平成29年7月13日

平野会長記者会見(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)

髙木専務理事報告

 事務局から2点ご報告申しあげる。
 本日の理事会において、お手元の資料のとおり、平成30年度税制改正の要望書を取りまとめた。今後、関係先に対し要望書を提出し、要望の実現に向けて働きかけてまいりたい。なお、本件に関する内容については、会見終了後、事務局までご照会いただきたい。
 また、当協会が事務局を務める「オープンAPIのあり方に関する検討会」において、今般、銀行界、IT事業者、FinTech企業、学識経験者、弁護士、消費者団体、関係当局等の幅広いメンバーによる討議の成果として、手元の資料のとおり報告書を取りまとめた。なお、本報告書は、本年3月に中間的整理案として公表したものを、本年5月の改正銀行法成立等を踏まえて改訂したものである。

 

会長記者会見の模様


 ご質問を受ける前に、私から九州の豪雨について一言申しあげたい。
 福岡県、大分県を中心に発生した集中豪雨によって、広い範囲で甚大な被害が生じている。まずもって、お亡くなりになった方々に心よりお悔やみを申しあげるとともに、ご家族を亡くされた方々、家屋をなくされ避難生活を余儀なくされている方々など、被災された皆さまに心からお見舞いを申しあげる。そして、被災された方々が通常の生活をとり戻されるとともに、一刻も早く被災地域が復旧・復興を果たすことを心からお祈りする。
 私ども銀行界としても、7月7日金曜日に、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の利用周知および相談への対応等について、会員行に通達を発信したが、被災された方々および被災地の復旧・復興に向け、可能な限りのサポートを行っていきたい。


(問)
 一つ目、金融庁が先に公表した金利リスクの管理強化について、導入された場合に地銀などで具体的に対応を迫られる金融機関があるのかどうかを含め、会長の所見を伺いたい。
(答)
 ご指摘の件は、監督指針の一部改正案についてだが、その具体的な内容は、国内基準行については、早期警戒制度において金利ショックによる影響額が自己資本の20%を超えるか否かという重要性テストを新たに設け、この閾値を超過した銀行については、追加的な影響分析によって、深度ある対話を行うかどうかの必要性を判断するということである。すなわち、第1に重要性テスト、第2に追加的な影響分析、第3に当局とのコミュニケーションというステップを通じて、最終的に改善対応が必要かどうかが判断されるという、重層的なモニタリングの枠組みを導入することが提案されていると承知している。
 国内におけるマイナス金利など、資金運用の環境が厳しさを増すなかで、メガバンクだけでなく、地銀においても国債のみならず外国債券等での資金運用の割合が増えてきており、金利ショックによる影響額が相応の水準に達している銀行もあるのではないかと思われる。そして、そのような銀行に限らず、監督指針の今回の一部改正案を踏まえ、市場の環境の変化に柔軟かつ迅速に対応したリスク管理を各行が整備し、高度化していく必要があるだろうと考えている。


(問)
 日銀の金融政策について、ETFの買入れを倍増させてから間もなく1年になる。日経平均が2万円台を回復するなか、ETF購入の初期の目的は果たしており、むしろ市場をゆがめているとの指摘もあることについて、会長の所見を伺いたい。
(答)
 そもそもの経緯を振り返ると、日銀によるETFの買入れは2010年10月、リーマン・ショック後の新たな金融緩和の一環として開始された。その目的については、導入当初に、当時、日銀総裁であった白川氏は、「日銀が買入れを行うことによって、幅広い投資家の買いが増えていけば、価格形成にプラスの影響が出て実体経済にもプラスの影響が及ぶ」と述べている。さらには、市場の期待収益率は、リスクフリーレートとリスクプレミアムからなるが、このリスクプレミアムが高過ぎるのではないか、この「リスクプレミアムの縮小」を促す効果があるのではないかとの説明をされた。
 今もご指摘のとおり、当初2010年10月には、日経平均は1万円を割る水準だったが、その後2012年末から大きく回復して、アベノミクスが始まった2015年半ばには2万1,000円弱まで上昇。一時落ち込んだが、足元では2万円台に乗っている。
 株価は、本来的には企業の収益力あるいは成長性、将来にわたるキャッシュフローを反映するものだが、現在の株価の上昇は、主には内外経済の回復、あるいは過度な円高の是正に伴う企業業績の改善を反映したものと見てもいいと思う。ただし、確かに、一部では日銀によるETFの買入れが投資家の安心感を醸成している、すなわち、白川氏流に言えば、リスクプレミアムの縮小を通じて株価を押し上げた効果も確かに現れているだろうと思う。
 ただ、これもご指摘のとおり、一方でさまざまな課題も指摘されている。その一つは流動性の低下である。日銀の保有比率が大きい銘柄あるいは浮動株が少ない銘柄は、価格変動が大きくなってしまうことに加え、そもそもETFの組成に必要な株が不足するのではないかとも言われている。
 2点目は価格形成のひずみと言ってもいいかもしれない。日銀の買入れ対象となるETFは、もともと日経平均連動型が主体だったが、それ以外にもTOPIX連動型、JPXの日経インデックス400連動型とある。しかしながら、時価総額のウエイトでETFの買入れを行っていくと、どうしても時価総額が大きい日経平均の連動型が高くなり、日経平均株価が結果としてTOPIXをアウトパフォームするという結果になりがちである。この点については、日銀もその弊害に気づかれていて、昨年9月の決定会合で買入れ方式が変更され、TOPIX連動型を増やすようになっており、ひずみは修正されつつあるのではないかと思う。
 3点目は、コーポレートガバナンスのゆがみということが最近言われており、日銀の持っている株が対象企業の株主名簿の上位に出てくることもあるのではないかという指摘である。
 したがって、さまざま考慮はしてきているが、日銀のETFの保有額、あるいは市場におけるシェアが高まっている状況に即して、今申しあげた三つの点を極力回避できるようなかたちで、今後いかに買入れを行っていくか、少し気が早いかもしれないが、その先、出口戦略となった場合に、市場への影響を極力少なくするかたちでETFの買入れが縮小できるのか、市場との対話を進めながら考えていく必要があるのだろうと思う。
(問)
 確認だが、日銀のETFの買入れの課題で、「回避できるように」というのは、弊害が出ないように日銀も努力はしているが、ただ、もっとより工夫をすべきなのではないかという趣旨か。
(答)
 今後ETFの買入れをさらに進めていくなかで、新たな課題が浮上すれば、それに対して対応をしていくということだと思っている。


