平成28年10月20日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

髙木専務理事報告

 本日の理事会で、三菱東京UFJ銀行の小山田頭取を次期会長に推薦することが了承された。来年の理事会での正式な選定手続きを経て、来年4月1日付で就任する予定である。

 

会長記者会見の模様


(問)
 日銀の前回の金融政策決定会合で新たな金融政策の枠組みが導入された。これについての受止めを伺いたい。その後1ヶ月ほど経っているが、マーケットの動きなどを見て、この政策が本当に機能するのか、またその評価はどうか。
(答)
 9月の金融政策決定会合では、金融緩和政策の総括的検証が行われ、新たな政策として「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入が決定された。
 従来、2%の物価安定目標について、「2年程度での実現」ということが縛りとなっていて、金融政策決定会合のたびに緩和期待が高まり、いわゆる催促相場に陥っていた感が否めなかった。また、年間80兆円の国債買入れも、いずれ限界に来るのではという思惑を呼んでいたことも事実で、今回、これら二つについて柔軟化が図られたことは意味がある。そうした市場の過度な期待を修正しつつ、「できるだけ早期に」2%を実現する形でコミットメントが堅持され、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」が新たに導入されたことは、目標実現に向けた強いメッセージだと評価している。
 また、今回の検証では、イールドカーブの過度なフラット化が経済活動に悪影響を及ぼす可能性について言及したうえで、10年物国債金利が0%程度で推移するかたちで「イールドカーブ・コントロール」を行うことが新たな枠組みの中心に据えられた。その後の長期金利の動きを見ると、10年物国債金利はマイナス0.1%から0%の間の小幅なマイナス圏で推移している。長期金利の操作はこれまでにない手法でもあり、今後も米国の利上げや国内景気の緩やかな持ち直し等に連動して金利上昇圧力が高まったり、多少上下のぶれが生じることも予想されるが、新たな枠組みの下、指値オペなどさまざまなオペレーションを通じて国債購入が継続されることで、金利は安定的に推移するのではないかとみている。
 もっとも、2%の「物価安定の目標」に向けて日銀が形成を促していく「最適なイールドカーブ」のイメージについて、市場の認識との間に隔たりがあると、ボラティリティが過度に高まるといった弊害が生じることから、日銀におかれては引き続き市場とのコミュニケーションに十分に配慮していただきたい。
 次に、マイナス金利が深掘りされなかったことについても、その効果、副作用が考慮された結果として評価している。マイナス金利については、金融の現場から見た実感では、これまでと変わらず、実体経済面の効果があまり現れていない。引き続き、マイナス金利政策による景気浮揚効果が現れているか、ベネフィットがコストを上回るものとなるかなど、十分に検証いただきたい。
 2013年4月以降の量的・質的金融緩和は、わが国の景気浮揚のきっかけとして大きな役割を果たしたと思う。予想外の外部環境の悪化等もあり、残念ながらデフレの完全脱却、経済の持続的成長軌道への復帰は現時点では果たせておらず、その道のりはある程度長期戦にならざるを得ない。「失われた20年」の間にわが国に定着したデフレマインドを払拭していくには、過去3年半を上回る努力を粘り強く続ける必要がある。そのためには、今回示された新たな枠組みの下での金融政策に加え、国内の期待成長率を引き上げ、企業、個人の活動を活性化していくため、構造改革を伴う成長戦略や持続可能な社会保障制度の構築等に本格的に取り組むことが重要である。もちろん、銀行界としても、マクロ的な資金需要低迷という逆風下だが、わが国経済の持続的成長の実現に向け、コンサルティング機能の発揮、あるいはファイナンス面でのサポートを通じ、積極的に貢献していきたいと思っている。


