平成29年3月16日

國部会長記者会見(三井住友銀行頭取)

髙木専務理事報告

 事務局から3点ご報告申しあげる。
 1点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、銀行カードローンの残高が増加していることを受け、銀行による消費者向け貸付けについて、改正貸金業法の趣旨を踏まえた広告等の実施および審査態勢等の整備をより一層徹底するよう、申し合わせを行った。
 2点目は、ブロックチェーン技術に関することで、お手元の資料のとおり、当協会が事務局を務める「ブロックチェーン技術の活用可能性と課題に関する検討会」において、銀行界、IT事業者、FinTech企業、ブロックチェーン業界団体、金融インフラ運営機関、弁護士、学識経験者、関係当局等の幅広いメンバーによる討議の成果として、銀行業務におけるブロックチェーン技術の活用可能性と課題を考察するとともに、同技術が銀行業務に変革をもたらす可能性を見据え、実用化に向けて官民連携して必要となる取組みを提言する報告書が取りまとめられたので、お配りしている。
 最後、3点目は、本日の理事会において、お手元の資料のとおり、反社会的勢力との関係遮断に向けた対応の強化について申し合わせを行った。全銀協は、これまで、政府が策定した指針の趣旨を踏まえて申し合わせを行ったり、会員各行が他社との提携等により金融サービスを提供する場合の、反社会的勢力との関係遮断を徹底するための対応を決定・公表しているが、今日の申し合わせでは、資料の記書きにあるような反社会的勢力との関係遮断、水際排除を強化・推進することなど3点を申し合わせている。

 