(問)
 東芝についてお伺いしたい。現在、東芝は債務超過を解消できるように半導体事業の売却を計画し、先般、革新機構が率いるコンソーシアムを優先交渉者と定めているが、資金を東芝に貸している銀行としては、このコンソーシアムが東芝の売却先となることを専ら望んでいるのか、それとも融資の返済あるいは東芝の今後の事業の継続性が担保されるなら特にどことはこだわらない、例えばウエスタンデジタルや鴻海でも構わないのか。
 もう1点は、現在東芝の半導体事業の売却というのが既定路線となっているが、安値で売却先を見つけるより、仮に上場廃止になったとしても、成長性の見込める事業であり売却せずに持っておくという判断を東芝がするとしても、それは与信の判断に特段影響ないものと考えてもよいのか。
(答)
 前回もお断り申しあげたが、個社の話題についてはこの場で、すなわち全国銀行協会の会長としてコメントすることは基本的にしない。
 ただ、東芝については日本の産業あるいは経済に与える影響が大きな問題であるため、若干、協会としてではなく個別行として、かつ一般論としてお話をする。
 個別的なご質問を2点いただいたが、それらを考えるときに、どの思考回路で私どもは物事を判断していくのかという、その材料を少しお話ししたいと思う。
 東芝は、まず資本不足の問題がある。さらには資金面での課題もあるということでメモリ事業の売却を決められたわけである。ただ、ご指摘のとおりウエスタンデジタルが今仲裁を申し立てている、それからさらには昨年度通期決算についてまだ監査が終わらないということで、なかなか厳しい状況にあることは間違いないと思う。
 そのようななかで打ち出しておられる方針としては、今話題になったメモリ事業の売却も含めた財務体質の強化、それからこれはすでに実現しているが、将来の事業リスクを遮断するという意味でウエスチングハウスのチャプター11の申請を行い、さらにはガバナンス体制の再構築ということで、正しい方向に向かっておられるのだろうと思う。
 したがって、そうした基本的な方針に即して、ぜひこれからも取り組んでいただきたい。株主、投資家、あるいは貸し手、当然ユーザーもそうだが、さまざまなステークホルダーに納得感を与えられるような、経営体制と事業の建て直しをやっていっていただきたいと考えている。
 個別行としても東芝にはぜひ立ち直っていただきたいと思っているわけで、これからの経営のご努力、あるいは主力銀行との協議などの状況もしっかりと見守りながら判断をしてまいりたいと考えている。


