平成25年4月 1日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

和田専務理事報告

 事務局から1点ご報告する。
 本日、三井住友銀行の國部頭取が全銀協会長に選任された。新体制における会長・副会長は、お手許の資料のとおりである。
 また、本日はこのほかに國部会長の略歴と写真をお配りしている。
 事務局からの報告は、以上である。

会長記者会見の模様

 三井住友銀行の國部でございます。
 このたびの理事会で、佐藤前会長の後を受け、全国銀行協会の会長を務めさせていただくことになりました。これから一年間、皆さま方のご協力、ご支援を得て、この大役に取り組んでいきたいと考えておりますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

 就任に当たっての抱負を申しあげる前に、この場をお借りして、佐藤前会長に一言、お礼を申しあげたいと思う。
 昨年度は、政治、経済、金融、それぞれについて、内外で大きな動きがあり、我々を取り巻く環境も大きく変化した一年であったかと思う。不透明、不確実な状況が続くなか、佐藤前会長は、金融界の多岐に亘る課題に積極的に取り組まれ、震災復興や日本経済の復活に向け、大きな貢献を果たされた。
 特に、「金融円滑化法の出口対応」、「震災復興」、「国際金融規制に関する議論とそれを受けた国内規制の見直し」、「ゆうちょ銀行の新規業務への対応」といった課題に対し、わが国銀行界の代表として見事なリーダーシップを発揮された。
 また、全銀協TIBORの信頼性を高めるべく、具体的な検討に着手されたほか、でんさいネットの開業等、市場や決済を支える金融インフラの整備にも大きな貢献を果たされた。
 先月の「さよなら会見」で佐藤前会長が言われたように、私と佐藤前会長とは古くからの知り合いであり、昔からよく存じあげているが、その高い見識や卓越した行動力については皆さんもよくご存知だと思う。
 佐藤前会長の正確な状況分析にもとづく時機を得た行動は、我々銀行界、そして日本経済が次のステージへと向かううえで、大変大きな力となった。そのご尽力に、心から敬意と感謝の気持ちを表したいと思う。

 さて、改めて、わが国銀行界を取り巻く環境を俯瞰すると、世界経済全体では、主要中央銀行による金融政策が功を奏し、テール・リスクが後退している状況にある。
 欧州経済の問題等、一部の懸念事項は残っているが、総じてセンチメントは改善してきており、このセンチメントが持続するのかどうか、ファンダメンタルズの改善が進むのかどうか、注目しているところである。
 わが国では、景気が弱含んでいたが、昨年末に誕生した自民党安倍政権が、所謂「三本の矢」で、強い経済を復活させるという方針を掲げ、矢継ぎ早に政策を打ち出し、それを受けて、行き過ぎた円高の是正、株高等、前向きな動きが出つつある。このことは、率直に評価したいと思う。
 この動きを、持続的な成長にしっかりと繋げていく必要がある。そのためには、短期的な景気対策に加えて、中長期的視野に立った構造改革を実行し、潜在成長率を上げることが欠かせない。そのためには、規制改革を含めた成長戦略の本格的な取組みが望まれるところである。
 また、これとともに、財政規律維持への展望を明らかにし、「悪い金利上昇」を回避することも、重要な課題だと思う。
 一方、金融規制の面では、バーゼルIII、G-SIFIs等の新たな国際金融規制の基本的な枠組みはほぼ完成し、実施に向けた準備が各国で進展している。しかしながら、未だ国際的な議論が続いているものもいくつか残っているほか、各国で独自に規制を強化する動きもあり、それらの域外適用が論点となってきている。取り組むべき課題や注意すべき点は、まだ多いと言わざるを得ない。

 以上を踏まえ、私は、本年を、「日本経済が長期停滞から脱却し、力強く一歩を踏み出すよう、金融面からしっかりと支える年」にしたいと考えている。世界経済も先行きの不確実性は残っており、不透明さは完全には解消していないが、こうしたなかで、我々銀行の果たすべき役割は、世の中の変化の一歩先を読み、お客さまのニーズに正面から向き合い、リスクをきちんと管理しながら、とるべきリスクをとること、そして、こうした対応を通じ、経済の活性化、新たな成長分野の開拓に貢献することだと、私は考えている。銀行が果たすべき役割をしっかりと果たし、日本経済の再生、成長を支えていきたい。具体的には、以下の三つの柱を活動方針として取り組んでいく。