(問)
 昨日、債券市場で10年物国債の取引が成立しないという事態が発生した。日銀が今回の検証結果で長期金利をゼロ近傍にすると言ってから初めての出来事だが、この辺をどう受け止めているか。
 もう一つは、マイナス金利の深掘りについて。黒田総裁はまだ深掘りの余地があると言っているが、市場ではマイナス0.5%とかマイナス0.3%が限界ではないかとの見方もある。銀行にとっても資金収益の低下で金融仲介機能への弊害が出てくることもあるかと思うが、銀行側の立場としてはマイナス金利の深掘りの限界はどの辺にあると見ているのか、具体的な金利水準で教えていただきたい。
(答)
 まず新発10年物国債の取引について、昨日、取引が成立しなかったことは事実であるが、本日は取引が成立している。したがって、1日だけの動きを見て今後の国債市場の動き、あるいは今回の金融政策、新しい枠組みの影響云々ということを申しあげるのは時期尚早ではないかと思う。
 マイナス金利の件は、先ほども申しあげたとおり、金融の現場の実感からすると、今、マイナス0.1%だが、このマイナス金利による実体経済へのプラスの効果は現れていないと思っている。深掘りを検討するに際してはそのベネフィットとコストを十分に検証してほしいと申しあげており、具体的な限界の水準云々については、コメントを差し控えさせていただきたい。


(問)
 大手行各行は、来月中旬に中間決算を発表する予定だと思うが、この上半期の6ヶ月間、マイナス金利の影響にさらされ続けたわけだが、この中間期を振り返ってみて、どのような事業環境だったとお考えか、改めて伺いたい。
 また、長期金利の0%目標という新しい枠組みが導入されて、さらにマイナス金利の深掘りは回避されたが、これを踏まえて下半期の事業環境をどうご覧になっているか。
(答)
 私どもの経営環境について、上期を振り返ってみると、わが国経済は内外需の低迷が続いたほか、4月に熊本地震があり、相次ぐ台風被害といった自然災害にも見舞われ、足踏み状況が続いたと思う。
 また、マーケットについても米国の利上げ先送り、あるいは英国のEU離脱決定の影響を受けた市場の混乱等によって、非常にボラタイルな局面が見られた。
 さらにご指摘のとおり、マイナス金利政策の下で預貸金利鞘が縮小しており、銀行界にとって一言で言うと厳しい経営環境だったと思う。
 こうした環境の下で、10月12日に公表した全銀協の統計によれば、9月末の全国銀行ベースの貸出残高、これは前年同月比61ヶ月連続の増加を維持しているが、増加幅は縮小傾向にある。景況感の改善が大きく感じられないなかで、新規投資を様子見しているお客さまも引き続き多いということであり、国内企業向け貸出金、あるいは新規の住宅ローン等の資金需要は盛り上がりを欠く状況だったと思う。
 加えて、マーケット環境が依然不透明ななか、リスクオフムードの広がりにより、投資商品の販売も低調となっていることから、各グループの個別事情があるとは思うが、銀行業務にとって総じて良好な環境であった昨年度上期決算と比較をすると、全体として力強さを欠く内容になるのではないかと思う。
 では、下期の業務環境はどうかということだが、米国の利上げ、あるいは欧州大手銀行の信用不安への懸念や新興国経済の減速などの恐れにより、やはり当面はグローバルなマーケットの不透明性は続くと予想している。
 また、9月の金融政策決定会合で、マイナス金利の深掘りが回避されたことは評価できるものの、新たに導入された「イールドカーブ・コントロール」の下で、期間10年超の金利が上昇してスティープ化したとしても、期間10年までの金利がマイナス圏で推移するということになれば、やはり預貸金利鞘の縮小ということを通じて、銀行収益へのネガティブインパクトが今後も継続する恐れがあると見ている。
 一方で、厳しい環境ではあるが、明るい兆しも出ていて、例えば国内においては株価の回復等を背景に、足元では投資商品の販売が回復してきていることに加え、利鞘の縮小をカバーするため、各行が手数料ビジネスの推進に取り組んでいるところである。
 さらに、金融政策の新たな枠組みの下、構造改革も相まって日本経済がデフレから脱却していけば、銀行のビジネスチャンスも広がってくる。
 また、海外には、引き続きビジネスを伸ばしていくチャンスがあると考えている。個別行の立場で申しあげると、やはり海外ビジネスは成長ドライバーの一つであり、国際的な金融規制の強化であるとか、外貨調達コストの状況、あるいはクレジットリスクの高まり、こういった点に注意を払いながらではあるが、海外業務の拡大を図ってまいりたいと考えている。
 そのため、私としては、今後の運営について悲観的になり過ぎず、かつ慎重にということで、「Cautiously optimistic」に臨みたいと考えている。