(問)
 カードローンで2点お尋ねしたい。一つ目は、自前の調査ではあるが、カードローンの口座数、融資残高を増やすことを支店や行員の評価対象にしている銀行が6割くらいあるという調査結果を得た。こういう姿勢や状況は、会長が言うニーズがあるから貸付を行うということや、金融庁が求めている顧客目線というものに相容れないのではないかと思うが、どのようにお考えか。もう一つは、5月末までのデータで自己破産の件数が引き続き前年に比べて増えている。今、全銀協でいろいろ対策を打ったり練ったりしているわけだが、今後このマクロの統計がどのように推移するのか、あるいは影響していくのか見通しを教えてほしい。
(答)
 ご指摘のような業績目標、あるいは業績の評価ルールというのは、各行がそれぞれの経営戦略や事業戦略にもとづいて策定しているわけであり、全銀協としてそれを把握しているわけではない。ただ、一般論として言えば、カードローンに限らず、事業会社である以上は、それぞれの事業、施策について計画を立て、目標を設定して事業運営を行うのは一般的だろうと思う。さらには、その担い手となる営業拠点、場合によっては個人に対してそのような目標を設定すること自体は誤っていないと思う。
 問題なのは、今もご指摘があったが、お客さまのニーズに沿った業務運営が徹底されるかたちで目標設定、業績評価がなされているかどうかだろうと思う。したがって、どの事業でも同じだが、マーケットリサーチをきちんと行い、予想されるお客さまのニーズを捉えて、それに対応したサービスを提供する態勢がしっかりと構築されているかを確認したうえで、計画を策定し、目標を設定する。言葉を換えれば、資金ニーズのあるお客さまに返済能力のある範囲内でしっかりとお応えすることを通じて健全な消費者金融市場を育成していく、これがカードローンの目的であるので、それを念頭に、適切な目標や計画が設定されることが重要だと考えている。
 2番目のご質問だが、先月、私ども全銀協の取組みについてはお示ししたとおりである。3月に申し合わせを行い、5月にはアンケートを実施し、その結果を一部公表するとともに、会員各行には詳細なフィードバックを行った。そのなかで、各行のカードローン業務については一部行き過ぎがあったのではないかと私自身も考えており、現在は、会員各行が、配慮に欠けた広告の見直しであるとか、審査態勢の整備など、先ほども申しあげた銀行界での申し合わせに沿って対応を行っているところだと考えている。実際、先月公表したアンケートを見ても、そうした取組みがスタートしていることはうかがわれる。ただ、まだ完了はしていないと思う。したがって、全銀協としても会員各行における適切な業務運営に向けた取組みの進捗を確認しながら、今年の秋以降には再度アンケート調査を実施するなど、必要なアクションをとっていきたいと考えている。
(問)
 一部の銀行では目標がノルマのように現場に与えられているところもあるようだが、今の話からすると、目標が適切な水準であれば特に問題ないのではないかという考えか。
(答)
 適切な目標は事業計画の基本だと思う。ただ、それが本当に適切かどうかがポイントであるので、先ほどから申しあげているような、お客さまの目線に立って、必要な資金をご返済いただける範囲内でお借入いただくという事業活動ができているのかということは、事業者として各行が常に留意すべき点であるということを申しあげている。


(問)
 今日もオープンAPIのあり方の報告書が出ているが、銀行にとってFinTechベンチャーとの連携が不可欠になっていると思う。一般論になるかもしれないが、改めて銀行業界にとって彼らはどういう存在なのか。欠かせない存在になりつつあるのか、今後もより重要性を増していくのかどうかという話をお聞きしたい。
 あと、個社の話になって非常に申し訳ないが、三菱UFJフィナンシャル・グループとしてもデジタルアクセレレーターなどでベンチャーの支援をされていると思うが、今後出資を拡大していくとか、より支援を広げていくようなつもりはあるのか、お考えをお伺いしたい。
(答)
 まず最初のご質問に関して、私ども金融の世界では、いわゆるディスラプターと言われるようなIT企業群が現れて、既存の金融商品やサービスを分解してばらばらに提供する、いわゆるアンバンドリングの流れがまず先行した。しかしながら、最近では新しいインターフェースの技術などを利用して、そうした一旦分解された商品やサービスを組み立て直して、より付加価値の高い商品サービスを提供するリバンドリング、つまりもう一回バンドルし直すといった動きに流れが変わってきていると思う。したがって、金融機関とFinTech企業との関係は、当初考えられたような競合というよりは、むしろ連携あるいは提携によって一緒になってお客さまに利便性の高いサービスを提供していく、言わばパートナーとしての関係を構築しようといった動きが加速していくのだと思っている。
 言葉を変えれば、複数の企業が事業分野をまたいで協調して活動することで、新しいビジネスを生み出していくという動き、最近の言葉で言えばエコシステムが新たに形成されていくことになると思う。こうしたエコシステムをつくっていくなかでは、やはりインターフェースを通じて技術やサービスがお互いに連携し合うことが重要である。今年5月の銀行法の改正で、FinTech企業等の電子決済等代行業者と銀行双方に、オープンAPIの体制整備に努めることなどが盛り込まれたわけだが、これは制度面でも後押しをしていただいているということで歓迎している。したがって、協会としては、会員各行がこうした仕組みを積極的に活用して、銀行とFinTech企業のタイアップによるさまざまな好事例を生み出すことで、FinTech企業との連携、オープンイノベーションを通じて安心・安全でかつ利便性の向上につながるような商品サービスを作り出していきたいと考えている。
 2番目のご質問は個社の話なので、ここで詳しくは申しあげないが、ご指摘のとおりで、私どもはここ数年来、この分野に力を注いできている。とりわけフィナンシャルイノベーションをどうやって促進するか、日本だけでなく、シリコンバレー、ロンドン、シンガポール、各地に展開をして、そこでネットワーキングを広げるとともに、さらに私どもが主体となって新しいFinTechカンパニーを発掘し、育てていくことを考えている。その一環がアクセラレータープログラムと呼ばれるものであり、ご応募いただいたなかから、将来性があるFinTech企業を選び、リスク管理、コンプライアンスなどの経営上のノウハウをご提供申しあげることで、FinTech企業の育成の加速、アクセラレーションにつなげていきたいと考えている。
 そうしたなかで、実際、私どもの子会社であるカブドットコム証券と提携して、比較的規模の小さな上場会社のアナリストレポートを、AIを活用して作成する新しいサービスの提供も始める。
(問)
 銀行業界も当然グローバル化もあり、メガバンクとはいえ、やはりFinTechを進めていくことが生き残りにつながっていくという思いでやられているのか。
(答)
 FinTechというか、デジタライゼーションがキーワードだと思う。世界の金融は今、大きく変わろうとしている。長期的な世界経済の低成長、あるいは規制の強化のなかで、いかにして新しいビジネスを生み出すかが一つ。もう一つは、いかに効率的にビジネスを行っていくか、業務を運営するかといったいわゆる生産性の向上につながる領域。そして三つ目は、規制に対する対応。これはレギュレーションテクノロジー、RegTechと呼んでいるが、そのような分野でもテクノロジー、とりわけデータの解析、AIの活用ができる。大きく言えば今申しあげた三つの分野でのデジタル技術の活用が、将来の金融機関の成否を左右する、そのような意味合いを持ってくるのではないかと考えている。


