テーマ:生徒に伝えたい金融リテラシー~お金のキホン~平成28年8月2日(火) 10:00~12:00

レポート

 埼玉県消費生活支援センターと埼玉県教育委員会共催の教職員等消費者教育セミナーに講師を派遣し、県内各地の小中高校等の教職員、消費者教育に携わる方19名を対象として、「生徒に伝えたい金融リテラシー~お金のキホン~」の講話、シリーズ教材 お金のキホン アクティブラーニング型授業プログラム 家計管理編・多重債務編の教材体験を行いました。

 はじめに、金融リテラシークイズ(5問)に挑戦してもらい、受講者自身の金融リテラシーについて確認をしてもらいました。なかでも複利計算の問題などは、正解を出すまでに時間がかかっているようでした。全国の18歳~70代、25,000人の5問の平均正答率は52,2%ということでした。
 「金融リテラシー」とは、「金融知識+暮らしに活かす力」であり、今回の問題は、政府の金融経済教育研究会で取りまとめられた「最低限身に付けるべき金融リテラシーの4分野15項目」の4分野(「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」)から出題されているということです。

 次に、学校段階での金融経済教育について確認をしていきました。
 まずは中学生、高校生のお金に関する認識度について、三択クイズの回答から考えていきました。中学生は、生活の中でお金と密接に関わっているが、お金を使ったり自ら管理したりするという意識は乏しいこと、高校生は、お金との関わりは増えるが、暮らしで活かせる金融の知識は不足しているということがクイズの回答率から確認ができました。また、社会に出た後も金融の知識を学ぶ機会は少ないことから、学校段階で「金融リテラシー」を身につける必要性があることが講師から伝えられました。

 学校における金融教育については、「金融教育プログラム」(金融広報中央委員会)に学ぶべきことが示されています。同プログラムでは、金融教育を「お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」と位置づけています。その上で、学ぶべき内容を「生活設計・家計管理に関する分野」「経済や金融の仕組みに関する分野」「消費生活・金融トラブル防止に関する分野」「キャリア教育に関する分野」の4つに分け、それぞれの分野において年齢層別に何を学ぶべきか具体的に示しています。教科書だけでは自分とお金との関わりについて実感を持って学ばせることが難しい場合もあることから、政府、自治体、諸団体、企業等が提供する外部教材の活用が有効とされています。
 ここで、全銀協から無償提供されている消費者教育に関する教材と支援活動について紹介がありました。紹介があった教材は、中学生対象の「知ろう!学ぼう!お金の使い方」 、中学生・高校生対象の「生活設計・マネープランゲーム」 と「あなたと銀行のかかわり」 、高校生対象の「シリーズ教材 お金のキホン」、 新社会人・一般対象「金融知識入門シリーズ」 、「かんたんレシピでチェック 銀行の金融商品・サービス」 の6種類です。
 どこでも出張講座は、依頼に応じて講師を派遣し授業を実施するもので、平成27年度は全国207ヵ所で実施されました。

 後半は、「シリーズ教材 お金のキホン」 教材体験を行いました。
 この教材は「講義型教材」、「アクティブラーニング型教材」、「動画型教材」があります。講義型教材は、高校生が学ぶ金融経済教育の具体的な知識について、学習指導要領の家庭科や公民科の内容をおさえた教材です。アクティブラーニング型教材は、生徒の主体的な活動を促すプログラムで、「家計管理編」と「多重債務編」の2つのテーマがあります。
 今回は、アクティブラーニング型教材の「家計管理編」 を中心に教材体験を行いました。
 〔1〕一人暮らしにかかる費用項目を確認した後、ある依頼者の「一人暮らしオーダー」に沿って費用をシミュレーション、〔2〕グループワークで「家計管理アドバイザー」としてアドバイスを検討、〔3〕プレゼンテーションとシェアリングで「家計管理」の知識を確認・定着していく授業の流れを体験していきました。
 依頼者のオーダー通りに費用を積み上げてくいと、実際の手取り収入より14~15万円も支出が多くなってしまいました。そこで家計管理アドバイザーとして、手取り収入に見合った金額調整を行い、依頼者の心に響くアドバイスを考えていきました。2人1組になり、依頼者の夢や希望を踏まえつつ、お金の使い方に優先順位をつけたり、欲しいものと必要なものを区別したりしながら、グループワークを行いました。班ごとに優先順位の付け方や欲しいものと必要なものの考え方に違いがあり、「一人暮らしをすること自体、難しいのではないか」、「食料費は削りやすい費目ではあるが、実際には限度がある」などの意見が聞かれました。

 いくつかの班に、調整した費目と金額、心に響くアドバイスを発表してもらいました。
 〇316,000円から175,000円に調整。
 ビジネススクール費と通信費は確保し、スキルアップを中心とした生活にすること。犬との生活は諦める。
 〇328,000円から168,000円に調整
 女性なので住居は2階以上、食費もそれほど削れない。今は仕事を頑張ってお金を貯めることに集中。その後で夢を叶えるためにビジネススクールに通ってはどうか。犬は実家で。
 〇273,000円から168,000円に調整
 家をDランクにして、教養娯楽費や預金に当てる。犬との生活も何とか叶えられるようにした。
 
 講師からは、この活動には決められた「正解」はないこと、限られた収入の中で生活をしていくうえでは、「必要なもの」と「欲しいもの」を考え、メリハリのある支出を実行することが大切であることが伝えられました。

 アクティブラーニング型教材の「多重債務編」 については、プログラムの流れを確認しました。
 本プログラムは、動画の視聴から多重債務に陥る原因を考え、グループワークで多重債務の注意喚起ポスターを作成し発表することで、知識の確認と定着を図っていきます。授業の進行やまとめについてはWEBサイトからダウンロードできる進行スライドを活用することで、授業実施にかかる負担を少なくできるということでした。
 教材活用事例として、「埼玉県立狭山経済高校」と「京都府立東稜高校」の授業実践例が紹介され、実際に生徒たちが作成したポスターや授業を実施した教員の感想を確認することができました。

 最後に講師から、それぞれの学校や生徒たちの状況に合わせた外部支援(教材提供や出張講座など)を活用することで、消費者として必要な金融リテラシーを身に付けるための授業を実施してほしい旨伝えられ、研修は終了しました。

使用教材