平成30年1月18日

平野会長記者会見(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)

髙木専務理事報告

 銀行カードローンについて、一般消費者の利用実態や借入に対する意識等を把握することを目的とした「銀行カードローンに関する消費者意識調査」を昨年末に実施し、この度、その調査結果を取りまとめ、本日、全銀協のウェブサイトに公表した。
 質問があれば、会見終了後、事務局にご照会いただきたい。

 

会長記者会見の模様


(問)
 2点伺いたい。
 1点目、2018年の最初の会見なので、まず日本経済全体の見通しについて伺いたい。年明け早々株価がかなり高く推移しており、本日も一時的に2万4,000円台となった。26年ぶりの高値水準となっている。改めて、今年、日本経済は好調にスタートしているが、全体としてどんな見通しを持っているか。
 2点目は、商工中金の問題を伺いたい。11日に経済産業省の有識者検討会の中間提言があり、4年後に民営化について議論をすることが盛り込まれている。あと、危機対応融資の見直しや、ミドルリスクへ注力するという提言があるが、民営化となれば銀行界にも影響があると思う。提言に対する所見をお願いしたい。
(答)
 まず、今年の経済見通しだが、皆さまもご承知のとおり、景気拡大の期間はいざなぎ景気を超えたが、在庫・設備投資循環上の拡大局面に入ったところと見られることに加えて、景気の拡張のペースが緩やかであるということで、景気の過熱によるひずみが蓄積している状況ではない。加えて、企業収益も内外の経済の拡大に伴い、昨年の7-9月の売上高が前年を4.8%上回るとか、海外の現地法人における直接投資収益も1-9月に3割近いペースで増えている。企業が支払う人件費もここ3年拡大を続けており、採用意欲も旺盛であるなど、持続力を備えた成長型の増益を示していると思う。
 今年も、こうした企業の成長型の増益と景気循環が相互に作用しながら、家計の所得改善を通じて消費の押上げにも寄与することで、自律的な景気拡大が続くのではないかと見ている。
 株価は26年ぶりの水準に達したわけだが、PERの水準は26年前とは大きく異なっており、足元の株価は基本的には内外経済の回復や、先ほども申しあげた過去最高水準にある企業業績を反映したものだと見ている。もちろん調整局面はあり得るわけだが、株式市場は堅調に推移するのではないかと思う。
 為替に関しても、概ね1ドル111円から114円のレンジで現在推移しているが、この先も仮に米国の利上げの加速や、あるいは投資家のリスク回避の姿勢が何らかの事情で強まるといったことがない限り、一進一退の動きが続くのではないかと見ている。
 ただし、政治的あるいは地政学的なリスクは存在するし、リーマンショック後から続く世界的な金融緩和が株式を含むさまざまなアセットクラスの価格を押し上げていることは間違いないと思う。これまでのところは政治、地政学のリスク、あるいは金融政策の正常化の動きが実体経済や金融市場に大きな影響を与えることはなかったわけだが、これからも同様であるとは言い切れない。したがって、こうしたリスクが顕在化し、市場の変調につながり、その結果実体経済に影響を与えることがないか、この辺りはよく見ていく必要があると考えている。
 二つ目のご質問の商工中金に関して、あり方検討会での提言の内容は、これまでの全銀協の主張、すなわち「民業補完原則のもと、平時には政府保証があれば民間で基本的に対応可能であり、政策金融機関は中小企業あるいは創業・起業への政策的視点からの資金サポートや、信用リスクの観点から民間企業が十分にリスクテイクできない企業に的を絞るべきである。危機時においても、リーマンショックのような世界的な金融危機や大規模な自然災害からの復旧・復興といった、真に民間だけでは対応が困難な状況に限定されるべきである」という考え方に照らして、方向感に異論はない。
 他方で、政策金融全体を見ると、平時の制度融資で民が対応できる領域や危機時の対応の対象事象の整理などについて、私ども民間金融機関の意見も反映させながら、あり方の見直しの検討が必要ではないかと考えている。そうした観点で、政策金融機関と民間金融機関との間で定期的に意見交換を行い、政策金融機関のガバナンスに民間の声が適切に反映されるような枠組みをつくっていく必要があるのではないかと思っている。
 商工中金に戻ると、商工中金には、今回、民営化に向けて地域金融機関が十分に対応できていない領域に取り組むという、大変チャレンジングなビジネスモデルの変革が求められたが、仮にこれが実行・実現されるのであれば、民間金融機関としても連携して、課題に直面する中小企業へのサポートとか、地域経済の活性化に取り組んでいく。
 繰返しになるが、いずれにせよ地域金融機関との深度ある対話を通じて、商工中金の担うべき、民業圧迫にならない領域を明確にしたうえで、そうした取組みがなされていることを検証していく必要があるだろうと考えている。


