平成24年6月14日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

和田専務理事報告

 事務局から2点ご報告する。
 1点目は、本日の理事会において、お手許の資料のとおり、平成25年度税制改正の要望書を取りまとめた。今後、関係先に対し要望書を提出し、要望の実現に向けて働きかけてまいりたい。なお、本件に関する内容については、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。
 2点目は、「振り込め詐欺撲滅強化推進期間」の実施についてである。本日の理事会において、お手許の資料のとおり、7月12日から8月31日までの約1ヶ月半を「振り込め詐欺撲滅強化推進期間」とし、啓発イベントの開催や全銀協作成の頒布物の会員銀行での店頭配布等を通じて、振り込め詐欺の注意喚起を行うことを決定した。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 17日に注目のギリシャの総選挙があるが、欧州情勢の今後の見通しと日本経済に与える影響について所見をお願いしたい。
(答)
 欧州の問題であるが、ご存知のとおり、今年の3月末に欧州安定基金(EFSF)と欧州安定メカニズム(ESM)の拡大が決定され、さらに4月にもIMFの資金基盤が強化された。欧州の金融危機に対するセーフティーネットの規模が大幅に拡大されたことで、欧州に対する悲観的な見方は一時期小康状態となったが、その後、ギリシャの政局不安、あるいはイタリア・スペインの国債の対独スプレッド拡大といった要素が生じ、不透明感が再び増してきているというのが足元の状況であろう。
 個人的な話になるが、私は先週一週間ヨーロッパに出張してきた。週の前半は、イスタンブールにあるみずほの駐在員事務所の開設パーティーに参加した後、コペンハーゲンでIIF(国際金融協会)のボードミーティングに出席した。週の後半にロンドンへ赴き、投資家や非日系のお客さまと様々な議論をしてきた。IIFでの議論のテーマは、まさしく今ご質問いただいた、ヨーロッパの情勢をどう見るのか、今後どう考えるのかというものであった。
 世界の主要な金融機関のトップが揃う会議であったため、金融機関全体の雰囲気を伝えられると思うが、中期的な展望として、二つの明るい材料、ないしは展望・方向感についてお話したい。一つは、欧州共同債に関して、水面下ではあるが具体的な動きが始まっているということ。もう一つは、こちらのほうがもう少し表面化してきているかもしれないが、欧州中央銀行がすでにユーロ圏17カ国の金融政策を担っているように、金融監督当局についてもユーロ圏で一本化すべく具体的な議論が進んでいるようである。ご承知のとおり、現在は各国の金融当局がそれぞれに存在しているが、やはりユーロ圏全体の金融システムという点からは一本化して監督を行ったほうが良いのではないかという議論が、かなり強く金融界から出されているからであろう。そういった、欧州の現状を是正していくための中期的な施策については、具体案の検討がいくつか進んでいると申しあげてもよいかと思う。しかしながら、短期的には、6月17日に予定されているギリシャの再総選挙以降、足元の問題を解決する対応策として何があるのかという点では、かなり難しそうだというのが欧州のみならず世界の主要な金融機関のトップの方々全体の雰囲気であったと感じている。ただし、非常に大きなクラッシュが起こるのか否かという点について申しあげれば、欧州各国の金融当局は相応に対応を準備しているということは明らかであり、これまでもセーフティーネットの整備などの様々な備えをされている。また、別の観点ではギリシャ国民の約80%がユーロからの離脱について反対している、という事実もある。ギリシャの与野党を見渡しても、ユーロからの離脱を主張しているところはあまりないと考えれば、最悪の事態が生じる可能性はさほど高くないのではないかと思う。