(問)
 英国のBrexitへの対応について伺いたい。離脱交渉が進むなかでシングルパスポートへの対応として、英国以外の主拠点の選定の動きが広がっていると思う。離脱交渉自体に不透明感があるなかで、金融街として成熟していたロンドン以外に拠点が分散してしまう、この影響についてどのようにお考えかお聞きしたい。
 併せて、個社の話になるが、ドイツのフランクフルトを選ぶ金融機関が日本または英国などで多いと思うが、そのなかで御行はアムステルダムを選定されているが、これは不利にはならないのか。
(答)
 Brexitに伴う欧州での金融事業の展開をどう行うか、これは金融だけでなく各産業においてもそれぞれが検討しているところだと思う。
 ただ、私ども邦銀の場合は、従来ロンドンへの集積度が他産業に比べて高いので、ユーロパスポートによる大陸EU圏へのアクセスが失われるのは影響が大きく、これはマイナスである。つまり、従来はロンドンというハブから大陸にビジネスマーケティングを行い、そこで成約した案件の記帳をロンドンで行い、そしてリスク管理を行うということができていたものが、今後のBrexitのあり方いかんでは、イギリスに加えてもう一つそうした機能を持たなければいけないということにもなりかねない。事態はいまだ流動的である。多くの世界の金融機関、G-SIBsは、それでもロンドンに極力多くのリソースを残しつつ、その一部を極力軽量化したかたちでEU圏内に移すということを考えている。場合によると、事務などは東欧へ持っていくことも含めて、さまざまな動きがある。したがって、Brexitの日程もにらみながら、どの都市を選ぶのか、どのような事業体制を選ぶのかといったことをこれから決めていかなければいけないということだと思う。
 個社の話はここであまり細かく申しあげないが、一般論としていえば、各社のビジネスモデルによって、おそらく選びとる選択肢は変わってくるし、仮にユーロパスポートを取得するための拠点をある一つの都市に置くとしても、そこから支店展開をするという方法もある。したがって、そのようなさまざまな選択肢を今、各金融機関が検討しているところだと承知している。


(問)
 仮想通貨についてお伺いしたい。今年4月から改正資金決済法で仮想通貨が公的に認められる存在になり、7月からは消費税も非課税になるということで、大分普及の素地が整ってきていると思うが、銀行界としてこの仮想通貨を現状どう見ているのか教えていただきたい。
 併せて、三菱UFJファイナンシャル・グループはMUFGコインという似たようなものを考えているが、これのポイント、考え方を教えていただきたい。
(答)
 今年4月に施行された改正資金決済法により、日本においても仮想通貨が支払手段として位置づけられた。これに伴い、7月からは仮想通貨の譲渡の際、消費税が非課税になった。また、今回の法改正のなかで、仮想通貨交換サービスを行う事業者に対する登録制の導入や、取引時の確認義務が明記されたことで、これまで課題と考えられていた利用者保護、あるいはマネー・ローンダリング対策に対しても一定の対応がとられたと考えている。その結果、仮想通貨の安全性あるいは信頼性が高まることが想像される。
 こうしたなか、日本でもビットコインをはじめとする仮想通貨を決済サービスとして導入する商業施設が徐々に拡大しており、今後、こうした仮想通貨の利用が一定程度拡大していくことは間違いないのではないかと考えている。
 一方、課題は従来から三つ指摘されており、一つ目が仕組みや運営に対する信頼性の問題、二つ目が過度な価格変動、 三つ目がマネー・ローンダリングを含む悪用のリスクである。これらを今後どう解決していくかが、今回の法改正の後にも残る課題ではないかと思っている。
 私どものMUFGコイン、これは個社の話なのであまり詳しく説明しないが、簡単に申しあげると、前述の三つの課題を解決するようなデジタルカレンシーであり、幅広く使っていただくようになればと考えている。
 一つ目の運営あるいは仕組みに対する信頼性については、私ども三菱UFJフィナンシャル・グループが運営するということである。二つ目の価値の変動については、基本的に1円=1MUFGコインということで価値の安定性を保証する。三つ目のマネー・ローンダリング、あるいはテロリスト・ファンディングに対する備えについては、私どもが銀行としてしっかり対応していく。
 今後、MUFGコインが社会的なインフラとしても幅広く活用されることを、私どもとしては期待したいと考えている。