(問)
 地銀の再編について会長のご見解を伺いたい。今年も4件ほど地銀の再編が予定されていて、おそらく実現したり、また新たな計画として出てくるものもあろうかと思うが、その際に公正取引委員会の判断が非常に重要な鍵を握っている。公正取引委員会は競争が確保されているかどうかを県単位で見るという考え方を示している。それによると、シェアが非常に高くなってしまうケースも現に長崎県であるわけだが、県を競争の単位として見る合理性や妥当性について、銀行のトップとして実際に他行と競合して戦っているなかで、その範囲の決め方についてのご見解を教えていただきたい。
 もう一つは貸倒引当金の話だが、日銀の統計を見ると都銀ベースで30年以上振りの低水準になっている。これは景気回復が続いているなかでの取引先の経営状況の改善を一面では映していると思うが、一方で銀行がリスクの高そうな先に貸していないのではないか、その裏返しなのではないかという見方もできると思う。この貸倒引当金の水準の低さについてご所感があれば教えていただきたい。
(答)
 1点目のご質問、地域金融機関の再編に関する公正取引委員会のスタンスについてであるが、まず、私どもは公正取引委員会の方針についてコメントする立場にないということを申しあげる。したがって、地銀の再編とは何かということについてお話しすることでお答えに代えたいと思う。一般論としては、地銀が今後持続的な経営を続け、地域の経済、生活を支えることを可能にするための経営上の選択肢の一つということであり、規模の利益や、システム等の重複分野の効率化によってコストを削減するメリットに加えて、お客さまへの価値提供力の向上という点を考えるべきだと思う。例えば、同じ地域内の重複店舗の統合などによって生じた人員を、お客さまの経営コンサルティングや事業性評価を通じた融資、資金仲介だけではない事業仲介機能の強化、あるいは地域をまたいだビジネスマッチングなど、地域に密着した金融をさらに発展させていくための取組みに投入できるのではないかということである。こうしたソリューション機能の提供に当たって、経営統合した双方の銀行のノウハウや事例がうまく融合されて、統合前よりもさらに高度なサービスの提供につなげていくことが大事だと思う。単純なコスト削減だけではなく、そういったお客さまにとってより質の高い、付加価値の高いサービスを提供できるということを十分にご説明し、ご理解を得ることが大切だと思う。再編の形態は広域統合や同県内の統合などさまざまであるが、これは各行の経営戦略、それぞれの地域の状況等に応じて検討されるべきものであり一概には論じられないが、例えば中長期的に見て統合が最有力のオプションであるようなケースをどう判断するか、こういった議論を深めていく必要があるのではないかと考えている。
 平成29年の事務年度における金融行政方針では、金融行政上の課題について、競争のあり方も含めて今後有識者の知見も活用しながら検討していくと記載されており、全銀協としても検討の推移を注視して参りたいと考えている。
 2点目は、貸倒引当金が歴史的に最も低い水準になっているということに関してのご質問だが、貸倒引当金自体は、過去の不良債権の処理に向けた取組みや、足元では景気拡大とそれに伴う好調な企業業績を背景にして、大幅に減少していることは事実だと思う。実際、全国銀行ベースでの不良債権残高比率は2002年3月末がピークで8.4%だったが、昨年9月末には1.2%に大きく低下した。これ自体は銀行の健全性が大きく改善したということだと考えており、また足元の経済環境を見るとこうした状況が当面続くのではないかと考えている。リスクを取れているかどうかということがご質問の趣旨の一つだと思うが、各メガ、あるいは地域金融機関とも事業性に着目した企業評価を行い、あるいは新しい事業分野に果敢に打って出るような企業に対しても、私ども自身も知見を深めて融資やそれ以外のさまざまな資金提供の方法でサポートしていく努力を続けているところである。
 一方で、別の話になるかもしれないが、いずれは景気後退局面が訪れるわけであり、銀行にとっては今後も与信リスクのコントロールがリスク管理上の要であることは間違いなく、したがって、景気の下降局面でも銀行が持っている資金供給能力、金融仲介能力が損なわれることがないように、今後も経済情勢に即した適切な対応が必要だと考えている。例えば、IFRSではフォワード・ルッキングな予想損失モデルが採用されていることなども含めて、国際的な動向もにらみながら、将来への備えについての議論をすることも重要ではないかと思っている。


