平成29年1月19日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

髙木専務理事報告

(なし)

 

会長記者会見の模様


(問)
 2017年が始まり最初の会見なので、今年の世界・国内の経済、マーケットを見通すときのポイントを会長はどのように考えているか教えてほしい。
(答)
 本年もどうぞよろしくお願いします。
 2017年の世界経済・国内経済を見通すうえで私は三つの点、すなわち世界各国における政治イベント、二つ目にアメリカのトランプ次期大統領の政策運営、三つ目に国際マネーフローの変化、この三つが重要なポイントだと考えている。
 まず第1の「世界各国における政治イベント」だが、明日、米国トランプ大統領の誕生を皮切りに、欧州において英国のEU離脱交渉、春のオランダ総選挙、フランス大統領選挙、秋に予定されているドイツ総選挙、さらにはイタリアでも解散・総選挙の可能性があるなど、今年は政治的なイベントが目白押しである。昨年も英国のEU離脱に関する国民投票や米国の大統領選挙といった大きなイベントがあったわけだが、事前の予想を覆す結果となった根本的な背景としては、経済がグローバル化し、自由貿易が進展するなか、国と国との間や国内でも富裕層と貧困層との間で格差が生まれ、この潮流に逆行するような内向き志向や保守主義的な動きが広がっていったことがあると考えている。
 2017年もこのような傾向は続くと予想される。17日に英国のメイ首相がEU単一市場からの脱退、いわゆる「hard Brexit」を目指す方針を表明したほか、トランプ次期大統領が保護主義的な姿勢を強めており、こうした動きがほかの国にも広がれば、欧州各国の選挙結果等にも影響が及び、各国の政治体制、EUやユーロの持続可能性等が揺らぎ、経済の下振れ、マーケットにおけるリスクオフの強まりをもたらす可能性もあることに注意が必要だと思う。
 また、中国でも今年の秋に共産党指導部が大幅に交代することが予定されている。習近平国家主席をトップとした体制は不変のため、適度な成長を確保したうえでのマイルドな構造改革路線は維持されると見ているが、企業の過剰債務問題や不動産バブルといった構造的な問題を抱えながら、成長率を維持していけるかどうかが注目される。
 第2のポイントである「米国トランプ次期大統領の政策運営」についてだが、やはり今年の世界経済は良くも悪くもトランプ次期大統領の動向が大きな鍵を握っているといえる。トランプ次期大統領が掲げる所得減税、法人減税、インフラ投資、規制緩和、景気刺激のための財政支出など、「強い米国」の実現に向けた政策が力強く実現していけば、米国復活に向けた大きな原動力になる。これまでの株価上昇、消費者と企業のマインド改善等を見る限り、現時点ではこうした期待感のほうが上回っていると評価できると思う。一方で、今後は期待先行によるマーケットの改善ステージから、政策の具体化による実体経済の改善ステージに移っていくことになる。いわゆるハネムーン期間と言われる就任後100日間で、ある程度の方向感は出てくると思うが、政策の実現可能性が疑われるようなことがあれば、マーケットの揺り戻しが起こることも考えられ、今後の政策運営を注目していく必要がある。また、先ほども少し触れさせていただいたが、トランプ次期大統領の政策運営においては、保護主義的な姿勢の強まりに注意が必要である。トランプ次期大統領は、選挙期間中も「アメリカ・ファースト」として過激な保護主義、あるいは排外主義を主張してこられたわけだが、先週12日の記者会見でも日本、中国、メキシコについて名指しで貿易赤字に対する不満を表明するなど、「アメリカ・ファースト」を前面に押し出しており、これが続けば各国の経済を不安定化させるリスクがある。また、米国企業の米国外での事業展開に介入する姿勢も示しているが、昨今の発言や報道等を見る限り、今後、他国企業や製品に対しても排外姿勢を強めていく可能性は否定できず、海外企業にとって投資戦略の見直しを迫られる可能性もあることに注意が必要だと思っている。
 第3のポイントである「国際的なマネーフローの変化」だが、昨年12月に米国FRBが利上げに踏み切り、今後も「緩やかな利上げ」という政策スタンスが維持される見通しである。加えて足元では、トランプ次期大統領による政策への期待から、ドル高、アメリカ長期金利の上昇が起こっている。こうしたドル高と長期金利の上昇に伴い、これまで超低金利のなかで新興国に向かっていた資金が米国へと逆流すれば、新興国の国際収支不安や新興国企業の資金調達懸念等が生じるおそれがある。もちろん、通貨危機が広がった1990年代とは異なり、新興国各国の外貨準備は潤沢であるため、過度の懸念は不要だと思うが、通貨下落によって新興国における金融政策の自由度が制約されることにもなるため、景気抑制要因として警戒しておかなければならないと思う。
 以上申しあげた三つの大きなポイント、これが2017年の世界経済を見るときのポイントだと思うので、これらを注視しながら、金融機関トップとしては、フォワードルッキングな視点を持って経営を行っていく必要があると思っている。