(問)
 改正組織的犯罪処罰法の施行に関連して、マネー・ローンダリング対策で伺いたい。今回の組織的犯罪処罰法の施行は、FATFの審査のなかでどういう位置付け、意義付け、役割を担っているのかをご説明いただきたい。
 もう一つ、今後、第4次審査に向けて体制整備が求められるが、その時間軸と現在における金融界あるいは国の取組みとしての課題を会長はどのように認識されているのか教えていただきたい。
(答)
 今回施行されたいわゆるテロ等準備罪を含む改正組織的犯罪処罰法というのは、国会でも説明されたが、今のご指摘のとおり、FATF(Financial Action Task Force)の勧告で参照されている国際組織犯罪防止条約、いわゆるパレルモ条約を締結するための国内法整備という色彩がある。したがって、今回の法改正の成立を受けて、パレルモ条約を日本が締結することができれば幾つかの点、すなわちFATFの40項目にのぼる審査事項のうち、いわゆるマネー・ローンダリングの犯罪化、外国からの要請による資産凍結、外国当局との情報交換を含めた国際協力に参加する等の5項目の履行状況が改善されると認識している。FATFの審査上はプラスということである。
 ただ、今もご指摘があったとおり、平成31年に予定されているFATFの第4次審査では、政府レベルでの法整備状況だけではなく、我々、事業者レベルの対応が求められる。政府による制度設計に加えて、制度がきちんと働いているかという、いわゆる有効性の審査が事業者に対して実施される予定であり、この目線はかなり高く、私どもとしてもしっかり対応する必要があると思っている。かなり負荷が高いと覚悟している。しかしながら、銀行界にとってはさまざまな局面で資産の凍結、経済制裁というのが最近話題になっているとおり、マネー・ローンダリング、あるいはテロ資金の供与の防止は国際社会の合意でもあるし、国際的な安全保障にとって欠かすことのできない要請であり、私どもも大きな責務と捉えて、しっかり取り組んでまいりたいと思っている。


(問)
 二つお伺いしたい。一つは、相談役と顧問の制度についてだが、ガバナンスの透明性向上の観点から政府の未来投資会議などでも、より透明性を高めるための見直しや、産業界でも廃止や削減の動きが出てきている。銀行界もしくは個別行として、この動きをどう受け止めているのか。また、今後の対応策をどう考えているのか。
 二つ目は、昨年のプライマリーディーラーの資格返上から1年が経った。国債を取り巻く環境は当時から変わった部分と変わっていない部分があると思うが、改めて振り返って、当時の判断をどう受け止めているか。
(答)
 まず、1点目は、相談役や顧問の方々が何をしているかというのがポイントだと思う。全銀協の意見ではないが、一般的に見て、銀行界に限らず日本の産業界では、相談役や顧問にはおそらく三つ役割があるのだろうと思う。一つ目はビジネス、経済活動であるが、そのなかで二つあり、一つは個社における活動、もう一つは団体における活動だと思う。個社における活動というのは、社外取締役や監査役などがあたるが、この比重はかなり高いと見ている。もう一つは、経済団体あるいは国際的な組織における活動などがこの範疇に入ると思う。
 二つ目は社会貢献である。財団などの理事を務めるとか、任意の団体を含め、各企業の社会貢献活動の延長線上として、また、場合によっては、お客さまの要請に応えているケースも多いと思う。
 三つ目は営業支援だと思う。例えば、冠婚葬祭も重要な仕事であるし、また、昔からのお客さまとのリレーションを維持していくことはまさに営業サポート機能だろうと思っている。
 未来投資会議で、特に退任した社長やCEOが就任する相談役や顧問等について、氏名、役職、地位、業務内容などを開示する制度を、東証において、今年の夏ごろをめどに創設し、来年初頭をめどに実施する話が出ている。私は、そもそもコーポレートガバナンスは、コーポレートガバナンス・コードなども踏まえたうえで、社外取締役にも積極的な役割を果たしてもらい、取締役会での議論をしっかりと行い、それを執行に反映させ、実効性のある態勢をつくることで評価されていくのだと思う。そのような考え方の下、相談役や顧問の位置づけ、役割について、今後明らかにしていくことが大事なのではないかと思っている。
 二つ目の三菱東京UFJ銀行のプライマリーディーラー返上については個社の問題のため、詳しくお答えすることは控えたい。返上後の国債の市場に目を向けると、日銀による多額の国債の購入もあり、市場の流動性は薄くなっているが、そのなかにおいて三菱UFJフィナンシャル・グループの証券会社が、プライマリーディーラーとしては、公表データで見る限りは最大のシェアであり、かつ保有者としては、三菱東京UFJ銀行が主要行等のなかで最も大きく安定的に残高を保有していることだけ、事実としてお伝えしておく。


