平成25年2月14日

佐藤会長記者会見(みずほフィナンシャルグループ社長)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 中小企業金融円滑化法の期限到来後における中小企業金融等への取組みについて、本日の理事会で、お手許の資料のとおり申し合わせを行った。
 中小企業金融円滑化法は本年3月31日をもって期限を迎える予定であるが、私ども民間金融機関としては、政府等と緊密な連携を間断なく保ちつつ、適切に金融仲介機能を発揮し、企業等の資金需要や貸付条件の変更等のお申出に引続き真摯かつ丁寧に対応していくことが期待されている。
 同法の期限到来後においても、これまでどおり、真摯に中小企業等と向き合い、企業等の資金需要に前向きに対応し、金融の円滑化に全力をあげて取り組むことを申し合わせたものである。
 事務局からの報告は、以上である。

 

会長記者会見の模様

 


(問)
 今、事務局からも説明があった中小企業金融円滑化法の期限到来後の対応について、お考えを伺いたい。
(答)
 ただ今、事務局報告があったとおりであるが、改めて金融円滑化法についてコメントさせていただきたい。以前から申しあげているが、中小企業金融の円滑化については、決済機能と並ぶ、我々金融機関の本来的な業務であり、恒常的に果たすべき最も重要な社会的役割の一つと認識している。
 金融円滑化法は時限立法であるが、導入から3年以上が経過する中で、我々金融機関は金融円滑化法の有無に関わらず、金融円滑化への取り組みを今までも行ってきたし、かなり浸透してきているのではないかと思っている。したがって、金融円滑化法の期限が到来しても、銀行の融資姿勢がその日を境に変化するということは一切ないのではないかと考えている。
 本件については、全銀協としてもすでに11月に会員各行で申し合わせを行っているが、中小企業の皆さまに、金融円滑化法期限到来後の銀行界の対応についてご懸念が残っているのではないかと思われるので、その払拭を図ることも重要であろうと思う。
 先ほど事務局よりご説明申しあげたとおり、「中小企業金融円滑化法の期限到来後においても、民間金融機関の融資スタンスに不安を持たれることの無いよう、借り手への説明をしっかりと行いつつ、金融の円滑化に全力を挙げて取り組む」ということを、本日改めて申し合わせを行ったところである。
 また、銀行のみならず、信用金庫業界あるいは信用組合業界でも同趣旨の申し合わせを行ったと聞いており、金融業界全体が一丸となって、中小企業金融の円滑化に向け、今後も不断の努力を続けていきたいと考えている。
 4月以降、中小企業の資金繰りや倒産の増加について、不安視する声も一部にあることは承知しているが、これにはある種の誤解があると思っている。それは、円滑化法の期限が到来すると、銀行のお取引先に対する融資姿勢がその日を境に急に厳しくなり、その結果多くの中小企業が資金繰り破綻に至るのではないか、といった誤解ではないかと思う。これについては、先ほどもお話したとおり、円滑化法の有無に関わらず、金融機関による金融円滑化への取り組みは十分浸透しており、そのようなことにはならないと考えている。今後については、こうした誤解を払拭するために、我々の取り組み、方針を引き続きしっかりとお客さまに伝えていくことが極めて重要だと考えている。
 もう一つ、中小事業者の中には、経営改善計画の策定に至っていない、あるいは実績が計画を大きく下回っており、売上増加や事業構造の見直しといった対策が必要にも関わらず、その対策が今の時点でまだ十分ではないという先があることも事実である。現在の景況感等を踏まえ、そういった先の将来に対する不安感が一部で表れてきているということもあるのではないかと思う。そのような抜本的な対策ができていないお取引先については、第一にはお取引先自身が経営課題を正確に認識したうえで、主体的に取り組んでいくことが重要であるが、一方で、我々金融機関としても、この場でも何度も申しあげているとおり、コンサルティング機能を更に発揮し、お取引先の経営改善計画の作成支援等を従来以上に積極的に取り組んでいきたいと考えている。本日の申し合わせの中でも、「それぞれの借り手の経営課題に応じた最適な解決策を、借り手の立場に立って提案し、十分な時間をかけて実行支援する」ということを明記している。「それぞれの借り手の立場にたって」、「十分な時間をかけて」、ということが重要なポイントである。
 我々のこうした思いに対し、政府からも様々な支援がなされていることは、非常に心強く感じている。例えば、企業再生支援機構を地域経済活性化支援機構に改組する法案が、現在国会で審議されている。企業再生支援機構については、これまでの活動を通じ、企業再生支援に向けたノウハウが豊富に蓄積されており、我々銀行業界も多くの人員を派遣し、側面支援とノウハウの共有化に努めているところである。また、今年の3月末までとされていた企業再生支援機構の支援決定期限が延長されることは、非常にありがたいと感じている。更に、各地の中小企業再生支援協議会についても、我々銀行界から人員面でのご協力をさせていただいており、こうした再生支援に向けた体制が、政府・地方双方からかなり整備されてきたと感じているところである。こうした外部機関による支援に加え、先般、ABLと呼ばれる動産・債権譲渡担保融資の利用促進に向けた施策や、資本性借入金の税務上の取扱いの明確化等が政府から公表されている。各企業のニーズに沿った様々なご提案をバックアップする、こうした施策を我々金融機関が十分活用しつつ、従来以上にしっかりと対応していきたいと考えているところである。
 最後にもう一点申しあげると、一部の地域金融機関では、金融円滑化法終了後にメガバンク、あるいは主要行の対応が大きく変わるのではないか、という不安を感じておられると伺っている。主要行においては、そのような事態には一切ならないよう、十分な対応をしていくということを改めて申しあげておきたいと思っている。