 一方、ギリシャがユーロに残留すれば問題が解決するかといえば必ずしもそうではないということもご承知のとおりである。その理由をいくつか申しあげれば、まずギリシャという国家自体の問題として、観光業や船舶関連の産業などを除けば経済を支えていく主力産業というものがなかなか見当たらないという極めてファンダメンタルな要素がある。それから、再選挙終了後に政治情勢がシンプルなかたちで一本化するかといえば、恐らくそれがなかなか見通せない状況が続くであろうことも挙げられよう。今後とも、ギリシャ問題を筆頭に、欧州の政治経済情勢は不安定な状況が続く可能性が高いと私自身は思っている。
 出張中にあった話をひとつ具体例として申しあげれば、ロンドンで某ヨーロッパ系の大手金融機関のトップと欧州問題について話をした際、その銀行にとっての解決策あるいは対応策は何かということが議論となった。非常に強く印象を受けたのだが、その策は一つしかないとのことであった。それは、個別金融機関として、引き続きバランスシートを縮小して身構えるということ、このことを強く言っておられた。そういう個別行としてのリスクに対するスタンスは、それはそれでおそらく正しいと思うが、合成の誤謬というか、個々の金融機関が自身を守るためにそのような行動に出るということが重なってくると、それはユーロ圏における金融が収縮していく可能性が引き続き存在するということだと思うし、仮にそうなれば、当然ながら経済の復活や回復ということについて相当な時間がかかることになってしまうのではないかと危惧している。
 もしも欧州経済がしばらくの間低迷すると、しばらくという意味は、例えば2年や3年というタームであるが、そのときにどのようなことを想定しなければならないかについて、1点目は、ギリシャから他の国へどのような形で問題が波及していくのかということである。ご承知のとおり、特にスペインが今注目を集めているが、CDSを見ていると、イタリアやポルトガルなどについても市場がリスクを感じているといえるだろう。これらの国の経済の停滞がグローバルにどのような問題を引き起こすのか、今後の問題として十分注意していかなければならない。
 2点目は、欧州経済の低迷が、アジア、特に中国に対してどのようなインパクトを与えるかということである。ご承知のとおり、中国の貿易相手国としてユーロ圏は最大であり、すでに欧州経済の収縮が中国経済の低迷につながってきているということはご存じだと思う。中国の不動産価格はここ数ヶ月間下がり続けているし、鉱工業生産もかなり落ち込んでいる。輸出についても同様であろう。こうした事態に対応して、中国政府は極めて迅速に0.25%の金利引き下げを行って経済を活性化させようとしている。ただ、中国経済について言えば、一方でインフレへの懸念という中国政府にとっての大きな課題が存在している。食品価格の上昇懸念といった問題を一方でにらみながら、景気刺激策を打ちだしていかなければならないという、非常にセンシティブな経済運営が求められている。
 個人的には、中国政府はそのような難局でもうまく経済運営を行える可能性が高いと思っているが、仮定の議論として、中国政府の努力にもかかわらず、経済が引き続き減速していくようなことがあるとすれば、アジア経済全体の成長に大きな影響が出てしまうといった連鎖反応が生じることは起こり得ると思う。
 そうしたことを考えると、これは私見というよりも一つの仮説として考えた場合に、以前サブプライム問題が発生した際に、サブプライムというのはアメリカの住宅市場の話であって、他国への影響は非常に限定的であると思われていたが、様々な経路を辿って、当時は証券化商品がグローバルに広がっていたという事情もあり、最終的にグローバルなクライシスにつながり、それが日本経済にも大きな影響を与えることになってしまった。こうした歴史を我々は持っているので、再びこうなると私が思っている訳ではないが、極めてフラット化した世界の経済行動というものを念頭に置きながら、我々金融機関としても、欧州危機というものがどういう形でどういう地域に波及していくのかということを今後とも一層注意深く見ながらフォワードルッキングな対応をしていくことが求められていると考えているところである。