 第一の柱は、「日本経済の成長を支えるための金融機能の強化、震災復興への貢献」である。企業や個人のお客さまの金融ニーズにしっかりと対応し、資金を供給していくという、金融仲介機能を果たすことは、我々銀行の本来業務である。
 3月末に金融円滑化法の期限が到来したが、資金仲介機能を適切に発揮し、中小企業の資金繰りを支え、経済成長の足下を固めることは商業銀行本来の責務である。円滑化法の期限到来後も、銀行の対応は何ら変わらない。今後とも、お客さまのご要望に真摯に対応し、コンサルティング機能を適切に発揮していく。本年2月にも、会員各行において、民間金融機関の融資スタンスに不安を持たれることのないよう、借り手への説明をしっかりと行い、これまで通り、金融の円滑化に全力をあげて取り組むことを申し合わせたところである。まずは、この点をしっかりと行っていく。
 震災復興にもしっかりと貢献していく。日本の経済再生には、震災復興が不可欠だが、残念ながら、未だ途半ばと言わざるを得ない。
 「二重債務問題」が本格化するのはこれからであり、政府と緊密に連携し、対応を強化していく。そのうえで、日本の経済成長を促進するために、政府の「成長戦略」にも銀行としてしっかりと貢献していく。日本の成長戦略に資する金融機能の一層の強化という観点で一例を挙げれば、アジアの成長を日本経済の成長に繋げるべく、本邦企業の海外進出を金融面で後押しする機能を強化したいと考えている。
 そのためには、邦銀のアジアにおける業務拡大も必要であり、そのための制度整備に向けても、力を尽くしたいと思う。また、今後、拡大が予想される社会インフラの整備・更新や、震災からの復興需要に対し、民間資金を有効に活用していく。これに伴い、財政支出の抑制も可能になる。この分野では、邦銀が海外で培ったプロジェクト・ファイナンス等の手法を活用することで、貸出の潜在需要の掘り起こしや、ひいては、海外のリスクマネーを日本市場に呼び込むことにもつながっていく。この実現に向け、例えば、PFIの使い勝手の向上や積極的な活用等を働きかけていきたいと考えている。

 第二の柱は「強靭で透明性の高い金融システム構築への貢献」である。金融機関あるいは金融市場自体が、金融機能を安定的に発揮していくためには、金融システム全体の環境整備を不断に進めていくことが必要である。金融のグローバル化が進展するなか、国際的なルールとの整合性を確保することも重要な課題となっている。こうしたことから、わが国の金融システムが、より強靭で、効率性、透明性の高いものとなるよう、銀行界としても積極的に貢献していく。
 まずは、「TIBORの信頼性の維持・向上」に着実に取り組んでいく。これまで、全銀協では、TIBORの運営機関として、国際的な議論を踏まえつつ、TIBORのあり方に関する検討を進めてきた。これまでのIOSCO等における国際的な議論を踏まえると、「リファレンスバンクにおけるガバナンス等の向上」、「TIBOR運営機関自身のガバナンス等の向上」の2点について、今後、詳細を詰めていく必要があると考えている。その他の論点についても、更に検討を進め、必要な対応を行って参りたいと思う。
 また、昨年来、金融審議会で議論されている「金融機関の破綻処理制度の整備」や「銀行規制、投信法制の見直し」といったテーマについても、銀行界として、関係各所に必要な意見発信を行う等、適切に対応していく。
 一方で、国際協議等の場で、我が国金融機関・金融市場の実情・実態経済への影響等を踏まえた意見発信を行うことも、非常に重要なミッションだと認識している。解決すべき課題は多く、また、米国の外銀規制等、欧米金融規制の「域外適用」の動きにも十分注意する必要がある。こうした問題に適切に対応すべく、国際的な議論にも積極的に参画し、海外との連携も、アジア諸国を中心に、従来以上に強化したいと思う。
 金融インフラの整備という点では、本年2月に、でんさいネットが営業を開始している。システムの安定稼動に万全を期すための再点検により、開業が遅れ、ご迷惑をおかけしたが、中小企業の資金調達手段の多様化にも資するインフラであり、利用定着、拡大に向けた取組みを進めていく。
 ゆうちょ銀行のあり方についても、必要に応じ、意見発信していく。
 更に、将来の大震災、新型インフルエンザの大流行といった有事に備え、銀行界全体で、より効果的、効率的なBCPを整備することも重要な課題である。当局とも連携し、有事に際し、銀行間でどのような協力体制が構築できるのか、議論を深めていきたいと考えている。