(問)
 第3四半期の各行決算が出揃った。この決算に対する総括や評価、今後の課題についてお考えをお聞かせいただきたい。
(答)
 各行の決算が出揃ったばかりであり、大手行の内容を中心に全体的な印象ということで、お話をしたいと思う。
 中間期、9月末からの比較として、3点ほど申しあげる。1点目は、与信関係費用の抑制傾向が続いているということであるが、これは、日本の景況感が好転していることも関係しているのではないかと思う。2点目は、11月以降の株価の回復を受けて、保有株式の減損額が大幅に縮小して、これが当期利益を押し上げているということである。そして、3点目は、本業の業務純益について、波行性はあるものの、明るさが見られたということである。以上の3点が今回の第3四半期決算の特徴、総括ではないかと思う。
 今申しあげた業務純益の内訳を見ると、国債等の債券売買益、マーケットの収益は以前に比べ、金利の低下幅が限られたため、上期ほど収益の押し上げ効果はなかった。一方、資金利益については、引き続き、貸出金利の低下による利ざやの縮小が続いたものの、貸出残高は、特に海外向けが引き続き伸びており、また、国内向けについても9月末からは増加に転じていることもあり、収益を押し上げたと思う。加えて、役務取引等の非金利収益については、シンジケート・ローン関連、あるいは投信・保険販売、海外ビジネス関連が牽引し、総じて増加基調が強まってきていると思う。
 通期、3月末に向けての見通しについては、特にマーケット動向に左右される部分もあるため、はっきりしたことを申しあげる段階ではないと思うが、最終利益ベースについては、かなり堅調に推移するのではないかと推測している。ただし、例えば安倍政権誕生後の円安傾向が、輸出産業にとって大きな追い風となってはいるが、そのプラス効果が、例えば、国内の設備投資需要に、大きく結びついてきているといった実感を持つまでには至っていない。いくつかの明るい材料はあるが、それが金融機関の貸出需要に明確に結びついてきているという段階にはまだ至っていないと認識しており、引き続き3本目の矢である成長戦略の策定と具体的な実行、また、先ほど申しあげた中堅中小企業に対するしっかりとした支援を並行しながら、日本経済の足腰を強くしていく努力によって、本来的な業務である貸出業務の収益を持ち上げていくことが、今後とも重要であると感じている。