(問)
 全銀協のホームページで銀行カードローン利用者の実態調査の結果を公表したということだが、会長自身が感じたことがあればお伺いしたい。中でも年収の3分の1ないしは100%を超えるような借入れがあるということと、5割ぐらいの方が銀行側から借入極度の増額の提案を受けていて、金利の低さというよりもたくさん借りられるなら受けようという回答が目立っているように見える。この点も含めて所見を伺えればと思う。
(答)
 銀行カードローンの問題は昨年以来の重要な取組みテーマである。今回の意識調査はユーザーの皆さまのご利用の実態を把握することを目的に、一般の消費者を対象に行ったものであるが、今後、カードローン業務を高度化させていくうえでのさまざまな示唆が得られたと思っている。
 例えば、全銀協が申し合わせた「配慮に欠けた広告・宣伝の抑制」および「審査態勢の整備」という観点から幾つか申しあげると、まず広告・宣伝については、借入先を選択する際の情報源として、多くの方がテレビCMあるいは金融機関のウェブサイト、ネット上のバナー広告などから情報を取得しておられるということである。これを踏まえると、テレビCMやウェブサイト作成時の留意した対応、あるいはアフェリエイト広告の定期的なモニタリングがやはり必要だと思う。
 また、広告・宣伝の印象として、これは今のご指摘にもつながるところがあるかもしれないが、「過剰な借入れに対する配慮や注意喚起がなされていない」という回答が比較的多かったということである。この点、広告等の表示におけるさらなる配慮、あるいは注意喚起に関する工夫が求められていると考えている。
 審査態勢の整備については、銀行カードローンと貸金業を併用しておられる方は、併用していない方に比べて借入額が年収の3分の1以上である割合が高い傾向にある。これもかねてから懸念されていたことだが、過剰な貸付にならないよう、審査における利用者の他業態も含めた債務状況の確認、信用情報機関からの情報にもとづく債務状況の確認、あるいは審査モデルの高度化が引き続き重要だということを示唆していると思う。
 それから、銀行カードローンを利用した理由として、「銀行だから安心であると感じた」とか、「借入れや返済が便利である」など、銀行であることの安心感や利便性の高さが評価されているということであり、やはり銀行として適正な業務運営を実施しているかどうかの自己点検と、必要な見直しの継続が求められていると思う。それに加えて、全銀協としては、全銀協の相談窓口等を通じ利用者に対し各種機関等をご案内差しあげることで多重債務の抑制に努力していきたいと思っている。
 一方で、この場で何度か申しあげたことであるが、銀行カードローンを利用しておられる方の平均年収は、貸金業だけを利用しておられる方より高い傾向にある。資金使途についても、日常の生活費はもちろんであるが、教育費や冠婚葬祭に関する出費など、まとまった資金需要への対応として銀行カードローンを利用しておられるという実態も伺うことができた。詳しい内容は公表した調査結果をご覧いただければと思う。
 いずれにしても、全銀協としては、今回の調査結果だけではなく、今申しあげたような幾つかの示唆も含めて会員行と共有し、会員各行のカードローン業務運営の高度化につなげるとともに、引き続き健全な消費者金融市場の育成に努めていきたいと考えている。


