平成24年3月15日

永易会長記者会見(三菱東京UFJ銀行頭取)

和田専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 就任期間を振り返って、実現できたこと、並びにやり残したことをお聞かせいただきたい。
(答)
 それでは、最後の会見ということで、就任期間の総括と若干の感想を申しあげたいと思う。
 振り返ってみると、今年度は、誰も想定しえないような未曾有の危機が押し寄せ、これまで私たちが是としてきた様々な前提が大きく揺らぐなか、内外で国を挙げて、その克服、さらには持続的成長に向けて必死で取り組んだ「試練の年」であったと思う。
 東日本大震災は、国内観測史上最大のマグニチュード9を記録し、地震や津波だけでなく、原発事故まで併発した、まさに千年に一度の大災害であった。しかも、原発事故は、一時的な電力供給の制限にとどまらず、国のエネルギー政策そのものを根底から揺るがす結果となった。さらにこの間、為替も、個別の企業努力では対応不能と言われる円高水準に達するなど、まさに、わが国における経済活動の前提が大きく揺らいだ歴史的な局面であったと思う。
 一方、海外においても、ギリシャの財政危機に端を発した欧州債務問題は、イタリアやスペインの国債相場の急落に波及し、ユーロを導入した欧州通貨統合の是非を問う声まで出る等、一時は枠組み自体への信頼が大きく揺らぎ、世界経済に甚大な影響を及ぼしている。
 私は、7月に全銀協の会長に就任した際、「今年度は未曾有の国難を乗り越え、新しい日本を創り上げていくための"起点となる年"」と申しあげた。実際、危機の克服に向けた取組みは、道半ばではあるものの、政官民の必死の努力により、一歩一歩着実に前進していると思う。
 例えば、震災からの復旧・復興に向けて、政府には第四次まで補正予算を立て続けに成立させていただいたほか、日銀には思い切った金融緩和策によって、円高急進の流れにブレーキを掛けていただくなど、迅速かつ的確な危機対応を打ち出していただき、大変心強く思っている。
 私ども銀行界も、「3つの柱」、中でも「震災復興への貢献」を最優先課題に掲げ、全力で取り組んで参った。就任当時、喫緊の課題となっていたのが、二重ローン問題である。そこで、個人のお客さまに対しては、全銀協が事務局となって「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」を策定し、8月には組織体制の整備から運用開始まで急ピッチで対応した。その後も、相談態勢の充実や運用目線の柔軟化等、実態に則した不断の改善を重ねた結果、現在では2,600件もの照会が寄せられており、まずまずの成果を上げているのではないかと思う。
 一方、法人についても、「産業復興相談センター」、「産業復興機構」に続き、「東日本大震災事業者再生支援機構」が業務を開始しているが、銀行界では、これまで80名を越える人材を派遣し、立ち上げを全面的にサポートしてきた。
 また、歴史的な円高の急進を受けて、二つ目の柱である「より安心・安全な金融取引環境創り」では、金融ADRの申立案件が急増するなか、あっせん委員会の地方展開を始め、機能強化に取り組んできた。さらに、震災を契機としたお客さまや社会のリスクマネジメント意識の高まりに対して、より安全な決済サービスをご提供するため、昨年11月に第六次全銀システムを稼動させたほか、「でんさいネット」の準備も5月の開業に向けて最終段階を迎えている。
 加えて、今年度も、規制強化という大きな潮流の下、内外において、経済・金融活動の前提となる法制度の見直しが進められた。銀行界も、三つ目の柱に「新たな法制度の枠組み創り」を掲げ、バーゼルIII・G-SIFIsといった国際金融規制や会社法の見直し議論に対し、規制の強化がわが国経済・金融市場の健全な発展を阻害することのないよう、実業界の視点からしっかりと意見発信した。その結果、相当程度、制度設計に私どもの意見を反映させることが出来たと思う。
 このように、全銀協では「3つの柱」の実現に尽力してきたが、一部、来年度以降に持ち越しとなる課題もある。
 個人のお客さまの二重ローン問題では、スキームの土台作りを終え、来年度はいよいよ運用を本格化し、実績を積上げていく重要な局面を迎える。一方、法人のスキームでは、併存している二つの機構の相談窓口の一本化や役割分担など、実効性向上に向けて、解決すべき課題があると思う。
 また、国内外の法制度の改正についても、会社法・債権法の見直し議論やIFRS等、来年度以降にヤマ場を迎えるものも少なくない。
 全銀協としては、こうした課題の解決に向けて、次期会長となるみずほフィナンシャルグループの佐藤社長にしっかりとバトンを引き継ぐとともに、私どもも、個別行として新会長のサポートに全力を尽くして参りたいと思う。
 以上、全銀協の取組みを振り返ってきたが、今、改めて思い起こしても、今年度は、予想を遥かに越える多くの課題が押し寄せた、本当に大変な年であったと実感している。先行きを展望しても、引き続き、震災からの復旧・復興に加えて、電力供給のボトルネック、成長戦略及び"社会保障と税の一体改革"の推進など、多くの課題が待ち構えている。
 ただし、足元では変化の兆しも伺える。急進していた円高は、日銀の思い切った量的緩和の拡大を契機に、為替市場のムードが変わりつつある。また、欧州債務問題についても、ECBの大規模な資金供給に加え、ギリシャの債務削減に一定の目処が付いた結果、周縁国の国債利回りも落ち着きを取り戻しつつある。さらに、株式市場も、米国景気の回復期待の高まりを含め、こうした内外の情勢変化を好感し、持ち直しに転じている。
 24年度は、こうした経済のトレンドの変化を確固たるものとし、政・官・民が一体となって、危機対応から持続的な成長に向けて、力強い一歩を踏み出さなければならない。
 震災後は、本当に過酷で悲しいニュースが日本を覆った。しかし、こうしたなかでも、様々な人達が被災地復興に向けて立ち上がり、日本全体が「絆」をキーワードに一致団結する姿に、日本再生に向けた強い光明を見出した思いがする。
 銀行界も、お客さまとの「絆」を一層深めながら、金融仲介機能の発揮という使命を全うし、被災地の復興、日本の再生に全力を尽くさなければならないと、改めて強く感じている次第である。


