平成24年5月17日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

和田専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 ヨーロッパ情勢であるが、ギリシャの再選挙も決まり、ギリシャのユーロ離脱も現実味を増している状況である。足元では円高、株安も進み、日本経済の成長役である新興国の輸出にも影響を与えかねない状況にもなっているが、ユーロの混乱が日本経済に与える影響について、ご所見をお願いしたい。
(答)
 今年の初めくらいから欧州の状況については、そう容易ではないという認識を持っていたが、足元の状況を考えると、混迷の度合いはやはり深まってきているようだと言わざるを得ないと思う。ギリシャの問題は、今後1ヶ月の間に再選挙が行われるということであるが、巷間言われているとおり、ユーロから離脱するといったことを考える方も出てくる状況になってきた。もし、ギリシャがユーロから離脱するということが、仮にもあるとすれば、やはり世界経済に与える影響は極めて大きいと考えられるので、私としては、欧州当局や各国首脳が全力を挙げてギリシャの離脱を防ぐことに力を注いでいただけると信じているところである。
 欧州の金融という観点で申しあげると、ご承知のとおり、流動性の点については、欧州中央銀行が豊富な流動性を供給する仕組みを作って、また、金融安定化という点では、基金を増額し備えている。こうした欧州金融当局の努力の積み上げにより、ギリシャの足元の問題がすぐに金融システムの不安につながることはないと私は考えている。
 しかしながら、この混迷が長引くようなことになると、事態はさらに深刻になってくるので、今申しあげたように、全力で努力することがこれからも必要になってくると思う。この問題を別の観点から捉えてみたいと思う。
 ギリシャにおいては、緊縮財政に対する強い反対論の存在が、政治混迷の大きな要因になっているが、同じようなことがヨーロッパ各国で起こっていると考えるべきであると思っている。ドイツの地方選挙においても、やはり緊縮財政に対する国民の疲れといったものが票に反映されたという分析もある。また、先日、イギリスの元首相と話をしたが、イギリスにおいても非常に厳しい緊縮財政が一定期間続いたことで国民に嫌気感のようなものが出てきていると言っておられた。
 さらにフランスの新大統領も成長戦略と財政再建のバランスを取る方向に少し舵を切ったことで選ばれた点を考えると、ここにきて、従来の財政再建一辺倒という考え方から緊縮財政と成長路線とのバランスを取るという考え方に少しずつ変わってきているのではないかと思う。
 ただし、ギリシャについては、そういった一般論で片付けるわけにはいかない状況である。敢えて個人的な見解を申しあげれば、ギリシャの財政再建は待ったなしの状況であると思う。
 この問題を日本に翻って考えてみると、成長路線と財政再建のバランスをどうとるのか、今申しあげたような、ある意味で普遍的な問題が同じように存在していると考えている。ただし、日本の場合は、欧米諸国に比べて増税の余地がかなり大きく、非常に強い産業ベースがあるので、いわゆる成長戦略を描くことにおいては、十分なポテンシャリティーを持っていると考えている。したがって、こうした余力があるうちにしっかりと日本の新しい成長と将来像を描いて、一歩一歩アクションとして実行していくことが、わが国にとって非常に大切であるということを、このヨーロッパの状況が示しているのではないかと考えている。