会長記者会見の模様


(問)
 幹事社から2点質問する。1点目は、全銀協会長としての最後の会見となるが、この1年間を総括して、協会として実現できたこと、今後継続していくことなどについて所見を伺いたい。
(答)
 最後の会見ということなので改めてこの1年間を振り返ってみると、過去に類を見ない世界的な地殻変動により、金融も大きく影響を受けた1年であったとの印象を持っている。
 経済は国内外ともに総じて緩やかな回復が続いたわけだが、英国のBrexit決定や米国でのトランプ大統領誕生など、各国の政治・経済体制を揺るがすイベントに世界が翻弄された。また、昨年2月導入のマイナス金利政策の影響により、銀行にとっても厳しい経営環境が続いた。
 このようななか、全銀協では、銀行界が直面する課題に一つ一つ対応してきた。私が昨年4月に会長に就任した際、本年度を「わが国のデフレ脱却と経済再生の実現を支える1年」と位置付け、具体的な活動方針として「3つの柱」を掲げ、取り組んできた。本日は最後の会見なので少し時間を頂戴し、この「3つの柱」に沿って、この1年間の取組みを振り返りたいと思う。
 第1の柱である、「経済の好循環に貢献する、質の高い金融仲介機能の発揮」に関しては、まず、国民の安定的な資産形成への取組みについて申しあげたいと思う。「貯蓄から資産形成」への流れを促進し、経済成長に必要な成長資金の供給拡大を図ることは、銀行界にとって極めて重要な課題である。このため、各行がNISAの普及に努めるとともに、全銀協でも制度拡充について税制改正を要望していたが、平成29年度の税制改正大綱に新たに盛り込まれた「積立NISA」は、投資経験のないお客さまが、積立によって長期分散投資を図っていくために有効な商品と考えており、銀行界としてもしっかりと対応していきたいと思う。
 また、国民の安定的な資産形成のためには、我々銀行も販売会社の一員として、金融商品のわかりやすさなど、お客さま本位の徹底を図っていく必要がある。これについては、例えば、昨年10月以降、保険販売に際し銀行が保険会社から受け取る手数料の開示を開始した。さらに、昨年の金融審市場ワーキンググループでの検討を経て、今後確定される予定の「顧客本位の業務運営に関する原則」にもとづき、取組みの見える化など、各行が創意工夫しながら自主的に取り組んでいくことが重要と考えている。
 加えて、個人の金融リテラシー向上を支援するため、全銀協として全国の高校などに銀行協会の職員が出向く出張講座を本年度も210件実施するなど、金融経済教育にも注力をしてきた。出張講座に対する学校側のニーズも徐々に増えており、この件数は過去最多である。
 次に、「円滑な金融仲介機能の発揮」については、全銀協として、担保・保証に依存しない融資等への取組み強化のため、経営者保証ガイドライン活用の周知や各行の好事例の共有等を図ってきた。各行においても、事業性評価にもとづく融資やお客さまの経営課題を解決するソリューション提供等を通じた潜在的な資金需要の発掘に努めている。こうしたなか、直近2月末の銀行貸出残高が66ヶ月連続で前年同月比増加となっており、今後もこうしたトレンドを維持し、金融仲介機能のさらなる発揮に努めていきたいと考えている。
 また、自然災害の発生によるお客さまの「二重債務問題」にも引き続き取り組んできた。昨年4月には、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の運用を開始し、熊本地震や糸魚川火災などに適用しており、今後もお客さまからのご相談に真摯に対応していきたいと思う。
 第2の柱の、「安心・安全で、IT技術の革新にも対応した金融基盤の高度化」については、決済高度化に向けた取組み、具体的には、一昨年末の金融審の報告書にも盛り込まれた13項目の提言について精力的に取り組んできた。
 例えば、XML電文への移行については、売掛金の自動消込により企業の決済関連事務の合理化、生産性向上に資するものとして、金融界、産業界のほか、金融庁や経済産業省、日本銀行も交えた検討会を設置して議論し、昨年12月には「金融・ITネットワークシステム」の構築を決定した。
 また、手形・小切手という紙の決済手段については、電子記録債権や振込へのシフトが一定程度進んできているものの、企業、銀行の生産性向上を図るべく、さらなる電子化を推進するため、手形・小切手の利用実態についての調査に着手した。
 加えて、FinTechによる革新的な金融サービスの提供についても、ブロックチェーンやオープンAPIなど、新たな技術の活用に向けた検討を進めた。このうち、ブロックチェーンについては、先ほどお話しさせていただいたが、本日公表した報告書において、今後、官民に期待される取組みとして、「ブロックチェーン官民連携イニシアティブ」を取りまとめたところである。
 オープンAPIについては、金融審の金融制度ワーキンググループで昨年12月に制度的な枠組みが取りまとめられ、これが盛り込まれた銀行法改正法案が国会で審議される予定であるが、セキュリティや利用者保護に関する基準を「オープンAPIのあり方に関する検討会」で取りまとめているところである。これらの制度整備は、現在多くの銀行とFinTech企業がオープンAPIを活用した連携・協働を検討するなかで、こうした動きを後押しするものであるが、銀行界としても精力的に取り組んでいきたいと考えている。
 さらに、全銀システムの24時間365日稼働についても、お客さまへの利便性の高い決済サービスの提供を目的として、当初予定どおり2018年下期の実現を目指し、システム開発等を着実に進めている。
 このような決済の高度化への取組みは、少子高齢化やグローバル化の進展、それに伴うお客さまの行動変化など、さまざまな環境変化に対し、IT技術の進歩を取り込み、私ども銀行自身が変革しつつ、日本経済の成長力の強化、生産性の向上にも資するものであり、今後とも最大のテーマの一つとして取り組んでいく。
 また、お客さまの金融取引の「安心・安全の確保」のため、金融犯罪対策への取組み強化にも努めてきた。とりわけ、最近、地方での振り込め詐欺などが増加していることも踏まえ、本年度は大相撲の地方巡業において振り込め詐欺防止に向けた周知活動を行うなど、新たな取組みも実施した。今後も、全銀協として金融犯罪防止に全力で取り組んでいきたい。
 第3の柱の「景気に左右されない、健全な金融システムの構築」については、私ども銀行にとり極めて大きな影響のある問題として、国際的な自己資本比率規制、いわゆるバーゼル規制の見直しがある。これまでも申しあげているが、当初の規制見直し案は、わが国金融システムや銀行経営に与えるマグニチュードが極めて大きな内容であったため、本邦当局とも連携し、また、海外の銀行協会などとも協働しながら、積極的に意見発信を行ってきた。
 こうした取組みが奏功し、我々の懸念材料は随分と解消されてきたわけだが、欧米をはじめとする各国当局の主張が折り合わず、早期合意が極めて厳しい状況となっている。
 我々としては、特定の国やビジネスモデルに過度な影響が及ぶことなく、金融システムの安定と持続的な経済成長のバランスのとれたかたちで、可能な限り早期に決着し、規制上の不確実性が払拭されることが重要と考えており、引き続き当局とも緊密に連携しながら、主張を行っていきたい。
 また、TIBOR改革については、これまでの3回の市中協議を経て、改革後のTIBOR(TIBOR+)、これはより実取引に依拠した算出方法にもとづく指標であるが、これに本年7月より移行することを決定、公表している。
 以上、この1年間の主な取組みについて話をさせていただいた。来年度もわが国経済がデフレからの完全脱却を果たしていくうえで、大変重要な1年になると思う。こうしたなかで、我々銀行界としてもさまざまな課題を克服しながら、金融システムの健全性の確保、円滑な金融仲介機能の発揮に取り組み、日本経済の発展に貢献していくことが引き続き大きな使命であると考えている。
 次期会長となる三菱東京UFJ銀行の小山田頭取にしっかりとバトンを引き継ぐとともに、個別行としてもしっかりとサポートしていきたいと考えている。
(問)
 2点目だが、本日未明、米国でFRBが0.25%の利上げを実施した。利上げに踏み切った米国経済の現状や今後の利上げのペース等もイエレン議長から話が出ている。米国経済の現状や利上げのペースなど、先行きも含めてどのように見ているか、お聞かせいただきたい。
(答)
 今話があったように本日の未明、FRBはFOMCでFF金利(フェデラル・ファンド金利)の誘導目標を0.25%引き上げ、0.75~1.00%とすることを決定した。イエレン議長のコメントによれば、今回、FRBは足元の実体経済の堅調さを勘案し、利上げに踏み切ったということである。主要先進国のなかで、米国がいち早く利上げのステップを着実に歩み始めていることについては、米国経済の確かな回復傾向を表すものであり、今後も世界経済の牽引役としての役割が期待されるなか、大きな意義があることと思っている。
 実際、米国経済の回復ペースは加速していると私は捉えている。非農業部門の雇用者数は堅調に増加しているほか、イエレン議長が注目していた時間あたり賃金の伸びも趨勢的に高まっており、個人消費を所得面から下支えしている。また、企業部門でも、ISM景況指数が改善傾向にあるほか、設備投資も持ち直しに転じるなど、前向き姿勢が強まりつつある。このように、トランプ大統領による財政政策が発動される前の段階でも、家計部門、企業部門の回復ペースが強まっており、成長率と物価が上振れする可能性が高まってきている。
 先行きについても、賃金の伸びの高まりを背景に、個人消費は回復傾向が続くと見込まれるほか、企業活動も内外需要の回復により改善が続くと見ている。トランプ政権の政策運営に対する不透明感は残るものの、今後、財政政策等が実現することになれば、企業活動のさらなる活性化等を通じて、成長ペースが高まっていく展開が想定される。こうしたなか、今回の声明文やイエレン議長の会見においても、「緩やかなペースの利上げ」という政策スタンスが維持されており、景気見通しに沿うかたちで、FRBは今後も緩やかな利上げという政策スタンスを維持しつつ、物価や景気への影響等を見きわめながら、具体的な利上げのペースを判断していくものと見ている。
 私は、今回の米国の利上げについては、米国の実体経済の堅調さはもとより、新興国をはじめとする世界経済の不安要素が減少していることも背景にあるのではないかと思う。今後も、FRBには、新興国をはじめ世界経済の状況にも目配りをいただきながら、金融政策の判断を適切に行っていただくことを期待している。