(問)
 アベノミクスが始まって4年、景気は拡大局面が続いているが、勢いが欠けるせいなのか実感に乏しいという声がよく聞かれる。日銀が掲げる物価目標もまだ達成は見えてきていないし、人手不足がこれだけ言われているが、賃金の伸びもそれほどではない。アベノミクスは自民党内でも最近検証する動きも出ているが、会長自身から見て、今改めてアベノミクスをどう評価され、課題はどこにあるのか。目標としてデフレ脱却と財政再建の両立と言ってきたが、そこから今どれぐらい乖離してしまっているのか。
(答)
 振り返ると、アベノミクスは第1の矢として大胆な金融緩和、第2の矢として柔軟な財政政策を掲げ、そのうちの第1の金融政策は大きな効果を発揮したと思う。政権発足前の2012年11月には、ドル・円は81円台だったが、これは行き過ぎた円高だと誰もが思っていた。かつ、政権発足前の3年間をとってみると、平均でマイナス0.4%という消費者物価上昇率の下で、いわゆるデフレマインドが蔓延し、日本経済が停滞していたということは記憶にそう遠くなく、そういった流れに大きな変化があったことは間違いないと思う。また、第3の矢と言われる成長戦略についても、法人実効税率の引下げや、また、TPPは当初のかたちでは実現しなかったが、欧州とのEPAやTPP11という、かねてからの課題であった地域的な経済協定にも非常に積極的に対応してこられた。このような課題に対して的確に対応されたことは評価されるべきだと思う。
 そのようななかで企業業績も改善し、金融を除く企業の経常利益は、昨年度、リーマン・ショック前のピークを2割以上上回る水準になった。今年の5月時点の有効求人倍率は1.49、完全失業率3.1%と、世界の中でも雇用情勢は好転していると思う。株価については、先ほどお話しさせていただいたとおりである。
 ただ、企業業績と雇用の改善が、企業による投資や個人の消費といった、いわゆる支出を力強く拡大させているかというと、まだそこまでは行っていない。したがって、安倍首相が言う景気の好循環も道半ばと見なければいけないのだと思う。
 これをどうやって解決していくかだが、当初から言われているとおり、企業と家計の根本的なマインドを変えていくことだと思う。具体的には、第1に日本の国内経済の生産性向上や規制緩和といった成長戦略をさらに加速させることによって、企業の将来の成長への期待を上げる。第2に、社会保障制度の改革により、家計・個人の皆さまの将来に対する不安を和らげる。第3に、財政のサステナビリティ、つまり財政健全化にも粘り強く取り組んでいく必要があるだろうと思っている。


(問)
 個社の話で恐縮だが、東芝について伺いたい。先ほど、再建のあり方として、メモリ売却を含めて、当初の基本方針に沿ってやっていただきたいという話があった。一方で、政府の一部や市場のなかでは、上場廃止を容認する声、一旦廃止してもまた再上場を目指せばいいというような見方もあるようだが、これに対する見解を伺いたい。
(答)
 個社の具体的な話ではなく、一般論でお答えすれば、基本的に東芝という企業が将来に向けて持続的に成長していけるかどうかということを、今、東芝が持っているリソース、それは人、技術、財務、資本であり、それらをもとにして組み立てていく、そういうことが重要ということだと思う。メモリ事業の切り出しに関して言えば、財務の健全化に資するということもあると思うが、それと併せて、メモリ事業は大きな市場でのボラティリティーを伴う価格変動の激しい事業であり、それに必要な資金を現在の東芝の財務体力で支えられるのかという問題があったと思う。そうではないということが言えるのであれば、それはよいのかもしれないが、そのような枠組みのなかで考えていくのがよいのではないか。
 したがって、上場廃止になっても持ちこたえればよいかどうかということについての具体的な考えは持ち合わせていない。今申しあげたように、企業としての持続的な成長が確保されるかどうかを機軸に考えるべきであろうと思っている。