 第三の柱は「銀行に対する信頼感、安心感の一層の向上」である。
 金融機関や市場が適切に機能を発揮するためには、利用者、市場参加者からの信頼を得ることが大前提である。なかでも銀行は、お客さまの大切な資金をお預かりする立場であり、信頼感を高め、お客さまに安心・安全にお取引いただけるよう、不断に取り組む必要がある。対応すべき課題は少なくない。
 例えば、投資信託や保険等の金融商品の販売、勧誘においては、引き続き、顧客保護、利用者保護の観点から、お客さまに金融商品の特性、リスクをきちんとご理解いただけるよう対応していく。「貯蓄から投資へ」と言われて久しいが、1,500兆円を上回るわが国の個人金融資産を経済活性化に有効に活用するためにも、安心して取引いただける環境整備は必須である。市場動向、お客さまの状況等を注視しながら、必要な施策をタイムリーに実施していく。
 利用者保護の観点からは、金融ADRへの対応も重要である。引き続き、迅速な解決に向けて努力していく。金融犯罪、サイバー犯罪による不正出金被害についても、セキュリティ強化、被害者への補償の両面で対応を進めていく。

 先ほども申しあげたが、私は、この一年間、「日本経済が力強い一歩を踏み出せるよう、金融面からしっかりと支えていく」ために、皆さまのご協力、ご支援を仰ぎつつ、全国銀行協会会長として、全力を尽くす所存である。一年間、大変お世話になると思うが、どうぞ、よろしくお願い申しあげる。


(問)
 2点まとめて質問する。1点目は、本日発表された日銀の3月短観についての受け止めと、今後の企業の景況感の見通しについて、どのように考えているか伺いたい。2点目が31日をもって、金融円滑化法が終了したわけだが、法施行後の3年間でどういった効果があったか、どういった影響が見られたのか、という点を振り返っていただき、そのうえで今後の銀行界の対応について改めて伺いたい。
(答)
 二つ質問を頂戴したが、最初の質問である、本日発表された日銀短観の受け止めと企業の景況感ということだが、まず、景気の現状に関する認識について申しあげると、2012年10-12月期の実質GDPは前期比年率0.2%と、これは3期ぶりのプラス成長になっている。したがって、昨年の春頃から悪化していたわが国の景気は、昨年10-12月期に底打ちしたと見られる。
 鉱工業生産も昨年11月を底に回復傾向にある。また、所謂「アベノミクス効果」も一部で顕在化しつつあり、デフレ脱却に向けた政策面での強い後押しを背景として、昨年11月から進行した円高修正・株高が経済全般にプラス影響を及ぼしていると思う。
 マインド改善を背景として、家計調査ベースの実質消費支出も1月から増加しているほか、企業部門にも明るさが広がり始めていると思う。本日公表された日銀短観においても、大企業・製造業の業況判断DIが前回調査に比べると4%ポイント上昇するなど、企業マインドが改善して、徐々に前向き姿勢に転じている様子が見て取れる。とりわけ、製造業では、円安を受けて、自動車の業況判断DIが大きく改善したほか、非製造業でも、建設・不動産・小売などで改善しており、アベノミクス効果が徐々に顕在化しつつあることが確認できると思う。先行き6月見通しにおいても、業況判断DIが更に改善すると見込まれている。現時点では、中堅・中小の製造業分野で慎重姿勢が残っているものの、2013年度の想定為替レートが85円22銭と、円高水準に維持されていることを勘案すると、今後、製造業全体に業況感の改善が広がっていくことが期待出来るのではないかと思っている。
 実態経済面から先行きを展望しても、海外景気の回復を受けた輸出の持ち直しなどに支えられて、回復傾向が定着すると見ている。今回の日銀短観でも、海外での製商品需給判断DIが先行きの改善を見込んでいるなど、輸出環境が回復に転じていくことが示されている。これに加えて、安倍政権が打ち出した緊急経済対策に伴う公共投資や大胆な金融緩和のもとでの円安を通じた輸出環境の改善、更には、株高等による消費者・企業マインドの改善といったことが景気の押し上げ要因となり4-6月期頃から、実質GDP成長率は徐々にペースを高めて行くと見ている。
 年度後半には、来年4月の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要も見込まれ、年度末までは基本的に高めの成長が続くと見ている。
 日銀短観や各種統計などから総合的に判断すると、日本経済が長期停滞から脱却するにあたり、まずは順調なスタートを切ったということではないかと思う。
 銀行界としても足元で広がりつつある前向きな動きを金融面から支援し、日本経済の本格的な回復・成長にしっかりと貢献して参りたいと考えている。

