼に対しては、我々もリファレンス・バンクの一つとして、最大限の協力に応じるというのが基本スタンスである。今回はスイス当局からの調査のようだが、大体はアンケート形式で終わるのだろう。欧米の実例においても、実際に処分された人はいる模様だが、本当にごく一部とみられる。その程度であると理解している。もちろん邦銀でそのような事態はないと理解している。ただ、そういった調査を実施すること自体が、TIBOR、LIBORの決め方に対して、やや疑義を持っているからであろうということは理解できる。翻ってみると、TIBORについては、全銀協が、運営の責任を負う立場にあるといえる。そこで、当然のことながら、従来より、ゆがんだ運営とならないよう努力は続けているし、不足があれば当然追加施策も検討する。これは当然のスタンスである。具体的には先ほど申しあげたリファレンス・バンクの指定方法がある。基準は色々あるが、年1回見直しをする。さらに、ややおかしい動きをしていると考えられるリファレンス・バンクがあれば、途中退場を命じる。こういうルールの中でやっている。加えて、TIBORの算出にあたっては上の2行の値と下の2行の値を除く。その平均値という形で出すわけで、1回や2回異常なレートを呈示したとしても、それは平均値にカウントされない可能性が高いし、そのようなことを頻繁に行っている銀行には退場を命じられるという形で、運営をしている。繰り返しになるが、様々な調査を実施するなかで、反省点等があれば、当然追加施策を検討していくということになろうかと思う。


(問)
 休眠預金の関係で2点お伺いしたい。1点目は、睡眠預金の税務処理について、10年過ぎたものは益金算入、払い出したものは損金算入ということを国税の指導で対応しているのはよくわかるが、預金者の眼からすると6割は戻っていないので、もちろんシステムの費用はあると思うが、それが銀行の手元に入っているのではないかという不透明さがどうしても拭えないところがある。現状の制度についてどのように考えているか、改めてお聞かせいただきたい。2点目は、先ほど800億円とか数字を話されていたが、全銀協もそうだが個別銀行も一切開示してこなかった。昨年の「新しい公共」でもあったと思うが、積極的な開示を全くしてこなかったというわけで、こういったものが預金者の不透明感というのが高まっている背景にあるのではないかと思うが、これまでの銀行業界の対応について、どのように考えているか、お聞かせいただきたい。
(答)
 先ほども申しあげたとおり、預金は預金者のものという大原則があり、銀行界としてはそういう大原則のもとでやってきたわけである。ところが、税務上や会計上の要請もあり、睡眠預金として整理した経緯にある。何もそこで利益を得ようという考えは全くない。したがって、そういう全体像のなかで考えていただければ、そうした数値を積極的に開示する必要があるのか、ということになるのではないか。もともと利益計上したくない銀行もあろうが、利益計上しない場合には重加算税を課す、といった指導もあり、各行で対応してきたものである。これを積極的に開示するといっても、どこまで出すかで手数がすごく違う。例えば、過去に遡って出せと言われても不可能である。全体の12億口座、これをベースに考えると作業量たるや膨大である。コンピュータシステムに載っているものもあるが、手書き元帳的なものもある。そういうなかで集計するとなると、大変に難しい。先ほど申しあげた数字というのは、金融庁の調査で、できる範囲で調べたものである。そうした数値をどうして積極的に開示してこなかったのか、と言われるような、そういう話ではないのではないか、と思う。


(問)
 先ほども少し言及があったが、低金利が長引いているなか、収益目標を達成しようと思えば、国債を買うなど、量で稼ぐ必要があるという発想につながると想定される。これは単純に金利変動への感応度が上がって、よりリスクが高まる、追加的なリスク許容度が低下するなどということになるのか。
(答)
 そういう面があるのは事実だが、それは、ポートフォリオ全体を運営する観点から捉えるべきである。例えば、減損リスクを抱える政策株を一生懸命圧縮してきている。この10年間で3分の1程度まで減らしてきているのだが、これは長年の取引慣行も考慮しつつ、お客さまの納得を得たうえで売却しているわけだから、簡単にできるわけではない。何故あえてそれを申しあげたかというと、そのようにして残った株価変動リスクは、金利感応度とはまったく逆の動きを導くからである。つまり、通常は逆相関だから、減損が出るようなときは、債券に含み益が生じる。結果としてそれが相打ちする現象が想定される。したがって、片方のリスクのみを考えているというわけではなく、ポートフォリオ全体の中で運営している。だからご指摘の部分については、金利感応度だけを見ればそのとおりであるが、貸出、政策株、債券、こういうものは、全体のALMの管理の中で、いろいろ議論しながら、リスクをコントロールしながら、オペレーションしていく方法を銀行は実践しているということをご理解いただきたいと思う。