(問)
 口座維持手数料の検討が昨今話題になっているが、紙の通帳を今後も使い続けることについての銀行の負担や今後の課題についてどう考えるか。
(答)
 これは前回も申しあげたが、手数料に関しては各個別行の事業戦略そのものであるので、全銀協という立場でコメントをすることは控えたいと思う。一般論ということであれば、繰り返すまでもないと思うが、サービスを提供する事業者がお客さまにご満足いただけるような高品質なサービスを提供することで、お客さまからサービスに費やしているコスト、そして重要なのは提供価値に見合った手数料をいただく、ということが基本的な考え方だと思う。したがって、各事業者としては、サービスの質と価格の両面でご納得いただけるような、あるいは競争力があるような努力をし、それをお客さまにご理解いただくということであると思う。したがって、手数料のかたちにはいろいろなものが理屈としてはあり得るが、それぞれの商品・サービスの実態、あるいは、利用者、消費者や、法人取引においても、お客さまにとっての価値を十分考えたうえで検討をしていくことになるだろうと思っている。お客さまとの総合的な取引の状況、各個別行の商品戦略、あるいは事業戦略によって、それぞれの金融機関が、それぞれの商品・サービス分野ごとに考えていくということだと思う。基本にあるのは、単純にコストだけではなくて、提供されている価値に着目したプライシングが行われることが重要なのではないか。それが利用者の皆さまから見ても十分納得がいくものだということが大事なのではないか。


(問)
 今の件に付け加えての質問で、一般論として、提供しているサービスやコストに対して料金をとるのは普通だというお考えだったが、今、低金利で銀行の経営が厳しいと言われるなかで、口座維持手数料を導入しなければいけない危機感というか、そのような環境が昔に比べて整いつつあるのか、お考えを教えてほしい。
(答)
 預金口座に関しての客観的な状況を申しあげれば、かつて銀行は、預金いただき、その預金を運用し、預金金利と貸出金利の間に存在する利鞘を収入源とすることで、預金をいただくために必要なコストを負担するというのが一つのモデルだった。しかしながら、今の金融環境下、あるいはしばらく今後も続くかもしれない環境の下で、その前提が変わってきていることは事実だと思う。
 ただし、一方で、銀行の従来のオペレーションコストについても、新しいテクノロジーを使うことでより効率的な事務処理、あるいはサービスの提供を行うことができる可能性も出てきているので、そういった可能性も含めてさまざまな努力をまず銀行がすべきであるし、そういった新しいアプローチによって新たな代替的な手段が提供されるというかたちも当然考えていかなければいけない。これがまさに各金融機関が競うべき領域ではないだろうか。
(問)
 重ねて申しわけないが、もし近い将来に口座維持手数料を導入するとしたら、それは単純に料金をとるというだけなのか、それとも追加のサービスを付与したうえでとるというかたちになるのか、もしイメージがあればお願いしたい。
(答)
 今申しあげたことのなかにも含まれていると思うが、お客さまからご覧いただいた時に複数のサービスがあって、そのなかから選択することができる、かつそれぞれについても納得できるようなプライシング、料金体系が設定されている、ということが大事であろうと思う。これに対しどういったアプローチをするか、これが各金融機関が取り組むべき問題だと考えている。


(問)
 金融庁が取り組んでいる銀行の業態別の法制を機能別に再編する動きについて伺いたい。機能別に再編された場合、多様なプレーヤーが柔軟なサービスを提供することが可能になると思うが、一方で、銀行の預金から資金供与という信用創造の流れが変わってくることも想定される。法の再編の動きを銀行業界としてどのようにご覧になっているか。また、銀行がさまざまな改革をしているが、こうした法の再編の動きに備えるものにもなり得るのかどうか、この2点を伺いたい。
(答)
 まず、金融制度スタディグループにおける議論であるが、FinTechなどICTの技術やデジタルテクノロジーの発達と異業種からの参入によって、金融事業の多様化が進むなかで、ご指摘があった決済、資金供与、資産運用などといった機能に焦点を当てて法制度のあり方を議論するのは、社会的な課題へのソリューションの提供能力や顧客の利便性につながり、こういったサービスを後押しするものになるということであれば、大変に意義のあることだと思う。その際の一つの論点を申しあげておくと、こうした金融業務においては、セーフティネット、例えば銀行の預金の場合は預金保険があるわけだが、そうした意味でのセーフティネットや事業者の財務基盤等を含めた顧客保護のあり方も重要だと思う。したがって、一方でイノベーションの促進、他方で、今、申しあげたような安心・安全への配慮の両方がバランスするかたちで議論が進んでいくのではないかと考えている。
 ご指摘のとおり、今後の銀行のビジネスモデル改革であるとか事業戦略にも大きな影響を与える可能性があるので、十分時間をかけて丁寧な議論を行っていただきたいと思っているし、私どもも議論の状況を見ながら、現場で何が重要なのか、何が起こっているのか、などについても、適宜意見の発信を行って参りたいと思っている。