(問)
 全銀協の会員である三井住友信託銀行でインサイダー問題が明るみになっているが、これについての所見と銀行協会として取組むべきことがあるか教えて頂きたい。
(答)
 三井住友信託銀行は、インサイダー問題により課徴金納付命令を受けているが、同行は、極めて速やかに特別調査委員会や第三者委員会を設置し、然るべく原因究明をされたうえで、態勢強化や業務運営の見直しなどの有効な再発防止策をとられるなど、十分な対応をされていると思う。
 インサイダー取引は、一般論としては、日本の証券市場、あるいは金融市場全般に対する信認という意味において、極めて重要な課題であると考えている。したがって、もし、わが国の証券市場あるいは金融市場において、インサイダー取引という点から問題が存在するのであれば、態勢を強化していかねばならないということが基本的な認識であろう。
 全銀協としては、すでに行動憲章において、コンプライアンスの一つとしてインサイダー取引に言及しており、ガイドラインを作成して、会員に発出するなど、しっかりと対応してきていると認識している。ただし、こうした事態を重く受け止めて、更なる対応を行う必要があれば、早急に手を打っていきたいと考えている。


(問)
 東京電力について、まだ値上げの時期や幅が具体的には決まっていない状況だが、銀行の支援姿勢は今後何か変化があり得るのか。
(答)
 東京電力については、個社の話であり、全銀協会長という立場ではなく、個別行の頭取としての立場で申しあげる。ご承知のように、我々主力銀行では、総合特別事業計画の中身を十分吟味したうえで、要請をいただいている残高維持あるいは一部ニューマネーの提供を、東京電力ともこれから議論しながら検討して参るということである。計画書の中に、電気料金の値上げ、あるいは柏崎刈羽原発の再稼働などが含まれていることは、ご指摘いただいたとおりである。我々は、原発の再稼働や電気料金の値上げなどの一つ一つについて、これがなければならないという観点で検討しているわけではなく、あくまでも、総合特別事業計画が、全体でフィージナブルかつバンカブルなものか否かという総合的な評価の中で、今後残高維持あるいはニューマネーの提供などを考えていく。融資契約の内容についても東京電力とこれからご相談申しあげることになる。東京電力は日本最大のユーティリティの会社であり、東京のみならず関東圏の電力需要という重大なものを担っているため、私どもとしては、基本的には支援申しあげるという立場で、株主や我々自身のフィデューシャル・デューティーの観点も踏まえて、総合特別事業計画全体の実行可能性について更に検討を加え、最終的な判断を行っていく。


(問)
 インサイダーの問題で、公募増資を取り仕切る、本来最もルールを守らなければならない主幹事の証券会社が相次いで情報を漏らしていたということだが、これについてどのようにお感じになるか。
(答)
 主幹事の証券会社がどのような対応をして、どのようなところに問題があったのかという事実関係について、まだ十分な情報を持ち合わせていないので、ご指摘のあった個別の話についてコメントは差し控える。
 一般論で申しあげれば、インサイダー取引の問題に関わらず、業務全体のコンプライアンスあるいはマーケットからの信認という観点からも主幹事証券の責任は重く、こうした観点も含めて、当然のことながら十分な対応がなされているべきものであると理解している。


(問)
 増資インサイダーの問題でお聞きするが、2010年に大型増資が相次ぎ、そのなかにはみずほも含まれていたはずだが、国内外のヘッジファンドがいわゆる空売りをしていたのではないかという話もあったかと思う。そういった、ヘッジファンドにつけ込まれ、株式の大きな希薄化も生むような巨額増資の是非についてお伺いしたいのが1点目。
 2点目は、今、支援策を進めているルネサスについてだが、日本のものづくりの観点から、ルネサスは支援に値するとお考えか。
(答)
 1点目のインサイダーの問題についてだが、巨額増資の是非について申しあげると、金額の多寡は個別企業のファイナンスニーズの程度によるものであり、一概に大型の増資が悪いということではないと思う。
 また、ヘッジファンドがそうした大型の増資に絡み、空売りにより巨額の収益を上げているのではないかというご指摘もあったが、大型増資に際してヘッジファンドが全く関与しないということは無いのではないか。ヘッジファンドがどの程度ディールに絡むかという点については、それぞれの市場環境、会社の銘柄、あるいはその時々の経済情勢等に応じて異なってくると思われるが、一概にヘッジファンドが悪いということではないと思うし、ヘッジファンドだけが空売りの手法で確実に利益を上げられるものでもない。したがって、もしもインサイダーの問題があるとすれば、それはあくまでも個別の案件の問題であり、ヘッジファンドの存在意義や、投資が巨額であることとは直接的には関係のないことだと思う。

 2点目のご質問のルネサスについてだが、個社の話について全銀協会長としてお話することはふさわしくないので、個別行の立場で申しあげたい。
 日本のものづくりという観点でみた場合、ルネサスが支援に値するか否かについての答えはイエスということになると思う。日本には様々な半導体メーカーがあるが、特にルネサスについて申しあげれば、自動車用マイコンの世界では世界市場の3、4割のシェアを占めている。自動車用マイコンというと非常に分かりにくいが、例えば衝撃を受けた際にエアバッグが膨らむ制御は、全てマイコンが行っている。ご承知のとおり、自動車産業は非常に裾野が広い産業で、例えば日本の場合、100万台の自動車生産はGDPでおよそ5兆円の規模、雇用の面では約100万人の雇用に相当する。ルネサスは、これだけのインパクトをもっている自動車産業の基幹部品であるマイコンの製造販売をしており、その意味では、日本の産業のみならず世界の産業にとって非常に重要な役割を果たしている。基本的にはこうした半導体メーカーには、しっかりと再建を果たしていただきたいと思っている。


