平成24年10月18日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

和田専務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 先週開かれたIMF世銀総会についてお聞きしたい。会議では世界経済の減速を受けて経済成長を阻害しない形での最適なペースでの財政再建が議論されていたと思うが、佐藤会長も邦銀代表として様々な関連の総会に出席されたと思われるが、改めて東京で開催された今回の総会の意義をどう総括されるかということと、IMFの報告書の中で金融システムの安定の観点からJGBの保有が邦銀に集中しているというリスクについて改めて警鐘が鳴らされたわけであるが、この点についてのお考えも合わせてお聞きしたい。
(答)
 ご承知のとおりIMF世銀総会が、48年ぶりに東京で開催された。前回は戦後の高度成長の入口の時期であったが、今回も東日本大震災からの復旧・復興の時期ということで、適切なタイミングであったと思う。今回のIMFについては次の三つのポイントから評価するべきであろう。一つ目はIMFでなされた議論に対する評価、二つ目は、日本で、東京において開催されたことに対する評価、三つ目は、金融業界へのメッセージや問題点に対する評価である。
 第一のポイントであるIMFにおけるグローバル経済に関する議論について特徴的なことを3点申しあげたいと思う。
 1点目は、世界経済を牽引してきた新興国経済が足元で減速しはじめていることをどのように評価するかという点である。
 2点目は、中国経済の変調がグローバル経済にどの程度インパクトを与えるかということである。これについては、欧州経済の抱える問題やアメリカ経済のいわゆる「財政の崖」という問題に加えて、中国の問題がクローズアップされた、そういうIMFであったということである。
 3点目に、ここ数ヶ月間、多くの注目を集めてきたユーロ問題に疲弊感が出てきた中で、今回のIMFでは、財政再建を急ぎ過ぎるべきではないという懸念が表明されたことである。財政再建に重きを置く雰囲気の世界経済の中で、成長戦略とのバランスが重要であると強調された点は、非常に意義深く、個人的にも方向性は正しいと思っている。
 第二のポイントである、日本で、東京において開催されたという点については、冒頭に申しあげたとおり、大震災からの復興をしっかりと世界に示すことができたのではないかと思う。IIF(国際金融協会)の仙台会合やIMFの「防災と開発に関する仙台会合」など、被災地でも各種会合が行われたが、参加した方々からは、被災地の復旧・復興の状況は非常に印象深いというお話を伺った。
 加えて、日本での開催ということに関して、私として非常にうれしく思い、また、驚きでもあった点は、東京という都市、あるいは日本という国の社会の成熟度である。総会の運営や都市のインフラのあり方、清潔さ、安全さ、あるいは渋滞がほとんど発生しない等、極めてハイレベルなホスピタリティーを世界の参加者に非常に強く印象付けることができたと思う。ワシントンで開催されるIMFでは、数多くのパトカーが並び、キープアウトの柵で囲まれる等、物々しい雰囲気の中で総会が開催されるが、わが国においては、警察官の方々は、さほど目立たずに、しかし、しっかりと警備されていた。警察官の配置一つとっても、参加者の方々に圧迫感を与えないような距離感で警備が行われていた。こういう点は、日本が有するソフトの中でも大変な強みであることから、私も来日された方々に対して、日本のホスピタリティーは非常にハイレベルであるということをあえて口頭でご説明させていただいた。また、それをお聞きになった方々は、日本をますます好意的に見てくださった。
 第三のポイントである金融業界へのメッセージや問題点について申しあげれば、まず、グローバルベースでの規制強化が、中堅中小企業や個人に対して、どのような影響を与えるのかという新しい視点で議論がなされた会議がいくつかあったということである。見方によっては銀行界が規制強化に反対するためのロジックとも取れるが、金融のあり方を考えるにあたっては規制強化が中堅中小企業等にどういったネガティブインパクトを与えるのかという議論は、やはり重要であり、一歩前進したのではないかと思う。
 二つ目は、コーポレートガバナンスについて、欧米やアジアの金融機関のトップの方々と議論したが、このことを皆さんが非常に重視しており、今後の金融を考える上では、コーポレートガバナンスのあり方、あるいはコードオブコンタクト、すなわち行動規範の重要性が改めて強く認識されているということを確認できたことで、私自身、大変勇気付けられた。