(問)
 日銀の金融政策について伺いたい。具体的には、マイナス金利政策について。冒頭にも、マイナス金利政策で銀行にとって厳しい経営環境が続いたというご発言があったが、これまでの会見でも、会長は実体経済にそんなに効果はないのではないかというニュアンスのことを発言されてきたと思うが、さすがに導入から1年ぐらいたって今も効果がないとすると、結局、現時点での総括として、マイナス金利政策はやはり効果がない、これ以上続けても意味がないと思われているのかどうか、そのあたりについての考え方を教えていただきたい。
(答)
 マイナス金利については昨年2月に導入されたわけだが、以前の会見でも申しあげたとおり、プラス面とマイナス面、両方あると思う。足元、個人・企業ともに低金利での資金調達が可能になっていることは事実であり、これはプラス面での効果が生じているということであると思う。一方で、銀行にとっては、預貸金利鞘の縮小により、収益へのマイナス影響が出ているということである。4月の就任時の会見でも申しあげたが、このマイナス金利、すなわち市場金利を引き下げることによって、本来的には投資需要を喚起するというプラス効果はあるわけだが、今のところ、導入から1年が経っているが、例えば企業の設備投資が大きく増加しているという状況には、まだ至っていない。したがって、マイナス金利の効果は、まだあまり出ていないという私の認識には変わりはない。この政策がいつまで続くかというのは分からないわけだが、基本的には、この低金利が続く間に、ある意味、時間を稼ぐなかで、メリハリの効いた財政政策や成長戦略に、現下の金融政策と併せて取り組むことにより日本の経済を再生させていくことが必要だと思っている。


(問)
 3月3日に閣議決定された銀行法の改正案について、FinTech事業者に対して登録制を導入することなどを柱としているが、銀行界としてどのように受け止めているか。
(答)
 今国会に提出された改正銀行法案では、お客さまに代わって送金指図や口座情報の取得等を行うFinTech事業者等の電子決済等代行業者について新たに登録制を導入する一方、銀行等に対しても同事業者との連携・協働の方針や接続に係る判断基準の公表を義務付け、オープンAPIの体制整備に努めること等が盛り込まれている。
 現在、多くの銀行とFinTech事業者がオープン・イノベーションに向けた取組みの一環として、オープンAPIを活用した連携・協働を検討しているところであるが、この銀行の接続相手方となる事業者の法的位置付けが現行の法制度では必ずしも明確でない面があった。
 したがって、このタイミングで銀行とFinTech事業者等との連携・協働に資する制度整備が図られることは、オープン・イノベーションを後押しするものであり、また、利用者にとっても安心感が高まるのではないかと考えている。
 この制度の枠組みが検討されるなかでのポイントは、一つは利用者の方に不安を与えてはいけない、もう一つはFinTech事業者等に過度な規制になってもいけないということであり、この両者のバランスをどうとるかということだったが、今回の法案は、お客さま、FinTech事業者等、金融機関の三者それぞれが使いやすい、バランスのとれた枠組みとなっていると思う。
 銀行界としても、今後、各銀行が創意工夫を発揮して、それぞれのビジネス戦略にもとづきながら、法案にある電子決済等代行業者との連携・協働の方針や、接続に係る判断基準を策定・公表して、積極的にオープン・イノベーションを推進していくことが大変重要になってくる。
 こうしたITの進展を利用者利便の向上、さらにはわが国金融経済の発展につなげられるよう、銀行界としてもスピード感を持って精力的に取り組んでいきたい。
(問)
 全銀協で行っている金融経済教育について、今年度は講師派遣が過去最高の件数になるという話もあったが、國部会長は金融経済教育の重要性についてどのように考えているか。
(答)
 私は、金融経済教育は大変重要だと思っている。わが国で「貯蓄から資産形成へ」の流れがなかなか進まない要因として、いろいろなことが挙げられているが、個人投資家に投資の成功体験が少ないことや、安定・安全を重視する日本人の国民性からくる株や投資に対するマイナスのイメージや不安などが指摘されることが多い。
 一方で、さまざまなアンケートによると、「投資が損をするリスクがあり怖いもの」と考える方は、金融・投資教育の経験がないことが多く、投資家のすそ野を拡げる観点から、こうした個人の金融リテラシーの向上は極めて重要と認識しており、全銀協では、先ほども申しあげた金融経済教育に精力的に取り組んでいる。
 こうした金融経済教育の取組みは、我々銀行界のみでは十分に浸透するものではなく、他の金融団体との連携や、学校教育、すなわち小学校、中学校、高校、大学など、対象に応じたカリキュラムを組んで、より広範で効果的な教育に取り組んでいくことが必要である。その観点から、金融広報中央委員会、他の金融団体と連携して、全国の8大学で講義を実施する等の取組みも行っている。