(問)
 足元の景況感についてであるが、今日発表されたGDPが下げ幅を縮小したり日銀が景気判断を上方修正したり、マクロについては回復の兆しがあると思うが、その金融面から見たマネーの動き、企業の資金需要や貸出への動きがどうなっているのか、また、この先の見通しについてはどう考えるか。
(答)
 大企業と中堅中小企業では動きが多少異なると思う。まず、大企業の資金需要について申しあげると、一部の業種または企業において、かなり強いと感じている。ただし、これは、例えばクロスボーダーM&Aなどの大型の戦略や設備投資を背景としたものについてのことであり、こうした点で、大企業向け貸出が伸長している面がある。ただし、大企業については手元流動性が厚く、キャッシュリッチであるという状況に変化はないので、1月以降の景気動向を要因として、大企業の設備投資需要が拡大し、長期の貸出需要に繋がっていくという段階には至っていないと思う。
 一方、中堅中小企業向けの貸出については、経済や産業の構造変化に直結した貸出が明確に見てとれるわけではないが、先ほど申しあげたような構造改革やその事業展開の中で徐々に資金需要が発生しつつあり、そのことは統計にも表れてきていると思う。ただ、この中堅中小企業向けの貸出の伸びについても、これが持続性のあるものなのか否かという点については、もう少し時間をかけて見極めていく必要があると思う。最も重要なことは、円安が進んで輸出産業の収益が向上してきたとしても、その収益を国内で再投資するという循環が確立されない限り、本格的な国内の資金需要の増加には繋がりにくいという面があることである。現時点においては、すでに構造が変化し、明らかにそのような流れになっていると見極められる段階には至っていないと思っており、今後の成長戦略あるいは具体的な構造改革といったものが進むなかでそうした道筋がはっきりと見えてくれば、いよいよ本格的な国内における景気回復に繋がっていくのではないかと考えている。したがって、今しばらくは安倍政権の施策あるいは、特に地方における資金需要の動向について注意深く見守っていく必要があり、非常に大事な局面にきていると思う。


(問)
 本日補正予算が衆議院を通過したが、そのなかの緊急経済対策に日本企業の海外進出支援を官民協働でやっていこう、リスクマネーを供給していこうというスキームが盛り込まれている。大手行はかねてよりアジア中心に、海外業務を拡大しているが、あらためて民間銀行としてこういった海外進出支援に向けた官民協働の役割分担についてどう考えるか。
(答)
 緊急経済対策の一環として、アジアを中心とする新興国の経済成長をわが国の成長に取り込んでいくことが求められており、またそのような方向で議論が進んでいるが、こうした観点からは今後一層の官民連携が重要である。
 なかでも、JBICとの協働の必要性が今後ますます高まってくると、感じているところである。JBICからは、円高対応緊急ファシリティのM&Aクレジットラインの創設などを通じて、日本企業の海外事業展開を民間銀行が支援する際に、補完的なサポートを従来よりいただいている。ご承知のとおり海外における長期・巨額かつ高度な金融ニーズ・融資ニーズに的確に応えていくためには、どうしても融資の期間、金額、量、あるいはリスクのとり方等の面で民間銀行だけでは十分に対応できない部分が生じるので、JBICによる補完の重要性は非常に高くなっていると思っている。JBICには、民間銀行の行う融資への協調融資や、あるいは協調融資における市中優先償還といった民間銀行の業務特性上必要なサポートにより補完をいただいている状況である。この機能は我々民間金融機関にとっては、極めて大事な機能であり、今後メガバンクのみならず、地域金融機関が海外に向かって業務を拡大していくうえでもますます重要になってくると思っている。
 そういった補完機能は、民間銀行との極めて良好な協力関係の上に成り立っており、その意味ではJBICとは官民の補完関係が極めて有効に機能していると考えている。また、補完関係が日本のインフラ輸出といった今後の成長戦略の中で特に他国との競争関係において、非常に大きな武器になっており、また、今後もなるであろうということは間違いないと思っている。そうした観点から、今後もJBICを中心とした官民連携により、こうしたファイナンスを支えていくということを、ますます進めていただきたいと考えている。我々民間金融機関もそれに呼応して、こうした分野について力を付けていくことが日本の今後の海外におけるプレゼンスの向上と成長戦略に直結していくものになるであろうと考えているところである。