 最後に金融機関について申しあげれば、世界の中での日本、あるいはアジアの中での日本ということをどれだけ印象付けられたかということである。この点については、トップの方も含め、各金融機関において成功したと申しあげてもよいと思う。レセプションパーティーや個別のセミナー、あるいはミーティングを重ねるなど、方法は様々であるが、全体として、日本の金融機関が世界から必要とされている点が確認できたし、また、我々がこれからやらなければならない方向感というものもしっかり確認できたという意味で、非常に意義が大きかったと考えている。
 以上が、IMFの総括的なことである。
 2点目のご質問の国債の金利上昇リスクについてであるが、IMFのラウンドテーブル等でも議論がなされたことは承知している。ただし、以前から申しあげているとおり、日本の国債の金利上昇リスクについては、私自身、足元すぐに懸念があるとは考えていない。
 その理由を2点申しあげれば、日本が最大の債権国であるということ、日本国債の国内保有割合は、引き続き90%を超えているということである。ただし、中期的に見て、社会保障と税の一体改革の議論が進まない、あるいは進みにくいという事態になれば、金利が上昇するリスクもあり、引き続き注意深く見守っていく必要がある。したがって、今回のIMFにおける国債の議論が、どのような文脈と前提の下で行われたのかということについて、しっかりと検証していく必要があるとは思うが、私の理解と世界の理解とはさほど異なってはいないのではないかと感じている。


(問)
 2点目の質問だが、LIBORについてお尋ねしたい。英国においてLIBORの改革案が示された。その内容は、英国銀行協会からLIBORの設定業務を他の機関に移管する、算出する金利の種類を絞り込む等といった、かなり思い切った内容となっている。この改革案で提案されている主要項目に対する佐藤会長の受け止めと、LIBOR改革案を踏まえたTIBOR見直しの方向性について、現状どのようにお考えか伺いたい。
(答)
 ご指摘いただいたとおり、LIBOR改革案としてウィートリー・レビューが9月末に公表され、その中身は非常に包括的な内容となっている。皆さんはもう既に内容をご存知かもしれないが、例を挙げるとすれば、一つの括りとして、呈示プロセスの公正性や透明性の向上に関連し、実取引の参照や、通貨・期間の一部削減について触れられており、2番目の大きな括りとして、プロセス変更に伴う影響およびその対応に関連し、レート呈示行の数を増やしたほうがよい、ということも指摘されている。また、3番目の括りとして、指標の管理態勢に関連し、当局が関与した形での監督委員会の設置といった案なども勧告されたと認識している。
 ただし、LIBOR改革のプロセスの一つとして取り纏められたウィートリー・レビューについて申しあげれば、これはあくまでもロンドンにおけるLIBORに対する勧告であり、他の地域における同種の指標に対する議論等については、各地の銀行協会や関連する金融機関などが、今後、様々な議論を進めていくことになると考えている。
 国際的な議論については、最終的に証券監督者国際機構(IOSCO:International Organization of Securities Commissions)などの場で意見集約されていく可能性が高いと考えており、そうした全体のプロセスの中で、このウィートリー・レビューが金融指標の一つであるLIBORに関して公表された、という受け止め方をしている。
 したがって、IOSCOのような国際機関が、国際的な金融指標に対する考え方をどのように取りまとめられるのかという点も含め、今後明らかになってくるであろう具体的な内容をよく吟味するとともに、グローバルな観点で、そうした提言がどのように受け止められていくのかということについても、注視して参りたい。
 TIBORについては、先般の一斉点検にて、指標の公表プロセスについての遵守状況の確認は終えており、前回も申しあげたとおり、現状、TIBORの仕組みそのものに対して、何か制度上の問題が生じているとの認識は持っていない。その意味では、今後の方向性については、国際議論の状況を待つということになるが、今回、このウィートリー・レビューの取りまとめに端を発し、国際機関による議論が動き出したことを踏まえると、必要があれば、TIBORについて当局と相談することもあり得るかと考えている。