 次に2点目の金融円滑化法関連のご質問だが、金融円滑化法施行から3年が経過して、中小企業等に対する金融の円滑化、即ち、「お客さまから貸出条件の変更を要請された場合は、丁寧に対応すること」、また、「経営改善に向けたコンサルティング機能をしっかり果たしていく」といった点については、個々の金融機関で積極的な取組みを進めてきており、法の精神は十分に定着、浸透していると感じている。
 昨年発表された、所謂「政策パッケージ」の活用についても、銀行界として積極的に取り組んできている。例えば、各都道府県に設置された中小企業再生支援協議会への相談持込あるいは、そのうち再建計画が策定された案件も徐々に増えてきている。また、事業再生ファンドや地域活性化ファンドの創設も、幅広い地域で進んでいる。
 この3月末で金融円滑化法の期限が到来したが、先ほども申しあげたとおり、それによって、我々銀行の対応、あるいは融資姿勢が変化することはない。全銀協としても、2月に改めて申し合わせを行い、この点を確認している。また、中小企業の皆さまの懸念が払拭されるよう、現場での説明、周知活動もしっかりと行っていく。
 先月には、地域経済活性化支援機構も発足したところだが、今後とも、新たな機構をはじめとする様々な制度を活用し、中小企業の経営改善、事業再生にしっかりと取り組んで参りたいと思う。
 改めて金融円滑化法を総括してどうかという点について申しあげると、本制度によって、「中小企業等の金融の円滑化に努める」という趣旨を踏まえた取組みが全国で徹底されたという効果があったことは間違いないと思う。
 また、円滑化法施行後、倒産件数が減少していることを踏まえれば、本制度が厳しい状況にあった日本経済を一定程度下支えする役割を担ったという評価もできると思う。
 いずれにしても、企業や個人のお客さまの金融ニーズにきめ細かく対応し、金融仲介機能を適切に果たしていくことは、我々商業銀行の本来的な業務であり、また、社会的な責務であると思っている。金融円滑化法の有無に関わらず、この点については、しっかりと取り組んで参りたいと考えている。