(問)
 先日、RBSが海外の当局とLIBOR問題で多額の和解金を支払った。全銀協ではTIBORの不正防止策について現在検討している段階だと思うが、その進捗状況と今後のタイムフレームをお聞かせいただきたい。
(答)
 今ご指摘いただいたとおり、全銀協においては国際議論を踏まえた検討を行っているところである。特にIOSCOにおける議論については注視しているが、現在IOSCOは報告書を市中協議に付している段階である。全銀協としても、当該報告書に対するコメントをすでに提出しており、その内容については、IOSCOもしくは全銀協のホームページでご覧いただける。市中協議報告書に関する細かい論点について個別のご質問がある場合は、全銀協事務局宛にお問い合わせいただければご説明を行うが、本日は、もう少し大きな論点について、概観をご説明できればと思う。
 IOSCO市中協議報告書に示されているいくつかの論点の一つとして、例えば"公的関与の在り方"があるが、指標のガバナンス評価に関しては、当局による直接管理、民間による自主的な管理、そして自主規制機関等による管理、という三つの提案が行われている。
 報告書では、各金融指標の多様性も踏まえ、「一つの基準を全ての指標に適用するという手法は採用しない」と明記されている。我々としても、その考え方について、まだ市中協議の段階ではあるが、あるべき方向に沿ったものであると理解している。
 また、例えばLIBORにおける"調達可能金利"などの定義に関する議論において、一つの論点としては、調達可能金利という定義がベストか否かという点が今後議論されていくと認識している。具体的にいえば、実際の取引データのみを用いて指標を作成できるのか否か、という点について考えてみても、当然のことながら観測可能な実取引が存在しない場合もあり得るため、そのような場合には、結局、専門家の判断を加えたうえでレート呈示を行うこととなる。このような点に着目し、定義の違いはあれど、指標の透明性・信頼性のために何が必要とされるのかについて考えを及ぼせば、現段階では、LIBORの定義である"調達可能金利"という考え方と、我々のTIBOR、すなわち"プライムバンク間で取引されると思われるマーケットレート"という考え方の間において求められる対応にはさほど大きな違いはないのではないかと感じている。
 むしろ実態面を考えた場合、定義のあり方よりも、金融指標の算出、呈示に関するプロセスの透明性や信憑性、信頼性をどのような形で担保し、検証可能なものとしていくか、という点の方が、より信頼性の高い指標にしていく上で、重要ではないかということが現段階の認識である。
 したがって、全銀協としては、引き続きIOSCOでの議論の動向を見極めながら、今申しあげたような観点を一つの拠り所として、金融指標としてのTIBORの在り方やリファレンス・バンクの在り方などについての考え方を取りまとめていく必要があると考えている。