(問)
 先ほど、海外のトップの方とのお話の中で、引き続きヨーロッパの金融機関はアセットを縮小しているとの話があったが、そうした状況の中で、すでに第1四半期が3分の2ほど過ぎたところだが、邦銀としての海外貸出の伸びは相変わらず好調なのか。
 一方で、ストレートローンはあくまでエントリーチケットであって、そこからECMやDCM等で収益を上げていきたいということだと思うが、アジアを中心に、まだまだ邦銀は証券周りが弱く、なかなかコアバンク入りができないという課題があると思うが、その辺りについてお聞かせいただきたい。
(答)
 邦銀の将来像について、どのような将来の成長戦略があるかということについては、個別の銀行が考えることであるので、ご質問については、全銀協としてではなく個別行の立場でお答えしたい。
 まず足元の海外の資金需要は、アジアはもちろん、欧州やアメリカを含めて引続き非常に強い。その一つの理由は、欧州経済危機に伴う欧州の金融機関のバランスシートの問題であると思っている。もう一つは、欧州危機の背後にある、もう少しファンダメンタルな部分での変化があげられる。近年、世界経済の成長が新興国を中心に進展していることから、例えば、アジアの様々な国や地域において、欧米の企業が大きな設備投資を行う機会が増えてきており、このことは非日系取引先のアジアでの展開が我々の大きなビジネスチャンスになっていることを意味するのである。
 こうした欧州危機とは無関係なファンダメンタルな部分で、日本の金融機関が必要とされることが、今後は増えるであろう。その意味で、邦銀の海外業務が、今後更に進展することは間違いないと思っている。
 ただし、先ほど申しあげたとおり、欧州危機により波及するグローバルな影響を考慮しなければならないことから、他の銀行においても同様に考えていると思われるが、特に非日系取引先とのビジネスに関しては、リスク管理、あるいはポートフォリオのマネージメントについて極めて強化した体制を作っている。
 ご質問のなかで非常に重要な点として、キャピタルマーケットのツールが無いことを理由に邦銀のコアバンク入りは難しいのではないか、とのご指摘をいただいたが、私の認識は全く逆で、邦銀のコアバンク入りは可能であり、実際に増えていると思っている。
 たしかに、例えばコアバンク入りした後に、顧客から次は社債の幹事やアジアのマーケットにおけるECMの主幹事就任といった依頼がくる。
 この時に、日本のメガバンクを中心とした邦銀が、顧客が要請するDCM、ECMについて、プロフェッショナルとして十分なサポートと、幅広いネットワークをもって投資家に対する営業ができるかということが課題だと思っている。
 例えば、取引先からアジアでのキャピタルマーケットについて、どのようなプロダクトが提供可能かと問われることになる。サムライ債とか円建のプロダクトがみずほの得意分野だが、その時に、例えばインドルピーや、ベトナムドンのプロダクトが提供可能かどうかという課題について、今後、邦銀がアジアのメインバンクになる時に問われていくことは間違いないと思う。
 その点で、どのような戦略を立てて、勝者となれるかということが、10年タームで見たときの日本の金融機関の存在意義、存在感に直結するのではないかと考えており、これからの邦銀の大きな経営のテーマになっていくのではないかと思う。