(問)
 三井住友銀行頭取として答えてほしい。春闘についてだが、先日、労組の執行部案として0.5%のベアを求めるという方針が決定された。今後、組合内の決定手続を経たうえで正式に提出される見通しだと思う。そこで、三井住友銀行としてのベアのスタンスだが、要求があった場合には応じる考えかどうかを改めて聞かせてほしい。
(答)
 個別行の頭取として答えさせてもらう。まだ組合から正式に要求は受けていない。今後、組合からの要求を踏まえて決定することになるが、先月の会見でも申しあげたとおり、経団連の経営労働政策特別委員会が取りまとめた報告書も踏まえながら、ベアを含めて年収ベースの賃金引上げを前向きに検討していきたいと思っている。
(問)
 ベアの要求があった場合には、応じられる可能性が高いと考えてよいか。
(答)
 そう考えていただいて結構。


(問)
 先ほど発表された消費者向け貸付けの申し合わせだが、いまひとつ趣旨が難しいので、もうちょっとわかりやすく解説していただきたい。これは要するに何を言っているのかということが1点。
 二つ目は、貸金業法では年収の3分の1とか収入証明書を出すようにとか、そういうことが決まっているが、銀行の場合はそういう制約はかかっておらず、幾らでも貸せる。言ってみれば、銀行が貸す場合は、あえて言うと脱法行為的に貸せる現状があると思うが、この点について今回の申し合わせはどう位置付けられているのか。
 次は、全く別の質問だが、全銀協というのを考えたときに、会長は会長行室長もされて、企画委員長もされて、会長もされた。長らく全銀協の活動に中心として関わってこられて、全銀協の役割や存在意義というのはどう変わってきたとお考えになっているのか。あと、個人的に一番印象に残っている仕事があれば教えていただきたい。
(答)
 まず、最初の質問にお答えをさせていただく。銀行のカードローンの件だが、少し歴史を振り返ると、約10年前に、当時多重債務問題が社会問題化していて、その多重債務問題の解決に向けて貸金業法が改正され、いわゆる総量規制が消費者金融会社に導入された。その際、銀行に対しては規制の対象外と整理されたものの、中長期的に健全な市場とするために社会的な責任も踏まえた積極的な参加とともに、同法の趣旨を踏まえた所要の体制整備が監督指針上で求められているわけである。
 私ども銀行としては、規制の対象外ではあるものの同法の趣旨を踏まえた運営を進めてきたつもりであるが、貸付残高が増加しているなかで、一部に銀行の貸付けスタンス等についてご指摘を頂戴していることから、今一度、手綱を締める必要があると考え、今回全銀協として申し合わせを行った。
 申し合わせの内容は、お手元に本日ペーパーをお配りさせていただいたとおりだが、少し補足をすると、まず広告・宣伝については、安易にお客さまの過剰な借入れを促すような配慮に欠けた表示等を行わないよう努めることや、注意喚起を行っていくことを申し合わせている。
 審査態勢についても、消費者向け貸付けがお客さまにとって過剰な借入れとならないように、申込み時に年収証明書や自ら保有するお客さまの情報等を活用し、自行、それから他行のカードローン、貸金業者の貸付けを勘案して返済能力を確認すること、信用保証会社による代弁率の推移の分析・把握等によって審査の適切性を確認すること、さらにお客さまの信用状況の変動を定期的に把握すること、等に努めていく旨を申し合わせている。
 今後、我々は今回申し合わせた内容に留意しながら、適切な業務運営に努めていくことが重要だと考えている。
 それから、二つ目の質問だが、少し自分の思い出を話させていただければと思う。ご質問にあったとおり、私は今回の会長まで、全銀協の会長行業務を通算5回経験させていただいている。いろいろなことがあった。
 最初は1994年、これは住友銀行が初めて全銀協会長となった年であって、当時は別室と言っていたが、私は今の会長行室の次長をしていた。このとき二つの出来事があった。一つは東京協和信用組合と安全信用組合の経営破綻問題がクローズアップされたこと。それ以前にも破綻はあったが、既存金融機関による救済が一般的であった。ところが、この両信組のケースは規模も大きく、救済金融機関も現れなかったことから、一から受皿銀行を設立するという新たな取組みを行うこととなり、大変苦労した記憶がある。なお、受皿銀行は東京共同銀行という銀行だったが、今は整理回収機構に改組されている。ご存知のとおり、その後1990年代後半から金融システム不安、不良債権問題があり、長らく金融機関は不良債権問題に苦しんだ歴史になったということである。
 それから、この年はもう一つ大きな出来事が起こっていて、阪神・淡路大震災が発生している。被災者の方々の金融取引の円滑化とか被災地への資金供給に取り組むとともに、政府にも地公体からの利子補給の拡充や信用保証制度の充実など、金融面の支援措置を求める要望書を取りまとめ、提出をした。当時の取組みや経験が2011年の東日本大震災や昨年の熊本地震への対応に活かされた面も多いわけである。もちろん、こうした悲惨な出来事が発生しないことに越したことはないわけだが、銀行界としても被災された地域の復興支援には引き続き取り組んでいきたいと思う。
 それから、企画委員長に就任したのが2007年で、これは12月に保険の窓販の全面解禁が予定されていたほか、金融審議会で銀行・証券間のファイア・ウォール規制や銀行グループの業務範囲規制の見直しが検討されるなど、多様化・高度化する顧客ニーズの対応のための規制見直しが進められていたタイミングであった。
 こうした今申しあげたようなテーマというのは永年の銀行界の課題だったわけだが、これに取り組むべく海外の事例なども参考にしながら、企画委員長として、当時は金融審議会のメンバーだったので金融審議会の場、あるいはさまざまな場で主張を行った。当時の見直しの内容が、ある意味現在の金融グループの業務の基礎となっている部分もあり、これはとても印象に残っている。
 あと、全銀協会長として2回経験をしたということである。全銀協の会長行業務というのは、いずれの年も最初から最後まで平穏に終わったというのは一度もない。必ず何か課題が発生をする。それに会長行として銀行界を代表して適切に対応していくということだと感じている。
 また、個別行の利害を超えて銀行界、さらには日本経済全体の発展に貢献するために尽力するという面もあって、目線が広がって、大変よい経験になったし、非常にやりがいのある仕事だと思っている。したがって、これからも全銀協会長行、あるいは全銀協会長の仕事というのはその年々によって内容は変わるかもしれないが、非常に重要な役割を果たし続けるのではないかと思っている。