(問)
 マネー・ローンダリングの対策について聞きたい。金融庁は、昨年12月にマネー・ローンダリングの対策に関してガイドラインを出している。全銀協の加盟行のなかで、マネロン対策についてそれなりに対応しているところ、またそうでもないところ、かなり差があるともお聞きしている。その差を埋めるべく、全銀協として何か施策、例えば勉強会などを考えているのであればお聞かせいただきたい。
(答)
 平成31年にFATFの対日第4次審査が予定されている。今回は、従来の政府レベルでの法制度の整備状況の審査だけでなく、事業者レベルでも対応が求められる、いわゆる「有効性」、すなわち実際に現場でFATFが求めているようなマネー・ローンダリングの対策が講じられているのかということに対する審査も実施される予定である。私ども金融機関自身が対象となるので、しっかり対応していく必要があるということである。
 そういった観点からも、わが国におけるマネー・ローンダリング対策のさらなる高度化ということで、金融庁は「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン(案)」を策定し、先日パブコメ手続が完了した。私ども全銀協としても、会員行の意見を取りまとめたうえで意見発信を行った。
 FATFの第4次審査に向けて、会員各行は、このガイドラインに示されているマネロン等に関するリスク管理の基本的な考え方、ならびに各行の多岐に亘る具体的な業務内容を踏まえたうえで、実効性のある体制整備を行わなければいけない。これは実は結構大変な作業だと思うし、銀行だけでなくてお客さまのご協力、ご理解が必要である。
 全銀協の取組みとしては、金融庁とマネロン対策高度化に係る官民連絡会を設置しようということで、現在協議を進めているところである。今後、マネロン対策に関する国内外の動向の情報交換など、官民一体となった連携体制の強化に努めて参りたいと思っている。それに加えて、いわゆるKYC、本人確認の手続について、ブロックチェーンの技術を活用した実証実験を、昨年開設した全銀協のプラットフォーム上で行うなど、業界として何ができるかについても検討を始めているところである。


(問)
 日立製作所がイギリスで原発の建設を計画し、政府系金融機関やメガバンクが融資をして、政府の公的機関が保証するという案件が報道されている。まず一つは、この事実関係について伺いたい。個別案件については答えづらいところもあると思うので一般論で結構だが、原発建設に融資するリスクは金融機関が背負えるレベルのものなのかどうか、公的な保証がなければ相当厳しいものなのか、その点を併せてお願いしたい。
(答)
 個別の案件についての事実関係等のお答えは差し控える。ただ、一般論として申しあげると、日本に関して言えば、政府が従前から原子力発電関連を含むインフラ輸出の拡大を目指しており、民間企業におけるビジネスモデルや経営判断を前提としつつ、日本政府としての推進姿勢、政府系金融機関や保証機関による支援にもつながるような姿勢を示しておられると思っている。
 そのような日本国政府の方針の下、インフラの輸出案件については私ども民間金融機関としても最大限の貢献をしたいと考えるが、融資の判断に関しては、それぞれのプロジェクトの採算性やリスクに加えて、社会的意義や事業が行われる各国政府・自治体の支援も含めて、総合的に判断していくことになると思う。とりわけ原子力事業に関しては、不確実性がより大きいということも事実であり、各国政府によるサポートに加え、損害賠償制度など、安定的な原子力事業に資する環境整備や、それを含む法的な整備の動向を見極めたうえで判断することになると思う。