(問)
 先日、IMFの報告書で日銀がもう少し金融緩和をするべきであるという中身と、円の為替水準がやや過大に評価されているという中身があったと思うが、現在の日本の金融環境も含めて、どのような所見をもっているのかを教えて欲しい。
(答)
 金融政策について直接コメントする立場にはないので、一般論として申しあげる。
 まず第一に重要なことは、世界中が金融緩和の状態になっているということである。先ほど申しあげたとおり、中国も0.25%の金利の引き下げを実施し、アメリカも今のセンチメントとしては、金融緩和期待が非常に高まっていると思う。その他、インドや東南アジアでも金融緩和の動きが進んでいる。
 そのなかで、相対的に円が買われているが、主因は二つあり、一つはリスクオフという経済環境の中で、安全資産として見られている円が買われる地合いになっているということである。もう一つは、ご承知のとおり円-ドルのプライシングについては、日米の金利差にかなりの要因があるため、アメリカの金融緩和期待というセンチメントのなかで、円が若干買われているということがあり得るということかと思う。
 ただ、足元ではドルも非常に強く、単なる金融緩和期待だけで円-ドルが著しく円高に振れるという状況にはなっていないことは、ご承知のとおりである。
 日銀の白川総裁の考え方についてコメントする立場にはないが、今の日銀の政策は、極めて強い意志をもってデフレと戦う、という点で従前と全く変わっていないと思う。白川総裁もおっしゃっているように、金融政策だけでデフレから脱却できるわけではない。金利政策は、アナウンスメント効果と一緒に効果を発揮するものであり、金利を次々と下げることでデフレが解消されるわけでもないと思っている。これも白川総裁と同意見であるが、日本経済について特に強調したいのは、これだけ金利が低下しているなかで、やはりもう少し成長戦略に焦点を当てないといけないと考えており、成長がないなかで、金利を下げるだけでデフレから脱却することは非常に難しいと思う。
 一方、成長戦略については、政府を含めてかなり議論がなされており、私自身も経済産業省の審議会等の中で議論をしていて、相当な物ができているとの印象を持っている。政府としては、年央に向けて成長戦略をまとめていかれるが、おそらく戦略としてはかなりしっかりしたものが仕上がると思う。しかし、日本の最大の課題は、それを実際のアクションに移していくところであり、例えば、農業について言えば、1次産業の6次産業化という課題に対応すべきであり、日本の成長戦略として、そうしたものにチャレンジしなければならないことは明らかであると思う。
 しかし、実際に行動を起こすと様々な困難に直面する。例えばみずほが被災地でそのようなプロジェクトを地域の金融機関、あるいは地方の経済団体と協働で立ち上げようとした場合、様々な規制を乗り越えるために相当なエネルギーが必要となる。それでも、その困難を乗り越えて物事を進めていくことが肝要なのだと思う。したがって、金融機関全体として連携し、なんとしてもこの成長戦略を一歩でも二歩でも具体化していくため、金融機能を発揮していきたいと考えている。


(問)
 金融円滑化法の出口戦略というか、先々月金融庁が金融機関と再生機関などで協力して支えていくといった方針を示したかと思うが、とは言えこれまでその円滑化法で結果的には問題の先送りになってきたような案件もあるわけで、それが本当に最終終了したときにソフトランディングできるかということで、いま金融庁の方でも各行にヒアリングしていると思うが、現時点でどういう形でやっていくことが可能なのか、本当にその影響を最小限に抑えて終わらせることができるのかどうか、ご見解を教えてください。
(答)
 金融円滑化法については、ご承知のとおり、来年3月末に法律としては収斂することになっており、期限の延長は基本的には考えられていないと思う。金融円滑化法によって、事業継続が困難な取引先が延命されているのではないか、という話や、金融円滑化法をストップすると、それらが不良債権として大きな問題になるのではないか、という話がよく聞かれるが、全銀協会長として地銀等の実態も踏まえて考えてみても、そのようなことは起こらないであろうと思っている。金融機関は貸出債権に対し、取引先の実態に応じて適宜適切な財務上の手当てを行うことが大原則であり、その際にも、金融検査マニュアルにもとづき、当局と同じような目線で実施しているため、金融円滑化法の収斂により、事態が大きく変化することは基本的に無いと思う。
 ただ1点付け加えると、中小企業の再建計画については、最近では金融機関も極めて意欲的にコンサルティング機能を発揮し、その会社の将来・成長について、相当親身になって議論しているが、なかには必ずしも将来の絵が描ききれない会社がいくつか存在することは事実だと思う。そうした取引先に対して、今後どのような形で対応していくのかという問題はあると思う。
 一方、中小企業に対する金融について、もう少し別の角度から強化していくことが必要ではないか、という議論が政府の中で行われている。これは今、金融庁を含めて、いろいろなアイデアが出されているところであり、そこでは貸出のみならず、いわゆるファンド的な方式でエクイティを供出するスキームはどうか、あるいは、支援決定期限まで残り1年となった企業再生支援機構の代わりに、別のスキームで中小企業やベンチャー企業に対し、より積極的に資金を融通していくことが出来ないか、といった検討がなされている。おそらくこれは、年央に取り纏めるといわれている政府の日本再生戦略における、金融部門の中に具体的な形で織り込まれてくるであろうと思う。
 我々銀行界としての立場は、中小企業に対する金融の円滑化は本来的な業務であることから、円滑化法の有無に係らず、コンサルティング機能の発揮や資金の融通について、積極的に対応していく。加えて、政府が何か別の形を作り上げるのであれば、我々は必要に応じて、例えば人材の提供とか、そういった面で積極的に協力していこうという立場である。