(問)
 IMFの年次総会に國部さんが2週間前に出席されたと思う。先ほど言われたグローバルなマーケットの不透明な部分のほか、ドイツ銀行の経営悪化とかBrexitに伴うポンド安などいろいろあると思うが、グローバルな金融機関の経営者たちとお話をされて、共有された問題意識や話題になったトピックはどういうものか。
(答)
 先般、ワシントンで開催されたIMF・世界銀行年次総会に参加し、海外の金融当局者、金融機関トップと面談を行った。面談の内容をここでつまびらかに話すことはできないが、主な話題は、大統領選を含めた米国の動向、Brexit、国際金融規制の見直しといったところだと思う。
 簡単に印象を申しあげると、米国については、大統領選本選まで残り1ヶ月というタイミングで盛り上がりを見せていたが、私が会った方々の声を聞く限りヒラリー候補が優勢という声が大変多くあった。米国経済については、大統領選の行方とともに企業の投資活動の弱さが今後の不確実性の要素として残るものの、雇用・所得環境の改善により消費は底堅く推移しており、総じて緩やかな経済成長が続いている。その結果、金利引上げの素地はできつつあるといった強気の見方が多かったと思う。
 Brexitについては、直前の10月2日に英国のメイ首相がEUへの離脱通知を来年3月までに行うと表明し、移民制限を優先する姿勢を示したという報道があった。EUとの今後の交渉難航が予想されるなか、金融機関トップの関心事はシングルパスポートが維持されるかどうかということであった。特にヨーロッパの銀行の経営トップは、あらゆるケースを想定しながら検討を進めているという印象を受けた。
 そのほか、国際金融規制の見直しについては、年内の着地に向けて大詰めを迎えているわけだが、これも直前にEUの高官がバーゼル規制とは異なる独自規制の導入を示唆する発言を行うなど、より議論が複雑性を増しているという印象があった。私としては、レベル・プレイング・フィールド確保の観点から、グローバルに共通のルールを導入し、維持していくことが重要と考えている。
 なお、各国の当局者や金融機関のトップからは、日本のマイナス金利政策について大変多くの質問を受けた。その際、マイナス金利を導入する欧州の銀行と異なり、日本の銀行は預超であるなか、預金金利の引下げ余地が極めて限られているということ、長年低金利状態が続いており、金利がこれ以上下がってもなかなか実体経済へのプラス効果が小さいことなどを説明した。彼らとの面談において印象的だったのは、経済の下支えのためには金融政策だけではなく、よりバランスのとれたポリシー・ミックスに各国が協調して取り組んでいくことが重要という雰囲気が強かった、ということであった。