(問)
 2点伺いたい。先ほどの質問の中で、前向きな動きを金融面からも支援していきたいという発言があったが、成長力の強化に向けて金融機関の担う役割、また具体的にどういった支援を行っていくのか伺いたい。
 もう1点は、今週、日銀の黒田総裁が就任して初めてとなる金融政策決定会合が開かれるが、会長としてどういうことを期待しているのか伺いたい。
(答)
 成長力の強化に向けて、金融界としてどういう対応をしていくかということだが、安倍政権は3本の矢、即ち、「金融政策」「財政政策」「成長戦略」によって、デフレ脱却を達成するとの方針を明確に示され、緊急経済対策の策定や、日本経済再生本部、産業競争力会議の立ち上げ等、矢継ぎ早に政策を打ち出している。こういう経済成長重視の姿勢が、先ほど申しあげたとおり、円高修正、株高というかたちで現れてきており、我々銀行界としても、こうした日本経済復活の明るい兆しに対して、大きな期待感を持って受け止めている。
 現在、わが国の置かれている状況から、更に再生・成長していくためには、景気対策だけではなく、中長期的視野に立った構造改革も必要だと思う。法人税率の引下げや規制改革等を通じて、成長戦略を本格化することが重要だと思っている。我々銀行界全体としては、日本経済が長期停滞から脱却し、持続的成長を実現できるよう金融面からサポートしていくというのが、基本的なスタンスである。
 まずは、企業の資金需要にしっかり応えていくということが必要だと思う。
 足元、銀行界の貸出を見ると、個人向け貸出を含めると前年同月比プラスという状況が続いている。また、昨年9月から、設備資金の末残も前年同月比プラスとなっている。
 個別行で申しあげると、中堅・中小企業を所管する法人部門の貸金残高が、この2月から、久しぶりに前年同月比プラスになっており、貸金需要が底打ちしてきているのも事実だと思う。我々として、しっかりと資金需要に応えていくということがまず一つである。
 それから更に進んで、企業の資金需要を創出していくという取り組みも必要。
 私ども金融界では、これまで各行が、それぞれの取組みを通じて、貸金需要の創出に取り組んできている。例えば成長分野への取り組みとしては、私どもの銀行では、環境やエネルギー、資源、水ビジネス、農業や医療・介護といった成長分野に対し、事業の当初段階から噛みこみ、最後のファイナンスまでお手伝いするといった取組みを行っている。
 各金融機関においても、それぞれ工夫をして取り組んできている。
 こういった取組みに加え、企業の事業再編や技術革新等に向けた取組みをファイナンス面からサポートすること、あるいは、我々は内外にネットワークを多く持っているので、海外展開や業界再編の動きのサポートや、産業や国境を越えた新たなバリューチェーンの構築をコーディネートすること等を通じ、新たな資金需要の創出にも努力していきたい。
 更に、冒頭の抱負のところで申しあげたが、日本経済の持続的な成長を実現するうえでは、アジアの成長を日本経済の成長につなげるという視点も必要だと思う。その観点から、我々として、日本の企業の海外進出を金融面から支えていく。そのために必要な規制緩和や制度整備についても、いろいろと内外の関係当局に働きかけていきたい。
 こういった様々な取組みを通じて、日本経済の成長にしっかりと貢献して参りたい。

 2点目のご質問だが、黒田新総裁には、大変期待をしている。黒田総裁はもともと財務官をされておられて、いわゆる市場との対話ということにも長けておられるし、また、2005年からアジア開発銀行の総裁をされていて国際的な経験が豊富であり、また、財務官時代のものも含めて、国際的な金融界とのネットワークも十分にお持ちであるので、しっかりとした政策をしていただけると思っている。
 3月の所信表明演説で、残存期間が長い国債の購入であるとか、金融緩和の前倒し実施など、いくつかの緩和手段に言及されている。3日、4日に開かれる政策決定会合で、どういう政策を打ち出されるか存じあげないが、10年以上に亘りデフレが続いてきた日本経済のデフレ脱却に向け、これまでの政策手段の枠組みを超えた政策を打ち出され、力強い取組みをしていただけるものと思っている。
 一方で、いろいろ議論されている、例えば財政ファイナンスの論点等については、十分留意するとのメッセージも出されているので、財政健全化への配慮をしながら、金融政策を展開していただけるものと期待している。