(問)
 3点目だが、中国についてお伺いしたい。
 冒頭の質問でも触れていただいたが、中国経済の減速が世界経済に大きな影響を与えているが、本日公表された中国の実質GDPがプラス7.4%ということで7四半期連続で成長が鈍化しているが、中国経済の減速については輸出の減少等、循環的な要因だけではなく構造的な要因も指摘されているわけだが、中国経済の見通しについてどうお考えか。
 また、尖閣諸島問題の影響で、中国における日本車の不買運動等の日本企業の収益のリスク要因として中国の問題が意識され始めているが、日本経済への影響はどのくらいの規模で、この影響がどのくらい持続するものなのかについてのお考えを伺いたい。
(答)
 非常に重要なご質問であると思う。本日発表された中国の実質GDP成長率は、引き続き8%割れとなっているが、対前年比で見ると決して大きく底割れしている状況ではないと考えている。これについて、様々なアナリストの方が中国経済は底を打ったとか、非常にポジティブなサインであると評価していることは承知している。
 中国の実質GDP成長率が8%を割った要因の一つは、欧州の債務危機を背景とした欧州経済の低下傾向に伴う中国からの輸出の低迷であり、また、リーマンショック以降に行ってきた大きな財政支出による経済刺激策の息切れも要因であろうと考えている。これに関して私が注目しているのは、自動車、鉄鋼または造船といった基幹産業の過剰設備投資に伴う過剰在庫である。これらの問題は、10%程度の実質GDP成長率のもとではさほど目立たなかったが、成長率が8%を割ってきたことから、大きな構造問題として現れてきていると考えている。
 今までの中国は、生産調整について、例えば小規模な企業を全て大規模な企業に吸収させて、参加者を少なくして過剰設備を廃棄する等、かなり中央政府がコントロールして設備調整を行なってきたが、最近の動きを見ていると、地方の経済発展を後押しするという考え方と、中央政府によるコントロールとの間のバランスが微妙に崩れてきているのではないかと考えている。
 いずれにせよ、例えばIMFの推計によると、中国の設備稼働率は、直近ではピーク時の3分の2程度まで、過剰設備投資の状態で設備稼働率が落ちている状況であり、言い換えると資本生産性が落ちているという状況は、明らかな構造変化であると思う。
 したがって、実質GDP成長率だけを見て、中国経済が底を打ったと判断するのは、私は少し早すぎるのではないかと感じている。リーマンショック後の4兆元の経済対策により、地方を含めた基幹産業の過剰設備に対して、さらに過剰投資という形で資金が流れていることは十分考えられるため、この調整圧力をどの程度中国経済が吸収できるのかということについて、もう少し時間をかけてみる必要があると思う。
 ただし、はっきり言えることは、中国政府が金利を引き下げても、この構造問題に対して今のところ明確なプラスの効果は出ておらず、むしろ、中国の不動産価格だけが徐々に上がることが今後も続くのであれば、この経済のコントロールは難しいのではないかということである。
 尖閣諸島の問題についてであるが、発生後さほどの期間を経ていないため、この問題が日本経済にどの程度のインパクトを与えるかということを判断するには少し早すぎると思う。例えば、デモによる物的被害は約100億円程度と言われているものの、この数字には生産や販売の機会損失が含まれておらず、これらを含めるとどの程度の規模になるか計測できる状態ではない。
 ご参考までに申しあげれば、例えばデモがピークを迎えた9月17日~18日の操業停止により、自動車業界は約2.5億ドルの機会損失があったと言われている。
 また、トヨタの9月の販売は前月比約50%減少し、トヨタ九州では10月中の中国向けレクサスの生産中止を決定している。あくまでも仮定の話であるが、中国向けの自動車輸出が全て停止すると、中国向け輸出金額を4%程度押し下げることになる。
 自動車業界のみならず、特に日本製品を販売する小売や電機などエンドユーザーに近い産業が大きな影響を受けていることは間違いないと思う。
 別の角度から申しあげると、日本から中国に対する直接投資は、デモが始まる前の2011年度に少し落ち始めている。すなわち、日本企業の直接投資が、チャイナプラスワンといわれるように、ベトナムやインド、その他の国に少しずつシフトし始めていた時にこうした問題が発生したと理解している。これから日本企業が中国の問題を中期的に捉えて、他の国に直接投資を行っていく可能性は非常に大きく、日本経済へのインパクトもさることながら、中国経済に対するマイナスの影響も今後出てくる可能性はあるのではないかと思う。