(問)
 LIBORの代替指標について。先日、アメリカでトレジャリーのレポレートを使ったものがLIBORの代替指標として決定されたが、これはARRC(Alternative Reference Rates Committee)が望むように、本当にLIBORに取って代わるものになるのか。一つは、レポレートは有担保のオーバーナイトに使われるものだが、LIBORは無担保で、かつテナーもオーバーナイトから12ヶ月まで多岐に亘るので、本当に市場で受け入れられるのかということと、二つ目はLIBORと比べてプロコンを教えてほしい。
(答)
 技術的な質問だが、あまり長くならないように申しあげたい。ご指摘のとおり、主にデリバティブ取引における米ドルのLIBORの代替指標として、トレジャリーのレポのファイナンシングレートが選定された。これは、いわゆるLIBORの不正操作問題を踏まえて、2014年にFSBが公表した報告書で求められた対策である。報告書では、LIBOR、EURIBOR、TIBORといった、いわゆるIBORと呼ばれている既存の金利指標の改革と併せて、主要な通貨、米ドル、ユーロ、日本円などについては、銀行の信用リスクを含まないリスクフリーレートに近い金利指標を選定すべきだということが言われた。ただし、この報告書のなかでは、多くのデリバティブ取引にはリスクフリーレートを構築して用いるが、融資などの取引に利用されるLIBORやTIBORなどのIBOR、すなわちインターバンクのレートは、引き続き指標金利であることを前提に改善することが提案されている。これはマルチプルレートアプローチと言われている。要するにベースレートが幾つかあるということなのだが、今回アメリカが本件を決めたことで、リスクフリーレートは主要5通貨、ドル、ユーロ、円、ポンド、スイスフランで用いられることが決まった。なお、貸出についても同じようにリスクフリーレートを使うということではおそらく無く、この点留意しておくことができればと思う。仮にリスクフリーレートを使うと、これはレンダーにとってはかなり厳しい状況になると思われる。


(問)
 米国の銀行が連合を組んで、ゼル(Zelle)と呼ばれる個人間送金の仕組みを開発してスタートさせている。日本では、例えば全銀協が音頭をとるなりして、そういうものをやろうという考えがあるのかどうか教えていただきたい。
(答)
 今、アメリカでは、いろいろな小口送金のサービスが展開されている。何故これがアメリカでここまで注目されているかというと、日本のような優れた送金システムがなかったからだと思う。アメリカでは小切手を送っている。したがって、その不便を解消するためにさまざまなサービスが提供されているということである。
 今、ご指摘があったゼル(Zelle)というのは、大手・中堅銀行が30行ぐらい参加している。個別行の話にはなるが、私どもの米国子会社も、現在、参加を検討している。要するに、電話番号やメールアドレスで送金できるというもので、便利ではある。また、ベンモ(Venmo)も似たような仕組みである。
 日本はどうかということだが、すでに二つ動きがある。一つは、私ども自身が関係しているが、2015年12月の金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告」のなかで、複数の金融機関が参加する携帯電話番号送金サービスの提供が具体的なアクションプランの1項目に入っており、現在、具体的な対応を検討しているところである。
 一方で、全ての銀行ではなくて、アメリカにおけるゼル(Zelle)と同様に、複数の金融機関が参加するコンソーシアムもすでに発足している。まだ実現はしていないが、これも活発に動きがある。したがって、どちらがいいかも含めて、最終的にはお客さまが選ばれることになるが、各個別行としても、あるいは全銀協としても検討を進めていきたいと思っている。


(問)
 先ほどFinTechのところで少し触れられたかと思うが、RegTechについて会長の考えをお聞きしたい。世界中で規制対応コストが非常に高くなるなかで注目されている分野かと思う。特に経済制裁などのチェック等で使われることを想定されていると思うが、現時点でどういう活用方法があるのか教えていただきたい。
(答)
 ご指摘のとおり、金融規制の強化に伴う規制コストは、各銀行で随分違うが、G-SIBsの場合はやはり数億ドル、場合によると10億ドルというようなコストが毎年かかっているといわれている。したがって、このようなコンプライアンスあるいはレギュレーション対応の事務や判断も含めて、テクノロジーで解決できないかというニーズは非常に強い。したがって、先ほど私が言ったなかでも3本目に入っている訳である。
 具体的な活用方法については、私どもも参加しているが、例えばシンガポールの通貨庁、MAS(Monetary Authority of Singapore)が中心になって今進めているのは、アンチ・マネー・ローンダリングについてデータを解析し、AIを使い、疑わしい取引の判断を行う、或いはデータベースを構築するなどの試みが行われている。
 それから、もう一つ、これも私どもの業界の大きな反省だが、LIBORも含めて、従業員の不正行為をモニターするという場合にも活用可能であり、すでにイレギュラーな取引をしていないかを見るのに活用しているところもある。今、市場の取引は高速化しており、それを捉えるのは、なかなか従来の人間の目で対応できるものではない。そういったところで、レギュレーションへの対応策としてRegTechを使っていくということが検討されているところである。
(問)
 手形・小切手の電子化について。先日、金融庁で開かれた官民推進会議で、全銀協として手形・小切手の電子化を力強く言われたかと思うが、その全面移行へのアプローチの一つとして、手形・小切手のペーパーレス化を挙げられた。手形・小切手の電子化、ペーパーレス化のなかで、法的整理の検討が必要とされていた部分があったかと思うが、どのような観点で検討が必要になってくるのか教えていただきたい。
(答)
 やや技術的な話になるが、幾つか検討すべき課題はある。一つだけ申しあげると、今の手形法・小切手法は実は条約にもとづいてできている。1900年代の前半にできた条約にもとづくものであり、これは紙をベースにつくられていると読むのが素直である。例えば手形・小切手の呈示という行為があり、手形交換所が日本全国にある。手形・小切手が電子化されたときに、電子データが飛ぶことで呈示したといえるのか、呈示後に支払い拒絶、不渡りとなったりするわけだが、紙をベースに構築されている現在の手形・小切手のシステムを法制の変更なしに変えられるかどうかも含めて、検討すべき項目はいろいろとあるということである。
 ただし、先ほどから話題に出ているテクノロジーを金融に活用して、極力、効率的なオペレーションを行う、生産性を高めるためには、手形・小切手をなくすというのは非常に重要なことだと思っている。今申しあげた法的な問題以外にも、紙に慣れ親しんだ中小企業の皆さまに対して、本当にご利用いただけるようなものにできるのかなど、さまざまな課題はあるが、ぜひそれを乗り越えて進めていきたいと考えている。