(問)
 昨日中小企業庁から信用保証協会の代位弁済率が公表されたかと思うが、こちらについて銀行界としては、政策対応として保証に対応してきたものの、こういった代位弁済率が公表されると、中小企業の融資が出せなくなるということも懸念されると思うが、銀行界としてはどのような対応なのか教えていただきたい。
(答)
 100%保証の代位弁済率が高い理由についてお答えする。通常は、信用保証協会が80%の保証を行うのが基本的な形態であるが、東日本大震災で被害を受けられた中小企業など業績が悪化した企業への資金繰り支援を目的として、100%保証する緊急保証制度が設けられたものと認識している。したがって、緊急保証制度については、結果として、代位弁済率がある程度高いということはやむを得ない、ある意味自然な結果なのではないかと思う。なお保証付貸出総額に占める代位弁済額の比率は、全体的に見れば必ずしも高いとは言えないのではないかと考えており、制度の趣旨に照らし、おかしな結果にはなっていないと認識している。


(問)
 代位弁済率の高さというのはいいと思うけれども、民主党政権がそういった対応でやったのにも係らず、金融界が批判されることについてはどうか。
(答)
 必ずしも金融界全体がそのような批判にさらされているということではないと思われるが、先ほど申しあげた制度の趣旨と対応状況について、金融界として説明の足りない面があれば、丁寧に説明していくことが必要ではないかと感じている。


(問)
 答えにくいことかと思うが、敢えてお尋ねする。一連のインサイダーの件で、みずほの増資も対象となっている。公表されていないものの、情報の伝達者は野村證券だという報道もあるが、野村證券という会社をどのように評価しているか。
 また、5月30日にみずほ銀行が劣後債の起債をされたが、その引受シ団に野村證券が入っている。仮定の話で恐縮だが、今後なんらかの形で野村證券がやはり情報の伝達者であったことが当局サイドから公表された場合、野村サイドも事実上現時点でも認める発表をしていると思うが、引き続き野村證券を使うのか、教えて頂きたい。
(答)
 私の理解では、野村證券は日本で最大最強の証券会社であり、特に国内のPO、IPOなどのマーケットでは極めて強力な、そして、お客さまから最も信頼されている証券会社である。これは、ユーザーとして、あるいはイシュラーとして野村證券と取引した私の経験に照らしても間違いないと思う。
 しかも、野村證券は、日本の金融機関として、国際化という点で最先端にいる証券会社ではないかと認識している。成否に関する評価は人によって異なるかもしれないが、私は一人のバンカーとして、野村證券のチャレンジには非常に大きな敬意を払っているところであり、それが野村證券に対する評価である。
 また、ご指摘のみずほの劣後債のディールにおいては、野村證券を引受証券会社に指名させていただいた時点では、インサイダーの問題は今のような状態ではなく、冒頭に申しあげた野村證券の証券会社としての力量に照らしてお願いすることを決めたが、ディールに入ってから引受証券会社を変えるということになると、むしろ投資家の方々に迷惑をかけることになると考えたものである。
 一般論で申しあげれば、金融マーケットでは、「信用」が非常に重要な要素であり、当局から業務改善命令などが出された場合には、それに対する改善策が示されない限り、引受などをお願いするのは難しいということもあるのではないかと思う。


(問)
 出口戦略に関連するが、政府が出している政策パッケージ、つまり先ほど言われた中小企業再生支援協議会をコアにした政策パッケージについては、地方銀行の方から不満の声が強い。例えば、処理の目標件数を設定するとか、標準処理期間がはじめ6ヶ月だったのに2ヶ月でやれとか、要するに手っ取り早く数字をいっぱい積み上げろみたいな感じがありありだという不満であるが、全銀協としてはこういう点をどう考えるか。
(答)
 例えば成果を義務付けるといった対応について、正式な形で要請されているという認識はない。地銀も含めて複数の銀行において、すでに自発的に事業再生に向けた取組状況を公表しているところもあるが、法律や規則などで目標等を強制するということは、我々銀行界として必ずしも好ましいことではないと思っている。金融円滑化法が導入されたときからの議論ではあるが、そもそも中小企業金融の円滑化は、地方銀行のみならずメガも含め金融機関の重要な社会的役割であるからこそ、我々自らが積極的な対応をしなければならないものである。しかし、それは法律とか規則で強制するような類のものではない、というのが銀行界の基本的な立場である。