(問)
 銀行の経営環境についてお伺いしたい。前期の銀行決算が出揃ったが、これをどう分析されているのかということと、今期円滑化法が打ち切りになるが、影響を懸念する声、出口戦略の議論も高まっているが、これを踏まえて、今期の銀行の経営環境をどう見るか教えていただきたい。
(答)
 まず、足元の日本経済について私がどのように見ているかということを申しあげたいと思う。ご承知のとおり、1-3月期のGDPは4.1%の成長ということで、いい数字ではなかったかと思う。この要因は、一つは、昨年末から再開されたエコカー補助金が個人消費のプラスにつながっている面があるかと思う。個人消費は、1.1%のプラスとなっている。もう一つは、ようやくここにきて復興需要が顕現化してきたことであろう。公共投資が5.4%の成長率であり、復興需要の顕現化というふうに申しあげてよいのではないかと思う。また、輸出入について申しあげると差し引きで1%のプラスである。円高等厳しい環境ではあるが、タイの洪水の影響などのマイナス要素が剥落して、今のところ、輸出入のネットで1%のプラスとなった。こうした面から、足元の日本経済については、政府も見方を少し変えるという報道もあるとおり、やはり順調な回復基調にあると考えている。今後の日本経済を見ても、11年度の補正と12年度の予算ベースで約18兆円の復興資金が用意されていることを考えると、復興需要はこれからも継続していくであろうと思っている。また、エコカー補助金についても期間の制約はあるものの、しばらくは続くことから、個人消費も相応に底堅い数字を上げることが出来るのではないかと思う。それから、産業の方では、在庫投資の調整が大分進み、少し勢いが出てくることを考えると、今のヨーロッパ情勢がもたらす円高により輸出にブレーキがかかるといった問題がどの程度のインパクトを与えるかということをもう少し見ていく必要はあるものの、総体的にはこの回復トレンドは今年度も維持されるのではないかと思う。ただ、不安定要素もいくつかある。欧州経済の問題に伴う円高、それからもう一つ大事な点は、足元は少し落ち着いている状況にあるが、原油を含めた原材料の高止まり感、三つ目は、エコカー補助金が打ち切られた時のマイナス影響であり、こうしたことが今後のリスクファクターではないかと考えているところである。
 このような足元の状況を踏まえたうえで、ご質問の銀行決算について申しあげたい。確かに日本経済の足元は回復基調にあるが、残念ながらこれがストレートに貸出金の需要、あるいは預貸金の金利収入の増加につながるところまで力強いものにはなっていない。昨日、中西静岡銀行頭取もおっしゃっていたが、やはり今期は、大手行あるいは地方銀行も含めて、一つはクレジットコストの減少、もう一つは国債の運用益で支えられた決算であって、必ずしも力強い成長の中で出てくる資金収支で支えられたわけではない。この中西頭取の分析には私も同感するところである。したがって、今期も、引き続き、国債等の収益をある程度見込むことになるが、これだけの低金利が続く状況であれば、過去のように国債等の収益に依存した収益見込みを作り上げることは極めて難しいと判断している。大手行の場合は、その分を海外、あるいはプロダクツを使った非金利収入等によって打ち返す方法もあるが、地域金融機関にとっては、ある意味で我々メガバンクも同様であるが、国内でどのように収益を上げていくのかについて、今年は一つ大きな正念場になってくるだろうと思う。先月の会長就任会見でも申しあげたが、我々大手行と地域金融機関がヨコの連携によって、一次産業の六次産業化、あるいは特に被災地における医療・介護といった新しい産業におけるいわゆるクラスターの形成、私どもが現在やっている福島県沖での洋上風力発電、こうした新しい産業、新しいエネルギー政策といったものを金融機関のヨコのつながりで、自ら作り出すことによって、国内の貸出、資金需要を創出していく努力、日本経済、国内経済を持ち上げていく努力が、金融機関の規模に関わらず、今年は特に求められているのだと考えている。また、そのための種は、今の日本には、確かにあると考えているので、是非、そういうことが実現出来るように銀行界全体として頑張っていきたい。それが同時に我々に課せられた中堅中小企業への金融の円滑化という大きな使命を果たすことにもつながると思う。
 ご質問の後段の円滑化に関してであるが、金融円滑化は、法律が存在しているから行っているわけではなく、以前にも申しあげたが、金融機関が恒常的に果たすべき最も重要な社会的役割として取り組んできた。法律によってそれがより明確に浸透してきているということは事実である。これからも同じような努力を続けていくが、特に我々にとって一番大事なことは、中堅中小企業の方々の声をお聞きして、事業計画について、しっかりとアドバイスを差し上げていくことであると思う。その過程で、例えば、いろいろな新しい貸出手法、あるいは今検討されている資本性借入金を提供していくといった従来なかった手法で中堅中小企業の金融円滑化により一歩踏み込んで努力をしていきたいと考えている。