 足元では、日本とシンガポールが、中国への直接投資のかなりの部分を占めている。ご存知のとおり欧州企業が中国から撤退しており、日本企業も引き上げていくことになると、中国経済に与える影響は決して無視できないものがあると考えている。
 先ほど構造問題について申しあげたが、もう少しロングタームで見ると、中国は人口が農村から都市に流れていく時代から、その次の時代に移行しているかもしれないと考えている。労働人口の高齢化が徐々に進行しているのであれば、中期的に見て労働人口の問題が質・量ともにどのように推移するかが、今後の中国経済を考えていく中で非常に重要なファクターになっていくと思う。
 今、ご参考までに定量的なことをいくつか申しあげたが、冒頭申しあげたとおり、この問題の大きさが全体的としてどの程度であるかという点は、もう少しそのインパクトを見てからでないと、残念ながらお答えできない。
 いつまで続くのかということにお答えすることも難しいが、この問題が政治問題のみならず、今まで申しあげたような構造問題にもある程度起因するのであれば、政権交代期という事情も含め、政府の対応には時間を要することになるであろうし、ある時突然影響が終わるということではないと考えている。


(問)
 日銀に対して一段の金融緩和を求める声が、前原大臣など政府や、自民党の安倍総裁などから強まっている。佐藤会長のご自身の考えとして、日本経済の成長やデフレ脱却を目指すために日銀がさらに金融緩和を強化した方が有効だとお考えか、それともすでに十分やっていて、これ以上やっても効果が得られないとご覧になっているか、教えてもらいたい。
(答)
 個人的見解を申しあげるが、現在の日銀は、金融緩和に向けてできることについて可能な限り行っている状況であると認識している。その上で、敢えて申しあげるが、実際の緩和の規模等に加えて、一種のアナウンスメント効果ということも重要であると考えている。そうした観点から、日銀が金融緩和に対して常に積極的であるという姿勢や、今後も必要があれば金融緩和を続けていくという姿勢を、現在においても示していただいているところではあるが、今後とも示し続けていただくことが非常に重要であると考えている。白川総裁も、このことは十分にご認識されていらっしゃることと思われる。
 その上で、デフレ脱却について考えてみると、日本の歴史が示すとおり、金融緩和だけでデフレを脱却することは難しいと認識している。これまで何回も申しあげているが、やはりしっかりとした成長戦略のもと、国内の産業育成や雇用がしっかり守られるような政策をとっていくことが必要であると思う。
 そのためのピクチャである成長戦略は以前より出来上がっているが、残念ながらこれまでは、具体的にそれを行動に移すという部分がさほど有効には行われてこなかったのではないかと思われる。先般、野田首相も、もっと早く実行に移していかなければならないとのご発言をされたが、まさにそういうことであり、具体的に目に見える形で戦略を実行に移していくという点が必要であると思う。白川総裁も、金融政策だけではなく、実体経済を押し上げる成長戦略を進めていくことが必要であると、従来よりおっしゃっていると思うが、私も全く同感である。
 ヨーロッパの状況をご覧いただいてもお分かりいただけると思うが、金利を引き下げても、そのことだけで経済の活性化に繋がることにはならない。そうした観点から、もう一度ここで日本の成長戦略、例えば農業や介護、あるいは自然エネルギー等の分野において、成長を妨げる様々な規制を緩和しながら、新しい産業クラスターを作り、国内雇用を生み出していくというステップを着実に進めていくことが求められている。デフレの脱却のためには、金融政策に加えて、こうした具体的な取組みが極めて重要であると思う。


(問)
 先ほどの質問に関連するが、中国のGDPについて、底入れしたというよりも、景気減速が鮮明になったというご理解だと思うが、最大の貿易相手国の減速が日本経済に具体的にどのような影響を与えるのか、定量的には難しいとは思うが、懸念はどのようなものがあるのか、改めて伺いたい。また、中国の景気悪化の背景にはヨーロッパの信用不安があると思うが、ヨーロッパ経済の見通しについても改めて伺いたい。
(答)