(問)
 一つ目は、個別行の話になるが、先週、三井住友銀行大森支店の副支店長が約10年にわたり外貨預金口座の不正操作で11億円の詐欺をしていたということで逮捕されたが、これについて、長い間なぜ発覚しなかったのか。それから仕組み上、問題はなかったのか。ほかにやっている者がいたのか、いなかったのか。それから組織的な責任をどう考えるか。
 二つ目は、経団連から来年の政治献金の呼びかけが来ていると思うが、全銀協として今年はどのように対応する方針か。
(答)
 まず最初の質問だが、これは個別行の頭取としてお答えさせていただく。
 このたび弊行の元従業員が電子計算機使用詐欺の容疑で逮捕された。弊行としては、本件事態を厳粛に受けとめ、深く反省するとともに、お客さまならびに関係者の皆さまに心からお詫び申しあげる。
 本件では、事務に精通した元従業員がみずからの権限を悪用し、ほかの職員の目を介さず、自己検証により手続を完結していた。加えて、巧みに正規取引を装っていたことから発覚が遅れたものである。私どもでは、本件事案の発生原因等を深く掘り下げて、分析・検証を実施している。そのうえで、事務手続、システム、内部監査、人事管理などの各側面から再発防止策を策定した。詳細はすでに公表したとおりだが、弊行としては、かかる事案の予防、発見機能の強化、従業員の規律の一層の引き締めなどを通じて、全行挙げて再発防止に努める所存である。
 なお、本件は公表相場より著しく円高の相場で外貨を購入したものであるが、他に同じ手口の事案がないか、取引記録を網羅的に調査したところ、このような事案はなかった。
 最後に、本件に関する責任の所在や処分についてだが、今後の捜査の動向等も踏まえ検討していきたいと考えているが、私自身としては、今回の事案を踏まえ、策定した再発防止策をしっかりと根づかせることが責務と認識している。
 2点目の質問だが、政治献金については、全銀協で取りまとめる話ではなく、個別行の判断になるため、個別行としてお答えさせていただく。
 わが国においては、少子高齢化、経済の成熟化、グローバル化が進むなか、日本経済の持続的な成長のために取り組むべき課題が山積しており、政治の果たす役割は大きい。こうしたなか、経団連においては、政治献金について「企業の社会貢献の一環として重要性を有する」、「政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上を図っていくうえで、クリーンな民間寄付の拡大を図っていくことが求められる」と整理されている。
 当行においても、企業市民として社会的責任を果たすという観点に立ち、その政党の政策が企業の健全な発展を促進し、日本経済の持続的成長に資するか、ということが政治献金を行う際の判断の重要なポイントだと考えている。


(問)
 日銀の新しい政策に関連して、長期金利の操作目標が0%程度というのは、年金基金や生保業界から低過ぎるのではないかという声もあるが、この水準についての評価を伺いたい。
 もう一つ、先日米国でプライムMMFに対する新しい規制が始まった。邦銀のドル資金調達コストの上昇が懸念されていたわけだが、これまでの評価を伺いたい。
(答)
 基本的に、金融政策については日本銀行が総合的に判断するものと理解している。今回、新しいイールドカーブ・コントロールという手法で長期金利の操作目標が、もちろん上下ある程度のアローワンスはあると思うが、0%程度とされた。今後も日本銀行が、経済、物価、金融情勢を総合的に判断し、長期金利の操作目標を適切に決定していかれると思っている。
 二つ目のご質問のMMF改革に関連し、私どもの外貨調達環境について申しあげると、銀行が発行するCD・CPの買い手であるプライムMMFに対する規制が10月14日に導入されたわけだが、その導入を控えた段階で、例えば当行のCD・CPの9月末残高は3月末対比で3割程度減少した。こうした状況はおそらく各行においても同じだと思うが、各行がそれぞれ対策を進めたことで、この減少分はおおむね外貨預金の受入れ増加等により対応できている。なお、一時的にCD・CPの残高は減少していたが、足元では期間3ヶ月超の長めの調達が回復してきており、現在、日本の銀行の外貨資金繰りに特段問題は生じていない。