(問)
 三菱東京UFJ 銀行がイラン政府の口座を凍結し、決済を停止していることが分かったが、他の銀行はどうなのか。全銀協としての対応・影響・見通しについて聞かせてほしい。
(答)
 そういう報道があったことは承知しているが、詳細については存じあげない。これから私自身も確認したいと思っているところだが、本件はアメリカの個人の方からの提訴によるものだと聞いている。ご承知のとおり、日本は原油輸入の約10%をイランに依存しているので、もしもイラン原油の決済が日本の金融機関でできなくなるということになると、これは金融の問題というよりも、むしろわが国のエネルギー政策そのものにかかわる、非常に重要な問題になるのではないかと憂慮している。したがって、今後この問題については、関係ご当局を含め適宜適切に対処していく必要があるというふうに理解している。


(問)
 JPモルガンが約20億ドル超のトレーディング損失を被ったことにより、アメリカ議会やオバマ大統領を中心に、銀行規制を強化すべきではないかとの議論が再燃しているが、その点についてご見解を伺いたい。
(答)
 本件報道のインパクトは、JPモルガンのCEOがジェイミー・ダイモン氏であったということが非常に大きかった面があると思う。同氏は、銀行規制の過剰さについて、アメリカの金融界において最も強固な意見をずっと述べて来られたことはご承知のとおりである。
 本件について、報道ベースの情報しか持っておらず、詳細は存じあげないが、敢えて報道にもとづいて申しあげると、CIOという部署が、市場流動性の乏しいCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の一種によりヘッジオペレーションを行い、これにより損失を拡大したとされている。ヘッジ取引により、これだけの多額の損失を出したということが、もし事実だとすれば、レギュレーションの問題ということ以前に、JPモルガンのリスク管理体制に原因があったのではないかと推測する。
 さらに、本件は新しいもう一つの局面、即ち、我々がよく使っているリスク管理の一種のバイブルとも言われている、バリュー・アット・リスクという考え方自体に、ある種の脆弱性があったのではないかという議論に発展しつつある。バリュー・アット・リスクは、JPモルガンが根本的な部分を考えてきたのであるが、これに限界が存在することは我々金融界では一種の常識であり、これをサポートするために様々なストレステストなどを実施することで、全体としてリスク管理をしており、バリュー・アット・リスクだけに頼ってマーケット性商品のリスクを見ているわけではない。
 したがって、その点も含め、あれほど先進的なリスク管理と謳れていたJPモルガンが、こうした損失を出したことがもし事実であるなら、これはむしろレギュレーションの問題ではなく、ガバナンスの問題ということになるのではないかと思う。
 ただし、何度も申しあげるが、事実関係を私自身存じあげないし、今後、詳細が明らかになると考えている。
 ちなみに、今、バーゼル銀行監督委員会においてトレーディング勘定の抜本的見直しが検討されているが、その中でバリュー・アット・リスクについても議論がなされており、5月3日に市中協議文書が出されている。この中で、トレーディング勘定を、公正価値評価ベース、あるいは保有目的ベースで区分すべきかという点や、バリュー・アット・リスクについて、いわゆるロングテールのところも含めたバリュー・アット・リスク、これはコンディショナル・バリュー・アット・リスクという名称が使われているが、こうした新しい、広いバリュー・アット・リスクの概念を使うべきではないかということが検討されている。このJPモルガンの問題はガバナンスの問題のみならず、バリュー・アット・リスクの問題に波及してくる可能性があると考えている。
 再度申しあげるが、特にボルカー・ルールに対し反対意見を述べていたジェイミー・ダイモン氏の下で起きた問題であるがゆえに、新聞報道にあるように、本件が銀行規制をさらに強める方向に働くのではないかという観測もあるが、このことについては事実が明らかにならない限り、何とも申しあげられない。