(問)
 先ほどの成長戦略の話、非常に興味深く伺った。10年以上、ずっと成長戦略成長戦略と言いながら、絵だけ描いてなかなか実現せず、その結果、今の日本の経済の衰退があると思うが、まさにヨーロッパも今、そういう難局に直面していると思う。今度こそ本当に政府与党により、実現してもらいたいというのが率直なところだと思っている。取材の実感として金融というのは、例えば、業界再編もしくは新産業の創出というかたちで日本の産業の姿を変えるだけのパワーを持っていると考えている。そういう意味で、本当に金融業界がしっかり手を携えて、日本の経済の将来のことを考えれば、相当なことが出来るのではないかと思う。先ほどのを繰り返すが、会長が言われた「一歩、二歩でも進めていきたい」は、意気込みなのか、もしくは会長なりのピクチャーを持っていて、いつ頃までにこんなことをやってみたいという青写真のもとに言っているのか、その辺りの考えを改めて伺いたい。
(答)
 ご質問に対しては、個別行としてお答えしたい。
 今年度は、いわゆるみずほの戦略プログラムの最終年度に当たり、年内を目処に2013年度~15年度の新しい中期経営計画を作る予定である。そのなかで、大きな時代認識として、日本の金融業界が一つの産業として、どのような立ち位置にいるのかをしっかり把握することが、非常に重要なことだと考えている。
 その理由の一つは、新興国の需要が圧倒的に強くなっていく世界の構造変革の中で、日本の金融業は、どのようなところに戦略を見出して、どのようなところにリソースを投入しなければならないのか、おそらく、そうしたことが日本の金融業界として初めて大きく問われているということである。
 二つ目は、リーマンショック以降に、世界の金融業界がビジネスモデルを大きく変換しなければならないという問題に直面していると思う。具体的に申しあげると、リーマンショック以前は、いわゆる金融の総合デパート化、フルラインのビジネスモデルが成功の秘訣であったが、リーマンショック以降は、明らかにこのビジネスモデルは大きく変化している。例えば、投資銀行の分野で言えば、自己勘定取引による収益が全体の7割を占めることもあったが、リーマンショック以降は、もはやそのようなビジネスモデルは採れなくなっている。さらに、世界のどこの地域においても低金利という金融環境の中で、どのようなリテールバンキングモデルが収益をあげるのかということが、世界中で問われ始めている。
 言い換えれば、そのような大きな時代認識において、金融を一つの産業として捉え、今後5年間10年間、どこに成長があるのかという点について、立ち止まってもう一度しっかりと考えてみなければならないということである。個別行の話ではあるが、みずほとしては、次の中期経営計画の一種のプロローグとして、今申しあげた検討がどうしても必要であり、その次に3ヶ年の事業計画、そしてリソースの配分をどこに行うかという順番となる。事業計画だけの中期計画というものが、今の時代においていかに虚しいかということを、私はまざまざと感じている。
 次に成長戦略に関してであるが、今申しあげたような環境において成長戦略を歴史の中できちんと位置づけ、特にアジアの中で日本の金融がしっかりとした存在になっていくことが必要であろうと思っている。
 更には、ご指摘いただいた産業の再編などは、おそらく日本国内のみならず、先月のシャープと鴻海のようなクロスボーダーでの事業再編が対象となってくる。そのなかで、産業再編、これは国内の産業再編ではなく、特にアジアにおける産業再編において、銀行、特にメガバンクを中心として、主体的な地位を占めていくことが、アジア経済圏の中で、日本が主体的な地位を占めるための重要なパーツの一つであるというのが私の認識である。他をリードできる立場で、メガバンクを中心とした邦銀が、アジアの中で勝ち抜いていくことが日本経済にとって極めて重要であり、新規ビジネスの参入や事業再編について、積極的かつ具体的な形で取り組んでいくという考えを持っていることをお伝えしたい。

以上