(問)
 今後の成長が海外市場にあるという話をもう少し伺いたい。海外を大きく分けると、エマージングマーケットと先進国になると思うが、そのバランスはどのように取っていきたいと考えているか。個別行としてでもお答えいただければと思う。
(答)
 個別行としてお答えする。先ほど、海外ビジネスを拡大していくチャンスがあると申しあげた。どこの地域に重点を置くかは、経済情勢、金融情勢を踏まえて検討していくことになる。中長期的目線ではアジア地域が大きな成長を遂げていくと思っている。アジア開発銀行の統計によれば、2050年に世界のGDPの半分はアジアが占めるという予測もあり、中長期的にはアジアを重視していきたいと考えている。当行は、現在の中期経営計画において「アジア・セントリック」というフレーズを使っているが、アジアで強い三井住友銀行、三井住友フィナンシャルグループになっていくよう取り組んでいる。
 時系列で申しあげると、貸金残高ベースでは、以前は米州、アジア、欧州と分けると大体3分の1ずつの割合であった。足元ではアジアが40%強、米国が35%程度、欧州が25%程度という割合になっている。ご存じのとおり中国経済の減速等もあり、ややアジア地域の経済成長率がスローダウンしているため、足元では米国・ラテンアメリカの収益貢献が大きい状況になっているが、中長期的にはやはりアジアが伸びていくのではないかと思っている。
(問)
 アジアは大きく中国とASEANに分かれると思うが、フィー・ビジネスのようなことまで考えに入れたときに、どのようなウエイトで可能性を見ているか。
(答)
 将来的には中国は大きく伸びると思うが、足元は経済が減速してきているため、中国も強化しつつ、ASEANに注力をしていくということだと思う。当行は今、アジアでも大企業を中心としたホールセール取引が中心になっているが、幾つかの国、具体的にはインドネシアとベトナムであるが、人口も多く、これから中間層が大きく伸びていくと思われる国については、行内では「マルチ・フランチャイズ戦略」と呼んでいるが、現地の銀行に出資をしてリテール業務にも取り組んでいる。


(問)
 貯蓄から投資という話に関して1点伺う。今般、金融庁の金融レポートが公表されたが、改めて貯蓄から投資への流れを促進しようという動きが全般的に高まっている。そのようななかで、依然として投資信託の回転売買や、保険手数料が高過ぎるのではないかという問題がしばしば指摘されることもある。本当に顧客本位の視点、フィデューシャリー・デューティーの視点に立つのであれば、商品の手数料の引下げ等を含めて踏み込んだ検討をしていくことも必要なのではないかと思うが、そのあたりについて考えを聞かせてほしい。
(答)
 現在、金融審議会の市場ワーキング・グループにおいてお客さま本位の業務運営の徹底、いわゆるフィデューシャリー・デューティーについて議論されている。我々銀行としても、お客さま本位の観点から販売体制の整備、業績評価の見直し、資料の分かり易さの改善等に努めているところであるが、引き続き取り組むべき課題があると受け止めており、お客さま本位の徹底に向けて、各行が自主的な取組みを重ねていく必要があると思っている。
 手数料の話があったが、手数料は各金融機関が各行の価格戦略にもとづいて設定していくものだと思っている。どのような業種においても商品やサービスによって手数料の有無や水準は異なっており、金融商品においても同様だと思う。例えば、投資信託については、販売手数料のかからない、いわゆるノーロード投信といわれるものもあれば、販売手数料がかかるものもある。
 また、貯蓄性保険については、当行では10月3日から代理店手数料の開示を開始した。すでに多くの銀行が開示をしている。加えて当行では、販売時のコンサルティングだけではなく、契約期間を通じた情報提供やアフターフォローを行う基本姿勢を反映した手数料体系としたいということで、保険契約時に一括して受領する方式から初年度の手数料と継続手数料の二つに分けて受領する方式に変更をさせていただいている。
(問)
 商品によって手数料水準等はさまざまで、一概に下げればいいという話ではないと思うが、そういうことも審議会の動向などを見ながら検討されていくのか。
(答)
 本来的に必要なのは、金融機関がお客さま本位の姿勢を徹底して、例えば手数料水準については、しっかりとお客さまに説明し、お客さまにご納得いただいたうえで金融商品を購入していただくことであり、この基本的な考え方を貫徹することが大事だと思う。


