授業レポート〔2〕
平成29年11月17日(金)13:25~14:15
本時は投資体験を通して、資産運用など家計資産のマネジメントについて理解を深める授業です。
まず、前時では一人暮らしの家計管理体験を通して「自分の生活に大切なことは何か」を考え、収入の範囲でメリハリのある支出を実行していくことの大切さを学んだことを振り返りました。
続いて、高校卒業以降、どのようなライフイベントがあるか先生から質問があり、「成人式」、「結婚」、「出産」、「自動車の購入」、「家の購入」、「お葬式」など様々な回答がありました。
先生からは、今挙げられた様々なライフイベントにはお金がかかりますが、事前に実施した生徒の保護者を対象としたアンケートでは57人中37人が「老後の生活に対して不安がある」と回答していること、老後の生活には毎月平均約53,000円の赤字が発生するとされていること(お金のキホン資料集 6F老後の収支のイメージ)について説明があり、老後の生活費についてもなるべく早い時期から考えておかないといけないことが伝えられました。
それでは、どのようにお金の準備をしていけばよいのでしょうか。働いてお金を稼ぐほか、お金を金融商品で運用していくことも一つの方法です。先生からは、事前に生徒を対象として実施したアンケートの結果では、現在興味を持っている金融商品、学校等で説明を受けたことのある金融商品共に「株式」という回答が最も多い結果であったこと、本時は株式投資の疑似体験を行っていくことが伝えられました。
ここで、アクティブラーニング型授業プログラム「資産形成編」を使用した投資体験を行っていきました。この授業プログラムは、教材の「企業プロフィールシート」に記載された2つの異なる企業の情報をもとに、投資を行う過程を体験する内容となっています。本時は、数人の班に分かれ、〔1〕投資できるお金は10万円のうちの5万円、〔2〕投資先は「静商鉄道」か「SCネット」のどちらか(教材の企業プロフィールシートA使用)という条件のもと、各企業の「イチ押しポイント」と「マイナスポイント」を書き出し、3年後の状況を予想しながら投資先を決定するという流れで進めていきました。
生徒たちは、企業プロフィールシートに記載された、各企業の「規模」、「会社の特徴」、「売上高比率」、「現在の状況」、「これからのヴィジョン」、「業績の推移」などを読み込み、ポイントとなる部分にマーカーを引いて、3年後にどうなるかを予想しながら投資先を決めていきました。
各班の検討結果および評価した点等をホワイトボードに貼りだして共有したところ、以下のようになりました。
各班の検討結果
静商鉄道 | |
2班 | オリンピックの余韻もあり、利益も上がるかも? |
3班 | ・規模が大きい ・生活に必要不可欠。 ・業績が安定している ・ホテルやレジャー施設開発で業績が上がるかもしれない。 |
4班 | ・多方面への展開で安定。 ・不可欠な存在→地盤固め。 ・総資産多い→規模が大きい。 |
5班 | ・利益が安定している。 ・オリンピック特需の影響が得られる。 ・大きく落ち込むことが無さそう。 |
6班 | ・売上げが安定している。 ・総資産が多いから規模が大きい。 |
7班 | ・業績が右肩上がり(安定)している。 ・会社の規模が大きい ・ネット通販で商品の発送に利用の需要が多い。 |
8班 | ・業績が安定している ・総資産が多い。 ・全世代の人が利用する。 |
SCネット | |
1班 | ・借入金が少ない。 ・スマホやインターネットの普及が進み売上げが安定する。 ・オリンピック後でも影響を受けにくい。 |
9班 | ・スマホやインターネットの利用が今後増えると思う。 ・オリンピックが終わった後も、株価が急激に下がらないと思う。 ・借入金が少ない。 ・世の中の変化に対応できる。 |
10班 | ・短い期間での利益の伸び率が大きい。 ・広い層の人がネットを使うようになっているため。 ・環境が変わっても利益を上げられる。 |
その後、今回各企業に投資した後に「景気変動」が起きた場合、投資結果にどのような影響があるかについて、教材の3年後シートを確認しました。シートは2パターンあり、一方のシートは景気が良くなるパターンで、両社ともに株価が上昇するものの、SCネットの方が大きく上昇する結果となっています。もう片方のシートは景気が悪くなるパターンで、両社ともに株価が下落していますが、静商鉄道の方が下落幅が小さくなっています。これらの結果から、「景気変動の影響」を受けやすい企業と受けにくい企業があり、今回の例ではSCネットは前者、静商鉄道は後者であったことが分かりました。
疑似投資体験の後は、「投資」のポイントについて以下の5点を確認していきました。
〔1〕投資に適したお金や目的を見極めて行う
〔2〕リスクとリターンをよく見極める
〔3〕分散投資や長期運用でリスクを抑える
〔4〕情報から主体的に考え、判断する
〔5〕自分も社会も豊かになる投資先を考える
本時は、生涯を見通した生活におけるお金の管理や計画の一つの方法である「投資」について、その意義や方法を身につけることができた授業となりました。