(問)
 金融とは直接関係ないが、前回の産業競争力会議で、農業改革等について会長もメンバーとして提唱されていたと思うが、それを踏まえて、政府のTPPへの参加スタンスについてのお考えをお聞きしたい。
(答)
 産業競争力会議では、農業に限らず、もっと幅広いテーマを扱ったペーパーをお出ししているが、限られた発言時間の中でどうしても一つ申しあげておきたいこととして、農業について申しあげた。
 したがって、農業ばかり提唱しているように受け止められている向きもあるが、必ずしもそうではなく、例えば再生可能エネルギーや社会インフラの整備、シルバー産業といったテーマや、将来に向けてわが国の技術・テクノロジーをどのように活かしていくのか、またどのように人材を育成していくのかなどの点について、今後幅広く議論されていくと考えている。そのなかで、例えば1,500兆円の個人資産の有効活用、あるいは年金資金の運用の活性化等といったテーマについても、積極的に意見を発信していきたいと思っている。
 そのうえで、ご質問にあったTPPへの参加の是非について、全銀協会長の立場で申しあげることは適切ではないと考えている。
 一言申しあげるとすれば、TPPへの参加の問題と離れて、農業を成長産業化するということが日本経済の再生のためにはどうしても必要であると認識しており、この点については安倍政権も同じ認識であろうと思っている。
 「農業の話=TPP」のように結びつけてしまうと、大きなビジネスチャンスや成長の後押しについては、むしろマイナスの影響を与えかねないと思っており、私が提唱する農業の活性化というもの自体が、成長産業として今後十分に国際展開していく力を持ちうるという点について、産業競争力会議において、これまでも申しあげてきたし、今後も強く申しあげたいと思っている。
 したがって、農業を競争産業にしていくプロセスにおいて、いま実際に農業に携わっている様々な方々にも農業の成長産業化・六次産業化に加わっていただき、一緒に押し上げていくことが非常に重要であろうと思っている。


(問)
 二つあるが、一つは円滑化法について、冒頭でもお話があったが、中小企業への支援はそれはそれでもちろん大事なことだが、一方で、円滑化法という名前の下で企業の新陳代謝が阻害されているのではないかという指摘もあると思うが、この点について会長の見解を伺いたい。
 二つ目は、JBICの話の中で、会長から「JBICとは民間との補完関係ができている」というお話があった。「JBICとは」とおっしゃったので、補完関係ができていないところとして、おそらく日本政策投資銀行を念頭に置いているように思うが、間違っていたら「違います」とおっしゃっていただいて結構だが、改めて、官民の金融機関の補完関係をどう見るか、についてコメントをいただければと思う。
(答)
 最初の金融円滑化法についてのご質問であるが、先ほども申しあげたとおり、金融の円滑化は、民間金融機関の本来的な業務であり、問題が生じているお取引先に対して我々がコンサルティング機能を発揮して、企業の再生や成長に向けて一緒に計画を考えていこうことを意味するものであり、ご指摘のとおり、元々企業体あるいは事業として将来性のない所に対して、何か特別のことをしようというものではない。
 したがって、新陳代謝が行われていくことと、銀行が金融円滑化法の趣旨を踏まえて中小企業に対する金融円滑化にしっかりと取り組んでいくということとは、全く矛盾するものではないと考えている。
 次に、「JBICとは」と確かに申しあげたが、特段他意があって使った言葉ではない。海外ということについて申しあげれば、これはまさにJBICの主要な業務である。JBICも取扱い業務をかなり広げてきているが、日本経済全体にとって、海外で稼ぐこと、あるいはアジアの成長にフックをかけることという観点で申しあげると、JBICの機能が非常に重要になってきている。公的金融について言及する場合、どうしても民間との競合がテーマになることが多いが、海外におけるJBICの活動について私の認識を申しあげれば、民間と非常に良い関係を保っているし、今後も是非一緒にやって行きたいと思っており、それ以上でも以下でもない。他の政府系金融機関との間では、海外ではなく国内で競合しているケースもあるが、それが問題になっているということで申しあげたつもりはない。