(問)
 もう1問。今指摘された点を踏まえ、今年の世界・国内の経済、マーケットの環境がどのようになると見ているか。
(答)
 今申しあげた三つのポイントに注目しながら、2017年の世界、国内経済、マーケットの見通しについて申しあげる。総じていえば、経済もマーケットもリスク要因を抱えつつも、堅調な推移が期待できるのではないかと思っている。
 まず、米国は良好な雇用・所得環境に支えられ、個人消費が回復していることに加え、企業部門でも企業収益の改善等により設備投資に前向きの動きが見られるようになっている。今年後半からはトランプ次期大統領が掲げる財政政策が実行に移されれば、景気押上げ効果が期待される。もっとも、政策の実行可能性や保護主義的なスタンスの強まりがリスクとして残るということである。
 一方、欧州だが、当面低成長から抜け出せそうにないのが実情ではないかと思っている。Brexit交渉の進展を含め、EUの持続性に対する企業等の将来不安や金融機関の不良債権問題などから、設備投資マインドが総じて慎重化していると思う。企業部門の慎重姿勢は賃金の上昇率にもマイナス影響を及ぼし始めており、今後個人消費が弱含む可能性もあると見ている。
 中国だが、2016年は3四半期連続で成長率が横ばいとなるなど、景気の減速傾向には歯止めがかかった格好だが、実態はさまざまな公的支援によって一息ついている状況ではないかと思う。今後も民間固定資産投資や雇用者所得の減速が予想されるうえ、政策面から下支えされた自動車販売と住宅投資もピークアウトする可能性が高いと見ている。この結果、2017年には再び減速トレンドに陥る恐れもあると見ている。ただし、それほど大きな減速ではないと思う。
 そのほかの新興国については、米国の金利引上げに伴うドル高で資金流出懸念はあるものの、旺盛な消費・投資需要や各国における景気刺激策の効果等もあり、総じて堅調な成長が続くと予想している。昨年まで景気悪化が続いた資源国も、世界的な資源需要の持ち直し、OPECによる8年ぶりの減産合意などを受けて、資源価格は緩やかに上昇すると見られるため、景気は徐々に回復していくと見ている。
 こうしたなか、わが国経済に目を転じてみると、緩やかな回復が続くと予想している。輸出は昨年の半ばに増加に転じ、当面、米国、アジア向けに牽引されるかたちで回復傾向が続く見込みである。内需も雇用・所得環境の改善を受けた個人消費の持ち直し、高水準の企業収益を背景とした設備投資の回復、そして昨年8月に打ち出された経済対策等により、引き続き景気を下支えすると見ている。
 次にマーケットについても、こうした経済の回復トレンドに伴って堅調に推移していくと見ている。米国の大統領選挙でトランプ氏が当選したのを境に、ドル高、株高、金利高といういわゆる「トランプ相場」が現れた。これは米国のポリシーミックスが以前の「緊縮財政・金融緩和」から「積極財政・金融引締め」に転換することを織り込んだものだと思う。もっとも、先週12日のトランプ次期大統領の記者会見で景気刺激策への具体的な言及がなかったことや、17日の英国メイ首相によるEU単一市場からの脱退表明を受け、足元のマーケットは慎重化しており、当面はボラタイルな動きが続くと予想される。
 縷々細かく申しあげさせていただいたが、今年の世界、国内経済、マーケットについては、総じて堅調な推移を予想しているが、それらを左右するのはやはり米国のトランプ次期大統領の動向である。トランプ次期政権がうまく回れば従来の金融・経済環境が全く変わる「ゲームチェンジ」となる可能性があり、わが国でもこうした変化を追い風に経済再生に取り組んでいくべきだと思う。人口減少が加速するわが国では、ITをはじめ、新たな技術の活用や働き方改革などを通じた生産性の向上など、成長戦略の実行による成長力の底上げは米国以上に差し迫った課題であり、迅速に実現していくことが求められていると思う。