(問)
 一つ目は、資源エネルギー庁で東京電力についての議論が始まっているなか、間接金融依存から社債市場への復帰を今年の目標に掲げているが遅れている。この遅れにより、東京電力の資金繰りに対してどういうインパクトがあるのか。また、銀行融資に対する影響についてどのようなことが考えられるか。
 二つ目は、廃炉、賠償の費用について、幅広く国民から徴収するという考え方に立たざるを得ないとも思われるが、その方法について、どういう形が望ましいのか。メーンバンクとしての考えを聞きたい。
(答)
 一つ目の社債の発行については、東京電力が正式に公表したものではなく、コメントは差し控える。さらに個別案件なのでコメントしにくいが、社債の発行が遅れても資金繰りに影響が出るとは聞いておらず、いずれにしろ、私ども主力行としての支援方針に変わりはない。
 二つ目の廃炉の問題は、福島第1原発の事故以降、東京電力が関係者と議論して策定した廃炉の工程表にもとづき、東京電力が最大限の努力をしていると認識している。私も9月に経団連の関係で福島第1原発を訪問したが、懸命に取り組んでいる状況だった。今年の7月に東京電力が廃炉推進に対する支援、環境整備を政府に要請し、これを受け、経済産業大臣が、「東京電力にしっかり責任を果たしてもらいながら、政府も前面に立って取り組む」とコメントされている。こうしたなか、経済産業省において「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」と「東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)」の二つが設置され、廃炉のあり方、負担のあり方についても関係当事者において議論が始まったところである。我々としては深度ある議論を期待したい。
(問)
 社債の件で、銀行80行が融資していて、東京電力は国の金も入っているということで、個社の話ではあるが、ただの個社の話では済まないと思っている。社債市場の復帰が遅れることにより、間接金融で今年度2,800億円の融資を計画していると思われるが、それが前倒しになるとか、2,800億円が5,000億円になるようなことにはならないという理解でよいか。
(答)
 詳細については個社にかかわることなので、やはりこの場での回答は差し控えるが、先ほど言ったとおり、社債の発行が遅れても資金繰りに影響があるとは聞いていない。


(問)
 コンプライアンスの問題について、最近、ドイツ銀行やアメリカのウェルズ・ファーゴ等で組織的な不正が出てきて問題となっている。日本の金融機関におけるコンプライアンスの現状を伺いたい。
(答)
 申しあげるまでもないが、金融機関、とりわけ銀行は大変公共性が高い業態であり、一般の企業以上に法令遵守の姿勢が強く求められている。特にグローバルに活動する金融機関にとってコンプライアンスは、グローバルな法律・規制の動向、各国地域の固有の事情も踏まえて十分な備えを行い、コンプライアンスルールを厳しく遵守していくことが重要だと思っている。今回、海外の幾つかの銀行において、コンプライアンスにかかわる事案が発生しているが、こうしたことを踏まえて、個別行としても、全銀協としても、いま一度襟を正して、コンプライアンスの徹底に取り組んでいかなければならないと思っている。
 全銀協では、ご存じのとおり、行動憲章を策定して会員行に周知徹底しており、各金融機関におかれては、コンプライアンスの遵守を非常に重要な経営課題と認識して取り組んでいると理解している。