(問)
 先ほど、ギリシャがユーロから離脱した場合に世界経済に大きなインパクトがあるという話だったが、具体的にどういった経路でインパクトが拡がっていくと考えているのか。例えば、日本経済については円高という動きを通じて影響するのか。それに関連して、日本国債の利回りが下がっていると思うが、これについてのリスク、つまり反動で逆の方向の動きが出た場合に金融機関が多額のロスを出すこともあると思うが、これについてどのようにご覧になっているか。
(答)
 ギリシャの問題がこれからどのような展開を見せるかによって、生じるインパクトは多少違うと思う。仮定の話を全銀協会長という立場で述べるのは適切ではないと思われるので、私個人の意見として申しあげる。
 まず、仮にギリシャがユーロから離脱ということになると、これはEUという枠組みそのものの問題になるので、グローバルに危機が拡がる可能性があり、全世界的に大きな影響が及ぶことが想定される。もちろん、そのなかで日本経済および日本の金融機関にも影響が及ぶことになると思う。
 しかし一方で、現在のようにやや混迷した状況にあっても、ヨーロッパ全体でギリシャを少しずつ支えながらユーロからの離脱を抑えて進んでいくというシナリオもあり得るのではないかと考える。ただし、その場合でも、一時的な混乱は避けられても欧州景気の長期低迷は避けられないと思う。これらの場合に日本経済にどのような影響が及ぶのかということについて、まずはっきりしていることは為替への影響だと思う。いわゆるリスクオフの状態になる時に、やはり円は安全資産として買われるため、日本国債の金利はここ数年間でのヒストリカルローになっているにもかかわらず、国債金利がさらに下がり、円が再び高くなるというリスクはやはり存在すると思う。
 次に、欧州景気の長期低迷ということが仮にあるとすれば、明らかにこれは我々にも影響の大きい中国経済に対して悪影響を与えるであろうということが考えられる。中国経済が影響を受けるということは、それはすなわちアジア経済全体に影響が出るということにつながることになる。その結果、日本経済にも大きな負の影響が出てくる可能性があると思う。ご承知のとおり、中国の最大の輸出先はEUであるので、EUの景気低迷がどのくらいの深度でどの程度の期間続くのかということによって、中国の非常に微妙な経済情勢に大きな影響を与えることになるのではないかと思う。微妙な状況と申しあげた中国経済に関する私の見方を申しあげると、今年初めから直近までの不動産価格を見るに、各主要都市において明らかに右肩下がりとなってきており、固定資本形成の数字もかなり下がってきていることからすれば、2010年以降金融引き締めを続けてきた中国当局による景気へのブレーキが相当利いているのだろうと見ている。このブレーキを緩めてその効果を見極めようというのが、昨年末の預金準備率0.5%引き下げであったのである。ただ一方で、食品価格の上昇が中国経済にとっては特に大きなダメージとなるので、資源価格の高騰による影響等を含め、中国はインフレ懸念を絶えず意識して経済運営をしていかなければならない状況にある。インフレ動向を横目にブレーキとアクセルをコントロールするという、非常にセンシティブで微妙な状況の中、欧州経済が深く長期間低迷することになると、恐らくそれは中国当局にとってみれば今まで以上にアクセルを重視した政策が求められる可能性が出てくるであろう。日本経済のみならずアジア経済にとっても中国経済の成長というものは絶対に必要であり、野田総理も最近訪中されたが、まず中・韓・日の東アジア三国により、通貨・資金の融通などの連携も含め、手を強く携えて東アジア地域の成長を維持し、ひいてはそれがASEAN+3での安定成長に繋がっていくことが、日本の経済にとって非常に大事であると感じているところである。
 日本国債急落のリスクについて申しあげると、今説明したような経済環境でもあり、長期金利が急上昇するといったリスクが間近にあるということは想定していない。以前から申しあげているが、高水準の外貨準備や90%を超す国内消化率、さらには税負担余地の大きさという観点から、国債金利が直ちに上昇するような状況にはないと思っている。個別金融機関としては、国債売買益に頼った収益構造は変えていく必要があり、今年の大きな課題であると認識しているが、国債保有に伴うリスクが大きいと現在感じている訳ではない。各金融機関とも、様々なケースを想定したリスクシナリオの下で厳密なストレステストを行い、当然ながら経営もそれを認識しているわけだが、足元の環境は、そういうリスクシナリオのような状況を引き起こすものではないと考えている。