 先ほど日本の自動車についての例を出したが、今後、中国経済が全体的に減速していった場合には、素材メーカー等にも大きな影響が出てくる可能性があると思う。その場合、トヨタやホンダといった大企業のみならず、日本の重要な基幹産業を支えている中堅中小企業にも大きな影響が及ぶことになる。日本の産業、企業が中国で果たしている役割は非常に大きく、それゆえに、中国経済減速の影響も受けやすいことになるが、自動車や機械といった産業のみならず、その背後に位置する素材メーカーや部品メーカ-等も影響を受けるという点については、十分注視していく必要があると思う。
 もう一つの欧州経済の見方であるが、これについてもIMFで多くの方と議論をさせていただいた。一言で言うと、危機に対応するための枠組みは整いつつあるが、政治的な問題もあり、実際にそうした枠組みが機能するまでには時間がかかるということであった。3年という方もいれば5年という方もいる。方向感としては正しい方向に向かっているが、時間を要することは避けられないであろう、ということである。
 したがって、今後どれだけの期間が必要となるのかは分からないが、枠組みが機能し始める、またはそうした雰囲気が出てくるまでの間、どのように対処していくのかという点が問題となる。これは非常に難しい問題で、欧州の大銀行のトップとの会話の中でも、「時間がかかるから自分たちは守りに入る」、つまりバランスシートを縮小して守備範囲を狭め、その中で、コストを下げて戦っていくとおっしゃっている方が多い。レベニューは全く上がらないという前提をおいた上で、コストを下げることで収益をあげていくという中期経営計画を策定している銀行もある。それだけ欧州経済に対する見方が厳しいということであろう。
 それからスペインについては、欧州安定メカニズム(ESM)という枠組みが出来たにも関わらず、スペインが手を挙げないのではないかという議論がある。この点については、私が会話をした欧州の銀行トップの殆どの方は、手を挙げるのが早ければ早いほど財政リストラ等の条件は緩くなり、逆に遅れれば遅れるほど条件は厳しくなるという違いはあるものの、遅かれ早かれスペインは手を挙げざるを得ないのではないか、とおっしゃっていた。彼らの見方どおり、実際にスペインが手を挙げるとすれば、欧州経済が抱えていた不確定要素のうちの一つが取り払われ、一時的な晴れ間が見える可能性はある。
 しかしながら、先ほど申しあげたように、基本的な構造問題を解決するには2年ないし3年、あるいはそれ以上の期間を要する点に変わりはないことから、仮にスペインが手を挙げることで一時的な晴れ間が見えたとしても、欧州経済の基本的な問題の解決までには、やはりかなり時間を要すると考えておくべきであろうと思っている。


(問)
 さきほどの質問に関連して伺う。日銀の金融緩和策が与える実体経済への波及効果についてだが、先日のソフトバンクの大型買収の件があったと思う。こちらは日銀の金融緩和策が追い風となって、ある意味買収が進んだとも言えるかと思う。こういった企業の自助努力の動きに対して、銀行としてどう向き合って、また何に注意すべきなのか、合わせてこの買収がうまくいくのか、を教えてください。
(答)
 ソフトバンクの買収の件について、スプリントとの間で基本的な合意がなされたということは、皆様ご承知のことと思われる。ただし、ご質問にあった「日銀の金融緩和がソフトバンクの買収案件を後押しした」ということではなく、今回のソフトバンクによる買収案件も含めて、最近の日本企業による海外企業の買収案件の背景には、円高を活用しようという意図があったと考えている。円高は日本経済にとっては厳しい問題ではあるが、一方で、経営者が外に目を向けて、海外企業等の買収の大きなチャンスであると考えていることは間違いないと思う。
 一方、ソフトバンクの案件についてどのように見るかというご質問についてであるが、私なりの分析では、大きな目的が三つあったと考えている。
 一つは、スプリントの買収により、企業規模を拡大したうえで、アメリカという大きなマーケットへの進出の足がかりを作るということである。
 二つ目は、スプリントが現在約48%の株式を保有する、クリアワイヤという無線通信会社との関係を入手することである。このことは、今後、アメリカにおいてスマートフォン等の販売拡大を狙うなかで、クリアワイアの有する周波数帯を活用できることとなり、大きな武器になっていくと思われる。
 三つ目は、スプリントもLTE陣営に入っているが、ソフトバンクとスプリントが一緒になることで、アップルに対するバイイングパワーを持つということである。このことは、技術開発や製品開発の面でも非常に大きな意味を持つため、今後アップルの製品開発に対して、ソフトバンクとスプリントの連合が相応に発言力を持つことにもつながると思われる。