(問)
 大きく2点ある。
 まず1点目、働き方改革について教えてほしい。これから春闘も本格化してくる。安倍首相もこれからの国会について、働き方改革国会だと年頭所感で話されたが、その一つとして副業が注目されている。銀行業界としては、銀行員が他の企業に出ていく場合は情報管理の点などが難しいだろうと思う一方、先ほどあったブロックチェーン、AIなどを活用していくうえでは、外部の人材を柔軟に受け入れることも重要になると思う。副業についてどう考えるか教えてほしい。あわせて、まだ日本は雇用の流動性が低いと言われているが、この副業と雇用の流動性について考えを教えてほしい。
(答)
 まず、副業に関するご質問からお答えする。
 政府は、昨年3月に決めた働き方改革の実行計画のなかで、副業・兼業は、新たな技術の開発やオープンイノベーション、あるいは起業の手段、そして第2の人生の準備としても有効だということで、普及を図っていくことが重要だと述べた。それが起点になった議論だと思う。
 一方で、一昨日に公表された経団連の2018年度版経労委報告では、「副業・兼業を受容した結果、社員の総労働時間の増大等を招くおそれもあり、積極的に推奨していくことには抵抗感がある。経営者としては、社員の安全配慮義務を十全に果たし、各種リスクを考慮することが求められているため、自社に適した制度のあり方を労使で慎重に検討していくべき」と書かれている。
 銀行についても、基本的には同じだと思う。働き方改革には各金融機関とも積極的に取り組んでいるところであり、政府が進めている働き方改革の実行計画の趣旨も踏まえながら、各個別行が判断していくことになると思う。
 ちなみに一部の金融機関では、例えば外部人材の採用、特に今ご指摘があったような、従来、金融機関が取り組んでいなかったような分野で、外部の人材を求める場合、兼業や副業をケース・バイ・ケースで認めていることがあると聞いている。今後、それぞれの雇用、職種や求められる専門性を持った人達の市場での採用可能性などを総合的に判断して決めていくことになるのではないか。
 確かに、他業との交流が既存のビジネスを超えた新しいビジネスを生み出す原動力になると私も思うし、そういった観点は重要である。ただ、これが一般化すると、先ほど経団連の報告のなかでもあるような総労働時間の増大し、コントロールができないのではないかという問題もあるので、それらをどう両立させていくかが工夫のしどころではないか。
(問)

 2点目だが、先日来、仮想通貨、ビットコインの価格が急落している。2017年は、仮想通貨市場はビットコインの乱高下に一喜一憂した年であった。「アフター・ビットコイン」という本も売れているようだが、2018年も仮想通貨市場は、ビットコインの乱高下に振り回されるのか。それとも、ブロックチェーンの利活用がもっと根源的な部分で進むのか。2018年の仮想通貨市場、ブロックチェーンの利活用についての考えをお聞きしたい。
(答)
 残念ながら水晶玉を持っていないので、1年後の姿を的確に言い当てるのは難しいが、まず、ビットコインなどが、その仕組み、スキームに内在しているさまざまな課題もあって、かつ、それを利用したいと考える事業者もいることから、投機の対象になっている面があるのは事実であろう。
 おそらくこれが大きく変わることはないのではないかと思うが、一方で、今ご指摘にあった、ビットコインをはじめとする仮想通貨を支えているブロックチェーンの技術、あるいは、デジタル通貨一般に関して言えば、広く決済等にも利用可能なものであり、そのようなデジタル通貨領域での今年のポイントとしては、利用者にとって、いかに使い勝手の良い仕組みができていくかということではないか。
 決済をとって考えてみると、レイヤーが幾つかある。一つはデータの保存やネットワークといった、いわゆるインフラの領域、次は取引決済等を行うプラットフォームの領域、そのうえに取引当事者が実際に利用する商品・サービスという領域、大きくこの三つに分けられる。
 そのなかで、利用者の観点で使い勝手を良くするためには、規格の乱立の防止、あるいはユーザビリティを向上させるために、例えば、ブロックチェーン基盤といったインフラ領域、また、最近話題になっているQRコードの技術仕様といったプラットフォーム領域において、業界が連携・協調を行う。その一方で、具体的な商品・サービス領域に関して言えば、各行が健全な競争を行うなど、業界として協調すべき領域と競争すべき領域を踏まえた議論が進んでいくのではないかということを期待している。