(問)
 アベノミクスで2%というインフレターゲットが設定されて、いろいろな政策が進められているが、インフレの到来によって銀行に与える経営上のメリット、デメリットは何があるのか、また、その際に銀行がどのように対処するか、もしくはもうすでに対応策をとられているものが何かあるのかをお聞きしたい。特に、メガバンクをはじめ銀行が大量保有している日本国債についての対応策をお聞きしたい。
(答)
 インフレターゲットについて、どのような影響が生じるかということは今後の話ではあるが、インフレには大きく別けて2種類あると思っている。例えば、物価上昇がインフレの一つの形であるとすれば、将来に向けた持続的な成長への期待から、物価が上昇していくという、足元の物価上昇がストレートに経済成長の期待感と結びついているインフレと、そうではなく、必ずしも将来に対する明るい成長期待と関係なく物価が上がっていくインフレがあると思う。したがって、2%をターゲットとして、これから物価を上げていくことになるが、留意が必要なことは、どのような物価の上がり方をするかという点であり、これによってかなり内容が異なってくると思う。
 ご質問の銀行経営、銀行収益への影響についても、今申しあげた2種類のインフレによって大きく異なると思う。例えば、前者、巷間言われるところの、「良い物価上昇」になると、当然ながら、将来の価格が上がることを想定し、しかも成長が見込めることから、企業が設備投資を前倒しすることになる。こうして資金需要が生まれ、それに引っ張られる形で、金融機関の収益に大きなプラス効果をもたらすことになると思う。また、その場合には、おそらく長期金利が上昇し、長期と短期の金利差が広がることで、貸出の利幅が拡大する。その意味においても「良い物価上昇」は、金融機関の収益にとって大きくプラスに効いてくる。これは伝統的にも理論的にもそうである。
 ただ、同じ物価上昇であっても、将来に対する成長の期待感とは異なる要因にもとづくものも当然あり得る。それは例えば円安との絡みで申しあげれば、輸入価格が非常に大きく上昇することで物価が上がることも物価の上昇には変わりない。そうしたケースでは、将来に対する成長期待がベースにあるわけではないため、むしろ個別企業の業況の悪化につながり、必ずしも銀行の収益にプラスになるわけではないと思う。
 したがって、インフレターゲットによって金融を緩和して、物価を上げていくこと自体は、今の足元の日本の状況からすれば、正しい方向であると思われるが、今後は、単に物価が上がっていくことだけを見ていくのではなく、それがどのような要因にもとづき、何によってもたらされたかということを、相当注意深く見ていかなければならないと考えている。この点については安倍内閣も日銀も十分ご理解されたうえで導入されるであろうと考えているし、それによって銀行の収益に与える影響も、かなり違ってくると理解している。
(問)
 対応策ということでは何かあるか。
(答)
 例えば、国債に関しては、前者のインフレのケースについて申しあげれば、仮に長期金利が上昇し、国債の価格が下落した場合でも、銀行収益の拡大が想定される。おそらく、その場合には株価の上昇も見込まれるため、銀行全体のバランスシートで言えば、保有株式の含み益が増えるし、貸出が伸張することにより、業務純益もかなり増えることが想定されるため、そのような金利上昇については、銀行としては十分対応ができると思う。
 後者のインフレのケースにおける物価の上昇については、二つの考え方があり、一つは、こちらの可能性は非常に高いが、物価の上昇では金利が上がらないケースである。この場合は、以前から申しあげているとおり、現状では日本の国債が暴落する要素は少なく、特段慌てて何かをすることには至らない。
 もう一つのケースは、あくまでもワーストシナリオかもしれないが、日本の経済の成長力が落ち、例えば貿易収支、更に言えば経常収支が赤字になるような事態に陥ることが、物価上昇と共に生じるケースである。この場合、国債の問題はかなり注意を要すると考えなければならない。ただし、以前から申しあげているとおり、国債の保有リスクについては、例えば、メガバンクで言えばアベレージライフを3年以内に抑えていることもあり、かつ、ストレステストについても十分な分析を行っていることから、仮にワーストケースが惹起される状況になっても、それによって日本の金融機関、大手の金融機関が大きな痛手を被ることにはならないと考えている。