(問)
 トランプ政権について、先ほどの保護主義政策が今後リスクになり得るという話に関連するが、メキシコに工場を置く日系の自動車メーカーはじめ、他の企業などいろいろ影響を受ける可能性があると思う。日本の銀行も日系企業サポート強化のためにメキシコなどで法人をつくったりサービスを行ったりしているが、金融機関として資金調達やアドバイスを今後どのようにされていくのかお伺いしたい。
(答)
 トランプ次期大統領が、例えばNAFTAの見直しであったり、あるいはメキシコに工場の設置を予定している米国企業、それから米国外の企業にいろいろコメントをされているという状況であるが、まだ大統領就任前で、これからトランプ次期大統領が実際に大統領に就任をして、具体的にどういう政策を打ち出すかまだ明確になっていないところがあるので、どういう影響が日本企業に起こり得るかということはまだ見通せない部分も多いと思う。
 一方、米国は世界最大の経済大国であり、米国ならびにその周縁国、特に今メキシコは多くの自動車メーカーが進出をしているなど、日本の企業が数多くオペレーションをしているので、我々も大変重要なマーケットだと思っているし、今後も新規投資等のポテンシャルは引き続き相応に高いマーケットだと思う。
 私ども個別行の話で言うと、メキシコに2014年に金融子会社を設立しており、当地におけるお客さまの現地通貨建てのファイナンスニーズへの資金供給力の強化や、案件引受力を強化するために昨年、このメキシコの金融子会社に追加出資を決定している。この増資によって資金供給力等の拡大を図るとともに、増資に合わせ、私どもの米国のリース子会社と連携をして、現地に進出をされている日系企業を対象としたリース業も開始をしている。
 先ほど冒頭に触れたが、トランプ次期大統領の政策がどういう展開になっていくかということが非常に大きなファクターの一つになるわけで、実は私どもの米州本部を中心に特命チームを立ち上げており、お客さまの照会や要望に応じて、メキシコ等周縁国との通商政策の変更の可能性であるとか、あるいは大統領に就任してから優先される政策の概要について調査してレポートを送付するなど、情報提供のサポートを実施している。
 こういったことを日系企業の皆さまに継続して提供していきたいと思っている。
(問)
 そういった日系企業からの懸念の声は、資金調達等についてすでに出てきているか。
(答)
 日系企業から具体的な資金繰りの懸念というのは出てきていない。むしろ、今後、トランプ次期大統領がNAFTAの見直しとか、そういうことについてどういう政策を打つのかということについては、日系企業は心配をしているという状況である。
(問)
 バーゼル委員会が新たな資本規制の最終合意を3月に延期したと思う。欧州勢と米国勢とに溝があると言われているが、改めて邦銀のスタンスを教えていただきたい。規制緩和を望んでいる欧州勢寄りなのか。
(答)
 今お話があったとおり、年初に公表されたバーゼル委員会のリリースでは、「最終的な資本賦課水準等についてもう少し議論が必要」とされていた。海外関係者等の話を聞くと、「リスクの計測における内部モデルの活用」や「標準的手法にもとづくリスクアセットに対する資本フロア」等について欧州と米州の意見が異なり、結論が出なかったと聞いている。
 欧州は内部モデルを支持し、資本フロアは不要ないしは低い水準とすべきというスタンスであり、米国がそれに反対をしているという構図と理解をしている。
 日本の銀行としては、銀行のリスクセンシティブな業務運営を促すためにも、内部モデルの活用は最大限認められるべきと考えているし、また資本フロアは可能な限り低く設定することが適切であると考えていて、どちらかといえば欧州に近いスタンスである。
 しかしながら、バーゼル委員会における議論がまとまらず、各国が独自規制を導入するという事態は回避すべきと考えている。やはり金融ビジネスが国境を超えてグローバルに取引されているなかで、グローバルなルールとしてのバーゼル規制の枠組みをしっかりと維持し機能させることが極めて重要だと考えている。
 そして、私ども邦銀の立場で言うと、特定の国あるいはビジネスモデルに過度な影響が及ぶことは回避をしながら、可能な限り早期に決着をさせて、規制上の不確実性を払拭することが重要なのではないかと考えている。したがって、バーゼル委員会において各国が受け入れ可能なバランスのとれた枠組みが早期に取りまとめられることを私どもとしては期待をしている。