(問)
 東日本大震災の関係で、原発事故は国のエネルギー政策を根本から揺るがしたという話があったが、東京電力の問題について、足元、総合特別事業計画の策定が進んでいる。銀行団として、株主に説明がつくかたちで金融支援をするということに関し、原発の再稼動や電気料金の値上げ、廃炉、議決権の問題など、様々な不確定要素が多いなか、支援姿勢を示したことは、かなり難しい決断だったと思われるが、かかる姿勢を示された決め手、また、どのような条件であれば支援するということにしているのか教えていただきたい。
(答)
 まず、支援表明についてだが、現在策定中である総合特別事業計画においては、金融機関の協力がないと、支援機構法の精神にもとるということになる。したがって、新規融資要請が現実としてあり、これについては、前向きに検討するということで支援表明をさせていただいているというのが現状である。
 通常案件であれば、実抜計画と何回も申しあげてきたが、実効性・実現可能性の高い抜本的な対策により、この企業はこれで大丈夫という確率、蓋然性が極めて高いと判断できないと、ニューマネーは通常出せないというのが大原則である。
 これまでは緊急特別事業計画という臨時の計画があったが、今度は、3月末までに総合特別事業計画を策定しないといけない。銀行団としては、計画を提示いただき、それをチェックしたうえで支援するかどうか決めるというのが通常の原則だが、金融機関の協力が総合特別事業計画自体に組み込まれる案件であることから、1月以降、数ヶ月にわたり、機構、東京電力、銀行団にて、いろいろと協議し、計画の完成に向け、現在も協議しているというのが実態である。
 時々、いろいろな報道があるが、それは断片の話で、しかもあるタイミングにおける話。私も報道は読んだり、聞いたりするが、それがただ今現在で正しいのかどうかは言えないというのが、その時々のタイミングであった。一言申しあげると、現時点も、総合特別事業計画は固まっているわけではないし、支援内容も決まっているわけではない。報道には、様々な議論をするなか、途中段階で瞬間的に出てきた話もある。まあまあこれで良いのではないかという議論はしているが、まだまだ進行形の話であり、3月末に向かって対応しているところとご理解いただきたい。
 もちろん、総合特別事業計画の主体は何と言っても機構と東京電力である。両者が良く話しあって、こういうものを金融機関にもぶつけてみようということで、様々な話し合いが持たれている。現在も状況は同じであり、このようにして案をまとめあげていくが、これをさきほど申しあげた実抜計画に仕上げるというのがみんなの役割だと思う。
 計画策定にあたってのベースは何と言っても東京電力の抜本的なリストラであり、これを徹底的に行っていただくというのがスタート台である。それに対して、機構がどのような援助をするのか、金融機関としてどういう協力をするのか、そういうものをセットにして総合特別事業計画とし、この計画には大臣認定が必要であるので、そこまでもっていくデットエンドが今月と言われている。そういったなかで、繰り返しになるが、支援要請に対しては、前向きに検討させていただくということで回答している。
 総合特別事業計画の内容や金融協力の具体的な内容については、現時点で、私の口から申しあげる段階ではないことを強く申しあげておきたい。ただし、我々は協力する、協力したいという姿勢でこの2ヶ月、いろいろ協議をしてきたというのもの偽らざる事実であるので、その辺はご理解いただきたいと思う。