(問)
 それによって、今、金利が少し上昇しただけでもリスクリミットに到達しやすい状況にあるのではないかという指摘が、マーケットから出ていると思うが、リスク管理の観点から、考えについて伺いたい。
(答)
 多面的なリスク管理を実施している。これは、日次、週次、あるいは月次で行っているALM運営に関する会議において、大きな方向感と日々のオペレーションを常にモニタリングしながら、特定のリミットに偏重することなく、あらゆる指標を駆使しつつ、定性・定量両面から、トータルに対応しているということである。


(問)
 昨日、日本航空が中期経営計画を発表し、今までのところ、また、当面は比較的、営業利益を計上していくようであるが、これまでの日本航空を見ていると、更生計画以外はなかなか達成できなかった過去があり、その結果、破綻に至ったという見方もある。そのあたりを踏まえ、今回の計画を、また新体制をどのようにご覧になっているのかというのが質問の一点目である。
 もう一点は、日本航空のような事例を踏まえ、公的資金や公的資本を注入するような再建に関し、先ほど、民間の活力を生かした形というのが大原則であるということをおっしゃっていたが、どういうものは許容できて、どういうものが許容できないのかという点につき、ご所見を伺いたい。
(答)
 2点目の質問から申しあげると、再建手法には、公的資金を使う方法や、チャプターイレブンのような方法などいろいろあると思う。
 ただし、公的資金を入れるケースはレアケースである。例えば、金融機関には公的資金が入れられるケースが多いが、これは個別の金融機関が破綻した場合に、金融システム自体に支障が生じ、ひいては経済全体が致命的なダメージを受けるということを回避するためであり、個別の金融機関を救う為ではない。
 この点は、例えば東京電力でも同じことが言えるのではないかと思う。その影響の大きさは巨大であり、また、その代替もきかない。加えて、その原因が原発事故という、起きてはいけない事象から発生しており、トータルで考えると、東京電力のケースはやはり国の資金が当然に出るべきケースだと思う。
 JALのケースに関しては、実際は本当の意味での国家の資金は出ていない。もちろん企業再生支援機構は関与しているが、それは再生までの間のブリッジの役割である。本機構は元々は中小企業等を対象として、その企業再生を目的に設立されたものであり、その再生支援にあたっては損失は想定せず、必ず再生を仕上げるという形の計画案を策定し、対応をしている。
 1点目のJALについては、昨年3月には早々と更生計画を終結され、この1年間の業績も計画以上の実績をあげられている。これは、JALの従業員全体、OBの方々も色々な形で協力し、オールJALとして支え、また、やはり稲盛会長の経営者としての卓越した手腕があり、そして、機構の経営への関与・役割がマッチした結果であろうと、最大限の敬意を表したいという内容だと思う。
 今回の中計公表は、次の出口戦略に向って進むというタイミングであり、また、経営者もプロパーのパイロット出身の植木社長が就任され、稲盛会長は名誉会長と一歩ひかれた相談役的な立場で取り組まれるという、JALの人たちが中心になって次に向っていくタイミングでもあり、時宜を得たものではないかと思う。
 中期計画自体は、昨日公表されたところであり、その内容については、今後、勉強していく必要があり、現時点でコメントのしようがないが、ファーストインプレッションとして申しあげると、あまり無理した計画にはなっていない、自力でやっていこうとする姿勢も非常に感じられるといった、なかなか良い案になっているのではないかという印象を持っている。


(問)
 一つ前の質問と若干重なり、確認に近いものになるが、先程、国債を含むリスク管理について、ソフトケースからハードケースまで、いろいろやっているとおっしゃっていたが、日本国債の暴落・急落といわれる状況も含めて、あらゆる想定のシミュレーションをされているということか。
(答)
 ストレステストは月次ないしは半期、色々な周期で、通常のストレスから極度のストレスまで、様々なレベルのものを実施する。強めのストレスをかけるのは半年に一回、通常のストレスをかけるのは毎月やっているし、加えて足元の相場が少し変な動き方をした場合にも、当然実施している。ストレステストといっても様々なレベルのものがあるので、ご質問にダイレクトにお答えすると、強めのストレステストも実施しているということ。