(問)
 個別企業のことで恐縮だが、東芝が決算を再延期した。融資している銀行として、東芝側の説明に納得されているか。また、今後の融資姿勢をどのように考えられているか教えていただきたい。
(答)
 東芝という個別取引先に関することなので、コメントは差し控えるべきだと思うが、少しコメントをさせていただく。
 東芝は2月14日、第3四半期決算の公表を1ヶ月延期し、一部経営者による不適切なプレッシャーの有無を調査していたが、今回、第3四半期以外の期を含む追加調査をする必要が生じ、レビュー手続にはさらに4週間程度の期間を要すると判明したことから、第3四半期決算の公表を4月11日まで再延期することになった。各ステークホルダーの不信感を払拭できない状況が長期化しているわけで、メインバンクとして大変残念に思っている。監査法人としっかりと協議をしたうえで、一日も早く決算を公表していただきたいと思っている。
 また、3月14日に「今後の東芝の姿について」を公表された。そのなかで海外原子力事業のリスク遮断、財務基盤の早期回復と強化、グループ組織運営の強化を図るとしている。財務基盤の回復については、メモリ事業への外部資本導入に向けたプロセスに着手をしたと聞いているし、組織運営の強化については、昨日、東京証券取引所に内部管理体制確認書を再提出している。これら一つ一つに全力で取り組み、信頼回復にぜひ努めていただきたいと思う。
 当行としては、これらの取組みを踏まえ、ガバナンスの改善状況やメモリ事業等の企業価値を勘案すれば実態資本はプラスが維持されるという点を踏まえつつ、メインバンクとして可能な限りサポートしていくつもりである。
(問)
 昨日、バンクミーティングも開かれたが、回数をこなすごとに徐々に地銀の足並みが乱れてきているような印象も受ける。今後、離脱するところが相次いだ場合、メイン寄せといった対応も考えられているか教えていただきたい。
(答)
 個別の取引についてはお答えできないが、東芝の再生のためには金融支援体制の安定化は不可欠であり、東芝が今回、担保差入を決断され、取引継続につき、銀行団に理解を求めているので、当行としては銀行団がまとまるように、できる協力をしていきたいと思っている。


(問)
 先ほど質問で出た、銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせについてだが、まず、このなかで盛り込まれている顧客の過剰な借入れに対する注意喚起を行っていくという内容は、全銀協として音頭を取ってやっていく話なのか、それとも各行の自主的な判断でこういう表現を盛り込んでいこうと、あくまで各行の対応に任せるようなものなのか、どうやってこの注意喚起をやっていくのかについて伺いたい。
(答)
 今回申し合わせをするに当たって、本日理事会でこれを決議したわけだが、この申し合わせを行ったことは各傘下金融機関に周知していくので、そういったかたちで注意喚起を行っていく。その後は各傘下金融機関がしっかりと責任を持ってこの申し合わせに沿って運営していくことになる。
(問)
 カードローンの残高の伸びに対して、昨年の9月に日弁連が意見書を出していたと思う。意見書のなかでは、銀行界に対して、総量規制に準じた、年収の3分の1を超えるような貸付けを行わないように対応していってほしいと盛り込まれていたと思うが、今回この申し合わせを見る限り、総量規制を意識した対応を銀行界としてやっていくとは見受けられないが、日弁連が求めていた対応を取られなかった理由はどうしてなのか。この内容で過剰融資の抑制について実効性が確保していけるのか、その辺りの考えをお伺いしたい。
(答)
 今回の申し合わせをよく読んでいただければと思うが、我々として過剰な借入れとならないように留意して融資をしていくことを申し合わせているわけなので、その趣旨はこの申し合わせに入れ込んでいる。
 今ご質問にあった、年収の3分の1という総量規制については、銀行カードローンのお客さまのなかでも収入あるいは信用状況などさまざまであるので、一律に借入れ上限を決めてしまうと、かえって利便性を低下させてしまう恐れがあると思う。したがって、我々金融機関としては、今回の申し合わせや監督指針の内容に留意しながら、まずは各行が自ら業務を点検し、改善すべき点があれば改善していこうと申し合わせたものである。引き続きそれぞれの事情に応じた創意工夫をしながら、多重債務の発生抑制の趣旨であるとか、あるいは顧客保護等の観点を踏まえて、適切な業務運営に努めていきたいと考えている。
(問)
 全く別の話になるが、つい先ほど地銀再編に関する報道が出ていて、新潟県の第四銀行と北越銀行が経営統合する報道が出ていた。内容としては4月にも基本合意、来年春の統合を目指すという話で、これはまだ発表されていない話ではあるが、今年に入ってから御社グループを含めて地銀再編の動きが相次いでいる。今の金融業界の置かれた厳しい状況を反映したものと思うが、國部会長として今後も地銀再編の動きが加速していくと見ておられるかどうか、改めて伺えれば。
(答)
 まず、おっしゃられた統合については、そのニュースを承知していないのでコメントはできない。地銀再編について申しあげると、やはり日本経済の成熟化やマイナス金利による預貸金利鞘の縮小などから経営環境は大変厳しい状況にあると思う。したがって、地域金融機関の経営者は、どのように持続可能なビジネスモデルをつくり上げて地域経済の発展に貢献していくかを常に真剣に考えていると思う。その目的を達成する一つの手段として、合併・統合などによる再編はあり得る選択肢だと思う。
 大事なのは、再編などによって生じてくる経営資源を地域経済の活性化のために有効活用すること、そして、お客さまに対して再編などの目的や効果を丁寧に説明してご理解を得ていくことだと思う。いずれにせよ、各経営者はどうやって自分の事業を成長させていくか、持続可能なビジネスモデルにしていくかを考えているので、その一つの選択肢として統合・再編はあり得ると思う。