(問)
 政府が検討している休眠預金の活用について、先日行われた古川大臣との会見で、永易会長は出来る限り協力していくという意向を示しているが、この活用について銀行業界代表として意見を改めて伺いたいのと、実態調査なり、今後どういったかたちで政府に活用を検討するうえで協力される考えなのか教えて欲しい。
(答)
 この問題は今まで何回も取りあげられたことがあり、議論になったこともあるが、今回は政府が正式に検討するという位置付けであるので、当然のことながら、銀行界としては協力する。これは前回も申しあげたとおりである。ただ、この問題というのは、いろいろ詰めるべき点が多い。法律、システム、センターといった問題もあるし、また、実際、かなりの額が払い戻されている。その際には利息を全部付けて返すことになるが、長い期間のなかで金利も結構変わっている。そうしたものを全部計算しなおして払い出すには、相当のインフラが必要になる。だから、法律やシステム、そして一元化されたセンターなど、そうしたものを揃えたうえでのフィージビリティを確保していかないといけない。その際、我々は何を協力するのか、と言うと、二つある。一つは、そういうものを検討する際に必要な計数を極力出すということ。ただ、これについても極力という言葉がどうしても付く。コンピューター化する以前の問題もあり、極力協力させていただくということになってしまう。二つ目は、どのような体制、手続きが必要になるか、その結果、コストはどのくらいになるか、といった実務的な検討を行うに際しては、銀行としての知見、経験に基づいた情報の提供、意見具申が必要であろうと思う。したがって、そういうところでは、しっかりと協力して参りたいと思う。


(問)
 先日、日本銀行が成長基盤融資の拡大を発表されたが、金融機関側の受け止め方を教えていただきたい。
(答)
 2月の政策決定会合で決定された「中長期的な物価安定の目途」という言葉、また「10兆円の資産買取増額」、これらの決定が非常に効果を与えているという点は、みなさんお感じになられているとおり。誰もが言っていることだが、成長路線につなげていくためには、やはり成長産業を育成していかなければならず、今回、日銀はそのことを具体的な方策で示された。現在、すでに活用されている総額3兆5000億円のABLを含めた成長支援資金供給のパッケージ枠について、約1兆円の外貨枠新設も含め、2兆円増額し、また期限も延ばして対応する政策を発表された。
 我々金融機関の業務は、お客さまからの申出を受け、審査をし、貸出をするということだけではない。お客さまと一緒に、今回のような制度を使いながら、事業戦略を考え、一緒に成長していくという、いわばアドバイザリー機能についても、当然のことながら銀行は実施している。新産業といわれる分野や、中堅・中小企業が育っていく過程においては、特にそうである。民間金融機関は、いろいろな材料を与えていただけると、お客さまのケースに応じて、「この制度を利用するとよりやりやすい」、あるいは「非常に安定した資金を供給できる」、と総合的に判断しながら行動できるので、非常にありがたいと思う。資金を供給していただくく以上、お客さまに資金が十分に流れるよう努力しないといけないと思う次第である。