 最後に、こうしたクロスボーダーのM&A全般について言うと、円高問題への対処、また日本企業の成長という観点から、日本経済にとって歓迎すべき動きであると感じている。


(問)
 大手銀行の貸出状況について2点質問したい。1点目は、海外貸出がここ数年伸びていると思うが、伸びている地域や分野についてどういう状況か伺いたい。欧米金融機関が融資を引いているアジアや新興国といった所に日本の銀行が入っていくというトレンドは、やはりよく見られるのか。不良債権化しないための管理というのもしっかりされていると思うが、実際のクレジットコスト等は国内と比べてどういった状況なのか。
(答)
 ご指摘いただいたように、海外で、特にメガバンクが3行とも貸出を大きく伸ばしているという点は事実である。みずほについて申しあげれば、昨年1年間でアジアだけ見てもおそらく3割程度は貸出残高が伸びていると思う。そのトレンドは今年に入ってからも変わっておらず、むしろ強くなっていると思う。
 貸出が伸びている地域についてお答えすると、銀行によって状況は多少異なるが、各行とも基本的にはアジアで貸出が大きく伸びている。ただ、最近は、アメリカにおいても経済が回復してきており、特にシェールガス革命と言われる動きのあったエネルギー産業、また、それに絡んだプロジェクトに対する貸出の需要が強い。これらを踏まえると、アジア、アメリカ、そして少し離れてヨーロッパという状況になっているのであろうと思われる。日本の金融機関は、アフリカやBRICsに続く新興市場国といった国・地域については、未だ各行ともそれ程アクセスがあるわけではないと考えている。
 収益性やリスク管理の点について申しあげると、まず収益性については非日系の取引先に対する貸出スプレッドの方が国内のスプレッドよりも明らかに大きいと思う。もちろん貸出先の信用力を同列に比較してみなければならないので、正確な数字は承知していないが、非日系取引先向け貸出のスプレッドの方が大きいということは事実である。そのことから、収益性に比例してクレジットコストも大きいかといえば、みずほについて申しあげると、アジアにおける不良債権比率は非常に小さく止まっている。これも銀行によって多少の違いがあると思われるが、やはり先ほどご指摘いただいたように欧米系の金融機関が撤退した企業との取引に参入していくという要因もあり、基本的には優良企業との取引が多くなることから、クレジットコストが発生しにくい面もあるように思う。
 敢えて、みずほについて申しあげれば、日本での法人取引と同様に、各企業の経営者としっかりと議論できるような環境の中で非日系の取引先を拡大してきており、足許の状況だけでなく、取引先が採っている戦略、あるいは産業の中におけるポジションなどについて3年先、5年先を見ながら貸出を行っているため、不良債権化することを心配するような状況ではないと、自信を持って言えるのではないかと思う。
 今後、海外貸出をどのような分野で拡大していくのかという点については、各メガバンクにおいても非常に大きなテーマであり、特色が表われてくるのではないかと思っている。例えば、プロジェクトファイナンスについて言えば、キープレーヤーであった欧州の銀行が殆ど不在となってしまったので、案件は非常に多い。ただし、この分野をどの程度積極的に行うのかという点については、銀行によって大きく異なると考えている。その理由としては、プロジェクトファイナンスは期間が非常に長く、リスクの質も異なるからである。特に、何か問題が生じたときにマーケットで債権を転売できるか否かという流動性に注目してエクスポージャーを積み上げていくことが、私個人としては重要であると思っている。このように、今後の海外戦略については、メガバンク3行の中でも、それぞれ違ってくる可能性はあると思う。何が正しくて、何が正しくないということではなく、それぞれの銀行が有するポートフォリオやスキルなどにより、これから将来にわたってかなり特色が出てくる可能性はあると考えている。


(問)
 国内の大手銀行の貸出について伺いたい。
 先ほど佐藤会長がおっしゃられたM&Aなど外国企業の円高を背景にM&Aが増えていて、実際のところ、企業のそうした形の資金ニーズはやっぱり増えているのか。いわゆる銀行の貸出だけ見るとそんなにドラスティックに増えているようには見えないが。つまり、企業はちゃんとデットで資金調達しようとしているのか、足下ではどういう状況なのか。
(答)