(問)
 2点ある。円滑化法の話と為替の話である。円滑化法だが、制度は何事もプラスの面、マイナスの面があって、マイナスの面をフォーカスさせていただきたいが、円滑化法は明らかに先ほどの言葉で言えば新陳代謝を遅らせた面があると思う。これは銀行の責任というよりはむしろ国策で進めてきてしまった部分であるが、これに対する銀行から見た反省点というか、お考えを伺いたいのと、4月以降やり方をどうしていくのか、そのなかで政府はどうしても消費税増税を今のところは実施しようと思っているが、金融機関として消費税増税を実現する環境に配慮しなければいけないのかどうか、その辺をお願いしたい。
(答)
 円滑化法が3月末に期限を迎える予定であるが、私ども民間金融機関のこれまでの取り組みに照らして、円滑化法のもとで運営してきたことに伴う反省点は、特段ないと思う。
 冒頭から申しあげているとおり、円滑化法の有無に関わらず、中小企業金融の円滑化は、我々金融機関の本来業務として行ってきていると認識している。ただ、円滑化法が施行されたことにより、貸出だけではなく、お取引先企業の一社一社について、従来以上に踏み込んだかたちでコンサルティング機能を発揮していく傾向が強くなったということが実態であると考えており、円滑化法の施行期間においてそうした考え方が相当浸透したのではないかと思う。したがって、円滑化法が期限を迎えたことにより、その考え方を後退させてはならないということが非常に重要であると思っている。
 消費税増税のための環境を、特に4月から6月を目途に整えなければならないと意識しているのか、というご質問であるが、これはご承知のとおり日本のGDPをどうするのかということであり、金融機関のみの行動によって、操作できる問題ではないと思う。したがって、政策目的である消費税を上げることの是非について、そもそもコメントをする立場にはないが、少なくとも金融機関が、あるいは全銀協として、4月から6月の間に消費税に関連して何らかの対応を具体的に行うという考えは持っていない。
 むしろ、より本質的な課題として、日本経済のデフレからの脱却、あるいは地方経済の活性化に関して、産業競争力会議でも議論されている内容において、金融機関が果たすべき役割は沢山ある。これまでも「ヨコの連携」という言葉で申しあげているが、地域金融機関等と連携して、具体的な成果を出していくことが、今の金融機関にとって大変重要なことではないかと考えている。


(問)
 為替の話であるが、アメリカの財務次官が今週、円安を事実上容認するような発言をした。アメリカにとって、円安ドル高のメリット、あるいは、次官が発言した事情というのをどのように見ているか。
(答)
 ご承知のとおり、G7での議論については、解釈が分かれている。したがって、ドル/円の為替相場も若干、行き来しているような状況が続いていると思う。私は、会議に同席しておらず、また、真意が分かるような立場でもないが、一般的に言われていることで申しあげれば、アメリカはアベノミクスを支持した、ということではないか。しかしながら、一方で、ヨーロッパ、特にドイツは、やはり為替の問題については相当懸念を持っているようである。
 そういった観点で、仮定の問題としてアメリカが円安を容認しているのであれば、それがどのようなことであるのかと考えてみる。まず、世界経済を見渡した場合、ヨーロッパは依然として大きな問題を抱えている。ヨーロッパにおける次のターニングポイントはイタリアの総選挙であると思うが、政治的に不透明な状況が継続している。また一方、アジアについて申しあげれば、経済統計では中国経済は底打ちを見せつつあるものの、実際の中身については、以前から申しあげているとおり、過剰設備投資あるいは不動産価格上昇要因に支えられているのではないかとの観測もあり、持続性に懸念がある。アメリカ政府にとっては、持続的な世界経済の成長が国益に適うことから、足元の日本経済が安倍政権のもとで、アベノミクスによって長きにわたったデフレからの脱却を果たし、力強い成長過程に入っていくことが最終的に米国の利益に適うという判断なのではないかと思う。
 個人的な見解となるが、やはり、盟友国である日本の経済が強くなることが、アジアにおけるバランスの観点からもアメリカの国益に適うことになるであろうから、いみじくも安倍政権がご説明されているように、今回の円安が長期に及んだデフレからの脱却のための持続的な金融緩和に伴うものであるならば、アメリカはそれを十分理解したうえで円安容認という発言をしたのではないかと思われる。
(問)
 アジアでのバランスということは、対中国ということか。
(答)
 対中国のみ、ということではなく、今後、アジアが世界経済を牽引していくうえで、アジア全体の成長が非常に重要であるという趣旨で申しあげた。
 例えばインドについて最近の状況を申しあげれば、中国と同様に、十分な形で持続的な成長路線に入っているとは依然として言い難いと思う。アジアにおけるそのような環境認識のなかで、アメリカにとって非常に重要な盟友国である日本の経済がアジア全体に対してある程度しっかりと下支えするような環境をとることが、アジア全体の安定性・成長性の恩恵をアメリカ経済自身が受けるうえで非常に重要になってくるのではないか、ということをご説明したものであり、対中国のみという観点で、何かを特別なことをお話しした訳ではない。