(問)
 個別企業の件で恐縮だが、関心が高いのでお願いしたい。東芝の損失額について、7,000億円という数字も出ている。その受止めは。また、銀行としては債務超過に陥るかどうかは、かなり重要なポイントと見ているのか。
(答)
 まず、個別の取引先について詳細なコメントをすることは避けるべきと考えているが、東芝は、12月にアメリカの原発新設コストの見積り増加が判明したことでのれんの計上あるいは減損の実施で追加損失が発生することを公表した。足元、さまざまな報道機関からいろいろな数字が報道されているが、今私どもは東芝においてその損失額を精査していると聞いているし、その具体的な金額が明らかになったところで、それに対する東芝としての対応策を伺ったうえで、今後の対応について協議をしていきたい。基本的なスタンスとしては、我々メインバンクとして可能な限りサポートをしていくつもりだ。


(問)
 2問伺いたい。まず、日銀のマイナス金利について。昨年の1月末に導入を表明してから間もなく1年が経つ。これまでの会見でもやり取りをしていただいているが、改めて、その政策効果について、どのように受け止められているか。また、いつまで続くのか、銀行経営上も非常に重要なポイントかと思うが、会長として、どのようにご覧になっているか、教えていただきたい。
(答)
 マイナス金利政策は、昨年2月に導入された。「量」・「質」のほか「金利」も加えたかたちで、一段の金融緩和効果を狙った政策である。このマイナス金利政策の導入により、例えば、住宅ローン金利の低下、企業の資金調達コストの低下、そして、超長期の社債の発行など、一定のプラス効果が現れたと思っている。貸出への影響については、これまでも申しあげているとおり、導入から1年近くが経過したわけだが、企業のお客さまにおける前向きな投資等による資金需要の動きは、足元、一部に明るい材料も出てきているが、まだ、盛り上がりを欠くという状況に大きな変化は見られていないのではないかと思う。また、低金利下で運用先に困っているという声もお客さまから聞いているので、実体経済へのプラス影響は、まだそう多くは現れていないのではないかというのが私の実感である。
 いつまでマイナス金利政策が続くかということについては、まさに、さまざまな条件・状況が関わってくるわけだが、日本銀行が「物価安定の目標」とする消費者物価上昇率2%が残念ながら達成されていないなか、それを安定的に達成するまで政策を続けるとおっしゃっているので、当面、マイナス金利政策は継続するのではないかと思っている。
 したがって、我々金融機関としては、マイナス金利政策の環境下、いかにして収益力を上げていくかという課題にしっかりと取り組んでいかなければいけないと認識している。
(問)
 2問目だが、みずほフィナンシャルグループと三井住友トラスト・ホールディングスが、資産管理事業について統合を検討しているという報道が出ているかと思う。いわゆる稼ぎにくいようなビジネスは、今後、グループなどの枠を超えて統合するような動きが今後も起きてくるのかどうか、会長としての見通し、受止め方についてコメントを頂きたい。
(答)
 この統合については、当事者が、何ら決定したものはないと言っておられるので、コメントは差し控えたいと思う。
 資産管理業務は、基本的にやはりスケールメリットが大きく働く業務である。特に、今のマイナス金利環境下では、そのスケールメリットを追求することも必要ということで、統合もあり得る分野だと思っている。