(問)
 2点質問がある。まず、1点目だが、今、長期金利は過去最低の0.4%近くまで下がってきている。邦銀の国債保有は短期のものが中心だと思うが、最近の長期金利の低下傾向を鑑みた銀行の運用スタンス、トレーディングのスタンスをお伺いしたい。2点目は、さきほど会長も言及されたが、日銀新総裁が大胆な金融緩和を進めることを受け、今は長期金利は下がっているが、将来的には金利上昇につながるかと思う。そういった副作用としてのリスクをどう見ているのか、銀行の国債保有にどういった影響を与えるのか教えていただきたい。
(答)
 まず足元の長期金利は、日銀の一段の金融緩和期待を反映した動きで2月から3月にかけて低下傾向をたどった。3月末は0.56%で、これは月末としては2003年以来の低水準となり、3月月中では0.51%まで低下したかと思う。こうした動きの背景には、デフレ脱却に向けた金融緩和策の一環として長期国債の買入れ年限の拡大であるとか、買入れ額の拡大などの実施が予想されていることに加え、ある程度長い期間、ゼロ金利政策が続くことをマーケットが織り込んでいることがあると思う。黒田総裁が国会で長めの金利を下げる方針を明確に打ち出したことが、マーケットでの買い安心感につながっていると思う。
 このように長期金利が低い水準で推移することが経済にどういう影響を与えるかという点であるが、企業や家計の借入れ意欲を刺激して設備投資であるとか、あるいは住宅投資の活発化などを通じて、デフレ脱却に向けた環境が整えられていくことが期待されるのではないかと思う。
 運用方針については、これは各行によってバラバラだと思うので、一概には言えないが、ここまで低い水準に金利が下がっているので、各行とも「今年度は、債券のディーリングで大きな収益を上げるのが、なかなか難しい環境ではないか」と思っていると思う。私どもの銀行でも今年度の業務計画を先般策定したが、市場営業部門で大きな収益を期待できる状況ではないという認識である。いずれにせよ、各行によってポジション運営、運用方針は異なっていると思う。

 今後の金利上昇リスクということであるが、結論から申しあげると、直ちに金利が急上昇するリスクは小さいと思っている。
 日銀の金融緩和姿勢が続くということと、企業の手元キャッシュが豊富であるので、まだ資金余剰状態にあるということ、それから消費税引き上げ等の財政健全化に向けた取組み等々を背景として、円金利は当面は低水準を維持すると見ている。将来的な金利上昇リスクについては、私は今後の財政健全化に向けた取組み如何ということだと思う。現時点において、政府、日銀の執行部は財政健全化に対する取組みについて表明しておられるので、これが維持される限りにおいては、急激な金利上昇のリスクは小さいのではないかと私は思っている。


(問)
 冒頭、「日本経済の長期停滞から脱却するために」という話があったが、佐藤前会長は、記者会見の場で、日本経済の失われた15年ないし20年について、「金融機関にも責任の一端があった」という趣旨の発言をされている。この点について、國部新会長はどのようにお考えか。
(答)
 バブルの生成過程において、銀行界もその原因の一端を担ったという面があるのは否めないと思っている。
 バブル経済崩壊後の失われた15年、20年を振り返ってみると、日本経済が長い低迷に陥るなかで、不良債権問題の深刻化、金融危機の発生等、我々金融機関にとっても大変厳しい時期が続いたわけである。その間、官民を挙げて不良債権処理を集中的に実施し、日本全国の銀行が、懸命に、経営の効率化、あるいは財務の健全化、自己資本の強化、リスク管理の強化といった課題に取組んできた。皆さんもよくご存知のとおり、私自身、経営企画部門に長く身を置いており、こうした激動の嵐を、身をもって体験してきた。
 我々がそういう努力を積み重ねた結果、わが国金融システムの健全性が高まり、その後、リーマンショックや欧州の政府債務危機という問題があっても、安定的に金融機能を発揮することができたのだと思う。
 したがって、今後の責任としては、我々が、失われた15年、20年で得た経験を教訓として活かし、今後の日本経済の再生にしっかりと貢献していくということではないかと思っている。


(問)
 先ほど、お話のあった金融円滑化法では、中小企業以外に住宅ローンも対象になっていた。政府の出口戦略の対応について、中小企業の方は充実していると思うが、住宅ローンについては、「一部、不良債権化するのではないか」との指摘も出ている。銀行の住宅ローンに対する今後の展開等について、お考えをお聞きしたい。
(答)
 住宅ローンについても、先ほど、中小企業向け貸出について申しあげたのと同様、お客さまからの貸出条件変更の要請等に対し、引き続き、真摯に対応していく。
 個人のお客さまの場合には、中小企業と比べ、より改善が難しいという面もあることは事実だが、私どもの銀行の事例を見ても、貸出条件を緩和することによって、状況が改善していく事例は少なからずある。今後とも、傘下金融機関を含め、銀行界として、継続して対応して参りたい。