(問)
 高齢者問題と金融サービスについて伺いたい。最近、高齢者による車の運転操作の誤りから交通事故が発生するなど、一つの社会問題となっている。こうしたなか、高齢者などが運転免許証を自主返納した場合、預金金利の上乗せやローン金利の割引などという優遇サービスを提供している金融機関が幾つかあるが、このような取組みについて会長の所感をお願いしたい。また、全銀協で高齢者向けの対応など、取組みがあれば教えていただきたい。
(答)
 そのような取組みをされている金融機関があることは承知している。高齢化社会が進むなかで、高齢者の加齢に伴う健康状態や認知機能の低下等に起因したさまざまな社会問題が起こっているのも事実である。今、例示された取組みというのは、金融取引のなかである種のインセンティブを付与することによって社会的問題の解決にも寄与する試みであり、私は意義のある取組みだと思っている。
 今後、高齢化社会が進展するなかで、金融機関としてご高齢のお客さまにどう対応していくかというのは、経営課題の一つになってくると思う。当行の例で申しあげると、例えば75歳以上のご高齢のお客さまが、一定のリスクがある商品をご購入される場合は、より慎重な適合性判断を行っている。例えば、営業責任者による事前承認や、即日受注の禁止、法定相続人の同席、申込み内容確認の連絡といったルールを定めて、非常に慎重な適合性判断をさせていただいている。
 全銀協においても、ご高齢のお客さまが金融商品をご購入される際の注意点をわかりやすく紹介するために、動画やパンフレットを作成し、ホームページに掲載するとともに、パンフレットを全国の消費生活センターに送付して活用いただく等の取組みを行っている。また、今申しあげたことと少し観点は異なるが、認知症の問題がある。全銀協では、認知症サポーターの育成を行っているが、これが一巡したので、今度は資格を取得した方を対象としたステップアップ講座を開催させていただいて、好事例の共有なども行っているところである。
 いずれにしろ、これから金融機関のお客さまのなかで、ご高齢の方はかなりのウエートになってきているので、我々金融機関がご高齢のお客さまとどう向き合い、どう対応していくかというのは非常に重要な経営課題だと認識している。


(問)
 先ほども銀行法改正およびFinTechの話があったが、FinTechの進展などによって他業種から金融界への参入がこれまで以上に活発になってきて、業界間の線引きがなくなりつつあると思う。そのなかで銀行としては今後どうやって生き残っていくのか伺いたい。
(答)
 金融とテクノロジーの融合の動きが進展するなかで、今言われたように業種間の垣根が低くなり、銀行以外のプレイヤーが金融サービスの分野に参入してきている。例えば、スマートフォンのアプリを使ったCtoCの送金や個人資産管理サービスの分野では、銀行以外の事業者からも、さまざまな利便性の高いサービスが提供されている。
 私としては、テクノロジーの進歩が今後も不可逆的かつ持続的に進展するなかで、このFinTechの動きが金融の姿を今後大きく変えていくことは、いわば必然であると考えている。したがって、銀行としては、従来のビジネスモデルに固執するのではなく、テクノロジーの進歩を果敢に取り入れ、新たなビジネスモデルをいかにスピーディーに構築していけるかが、極めて重要だと考えている。
 これは、銀行にとっては、変化にいち早く対応することによって、自ら新しい市場を創造したり、シェアを高めていく、あるいは、業務の効率化を図ることが可能となり、ある意味、非連続的な発展を遂げるためのチャンスであると捉えている。言い方を変えると、こうしたFinTechへの対応、あるいはFinTechを使った新しい金融サービスの創造については、まさに新しい発想でさまざまな取組みを進めていくことが求められる、ある意味大変面白く、ワクワクする時代になってきたのではないかと感じている。
 金融サービスの高度化は、これまで自前型、クローズド型で行われることが多かったが、ブロックチェーンや生体認証、AIといった最近のさまざまなテクノロジーの進展やイノベーションが銀行業界の外で起きていることを踏まえると、今後は、さまざまな業界にもアンテナをめぐらして、FinTech企業をはじめとする他業種の事業者とも積極的に協働し、一緒になって新しい金融サービス、決済サービスを提供していく、まさにオープン・イノベーションへの取組みが非常に重要になってくると思う。
 当行個別行の取組みを紹介させていただくと、オープンAPIを通じたさまざまなFinTech企業との連携や、送金・決済サービスベンチャーとの業務提携、他社と協働した生体認証プラットフォームの提供、AIを活用した業務の効率化、貿易分野におけるブロックチェーン技術の活用に向けた検討など、さまざまな取組みを進めている。
 先日、サンフランシスコでグーグル社が開催したカンファレンスで、私ども三井住友フィナンシャルグループのAIに関する取組みが取り上げられた。内容は、カードの不正検知や入出金データ分析による顧客企業の業績予想といったものであるが、「ここまでしっかり本業のなかでAIの活用に取り組んでいる金融機関は、グローバルでもなかなかない」とのコメントも頂戴しているところである。
 ただ、この分野のテクノロジーの進歩は日進月歩であり、絶えず新しいものをつくり出していかないといけない分野だと思う。
 FinTechの進展によって金融ビジネスのパラダイムシフトが見込まれるなかで、経営として、あるいは経営者として、新しいテクノロジーやサービスを積極的に取り入れて、金融サービスの向上や我々の業務のあり方を見直していかなければ、お客さまからの評価は得られない時代が来ているのではないかと感じている。