(問)
 FinTechに関連して、オープンAPIへの取組みについて伺う。銀行とベンチャー企業が一緒になってFinTechに取り組んでいく際、銀行のシステムの一部を開放して連携していく動きが出始めている。御行も今週月曜日に法人向けサービスについて発表されたと思う。全銀協でもAPIに関する検討会が近く立ち上がると伺っている。こうしたオープンAPIの動きが出ていることに関して、銀行界としてこれを通じてどういった効果を期待するのか。
(答)
 API、アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略であるが、これは、オペレーティングシステムやアプリケーションの機能を利用するための接続仕様等のことであり、このうち、外部に公表されたAPIがオープンAPIと呼ばれている。
 オープンAPIは、金融機関とFinTech企業の連携を通じた金融サービスの高度化を実現するツールとして大変注目されており、わが国においても現在、私どもを含めて多くの銀行がオープンAPIの活用可能性について検討している。オープンAPIを活用することによって、銀行にとってはFinTech企業等との連携、協働による金融サービスの高度化や顧客利便性の向上、新たな金融サービスの創造などがメリットとして挙げられる。他方、FinTech企業にとっては自社サービスと銀行サービスのシームレスな連携などが期待される。
 一方で、お客さまの送金指図や残高、入出金明細の取得指図を外部の事業者が仲介することになるため、例えば不正送金被害や情報漏えいを未然に防止することが必要であり、この観点からしっかりとしたセキュリティ対策などの利用者保護を図ることも大変重要だと思っている。
 ご質問にあったとおり、全銀協としてはこうした課題に対処して銀行とFinTech事業者のWIN・WINの関係の実現、連携・協調をより円滑にすることを目的として、近く関係当局、IT事業者等を含む幅広い関係者をメンバーとする検討会を設置する予定である。本年度中をめどに報告を取りまとめていきたいと考えている。


(問)
 コンビニのローソンが銀行業への進出を検討しているとの報道があったが、こうした異業種からの新規参入の受止めと銀行の経営への影響をどのように見ているか。
(答)
 流通業から銀行業への参入というのはローソンが初めてではなく、すでにセブン銀行、イオン銀行といった事例がある。それぞれの銀行によって独自の業務展開を進めている。ローソンがどういう業務展開をされるのか存じあげないので影響についてはわからないが、こういった異業種からの参入によって競争が促進されるというのは、ある意味で銀行経営にとってメリットもあると思っている。


(問)
 イギリスのEU離脱問題について伺いたい。メイ首相のこの間のスピーチでは、移民規制を優先する方針が非常ににじみ出ていた。そうすると、シングルパスポートというのはなかなか難しいと思うが、こういうHardBrexitに関して、英国でパスポートをとっている銀行のトップとしてどう見ているのか。また、IMFの関連の会議のときに、HardBrexitに関してどういった意見が出ているのか教えていただきたい。
(答)
 今後の交渉がどう展開するのかについては、なかなか予測が難しいというのが実態だと思う。報道によれば、メイ首相が移民制限を優先するとおっしゃっているとされていて、もしそれが事実だとすると、シングルパスポートの議論については、そう容易には進展しないのではないかという懸念も持っている。いずれにしろ来年の3月末までに離脱通知をして、それから2年、おそらく2年以上かかると思うが、交渉が行われていくわけで、我々個別行としても、その交渉の推移を見守ることが基本線になると思う。


(問)
 与党のなかでゆうちょ銀行の貯金上限の引上げの議論が出ているようだが、今年引き上がったばかりで、今年の引上げ自体も業界としては基本的にそれまでは反対していたと思う。短いスパンで引上げの議論が再燃することについての受止めを伺いたい。
(答)
 私どものゆうちょ銀行の預入限度額の引上げに対する考え方はこれまで申しあげてきたことと変わらない。昨年11月の株式上場により、郵政民営化が新たな局面に入ったとはいえ、まだゆうちょ銀行の完全民営化に向けた具体的な道筋は示されておらず、公正な競争条件が確保されない状況が続いていると思う。したがって、このような状況下での預入限度額の引上げについては、不公正な競争条件をさらに悪化をさせ、ようやく進みつつあるゆうちょ銀行と民間金融機関の連携、協調の流れに水をさす懸念も生じてくるのではないかと思っている。
 また、限度額引上げがゆうちょ銀行のさらなる規模拡大につながる場合には、中期経営計画に掲げている資産運用の高度化の阻害要因ともなりかねないと懸念している。
 今、質問のなかにあったとおり、限度額が引き上げられたのが今年の4月で、まだ実施から日が浅い。もう少し将来において金融環境が変化した場合の限度額引上げの影響等についても議論を行ったうえで、検討していただきたいというのが我々の気持ちである。

以上