(問)
 イランの話に戻って恐縮だが、先ほど、当局を含めて対応を検討していくということであったが、今口座を凍結している三菱東京UFJ銀行以外の大手行の口座で決済を代替していくといったことも、今後検討していくのか。
(答)
 その問題については、お答えする材料を全く持ち合わせていない。言えることは、どこの銀行ということではなくて、どこかの窓口が開かないと原油の決済ができないので、かなり大変なことになるということである。したがって、今後、関係当局の方も交え、どのような対応をするのかということが議論されるのではないか。現段階で、個別行に対して何らかの要請があるわけでもないので、それ以上のことは申しあげられない。


(問)
 それに関連して、例えば日本の銀行が日本の国内に持っている口座に対して、アメリカの裁判所から凍結等の命令がでるということ自体、法律の手続き上どうなのだというような意見もあると思う。三菱東京UFJ銀行も異議申し立てをされているということであるが、司法手続きに関しての所見や見解はあるか。アメリカの司法権が、日本の銀行が日本の国内に持っている口座に対しても及ぶのかという議論があるような気がするが。
(答)
 それについて、正確な答えを持ち合わせていない。できるのかどうか、法律の解釈としてそれが正しいのかどうか、申し訳ないが、正確な答えは持ち合わせていない。


(問)
 郵政民営化委員会の陣容が一新され、新しい委員の中からは、ゆうちょ銀行等の新規業務について前向きともとれる発言をされている方もいる。改めて、新規業務の動向について見解を伺いたい。
(答)
 極めて重要な問題だと認識している。
 日本郵政グループが、ゆうちょ銀行の新規業務について参入したいとおっしゃっていることは、いくつかの報道で承知している。
 新規業務については、あくまで日本郵政が保有する株式が全体の2分の1以上であれば認可制であり、2分の1を下回った場合には届出制という枠組みの中で行われる。その両方のケースにおいて、三つの大事な原則・条件のもとに、中立かつ公正な第三者機関である郵政民営化委員会がしっかりとした議論をして、それらの条件が満たされているのかどうか、きちんと見ていただくことが認可あるいは届出の前提になっていると考える。
 三つの条件というのは、一つは「公正な競争条件が確保されているかどうか」、いわゆる民業圧迫という状況になっていないかである。二つ目は、「ゆうちょ銀行そのものの規模が再拡大しない」ということが担保されているかどうか。三つ目は「利用者の保護が十分果たされているかどうか」、こういう3点がきちっと議論されることが前提になるということである。
 国会の議論の中で、衆議院あるいは参議院でもこの民営化法案については附帯決議がなされており、そうしたことについてしっかり議論することが前提とされている。したがって、どのような新規業務について、どのような計画をもっておられるのか承知してないが、そのような要請があるとすれば、今申しあげた大原則に則って、きちっと議論されていくべきものと考えるところである。
 付け加えさせていただくと、例えば1番目の点について言えば、巨大なゆうちょ銀行が、あるどこかのマーケットに入ってくるということになると、特に地銀、第二地銀、信金、信組といった金融機関にとっては、非常に大きな脅威となる。そのような状況で、公正な競争条件が確保されていると言えるかどうかということだと思う。今のところ、ゆうちょ銀行は政府の関与が非常に大きい銀行であるので、公正な競争条件が確保されているとは思わない。
 もう一つ、3番目の点について申しあげると、やはり我々金融機関というのは、例えば貸出業務について申しあげれば、事業会社向けであれ、個人向けであれ、与信管理の手法を長年築き上げ、また、様々なコンプライアンスのノウハウを積み上げてきたうえで、与信業務を行っている。その点から、ゆうちょ銀行という組織が十分な与信管理能力を持ってマーケットに参入されるのかどうかということは、単にゆうちょ銀行の抱えるリスクのみならず、ゆうちょ銀行の存在の大きさから考えると、そういったところにもし問題があれば金融システムそのものに問題が波及する可能性がある、という観点からも、この3番目の点について十二分な議論をしていただくことが必要ではないかと考えている。