 銀行界全体で見ると貸出は増加している。
 増加している分野について申しあげると、一時期までは公共セクターで、地域でいえば東北地方で伸びていたが、最近の数字で見ると大企業でも多少増加している。ただし、この傾向が恒常化するかという点については、大企業の場合には社債などの代替手段もあり、またキッシュリッチな企業も多いので、個々の企業によって差はあるものの、全体として増加するトレンドに向かうとは思っていない。
 一方、銀行別で言うと、地方銀行等の貸出残高が増加している。各行とも様々な工夫をこらし、住宅ローンのみならず、先ほど申しあげた一次産業や、自然エネルギー関連産業に対する貸出についても積極的に対応している。そのほか、ファンドを活用したり、海外進出する中堅中小企業のサポートを始めるなど、新しい産業を地域で作っていく取り組みが、銀行貸出を増やしていく素地を生み出しつつあるのではないかと思っている。


(問)
 仕組預金について質問したい。他行は8月、9月から、メガバンク3行は昨日までに仕組預金の新規受付を停止されているようだが、改めて、仕組預金の受付を停止されている理由と、みずほにおける仕組預金の残高・口座数を教えていただきたい。
(答)
 残高・口座数は、申し訳ないが手元にないので、お答えできない。
 金融庁が、仕組預金の金利のうち、オプション料に相当する部分を預金保険の対象外とする方針を固めた、という記事を先程配信されたと思うが、私自身としては、当局の見解はそういうことなのだろうと理解している。その上で、過去に販売済の預金については、預金保険の対象として保護される、という認識である。今後については、当局としっかり相談しながら対応していくことになると思う。
 そのような状況であるということを踏まえ、お客さまに対して正しく説明していくために、みずほとしては一旦販売を停止し、説明の仕方や販売方針等を見直し、もう一度ご提供するということが必要ではないかと考え、個別行の判断として販売を停止したという状況である。


(問)
 先ほどから出ている貸出とかクレジットコストの話で、裏側の話をすると、最近は債務者区分の改善で逆に戻りが生じており、御行をはじめクレジットコストがずっと一貫して下がっている。ただ、ゼロに近付けばいいかというと、これは必ずしも、きちんとした金融仲介をし、リスクをとっていくという意味では、そうではないと思う。そういう意味で会長としては、クレジットコストの健全なレベルというか、ある程度リスクをとっていくことについてどうお考えになっているか。
(答)
 クレジットコストがゼロではならないとは考えていない。問題はクレジットコストではなく、銀行の行動様式としてしっかりとリスクテイクができているか否かが、重要であると思う。
 私自身の考えで申しあげると、現在、みずほの中期経営計画を作成中であるが、新しい金融のあるべき姿の一つとして、リスクテイク能力が含まれると考えている。ここでいう、リスクテイク能力とは、単に審査能力ということではなく、資金運用のプロとして、次世代を担う産業あるいは企業を見出し、育成し、エクイティを含めて、発展に必要な資金を供給していくことだと思う。その結果として、クレジットコストがゼロになるのであれば、それがベストであると思う。
 ただし、失われた20年という歴史のなかで、金融機関がある種の勇気を持ってリスクテイクしてきたかと問われれば、個人的な見解だが、もう少し勇気があってもよかったのではないかと思う。個別行としても次の中期経営計画の中に落とし込み、しっかりとした行動で示していきたいと思う。
 例えば、震災復興に関して申しあげれば、スパリゾートハワイアンズが非常に大きなダメージを受けたが、我々の組成するファンドも含め、リスクを取り、見事に立ち直り、地域の経済あるいは雇用に結び付いている。このようにプロフェッショナルの目を通して果敢に行動していくべきであろうと理解している。


(問)
 クレジットコストに関してお聞きしたい。依然として国内の家電メーカーや半導体メーカーの経営環境が厳しい中で、例えばシャープに対してメガバンクを中心に緊急融資が行われた。一方市場では、邦銀の与信費用、クレジットコストは今現在歴史的低水準だが、今後はそれが上昇に転ずるのではないかというリスクを懸念する声が聞かれる。会長の今後のクレジットコストの見通しを聞かせてほしい。
(答)
 個別の企業について申しあげることは、差し控えさせていただく。