(問)
 今のマイナス金利の質問にやや絡む部分だが、マイナス金利政策で金融機関の収益環境は非常に厳しいなかで、特に信用金庫などから預金保険料の引下げを求めるような声も一部出てきているが、全銀協としてこの問題についてどのように対応していく考えか。
(答)
 ご承知のことだと思うが、現在、預金保険については、「平成33年度末に責任準備金が5兆円程度になるように積み立てを行っていく」ということが当面の積立目標とされていて、預金保険料率はこの目標を達成できる水準に定めるとされている。一方で、預金保険機構において、翌年度の預金保険料率を審議する際は、積立目標に対する毎年の積立状況をモニタリングすることとされている。したがって、今後、来年度の預金保険料率の検討が進められていくことになるわけだが、その際には、モニタリングの結果にもとづいて、整斉と検討が行われることを私としては期待している。
(問)
 特段、会長から引下げを公に求めるようなことは今のところ考えておられないのか。
(答)
 個人的に一銀行経営者として申しあげると、預金保険料率を引き下げていただきたいという思いもあるが、最終的には、先ほど申しあげた預金保険機構の点検の枠組みにもとづいて、運営委員会で検討が行われていくと認識している。


(問)
 地銀の再編の絡みの話だが、地銀再編は、昨今でもすごくよく進んでいるとは思う。そのなかで、長崎でのふくおかFGと十八銀の話について、公取委が県内のシェアが高まり過ぎるということで審査が長期化し、経営統合に水を差すような事例が出てきているが、これが地銀の再編や地銀の経営体力強化に今後どのような影響を与えるか、公取委がそういう異例の判断をしたことについての受止めと考えを聞きたい。
(答)
 その報道は私も承知している。最終的には、公正取引委員会が独占禁止法にもとづいてご判断される事項なので、全銀協会長としてコメントする立場にはないと思う。
 そもそも地域金融機関の再編について申しあげると、やはり低金利の状況下、そして競争激化ということもあり、預貸金の利鞘が低下傾向にあるなかで、今後、人口減、それから高齢化社会が進展することを踏まえると、各金融機関が持続可能なビジネスモデルを確立していく必要があると思っている。
 加えて、地域金融機関には中堅・中小企業に対するきめ細かな経営支援など、地域経済の活性化に向けて貢献することが求められており、各金融機関の経営者の方々は金融仲介機能の質を一段と高めるという観点から、何をすべきかということを常に考えていると思うので、再編という手法もその有力な選択肢ではないかと思う。
 そして、再編については、地域をまたがる再編もあるほか、地域内の統合というやり方もあるなど、さまざまな形態があると思うので、銀行経営者の立場で言うと、幅広い選択肢が可能になる方が望ましいと思うが、最終的には公正取引委員会の判断によると思う。


(問)
 春闘に関して、改めてお伺いしたい。経団連の方針がこのほどまとまり、収益の改善している企業にはベアも含めた年収ベースでの賃金の引上げを求めている。銀行業界について言えば、マイナス金利の導入によって収益環境は厳しい状況にあると思うが、今年の賃上げについてどういったあり方が望ましいのか、検討状況などを含めてお考えをお聞きしたい。
(答)
 賃上げについては、まず前提として、各行がそれぞれ労使交渉によって個別に決定していくものであり、例えば全銀協や銀行界として取りまとめを行うことはない。
 そのうえで申しあげると、経済の好循環の流れをより力強くしていくためには、やはり賃上げのモメンタムを継続していくことが重要だと思う。
 今ご質問のなかにもあったが、1月17日に経団連の経営労働政策特別委員会が取りまとめた報告書において、「収益が拡大した企業や、中期的なトレンドとして収益体質が改善している企業については、設備投資や研究開発投資、雇用の拡大などとあわせ、2016年に引続き『年収ベースの賃金引上げ』を前向きに検討すること」が求められており、かつ年収ベースの賃金引上げの検討に当たっては、「定期昇給や賃金カーブ維持分などの制度昇給、水準自体を引き上げるベースアップ、賞与・一時金の増額、諸手当の見直しが柱となる」とまとめられた。
 銀行界においては、各行それぞれ経営状況や置かれている環境が異なるほか、諸手当などの賃金の内訳もさまざまであることなどから、賃上げについて一概に申しあげることはできないが、各行で労使による真摯な話し合いがこれから行われ、経団連報告の考え方も踏まえて、処遇のあり方が検討されていくのではないかと思う。
 当行個別行について言うと、まだ方針は決定していないが、今後、組合の意見も聞きながら、真摯に検討していきたい。