(問)
 先月、エルピーダメモリが会社更生法を申請した。国と銀行からの支援を受けられずに破綻した事例だと思うが、国の支援の是非について、銀行界としての意見を伺いたい。また、産業界を支えていく銀行の役割についても伺いたい。
(答)
 エルピーダメモリの破綻の要因は、直接的には強烈なDRAMマーケットにあり、市況が天国から地獄へという状況が常に繰り返され、それが大幅に悪化したというのが一つ。もう一つは、ライバルメーカーが韓国勢で、円高、ウォン安という圧倒的な格差があり、グローバルベースのマーケットではなかなか勝負にならないという状況に追い込まれたこと。エルピーダメモリからすれば、強烈なアゲインストの状況にあったと思う。元々、平成21年6月に、改正産活法の中で、「半導体は産業の米であり、国家が支援すべき」という判断で、国の資金が拠出されたという流れがあり、この3月末はその改正産活法の期限であった。そういったタイミングで、エルピーダメモリは、最終的に支援を受けられない形になってしまったということである。
 国の資金をどのように考えるのかについて、私がコメントする立場にはないが、国が何としてもその産業を支えるという覚悟があれば、引き続き支援すべきであったのではないか。金融機関としても、産活法という大きな枠組みの中で支援していたので、そういう形になるべきだったのではという気がする。ただ、支援する以上、やはり健全な企業になって欲しいので、そのためには実抜計画を策定しなければならない。その実抜計画の一つの要素が、エルピーダメモリの場合はアライアンスであったと思う。ただ、様々なトライをしたものの、なかなかうまく行かないという状況になり、会社更生法という破綻処理を経たうえで、再生したい、という判断になったと理解している。民間金融機関がそのような産業、あるいはエルピーダメモリのような案件に対してどう対応するか、というのは非常に難しい問題であるが、やはり民間金融機関は、それ相応の勝算がないとずっと支援する訳には行かない。ただ、実抜計画の形に持っていく努力は当然のことながら民間金融機関もやらないといけない。企業と一緒に考えていって、極限まで努力する。それでうまく行けば良いし、ぎりぎりの判断で、そういう計画を策定できないのであれば、これは金融規律の問題もあるので、破綻に至るケースもある。ただ、そこに至るまでの企業と金融機関の努力は大事であろうと思っている。


(問)
 直接、全銀協に関係することではないと思うが、AIJ問題に対する率直な感想を聞かせて欲しい。また、金融庁や民主党が、信託銀行の受託者責任を強化する方向で検討に入っているようだが、規制強化に対する考え方についても伺いたい。
(答)
 この1年間、色々と想定外の事が起こったが、AIJ問題については、本当に私もビックリした。こういうことが起こりうるのか、というのが正直な気持ち。法律の専門家ではないのであまり立ち入った発言は出来ないが、あのケースはやはり一種の詐欺と言えるくらい、ひどい案件だなという印象である。
 後半の信託銀行における受託者責任についてであるが、信託銀行が受託している業務は、本当の事務である。これはみなさんもお分かりだと思うが、少なくとも現時点では、投資顧問会社の指示にもとづいて、事務をやっているにすぎない。その点において、今回、信託銀行側に責任があるとは思えない。ただ、とんでもない事件が実際に起こったわけだから、再発防止に向かって何もしなくて良いというわけにはいかないだろうと思う。
 これは、信託銀行業界として問題意識もあるだろう。また、現在、投資顧問会社に対する調査が行われている。そうした実態や、それぞれの責務も踏まえながら、一方的な規制強化とかではなく、トータルとして、どうすればあのようなケースは防げたのかという観点で、検討する必要があろう。ただ、今でも年金資産は運用成績が悪く、結果として、あのような事件を起こした要因の一つとなったわけでもあるから、過剰に規制を強化することはいけないが、やはり、再発防止に向かって、官民が協力して方策を考えていくことが大切なのではないかと思う。