(問)
 日本国債の保有リスクに関してお伺いしたい。永易会長は、去年の夏に実施したロイター通信のインタビューで、「金利が急騰する時期は10年サイクルではない、もっと早い、よって、早めに対応しなければならない」、といったことをおっしゃっていた。また、リスク管理に関するMUFGの公表資料においても、日本国債の保有リスクについて言及している。これらを踏まえ、日本国債の保有リスクの時間軸に対するお考えと、いま政府で議論している税と社会保障の一体改革がなかなか進まない場合、国債保有リスクに関して警戒を強めざるを得なくなるのか、の2点について教えて欲しい。
(答)
 少なくとも現在は、非常に大きなリスクを感じているかというとそれはない。ただ、いろいろな要素があるなかで、中長期的にはやはりリスクがあるとは思っている。昨年のインタビューの際に10年サイクルではないと漠然と申しあげたのは、その時間軸がなかなか特定しがたいことと、トリガーとなる要素もいろいろ考えられたことが背景である。債務の対GDP比率の観点からも、世界で最も財政状態が悪いといえるにもかかわらず日本国債市場が安定しているのは、みなさんご存知のとおり、やはり国内投資家が圧倒的に支えているからである。95%等の数字も示しているところだが、結局誰が日本国債を買っているかというと、最終的には預金を通じて国民が買っているともいえる。要するに、国民の貯蓄と政府の借金が見合っているという状態が現在も厳然としてある。しかも、海外勢は、担保目的以外にはほとんど買っていない。直近において、海外勢による保有率は5%とかいわれているようだけれども、基本的には、金利水準を考えながら買っている海外勢は少ないというのが、現在の状況。ただ、為替の観点も絡め、資金の逃避先として円が選好されるということはあろう。最近、貿易収支が少し悪化したが、経常収支は黒字が続いている。対外資産もある。対外純投資が巨額にある。それともう一つ、後半の質問にも関連するが、担税能力が日本国には残っている。それは専門家であればすぐにわかることで、消費税の議論を考えても、「いま日本では5%、ヨーロッパでは二十数パーセント、では、15%上げたらどうなるのか、耐える能力はある」と一応は計算するわけである。だから今申しあげた経常収支とか担税能力とか、対外純資産とか、そして支えているのは国民であること。この関数の中で、現在は非常に安定した状態にある。ただ、そういうものが一つ一つ崩れていくとどうなるのかということに気をつける必要がある。直近で言われたのは、貿易収支が赤字になった、経常収支はいつまでもつのかということ。また、実は日本国債を買っているのは国民の預金であるが、預金量は増えているものの、貯蓄率が下がってきているということもある。それは人口構成の問題でもあり、人口構成が変化した時に何が起きるのか、ということも考える必要がある。そういうものの何かがトリガーとなり、日本国内で支えられなくなると、海外勢に買ってもらわないと発行できない、という循環に陥った時が一番怖いということなのである。したがって、それがいつ頃来るのかということに関して、私が一言申しあげたのが、放っておけば10年単位の時間軸ではないということなのである。具体的にいつ来るのかというのは、軽々しく申しあげられない。
 質問の後半にあった、一体改革ができない場合にどうなのかという点についてであるが、一つの信頼感がなくなるというのは明らかである。特に外国勢の立場からはそうであろう。単純に5%から20%に向けた余力は十分あると思っていたら、10%にすることすらできなかったという評価を受けるであろう。そうすると、国債の問題だけでなく、いろいろなところで、日本国に対する国際的評価が変わってくるであろうということは言えるのではないかと思う。


(問)
 政策保有株について、1問だけフォローアップで伺いたい。先ほど、ALM上ボンドとエクイティは逆相関の関係があるので、ボンドだけのリスクを見るべきではないとおっしゃったが、一方で、政策保有株については、売るときに相手方の許可がいるということで、全体的なアセットアロケーションにおいて非常に機動性に欠ける面もある。そういう意味では、政策保有株の削減は引き続き大きな課題として対応しているのか。
(答)
 政策保有株については、コンスタントに削減を進めている。遅々として進んでないとのご指摘もあるかと思うが、非常に丁寧に進めている。少なくともここ数年で、MUFGでは1兆円程度の売却を進めてきたし、10年サイクルで言えば、9兆円から3兆円程度まで、6兆円程度を売却しており、お客さまのご納得を得ながら、着実に進めているということである。

以上