(問)
 スマートフォンのアプリを使ったCtoCの個人送金が、海外、特にアメリカなどにおいて普及しているが、国内で今後このようなサービスが広がりを見せるかについてどのように考えているか。
(答)
 足元、さまざまな形態の決済手段が出てきている。今おっしゃったスマホのアプリを使ってCtoCで送金をするようなサービスも出てきていて、今後こうした動きは加速していくと思う。
 以前も申しあげたが、いわゆるFinTechという流れがあり、私ども金融機関はこのFinTech企業と協働して、一緒になって新しい金融サービス、決済サービスを提供していくというのが今の金融界の考え方である。もちろん、スマホアプリを使った決済は利用者にとっては非常に使い勝手がよい一方で、やはり利用者保護も図っていかなければいけないため、利用者利便と利用者保護の両面を確保しながら新しい金融サービス、決済サービスを提供していくことになっていくと思う。
(問)
 今後、そうしたサービスが普及していくなかで銀行の手数料収入が減っていくかと思うが、その辺はどのように捉えられているか。
(答)
 どのようなサービスが普及していくかによると思う。銀行の手数料サービスが減少していく一面もあると思うが、例えば今皆さんが小口の決済をするときにおそらく現金で決済をされていると思う。それを例えば今おっしゃったようなかたちで、我々がFinTechベンチャーと組んで新しいサービスを提供することによって、追加の手数料をいただくという機会も出てくるため、一概に銀行の収益が減っていくということにはならないのではないかと思う。


(問)
 年末にまとめられた金融審議会・金融制度ワーキング・グループの報告書について伺いたい。この報告書のなかでオープンAPIを利用してFinTech企業と連携したサービスを展開し、利用者に損害が生じた場合、損失分担ルールを定めることが盛り込まれている。銀行界としてもこれから詳細を検討されると思うが、損失分担について会長としてどのように考えているか。また、このことに関して全銀協としてガイドラインのようなものの必要性をどう考えているのか。
(答)
 昨年末、金融庁から「オープン・イノベーションに向けた制度整備について」と題して、金融審議会・金融制度ワーキング・グループの報告書が公表された。これは、金融機関と顧客との間に立って、ITを活用した決済指図の伝達や口座情報の取得等のサービスを提供する、いわゆる中間的業者について登録制を導入する一方で、金融機関に対してもオープンAPIの導入に関する方針や中間的業者との契約締結の可否に係る判断の基準の策定・公表を定め、金融機関はそれに従って中間的業者と接続することなどが提言されている。
 現在、多くの銀行とFinTech事業者がオープン・イノベーションに向けた取組みの一環としてオープンAPIを活用した連携、協働を検討しているところであるが、こうしたかたちで制度整備が図られることはオープン・イノベーションを後押しするもので、意義は大変大きいと考えている。
 顧客との間の損失分担に関しても、報告書では、「一般的なルールを規定することは困難だが、当面の対応として責任保険への加入の可能性を含め、関係者の申し合わせによる取組み等が検討されるべきと考えられる」とされている。したがって、今、私どもはオープンAPIのあり方に関する検討会を設置しており、そこにおいて取りまとめる基準のなかで具体的な対応のあり方を定めていく予定としている。