(問)
 資金利益について伺いたい。個別行ベースで見ても、おそらく3年振りくらいにこの前の第3四半期の資金利益が対前年比で増益になったと思うが、これで底を打って、資金利益というのは今後ボトムアウトして、伸びていく、リカバリーに入っていくのか。あと、国内と海外の資金利益を見た場合にやはり国内資金利益はシュリンクがしばらく続かざるを得ないのか、どう思われているか伺いたい。
(答)
 ご質問の件について、現段階で判断するのは、まだ、少し早いのではないかと思っている。ただし、何点か申しあげれば、海外における資金需要については、2012年(暦年)の1年間の動きを見てみると、やや弱含んでおり、アジアについても弱くなっている。先ほどのご質問にも関係するが、経済全体がややスローダウンしているため、昨年同様に海外貸出残高が大きく伸びていくかどうかを見極めるには、時間を要すると考えており、むしろ、昨秋あたりからは、そうはならない可能性も徐々に強まっているのではないかと認識している。もちろん、クレジットの目線を落とせば、アジアの資金需要は旺盛であるが、クレジットの目線を落とさないとすれば、徐々に、スローダウンしていると認識しており、海外貸出残高が大きく伸びていく環境ではなくなりつつあるではないかと思う。
 一方、国内については、ご承知のとおり、大企業を中心に貸出残高の減少が続いていたが、このところの経済成長の期待感を反映し、底を打ちつつあるのではないかと思う。今後、底を打ってL字型に横這いとなるのか、V字型に増加に転じるかについては、現段階では何とも言えないが、安倍政権による成長戦略がどのようなかたちで具体化してくるかによるのではないかと思う。大企業については、手元資金が潤沢な企業が多いため、仮に国内で設備投資をする場合でも、当面は銀行貸出の増加に直結していかないのではないかと思われるが、1年、2年のタームで見たときには、場合によっては今年、大きなトレンドの変化が生じて、右肩上がりの傾向が確認される可能性もあると思う。現時点で、具体的な分野を挙げることは難しいが、産業競争力会議における議論なども含めて考えると、今後、国内の資金需要を喚起する新しい成長戦略が出てくる可能性もあるのではないかと思っている。
 若干敷衍すると、成長戦略についてはすでに議論が尽くされているため、大きく方向感が異なるものは新たに出てこないであろうという意見もあるが、重要なことは、具体的に実行に移していくことであると考えている。この点については、今回の安倍政権の実行力は、非常に高いと感じており、この成長戦略がしっかりと実現されれば、国内の資金需要も右肩上がりに増加していくのではないかと、期待感も含めて思っている。

以上