(問)
 基本的な質問だが、「頭取とは」についてお伺いしたい。この「頭取」というクラシカルな響きのするタイトルは、かつて江戸時代は西洋医学所などのいろいろな幕府機関のトップに使われ、あるいは農民一揆の代表も頭取と呼んでいたようだが、現在では銀行だけで使われている。かつてはベリートップが銀行の頭取だったが、今は各社、特にメガバンクは持株会社化して、グループ一体運営のなかで、持株会社のトップに強力な権限を与えているが、頭取の地位というのは、かつてと比べて軽くなってしまったのではないかという気もする。頭取の役割と権限は、昔と今では違うのか。
(答)
 これは全銀協でお答えするテーマではなく、私見を述べる。
 ご指摘のとおり、金融におけるグループ経営が最近進んできているが、その場合の一つのモデルとして、各事業会社、各ビジネスラインが組織の壁を越えて連携し、金融グループとしての総合力を最大限に発揮することでお客さまに質の高い競争力のあるサービスを提供するという方向に向かっていると思う。
 従来は、グループの設立、端的に言えば、持株会社の設立に関する経緯について、言わば子が親を産んだような歴史もあり、銀行中心の運営が一般的だったと思う。
 しかしながら、先ほども少し話題になったが、長引く超低金利、資金需要の低下といった環境下、預金貸出中心の伝統的な商業銀行ビジネスモデルの限界が明らかになるなかで、各金融グループは、新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいる。その一環として、持株会社と傘下のグループ会社の役割やマネジメントのあり方を見直しているものと思う。
 平成28年度の銀行法改正で、共通・重複業務については持株会社で実施できるようになったことも、持株会社の役割を従来よりは大きくするという意味での変化があった。グループ経営に一段と柔軟性が加わったということも、今の動きを後押ししているのではないかと見ている。
 いずれにせよ、各社、各グループが最適なマネジメント体制、あるいは、各業態事業分野とグループ全体の関係をつくり上げていくという、まさにその過渡期に今あるのではないかという見方をしている。


(問)
 今週月曜日にみずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長が退任すると発表されたが、平野会長とは副頭取、頭取、社長と時期が重なっており、競争相手であった。一方、全銀協の場ではお互いに協力し合って、銀行界のためにいろいろ相談してきたと思う。同じ時代を経営者として生きた佐藤社長に対する評価について、どのような言葉をかけることができるのか。
 もう1点は、後任の社長がみずほ証券の社長から昇格するが、平野会長はご存じかどうか教えていただきたい。
(答)
 せっかくのお尋ねではあるが、この場で全銀協会長として、いずれの問いに対しても回答は差し控えたい。全銀協の先輩である佐藤社長についてはとても良い仕事をされたということだけ申しあげたい。


(問)
 口座維持手数料に関して再度お伺いしたい。海外諸外国では口座維持手数料を取ることが一般的である一方、日本国内での例はあまりないが、口座関連に関するコストがどの程度掛かっているかについて、一般の利用者には分かりにくく、導入が難しい要因ではないかという見方もあると思う。例えば、運輸業であれば再配達してくれるドライバーが汗をかいていて申し訳ないと思う一方、銀行口座作成に当たっては、特段のコストは掛かっていないのではないかと見られがちでもある。例えば、印紙税が200円かかるということもあまり知られていないと思う。口座維持手数料を導入するかどうかは個社判断であると思うが、このようなコストについて銀行業界として、全銀協として、実態を明らかにする努力を今後していくのか、会長の考えをお伺いしたい。
(答)
 個社によって当然コストも異なるため、協会として一定の開示ルールを作るということは全く考えていない。いずれにせよ、商品・サービスをお買い求めいただくにあたり、お客さまにどのような情報を提供したうえで、それに見合った対価をお支払いいただくかについて、先ほども幾つかのことを申しあげたが、各行が十分考えていくことが必要ではないかと思う。

以上