(問)
 Brexit関連で、英国のメイ首相がhard Brexitと言われる単一市場からの退出というかたちを表明した。欧州で活動しているメガバンク中心に、どういう影響が今後出てくるか。あと、個別行としてどういう対応が考えられるか。
(答)
 17日、英国のメイ首相が今後のEU離脱交渉について演説をされた。そのなかで、EU単一市場からの脱退、いわゆるhard Brexitの方針を表明した。今回の方針表明により、私どもが要望してきた単一パスポート制度が維持されない可能性が高くなってきたと見ていて、我々としても大変重く受け止めている。
 これまでもこの会見で申しあげたが、EU単一市場からの離脱によって単一パスポート制度が適用されなくなれば、私ども邦銀にとり、英国・EU間のクロスボーダー取引や拠点の設置等が制限される可能性があるほか、労働力移動の自由の制限による人手不足や人件費増加等の影響もある。加えて、私どものお客さまである欧州でビジネスを展開する日系企業においても、関税の問題であったり、先ほど申しあげた人手不足の問題等、大きな影響が発生する懸念があると思う。また、よく報道されるが、医薬品等においては、英国とEU双方での二重の認証取得手続の負担増が懸念されるとの声もある。
 今後は、現状3月末に予定されているEU離脱の通知から2年間の交渉がどう展開されるかが注目されるが、演説のなかでメイ首相は、皆さまご存知のとおり、「新たな、包括的で野心的かつ大胆な自由貿易協定を通じて、EU単一市場へのアクセスを追い求める」、そして、「協定のなかに金融サービスや自動車といった特定の産業において、これまでの共通ルールを取り込み得る」ともコメントしている。また、新制度への移行について、段階的な移行措置の導入にも言及していて、邦銀への影響を見極めるにはもう少し時間がかかると思う。
 いずれにしても、我々としても引き続き英国とEUの交渉を注視するとともに、邦銀の欧州地域における業務への影響が最小限にとどまるよう引き続き要望していきたい。
 個別行として申しあげると、欧阿中東地域というのは引き続き重要なマーケットと考えているし、単一パスポート制度が維持されない可能性が高くなっていることを踏まえると、今後ともお客さまに持続的、安定的に金融サービスを提供していくためには、もちろん英国とEUの交渉を見極めながらではあるが、EU加盟国に新たな現法を設立するなど、将来の業務運営体制についてあらゆる可能性を柔軟に検討していきたいと思う。


(問)
 海外の関係で質問させていただきたい。トランプ相場とかFRBの利上げの影響だと思うが、アメリカの金利が上昇の基調にあり、邦銀の間では地銀を中心に外債の投資が増えているかと思う。金利上昇による債券価格の下落というのも懸念されるわけだが、銀行経営に及ぼす影響というかリスクについて、会長はどのようにご覧になっているか。
(答)
 各行の運用戦略あるいは運用状況というのを詳細に承知していないので、一概に申しあげることはできない。
 当行について申しあげると、昨年11月のアメリカの大統領選以降、グローバルに金利が上昇したわけだが、JGBや米国債でのポジションがさほど大きくないことから、当行のポートフォリオ全体で見た影響はあまり大きくない。
 ただ、これは各金融機関によってポジションが異なると思うので、その影響度合いは区々であるとは思う。
 各金融機関では、当然このマーケットの状況を常にウォッチをしながら、適切なリスク管理の下、運用方針を決定しオペレーションを行っていると思うので、そこはしっかりと運営されているのではないかと思う。


