Q.確定拠出年金を活用して老後資金

<私、悩んでいます>

「来年50歳を迎える自営業者です。最近、老後が身近に感じると同時に、老後資金のことが心配になってきました。退職金もなく、公的年金も国民年金であることを考えると、老後資金を自分で用意しなければと思っています。そこで、確定拠出年金ですが、リスクはどの程度あるのでしょうか?  これまで運用経験がまったくなく、その点が不安です」(男性/49歳) 

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 運用商品の中身を理解し、積極的に選定する
  • 分散投資とコストを意識しよう
  • 定期的に運用状況を確認し、場合によっては見直しも
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リスクの有無は選び方次第。ただし、老後に備えるにはリスクも必要

確定拠出年金(DC)とは、加入者が金融商品を選んで運用し、将来の年金を自ら確保していくことを目的とした制度です。企業が毎月の掛け金を出す「企業型」と個人が拠出する「個人型」(愛称「iDeCo(イデコ)」)の2つがあります。相談者のような自営業者は個人型DCの利用となり、掛け金の上限額は月68,000円※(会社員や公務員、専業主婦(夫)等は上限額が異なります)。掛け金の拠出は60歳になるまでとなります。

(※)国民年金基金等との合算。

確定拠出年金にリスクがあるかどうかについては、選定する商品によって異なります。運営管理機関となっている銀行や証券会社は、定期預金などで運用する元本確定型から、国内外の債券や株式、REITを組み入れたさまざまな投資信託まで幅広く揃えています(概ね30種類ほど)。加入者は、掛け金の範囲内で自由にそれらを組み合わせますが、元本確定型だけであれば当然リスクはありません。

実際、全体4割程度の加入者が、元本確定型を選んでいると言われています。ただし、その運用利回りは1%未満の低水準にとどまり、将来インフレになれば、元本は減らなくても実質、目減りする可能性もあるわけです。
また、DCは原則、60歳まで引き出すことができません。それをデメリットと見ることもできますが、その代わり、税制面で大きな優遇(自分が拠出した掛金が全額所得控除、利息・配当・分配金・売却益がすべて非課税)があります。その点からも、老後資金づくりに利用したい制度のひとつと言えます。

投資商品の内容や自分のリスク許容度を知ることが大切

では、リスクのある運用商品も含めたDC利用のポイントをあげてみましょう。

まずは、投資商品そのものを理解しておくということ。実は「投資についてよくわからないから」という理由で元本確定型を選ぶ加入者が少なくありません。投資信託の仕組みや運用先による特性、リスクの度合いなどを知ることで、より積極的に商品選定ができるはずです。

次に「分散投資」を行うことです。国内外の債券や株式を一定のバランスで購入することで、よりリスクを抑えることができます。また、日経平均やTOPIXなどの指数に連動する「インデックス型」か、さらに高いリターンを目指す「アクティブ型」など、自分のリスク許容度に合わせて選んでいきます。その際、運用レポート等で過去の実績を参考にすることも忘れずに。

コスト意識を持つことも大切です。DCでは、投資信託にかかる「信託報酬(運用手数料)」が購入から売却までの期間、発生することになります。せっかく運用が上手くいっても手数料が高ければ、実質の運用実績は減ってしまいます。コストを確認した上で商品を選ぶ習慣をつけましょう。

最後に、運用実績については年に4回程度は確認してください。結果が思わしくないようであれば、運用内容の見直し(配分変更、売却・解約による買い換え、など)を検討してもいいでしょう。

個人型DCの掛け金の上限額(月額)

  2024年11月まで 2024年12月以降
自営業者とその家族など 68,000円 ※2 変更なし
企業年金のない会社員 23,000円 変更なし
企業型DCにのみ加入している会社員 20,000円 ※3 20,000円 ※4
企業型DCとDB等 ※1の他制度に加入している会社員 12,000円 ※3 20,000円 ※4
DB等 ※1の他制度のみに加入している会社員(公務員を含む) 12,000円 20,000円 ※4
専業主婦(夫) 23,000円 変更なし

(※1)DBには、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度、石炭鉱業年金基金を含む。
(※2)国民年金基金等との合算による拠出限度額。
(※3)事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金額)が35,000円、DB併用の場合は15,500円を超える場合は、iDeCoの拠出限度額が逓減。
(※4)事業主の拠出額(各月の企業型DCの事業主掛金額とDB等の他制度掛金相当額)が35,000円を超える場合は、iDeCoの拠出限度額が逓減。