(問)
 預金保険料率の2年ぶりの引下げは金融機関にとって負担減になるが、そこへの受止めと、その分を例えば顧客に還元するなど、還元策があれば教えていただきたい。
(答)
 預金保険料率については、平成27年3月の見直しの際に、こういう枠組みがつくられている。すなわち、平成33年度末に責任準備金が5兆円程度になるように積み立てを行っていく、これが今の枠組みである。この枠組みのなかで、来週開催される預金保険機構運営委員会において来年の預金保険料率が决定されるわけだが、現在の順調な積立状況等を踏まえた検討が行われて、来年度の預金保険料率が決定されることを私としては期待している。
 仮に、預金保険料率が引き下げられたとすれば、我々銀行界としては、さらにお客さまの利便性の向上等に努めていく必要があると思っている。具体策については、実際に下げられた後の検討ということになると思う。


(問)
 今週末にドイツでG20の財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。今回、アメリカのトランプ政権になって初めての会議ということで、ともすれば保護主義的な色合いが出てくるのかどうかというところで懸念もあるかと思うが、今回の会合に求められるもの、見通しなどについてお伺いしたい。
(答)
 世界経済は緩やかな回復基調にあるが、先行き不透明感は依然として残っているので、先進国と新興国の主要国が一堂に会して、金融・世界経済の諸問題を議論することの重要性は以前にも増して高まってきていると思う。とりわけ、米国・トランプ政権の誕生以降、通商政策、金融政策等の面でいろいろな議論が生じる場面があるなかで、今後の世界経済の安定成長に向けて、主要国間で一定のコンセンサスを形成していくことが必要な状況に置かれていると思う。
 こうしたなかで、今週末開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議は、世界の主要国が協力して課題に取り組む多国間協調の枠組みを維持できるかどうかが一つの焦点になるのではないかと思う。各国が自国経済の強化に取り組むのは自然な流れであるが、同時に、保護主義姿勢、内向き志向に傾斜することなく、世界経済のさまざまな課題を克服するためのグローバルな目線が共有されることを期待している。他国に比べると日本は政情面で大変安定しているので、わが国としては、さまざまな利害対立を調整しながら、各国首脳が一致団結できるよう、ぜひリーダーシップを発揮していただくことを期待している。


(問)
 目先的な話ではないが、日本の銀行業は戦後人口増加というフォローの風で儲けてきた。人口ボーナスの繁栄のなかで業容も拡大できたと思うが、ここ1~2年を境に全く逆の展開になってくる。地銀の統合などは、人口減少のなかで起こらないほうがおかしく、当然ながら起きている。今地銀のことにみんな注目しているが、大手銀行もこの影響を受けないわけはない。マーケットという意味において受けるだろうし、労働人口の減少で、自分の銀行で働く行員の確保もある一方で、FinTechみたいな機械化の果実として人件費が削減されることが多分にあると思う。日本で人口減少が進むなか、地銀の合併という問題ではなくもっと広い意味で、今後中期的に日本の銀行業はどういう影響を受け、どうなっていくのか。
(答)
 日本は人口減少・高齢社会に入っている。これは今後加速していく。個別行の3月に終わる中期経営計画をつくったときに、幾つかの構造的トレンドを踏まえた。そのなかに人口減少・高齢化は、我々の経営にとって大きな構造的トレンドとして認識したうえで、今、経営を行っている。
 日本国内では人口が減少し、さらには高齢化が進んでいくと、銀行のビジネスチャンスがどんどん減っていくのか、ということについてだが、例えば高齢化が進むことは何を意味するかというと、高齢者の方が資産を持っており、その運用手段としてビジネスチャンスが出てくる。それから、今後、相続あるいは資産承継が多く発生していく。こういったことに銀行としてソリューション、解決策を提供していく、それが我々のビジネスにもなっていく。必ずしも少子高齢化が銀行のビジネスを減らす方向だけに働くのではないと思う。
 そして、企業も国際競争力をつけるために、今、いろいろなことがもうすでに起こっている。事業のリストラクチャリングであったり、買収であったり、買収も国内だけではなく海外での買収といったことを行いながら、国際競争力をつけ、そしてグローバルに活躍、展開をしていく企業が増えている。そういった企業に我々がサービスを提供していくこともビジネスであるし、特にメガは海外業務を拡大しており、そういった海外でのニーズに対して我々の持っているノウハウ、エキスパティーズを使って対応していくことも、非常に大きなビジネスなので、我々が現在の構造的なトレンドのなかで収益を上げるチャンスは数多くある。
 日本の人口が減少していくことで我々がもう一つ考えなければいけないのは、労働力をどう確保していくか。これは銀行というより日本経済全体の問題だが、労働力の確保については、やはり女性、高齢者の活躍を推進していかなければいけない。それとIT技術あるいはFinTechを使って、我々の業務のプロセスを効率化し、簡素化して、労働集約的な仕事に携わる人の数を減らし、その人材はより知識、知恵を使った付加価値の高い業務に充てていく。ある意味、構造を変えていく取組みもしていかなければいけないと、経営者として考えている。
(問)
 銀行員の方は定年退職する前に外に出られる方が多いと思うが、そういう年齢も上がってくるということか。
(答)
 高齢者の活用ということを考えると、知識、経験、ノウハウを持った高齢者の方の知見をより活かしていく方向に、我々経営としては動いていかなければいけないと思う。