(問)
 2点質問する。今期は日本国債の売買益をなかなか期待できないということだが、2011年度上期は日本国債だけでなく米国債でも売買益を計上していたと思うが、今期は案外日本国債で稼がなくても米国債によって市場部門が好調ということもあり得るのか。
 もう1点は、世界の銀行が日本化し、規制の強化によりハイリスク・ハイリターンの商売ができなくなってくると、相対的に日本の銀行の収益が見劣りしなくなるのではないかという考え方もあるが、直近の決算も含めて、欧米の高収益金融機関と比べて邦銀の地位は上がってきているのか、それとも欧米の金融機関に対するキャッチアップには課題を抱えているのか。
(答)
 1点目について、まずマーケット収益は、その時々の全体の環境によって大きく結果が異なってくる。その中で、前期は例えば日本国債だけではなく外国債券の保有によっても大きな収益を上げている状況である。今期について言えば、今後のマーケット環境はかなりボラタイルな状況となる可能性があると見ている。市場性収益はむしろボラティリティのところで稼いでいく場面も多いので、ご指摘のように米国債保有が奏功する可能性もあるであろう。ただし、日本国債の売買益についていえば、昨年度は出来過ぎといった面もあり、我々も今年度の計画値の中で昨年同様の実績を織り込むことは行っていない。この点については、各メガバンクとも昨年度の収益実績に比べ、かなり保守的な計画見積もりをしているのではないか。
 2点目について、リーマンショック以後の動きだと思われるが、いわゆる投資銀行業務で大きな収益をあげてきた欧米の金融機関については、足元の収益力が従来に比べて低下してきている。また、CDSのマーケットに表れているが、投資銀行の収益あるいは保有リスクについて、リーマンショック以前と以後で質的にかなり異なってきており、金融界全体として捉えると、収益源をどこに求めるかについては、かなり大きな変化が起こっていることは間違いないと思う。
 例えばボルカー・ルールで謳われていることでもあるが、実需が伴うお客さまのニーズにどのように応えるかということが収益の源泉であるべきである。別の言い方をすると、証券化商品のようなマーケットの商品を右から左に動かすことによる収益にあまり依存できなくなっているということである。クライアントのニーズに密着した業務で収益をあげていくビジネスモデルは、実は日本の金融機関が最も得意とするところである。日本はもともと間接金融の形で金融が発達してきた歴史的な背景もあるので、クライアントのニーズに応えることで収益をあげるビジネスモデルは、非常に得意とする分野であると理解している。
 さらに申しあげると、近時、各メガバンクとも海外でかなり収益を伸ばしており、例えばみずほフィナンシャルグループは去年1年間でアジアにおける収益を35%伸ばしている。その理由は、我々が日本のお客さまの営業戦略・事業戦略の中に飛び込んで、そのなかで議論を積み重ねて金融ニーズを掘り起こしてきたその手法とリレーションシップの築き方が、特にアジアにおける非日系営業において十分通用しているからであると理解している。欧米の金融機関にとって不可能ではないと思うが、アジアという我々のホームマーケットにおいては、アジアの取引先あるいは国も含めて、経済成長を遂げた日本の歴史に学びたいという非常に強い思いがあるが故に、日本の金融機関はそれを大いに活用しながら、「アジアと共に成長していく日本」という大きな絵姿の中で差別化を図ることにより、成長を遂げていくことが十分可能になってきていると考えている。


(問)
 イランの件について確認だが、三菱東京UFJ銀行以外に、他の大手行にはニューヨーク地裁からの指示書というのは届いていないという認識でよいか。
(答)
 みずほについて申しあげると、ニューヨーク地裁からの指示書は届いていない。
 先ほどイランの件について、関係当局の方も交えこれからいろいろ協議されるという言い方をしたが、もう少し正確に申しあげると、これからどこがどういう形でこの問題について対処していくのかまだ決まっていないと思うし、どこが中心となってこれを受け止めるのかも含め、今後の課題であると申しあげておきたい。

以上