(問)
 融資における銀行員の目利き力について伺いたい。目利き力を高めなさいという声があがっていて、それはおっしゃるとおりだが、話す人によっては、将来大きくなるような、全く実績のない無名の会社を見つけ出すのが目利き力だと言う人もいるが、それが常にできたら、ウォーレン・バフェットもびっくりで、すぐ銀行員をやめてベンチャーキャピタルを立ち上げた方が大儲けできるのではないかと思うが、目利き力というときにあまり非現実的な抽象的な目標を課すと、逆に現場の銀行員は、課題や、やるべきことが見えなくなってしまうのではないかと危惧しているが、目利き力についてどうお考えか。
(答)
 目利き力というのは、一言で言うと、銀行員に必要とされる基礎的能力ではないかと思う。銀行界としては、従来からお客さまの事業の内容や成長可能性等を評価し、定量、定性の両面から融資判断を行うよう取り組んできているが、お客さまの成長をサポートし、また、日本経済の発展に貢献していくという観点からは、銀行の目利き力の発揮は今後一層求められていくと思う。
 私は、目利き力というのは、お客さまから頂いた決算書の数字だけではなくて、そこに現れてこない事業の将来性、技術力や営業力あるいは経営者の手腕など、定量面、定性面を踏まえてお客さまの事業を総合的に見極めたうえで、取るべきリスクをしっかり取っていくということではないかと思う。私も2ヶ店、法人営業部長の経験がある。財務状況はあまりよくないが、経営者の考え方に共感するとか、あるいはこの会社が持っている事業の成長性を評価できるとか、そういった会社には成長のための資金を貸すことや、自分が自信を持っていれば、例えば本部の審査部を説得するとか、こういうのは私の経験からすると銀行の拠点長の醍醐味ではないかと思っている。
 少し脱線したが、目利き力を向上させるためには継続的な努力が必要であるが、何より重要なのは、個々の担当者がお客さまとしっかりとコミュニケーションを取って、例えば営業現場や工場などにも足を運んで、お客さまのことをよく知る、そしてお客さまのために何ができるのかを考え抜くということだと考えている。
 さきほど申しあげたことと重なるが、当行の取組み事例を少し申しあげると、例えば営業店の担当者が財務諸表の数字だけでは融資が難しいお客さまに対し、技術力や事業の成長性を評価し、ご融資を行うなど、お客さまの成長のサポートに努めている。これは銀行にとっても、将来の顧客基盤の強化のため極めて重要な取組みである。
 したがって、これを実現するために、企業を見る目を養うための行内研修、教育等を繰り返し行うことによって、営業店担当者の能力向上に努めている。
 加えて、お客さまのニーズも大変複雑化するなかで、さまざまな知見を集めた本部の専門部隊を設置しており、営業店のサポートをしている。さらに、お客さまの事業の成長性、将来性を正しく評価する必要があるので、外部専門家の目を取り入れている部分もある。私どもが提案している「成長性評価融資」や、昨年10月に取組みを開始した「SMBCイノベーションマネジメント融資」では、外部専門家の方と連携して、お客さまの持っている技術の成長性やイノベーションを評価させていただいたうえで我々が融資をしている。
 一方、少し観点が違うが、例えば足元の業績が低調なお客さまがいらっしゃったときに、その会社の経営者のリストラへの取組み姿勢や事業計画の実現性、あるいは業務改善計画の進捗など、お客さまの取組みをしっかりと理解し、再建に向けたご融資や、あるいは豊富な経験を活かしたコンサルティングもさせていただいている。こういった取組みを行っていくことが目利き力の向上にもつながっていくし、それが我々金融機関として果たすべき役割だと思っている。


(問)
 賃上げに関して、17日の経団連の経労委報告のなかで、例えばベアなども挙がっていたが、具体的にベアについて、なかなか銀行界としての考え方を答えていただくのは難しいかもしれないが、その場合、個別行としてどう考えているかを教えていただきたい。
(答)
 これはSMBCとしてベースアップを行うのか、という質問だと思うが、いずれにしろ賃上げをどう行っていくかは、今後検討を行っていくということで、今は何も決めていないという状況である。
 やはり処遇改善を通じたわが国経済の好循環の流れを強くしていくためには、ベースアップというのも一つの有効な選択肢だと思う。ほかにも賞与、諸手当、最近は働き方改革による労働の効率化や、休暇取得の推進などもあるので、組合の意見を聞きながら、厳しい環境下で奮闘している従業員にどう報いていくか、ということについて真摯に検討していきたいと思っている。

以上