(問)
 先ほど日本経済が年度末にかけて高めの成長が続くとのことだったが、それが銀行の貸出にどのように結びついていくのか、企業が実際にお金を借りるということに至るのか、あるいは資金余剰で資金需要が低迷するという状態が続くのか、国内貸出の今年度の見通しについて教えていただきたい。
(答)
 まず、足元の貸出の数字は都市銀行全体でもプラスになっているし、私どもの中堅・中小企業部門、大企業部門も含めた法人取引全般では2月から前年同月比プラスになってきていると先ほど申しあげた。
 今年度の経済成長率、実質GDPはおそらくいろいろな緊急経済対策の効果も含めて2%を上回る成長になるのではないかと思っているが、企業が今後、借入を増やす方向に動くかどうかについては、3本の矢の3番目の「成長戦略」が具体的にどう策定されていくかにもよると思う。
 いずれにせよ、3本の矢、アベノミクス効果で企業が日本経済の将来の成長に対して自信を深めるという状況になってくれば、また、かつて六重苦と言われた様々な項目についていろいろ改善がなされてくることが見通せるようになってくれば、企業は国内で設備投資をし、また経済が活発化することによって運転資金需要も増えてくると思う。その場合は、銀行の貸出にも非常にポジティブな影響が出てくると思っている。
 私どもの銀行でも、中堅・中小企業の貸出残高というのは、約6年減少が続いていたわけだが、足元反転しており、今年度は前年比プラスに持って行きたいと思っている。


(問)
 今の質問に関連して、貸出が増えていくということは良いことだと思うが、80年代の貸出増加については、不動産融資が中心で、それがバブルを作ったわけである。不動産融資、あるいはもう少し広く、不動産会社融資も含めて、どういう融資姿勢をとるべきだとお考えか。
 2点目、先ほど、アジアの成長を取り込むために規制緩和と制度整備を働きかけていきたいとの回答があったが、具体的に、どのようなことをイメージしているのか。また、働きかけるのは日本政府に対してなのか、それともアジア諸国に対してなのか。
 それから、金融円滑化法に関連する質問だが、「円滑化法が廃止されても何も変わらない」ということで、金融庁と同じスタンスであるが、だとすれば、円滑化法を廃止する必要はなかったのではないか。廃止するということは、やはり、何らかの健全化をすべきということでやめたのだと思うが、そうではないのか。
(答)
 1点目の不動産融資については、足元の状況は地価の下げ幅が改善し、地点によっては上昇に転じている等、不動産マーケット自体は改善してきていると思う。したがって、一つの産業として見れば、不動産業向け貸出は、今後少しずつ増加していく方向になるのではないかと思っている。
 その際には、先ほど、バブルという話があったが、「失われた15年、20年」に関する質問でお答えしたように、我々はバブルのときに学んだ教訓を活かして対応していく。今は全くそんな状況ではないが、これから、例えば不動産価格が過熱してきた時には、我々は予めブレーキを踏む枠組みを造っているので、かつてのようにバブルを組成していくということにはならないと思っている。
 それから2点目、アジア関係の質問だが、これには二つの側面があると思う。一つは、アジア各国は、発展段階が区々であり、中には、未だ金融システムが十分に整備されていない国もある。我々日本の銀行の決済システム等には非常に優れたものがあるので、そういう国については、例えば、そういった日本の金融システムのノウハウをお伝えしていくということがあると思う。
 もう一つは、規制緩和という点。アジア各国には様々な規制がある。例えば、出店規制や現地の銀行への出資規制、特定産業に対する融資の割当に関する規制、派遣行員を規制する就労規制、現地の外貨調達に関する規制といった様々な規制が各国にある。そういった規制の緩和に向けて、いろいろと意見を申しあげていきたい。これは、政府間交渉になる部分が多いと思うので、我々としては、金融当局、あるいは政府に働きかけていくということになると思う。