(問)
 会長の生きがいについてお伺いしたい。銀行は大昔の資金不足の時代ならば、資金の割当てを通じて国の産業政策まで入り込めたりと、非常に重要な役割をしていたが、先ほどからお話にあるように、低金利で預貸収益が儲からない、さらにはFinTechが出てくれば銀行など要らないのではないかとも言われている。来月には新入行員も入ってきて、銀行員としての人生が始まるが、全銀協会長というバンカーとしてはトップの地位にいる人が、銀行員として今、何を生きがいに生きているのか、何が醍醐味なのかお聞かせ願いたい。
(答)
 私自身がこれまでの銀行員生活のなかで感じたことを申しあげると、やはり銀行業はお客さまあっての商売である。先ほども少し申しあげたが、お客さまのために、これは法人のお客さま、個人のお客さまを含めて、銀行が持っている経営資源やノウハウ、知見を結集しながら、付加価値の高いサービス、ソリューションの提供を行い、お客さまの事業の成長や発展のためのお手伝いをする、その結果として、お客さまから評価されて感謝される。私は、銀行員の醍醐味はそれに尽きるのではないかと思う。
 その活躍の場が、従来はある意味国内中心だったが、今はグローバルにその活躍の舞台は拡大していっている。また昔は、預金、貸出、為替という銀行の3大業務が中心だったわけだが、そういう時代から、グループを含めて、さまざまな、大変数多い機能を持つようになってきており、我々がトータルでお客さまに提供できるサービスの幅が、格段に広がっている。このように活躍の場がグローバルに拡大しているということと、我々が提供する機能が大変広がっているということを踏まえて、お客さまにさまざまな解決策を提示し、お客さまから感謝される、というところが醍醐味なのではないかと思う。
 過去の会見で、ご質問にお答えする形で融資における目利き力の話をさせていただいたが、そういうこともあるし、今、日本の産業、企業が大きな構造変化、構造改革のなかにあるなかで、我々の組織や個人が持っている知見を使って、お客さまの事業再編や産業再編などを支援し、これらを通じて日本経済を強くしていく、産業競争力を強化していく、そういったことに関われるのも銀行員の醍醐味だと思う。
 また少し目線を変えて申しあげると、銀行だけに限った話ではないが、私の経験でいうと、銀行では若くして責任ある仕事やプロジェクトを任されることが多く、そこで壁にぶち当たりながら、先輩、上司の指導も受けながら、自分で苦しんで解決策を見出していくというプロセスが、その人を成長させていくと思う。それが私の過去の経験なので、今の若い従業員にも、ぜひとも積極的に難しい仕事にチャレンジしてもらいたいと思っているし、経営者として若い人たちにどんどんそういう機会を与えていけたらいいなと思っている。そういったことを通じて、銀行で働く生きがい、醍醐味をぜひ経験をしてほしいと思う。


(問)
 改めて、会長から最後に一言お願いしたい。
(答)
 この1年間、全銀協会長を務めるに当たり、ここにお集まりのマスコミの皆さまをはじめ、全銀協の事務局、会員各行、そのほか多くの皆さまからご指導、ご協力を頂戴した。今回が2回目の全銀協会長であったが、こうして無事に最後の会見を迎えることができたのも、皆さまのおかげであり、この場を借りて厚く御礼を申しあげる。
 冒頭にも申しあげたが、来年度は日本経済がデフレからの脱却を果たし、持続的な成長軌道に復帰していくための極めて重要な1年となると思う。そのようななか、来月から、三菱東京UFJ銀行の小山田頭取が会長に就任されるわけである。
 小山田頭取のことは、昔からよく存じあげている。人格、識見ともに大変優れ、全銀協活動のご経験も大変豊富で、全銀協会長として卓越したリーダーシップを発揮していただける方だと思う。
 わが国銀行界は、金融仲介機能のさらなる発揮と健全な金融システムの確保、国民の安定的な資産形成の実現、わが国の生産性向上に向けたさらなる決済の高度化、国際的な金融規制改革への対応など、引き続き数多くの課題に直面している。また、海外発の政治・経済イベントの結果次第では、先行きの不確実性が高まる可能性もあるなど、極めてボラティリティの高い環境下ではあるが、小山田頭取はご経験豊富であり、銀行界をしっかりと舵取りしていただけると確信している。
 私どもとしても、今後、小山田新会長の下で一丸となって、銀行界の発展、そして日本経済への貢献のために取り組んでいきたいと決意を新たにしているところである。
 最後に、小山田新会長への皆さまからの一層のご支援を心よりお願いし、私からのお礼の挨拶とさせていただく。1年間ご支援いただき、誠にありがとうございました。

以上