(問)
 相談役、顧問の件で、海外の投資家から会社を離れているという身で、報酬について納得いかないという声や、役職を離れた後にそのかたちで残って経営に関与しているのが納得できないという声も聞かれる。これに対しての考えと、どう透明化していくのか伺いたい。
(答)
 先ほど申しあげた考え方に即して、私どももこれから検討していくわけだが、海外の投資家から報酬について何か言われている感覚はあまりない。
 2点目が大事だと思う。2点目に関しては、経営への関与があるべきガバナンスの姿、先ほど私が申しあげたガバナンスコードにもとづいて社外の意見もきちんと入れながら透明感のある経営をやっていく、これを妨げているのではないかという声がある、と私も聞いている。仮にそのようなことがあるとすれば、決して好ましいとは思わない。私は先ほど三つの機能と言ったが、経営への関与に関して言うと、先ほど申しあげた営業支援はそれに近いかもしれないが、経営へ関与することを望ましい相談役や顧問の役割としてステークホルダーに説明するのはなかなか難しいと思う。また、報酬については、例えば会社のデータへのアクセスであるとか、執務場所の提供であるとか、アシスタントの提供がよくないのではないかという声は国内に一部あるように思う。これは、私はやや見当違いな指摘だと思っているが、それには前提がある。先ほど申しあげたようなCEO、社長を辞めた後、仮にそれが当該会社にとって、あるいは日本の経済界、社会にとって有用な活動をするのであれば、それに対して企業としてサポートを行うのは適切なことではないかと思う。少し言い過ぎかもしれないが、私はモルガン・スタンレーの取締役会のメンバーだが、メンバーにはCEOを辞めた方が多い。アメリカでは彼らは多くが自分で事務所を持っており、秘書も雇っている。あるいは自宅からの電話会議としても大きなデスクから参加してくる。そうした環境も考えると、大事なのは、相談役や顧問の方の活動の内容が、当該企業やそのステークホルダーにとって意味のあるものなのかどうかが機軸になるのだと思う。そして、それが明らかでないというのであれば明らかにする必要があるというのが私の考えである。これは個人的な考えで、全銀協の考えでないことは断っておく。


(問)
 先日、民事再生法を申請したタカタについて二つ伺いたい。優良部品メーカーが大規模リコールで経営が立ち行かなくなるという今まであまり例のない倒産と考えているが、産業を支えてきた金融機関の立場からこの件をどう受け止めているのか。また、今回の件は膨大なリコールが新たなリスクとして出てきたとも思っている。この件を受け、金融機関の与信管理や目利きの点で何か変化はあるのか。
(答)
 繰り返し申しあげているとおり、個社についてコメントするのは難しいため、一般論でお答えする。
 一般的に、お客さまと金融機関のお付き合い、取引は、お客さまの事業に対する深い理解にもとづいて、日常的なコミュニケーションが行われ、課題が出てきたときはそれに対する金融面からのソリューションを提供する、という関係である。したがって、そのような長期的な関係の下でのオープンなコミュニケーションがどこまでできているかが、おそらく、社債投資家ではない銀行の使命であり、付加価値だと思う。
 不幸にして、今申しあげたような実態の把握がなかなか難しい、場合によってはお取引先自身気がついていないこともある。それは、急速な事業環境の変化についていけない、私ども金融機関自身もそれがわからないというケースもある。したがって、私ども金融機関としては、このところ幾つか大きな破綻事例や経営上に非常に難しい課題を抱える企業が現れているわけだが、そういった観点から、マクロの産業動態、規制の動向、あるいは業界における競争環境、私どもはこれをベンチマーキングと呼んでおり、経産省の「日本の『稼ぐ力』創出研究会」でも議論されたが、そのようなデータにもとづいてお客さまと深度のある対話をし、行動をとる、その繰り返ししかないだろうと思う。全ての問題をこれで回避できるとは思わないが、その積み重ねを営々と続けることは、繰り返しになるが、私どもの責任であるし、使命だと思っている。

以上