 金融円滑化法の延長に関しては、私は、金融円滑化法の施行から3年経ち、我々、銀行界の行動スタンスとして、お客さまの貸出条件の緩和要請に真摯に対応する、あるいは、コンサルタント機能を発揮してしっかりと経営改善を行っていくといったことが定着してきており、この段階で円滑化法を廃止することが妥当だと思っている。


(問)
 経済の枠外も含めた観念的な質問になるが、日本経済を再生するために、日本人にとって一番大切なものは何か。金融緩和や政府の成長戦略だけでは到底この厚い壁を乗り越えられるとは思えないが、一人一人が、あるいは一つ一つの企業が、庶民レベル、大衆レベルを含めた日本人の総体として、一番大事にすべきことは何だと思われるか。
(答)
 大変難しい質問であるが、いくつかあると思う。一つは、日本の企業の個々のレベルにおいて、これまでのビジネスモデルを見直していく、あるいはイノベーションを通じて生産性を向上させていく、あるいは事業の選択と集中を行っていくといったことにより、個別の企業がまず自らのビジネスモデルを改善していくことが必要。
 環境面では、例えば、円高や法人税の高さ等の、いわゆる「六重苦」の問題を、わが国として改善し、立地競争力を高めていくことも必要。
 我々自らの経営を考えた場合には、これから労働力として、女性や外国人の活用により、グローバル化、ダイバーシティを推進していくことも必要。更には、日本の企業、経済が自信を持つことも大事だと思う。やはり、「失われた15年、20年」の間、日本経済は、心の持ちようとしては、どちらかというと少し元気がなかった。やはり、将来に自信を持ってしっかりと経営を進めていくという、この「自信」も大事だと思う。少し取り留めのない回答になったが。


(問)
 もう一つ踏み込んで、今の回答はどちらかというと企業経営というか、企業の心持ちという話であったが、全国民レベルというか、日本人全般として、大切な心持ちは何か。非常に砕けた質問になってしまうかもしれないが。
(答)
 私は、その点でも、大切なのは「自信」だと思う。やはり、日本の持っている技術力、例えばソフトパワーも含めた力には、大変なものがあると思う。これをアピールして、前面に押し出して自信を持って取り組んでいくことが、今の日本にとって大事なのではないかと思っている。


(問)
 邦銀の海外における競争環境について質問したい。海外のシンジケート・ローンのリーグテーブルを見ても、欧米勢、特に欧州勢は、デレバレッジの動きが一段落し、セレクティブに、もう一回戻ってきている動きもあると思うが、欧米勢の最近の動きとそれに伴う海外における邦銀の競争環境の変化について教えてほしい。
(答)
 結論を一言で言うと、トータルで見れば、邦銀の相対的な優位性は未だ維持されていると思う。主要中央銀行の金融政策が功を奏し、欧州債務危機の直後にあったような、欧州の銀行の資本や流動性に対する市場の懸念は後退している。足元では、資産の圧縮という動きは、一旦、落ち着いており、私ども、三井住友銀行に対する持込案件も減少している。
 個別の事業分野について申しあげると、短期のトレードファイナンスには戻ってきているし、加えて、プロジェクト・ファイナンス等のやや長期の市場において、一時動きを止めていたフランスの銀行等も、再び動きが出始めている。
 ただ、欧州が抱える財政、政府債務の問題と、金融システムの連鎖の問題というリスクは、未だ、完全には解消されたわけではないというように思う。また、所謂、リングフェンシング規制の議論が、イギリスだけではなくEU全体に波及してくる可能性があり、今後、銀行によっては、ビジネスモデルの変更を余儀なくされるところも出てくるかもしれない。そうしたことを考えると、今後とも、こうした新しいルール、規制環境の下で、グローバルに厳しい競争が続いていく状況が続くのではないかと思っている。
 欧米の銀行も、伝統的な商業銀行業務に回帰するところが増えてくると思うが、我々日本の銀行が現地にコミットして安定的に商業銀行業務を行ってきたという強み、あるいは、市場やお客さまからの評価というものは変わっていないと思う。また、日本の銀行は、皆さまもご存知のとおり、プロジェクト・ファイナンス等においても非常に強みを有しているので、トータルで見れば、我々の競争優位性は維持されていると思っている。

以上