(問)
 景気の現状について、お聞かせいただきたい。株価が上昇し、円高も是正されている。ただし、この状況が続くかというと、欧州の問題が続くかもしれないし、米国の景気が良いのかどうかもわからない。見通しも含めて、お聞かせいただきたい。
(答)
 今、景気が良いのか悪いのか、非常に微妙なところかと思われる。特に、日本経済ということになると非常に微妙な段階である。これは白川総裁も、そういう表現を使われていた。ただ、上方に向くような動きはあるという表現をされている。それで間違いはないと思う。ただやや独断と偏見で言わせてもらえば、やはり日本国内は、第四次までの補正予算20兆円、これが全部出ているわけではなく、今から本格化する部分も多い。復興需要自体は、資金需要という話だけではなくて、あらゆるところにそのニーズがあると考えると、この1年というのは、そんなに景気が悪いはずがないと思っている。経済成長率が例えば3%に近いのか、2%になるのか、2%を切るのか、こういう議論は専門の方に聞いていただきたいが、この1年間は、日本経済の景気が悪くなるはずがないと思っているということは事実である。今これだけ円安に向かっており、これだけ株があがっていることは、もちろん日本経済に良い影響を与える。特に円安に向かっているということは大きい。株が高くなっているひとつの要因は円安であるためで、この円安というのがひとつのキーワードである。円高でこれだけ苦労したが、昨年3月の時点と、今はほとんど同じ為替水準である。84円とか、83円台の後半、ここまで戻ってきている。日本銀行の2月のデフレ脱却宣言的な発言と、QE3とは言わないが、資産買入の規模を10兆円増やして55兆円から65兆円にした。その連打の施策というのが、円安のベースになっていることは間違いない。ただ、これはECBが2回に渡って合計1兆ユーロを、あれもQE1とQE2と言ってもいいと思うが、それを投入した結果、当面は欧州債務問題には一服感が出ている。これは本質的な問題がなくなったわけではないが一服感はある。今回のFOMCで米国はQE3を見送ったが、これはある面では、景気に自信があるからで、米国はそれほど悪くはないという判断である。しかも結果として、日米の金利スプレッドが発生した。金利スプレッドというのは、為替を規定する大きな要因であり、特に3年ものとか2年もので金利差が開くと、為替がそれに連れて動く、非常に強い連関がある。米国がQE3を見送る一方、日銀は追加で実施した結果、円安になったわけだ。もうひとつ言えるのは、いつも円は安全資産、安全通貨と言われているが、2011年は31年ぶりに貿易赤字になり、今年1月はついに経常収支まで赤字になった。これはやはり、円が本当の安全通貨なのかということに対する、少なくとも若干の疑義を起こした。何かあればスイスフランと円に行けば良いという発想が、やや減殺したであろう。こういった要素がトータルで、現在の円安の状況を規定しているのであろうと思う。そういう状況というものが、今からさらに続くのかと言われると、これはなかなか判断できない。正直言って、そういうものを見通す材料というものを持っていない。84円まで来たのであれば、90円とは言わないが、85円、もう少し円安方向に行ってほしいという気持ちもあるが、それが本当に来年度以降も、そのトレンドが続くのかと言われると、正直言ってわからないと言わざるをえない。


(問)
 資金需要についてお伺いしたい。都銀、地銀を合わせた貸出残が前年比ではプラスになっているが、内訳は、地銀による地公体向けや電力向け貸出ということで、実際に腰の入った力強い資金需要というのはいつ頃からみられるのか。また、それに加えて、復興関連の資金需要も、本格的な強さというのがいつ頃からみられるのかお伺いしたい。
(答)
 ご指摘のとおり、計数だけをみれば、去年の9月位から末残はプラスに転じ、平残も10月からはコンスタントに前同比増加という状況がずっと続いている。すでに6ヶ月以上続いているので、それ相応の資金需要が出ているということは確かであろう。ただ、その内訳として、今ご指摘のような要素もあるので、本格的な資金需要が回復基調を辿っているかというのは、まだ正直言って判断できない状況だと思う。やはり、前にも申しあげたが、本当の意味での資金需要というのは、売上が伸びて増加運転資金が出てきたり、また、新しい設備投資のために資金が必要といった段階のもの。こういう段階になると、本格的な資金需要が出てきたという判断ができるのだが、これが今、全然ないかというとそんなことはない。それ相応には出てきてはいるのだが、先程の景気の話の連関でもあるが、来年度以降、もう少し全体のムードがそちらの方に向かってくると、ベースのところには復興需要がある訳だから、そこにどれだけ本当の意味での資金需要が乗ってくるかということだと思う。期待値としては、4月以降そのような需要が徐々に出てきて欲しいという気持ちはあるが、いつ頃になれば本当に出てくるのかというのは正直言ってわからない。ただ、大なり小なりではあろうが、必ず出てくるだろうという感覚は持っている。