 今後のクレジットコストの見通しについて私個人として留意しているポイントを2点申し上げると、1点は中国経済のスローダウンの影響であり、もう1点は産業としての競争力の有無という点である。
 1点目は、先ほども申しあげたように、中国経済のスローダウンにより、素材メーカーや、部品メーカーなどの中堅中小企業も含め、日本企業がネガティブな影響を受ける可能性があり、この点に関して注意深く見守っていく必要があるということである。
 2点目は、例えば電機電子産業のように、かつて日本が強かった分野において、韓国や台湾の台頭により、かつてのような競争力の維持が難しくなっている産業が現れており、各産業の競争力の有無についても注意を払う必要があるということである。
 ただし、電機電子産業に関しては、それぞれの企業が高度な技術力や、高いマーケット占有率を有しており、当該業界全体が著しく競争力を失っているとは考えてはいない。


(問)
 ゆうちょ銀行の問題だが、担当大臣が郵政の株の売却手続きを3年以内にやりたいという発言をされているが、その点についての評価を聞きたい。
 あと、各業界団体ごとに勉強会をやりたいという提案を出されているが、それへの対応をどうされるかを教えてほしい。
(答)
 3年以内を目処にとのご発言があったという報道がなされていることは承知している。私の理解では、日本郵政の株を3年以内に売却するという意味でおっしゃられたのだと考えている。
 私どもは、従来より、郵政民営化の問題については、ゆうちょ銀行に対する国の関与について、どのような具体的なスケジュールで完全民営化がなされるのかという点をしっかりと示していただくことが、全ての出発点であると申しあげている。そうした観点から申しあげると、日本郵政の株式売却もさることながら、ゆうちょ銀行の完全民営化に向けたスケジュールを一日も早く示していただきたいというのが、私どもの立場である。
 勉強会について申しあげれば、やはり基本的な道筋であり、前提となる二つの点、一つは、いま申しあげたスケジュールであり、もう一つは、ゆうちょ銀行の経営体制や管理体制であるが、少なくともその2点について、これからどのようになされるのか、まずお示しいただいたうえで、検討させていただきたい。ゆうちょ銀行の経営体制や管理体制について申しあげれば、新しい事業を始められるのであれば、例えば、リスク管理態勢、コンプライアンス態勢、業務監査態勢等、整備が必要とされる多くの事項があると考えている。我々と同じ銀行である以上、そこをしっかりと整備していただかないと、最悪の場合にはシステミック・リスクにも及ぶ可能性がないとは言えないからである。したがって、少なくともその2点については、しっかりとした考え方を示していただいたうえで、何か具体的なことについて、ご相談なさりたいということであるならば、という捉え方をさせていただいている。先日お会いして以降、大臣から、どのような勉強会を開きたいとか、どのような分野についてコミュニケーションをなさりたいというお話は、まだ私はいただいていない。今後具体的なお話があれば、よく見極めたうえで判断させていただきたいと考えているところである。


(問)
 直接的には地銀の話になるかと思うが、復興に関連して、東北の沿岸部では、集団での高台への移転の計画が進んでおり、その中で金融機関が設定した抵当権の扱いをどうするのかというのが問題になっている。この件についてのお考えを聞かせてほしい。
(答)
 今まで住んでいたところを諦めて、その場所を地方自治体に買い上げていただき、高台の方に移るという計画が、色々な形で検討されているという点は、そのとおりである。
 ご質問は、地方自治体に売却するときに、抵当権がネックとなり集団移転が進みにくいのではないか、という課題が具体的に見えてきたことを指摘されていると思う。我々としては、二重ローンの問題も含め、移転がスムーズに進むように対応していく所存であり、銀行の対応が大きなネックになっている、ということは承知していない。二重ローンの問題というのは、次の新しいステップに進むという話があって初めて表に出てくる性格のものであり、被災者の方々が、漸く次のステップに向けて動き出せるようになってきた点を踏まえれば、基本的には前向きに検討させていただくということとなる。
 全銀協としては、既にご承知のとおり個人版私的整理ガイドラインを立ち上げており、その活用に取り組んできた。ガイドラインが適用できれば、基本的に抵当権の問題は解決すると思っており、それが十分に浸透していないという面があるとすれば、より一層努力をし、皆様方にお知らせしていきたいと考えている。

以上