(問)
 先ほどの景気の話とも関係するが、日本の長期金利も昨日、今日の二日間でみると、5年債も10年債もこれまでにはあまりないような上がり方をしている状況かと思うが、現状の分析と先行きの見通しをどのように見ているか教えていただきたい。
(答)
 これは釈迦に説法であるけれども、通常であれば、株式相場と債券相場というのは負の連関であるから、いま株式がそれ相応にぐいぐいと上がっているわけであるから、債券は下がる、すなわち金利が上がるという、当然の結果が出ているのだというのが、現在の状況だと思う。上がり方が大きいのではないかというご指摘かもしれないが、株の上がり方も大きいから、当然負の連関からいったら、この程度は上がってしかるべきであろう。ただ、今後はどうなるのか、これがどこまで上昇して行くのかというのは、日本だけでなくて、米欧も資金はじゃぶじゃぶの状態がずっと続いているおり、こういうものを大前提としたうえで、景気、株、国債、これらがお互いに連動しながら動いていくということであろうと思う。したがって、さっきの景気の話と同じで、これから逆方向に行くというのは、それほど足元では起こらないだろうと思うけれども、どういう方向でそれがスピードアップするのか、正直言って現時点ではよくわからない、両にらみかなという感じがする。


(問)
 休眠預金の関係で2点ほど伺えればと思っている。先日、古川経済財政大臣の方から休眠預金の3つの原則というのを掲げられて、1つは法的措置を講じる、しっかり立法措置をとる。もう1つ、過去の休眠預金は対象にしない。もう1つは払出しの支払い要求には今後とも応じる。詳細なスキームはまだ明らかになっていないのであるが、見方によっては、新規で生じた分については政府が活用して、古い過去に起こったものについては政府が使わないと。そこの管理コストというのは、いままでは益金に算入したものから損金算入にしたものを差し引いたもののなかで、管理コストというのを出している形式的なかたちになっていたと思うのであるが、もし仮に新しいものだけ政府が持っていって、古いものはいままでどおり銀行ということになると、過去のストックのコストだけは銀行が負担し続けないといけないというかたちになるのではないかと思うのであるが、こうした新しい3原則の形態についてどのように見ておられるかというのが1点。もう1点は、来月中間とりまとめをしたいという話をされていると思うのであるが、まずはこの話はコストも含めて実態はどうなっているかという話がどうなるかというのが大前提の話でないかと思う。一向にそういうものの調査がなかなか戦略室からも落ちてきていないのではないかと思うのであるけれども、その政府が描いているタイムスケジュールと実際の仕事の進み具合についてどういうふうに思っておられるのか、以上2点、伺えればと思っている。
(答)
 後半のご質問は私にはわからない。政府がいま作業をされつつ、それをデッドエンドにしながらやりましょうと言っているだけであり、私は答える立場でもないし、正直、わからない。
 3原則については、新旧という表現を使われたけれども、ある面では非常に当然であり、妥当な3原則の1つではないかと思っている。何をもって旧というのかということではあるが、過去分については、集計をするにしても作業があまりにも膨大で、協力するのも容易ではない、という範疇なのである。したがって、そういう状況も踏まえられたうえでのご発言だと思うので、ある面では妥当なご発言なのだろうと思う。


(問)
 最後に一言お願いしたい。
(答)
 今回、急遽、二度目の登板となりましたが、全銀協会長を務めるにあたり、前回同様、ここにお集まりのみなさまをはじめ、全銀協職員のみなさま、各関係者のみなさまより大変なご指導・ご協力をいただいた。あらためて厚く御礼申しあげる。来月からは、みずほフィナンシャルグループの佐藤社長が会長に就任される。みなさま良くご存知のとおり、佐藤社長は、大変高いご見識と卓越したリーダーシップを兼ね備えた方であり、銀行界を力強くリードしていただけるものと確信している。
 最後に、みなさまに佐藤社長への一層のご支援をお願いして、私のご挨拶とさせていただく。ありがとうございました。

以上