テーマ:生活設計・マネープランゲーム平成28年8月6日(土) 13:30~15:20 教員向けセミナー15:30~16:05

レポート

 8月6日(土)、東京都教職員研修センターで開催された「企業等による体験型講座」および「夏休みスペシャル体験講座in水道橋」(東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課主催)に参加しました。
 これは、企業・NPO等の教育支援プログラムを、実際に小中学生に受講してもらい、その様子を学校・教育関係者が見学して、学校現場へのプログラム導入の参考にするというもので、受講する児童生徒にとっても様々な体験ができる機会として実施されています。
 当日、全国銀行協会の講座では23名の中学生が「札勘」と「生活設計・マネープランゲーム」 を体験しました。

 教室に到着した生徒には授業前のアイスブレイクとして、札勘体験をしてもらいました。模擬紙幣が配られ、縦読みと横読みに挑戦しました。講師からお札の持ち方や指の動かし方を習うと各自で模擬紙幣を数えていました。
 銀行では新入社員の研修で必ず札勘が行われることや、お客様の前でお札を数えて一緒に金額を確認してもらうなど、現金を扱う心得や責任の大きさも講師から伝えられました。

 全員が揃ったところで班ごとに自己紹介を行い、講座はスタートしました。
 はじめは「お金」に関するクイズに挑戦です。「100円玉の重さは何グラムか」、「破れた1,000円札を銀行に持っていくと、いくらに交換してくれるのか」、「お金とは何か、説明してみよう」などの問題に個人で考えたり、班で話し合ったりしながら答えを出していきました。生徒たちには、普段何気なく使っているお金について考える良い機会になったようです。

 班の仲間とも打ち解けたところで、「生活設計・マネープランゲーム」 を体験しました。このゲームでは班ごとに20歳代~30歳代の人生の疑似体験をします。実際に、高校卒業から大学進学、就職、結婚、住居購入とそれらにかかった費用について講師の事例を紹介し、生徒たちにある程度イメージを持ってもらった後、ゲームを進めていきました。
 20歳代は就職をして自立した生活を体験します。給与から保険や税金などの「非消費支出」が引かれること、限られた収入の中で住居費や生活費を支出して生活していくことが体験できました。
 30歳代では、結婚、子育て、住居の購入、保険への加入、イベント&アクシデントを体験します。特に住居購入の場面では、収入や貯蓄、家族構成と住居の条件を見比べながら、どの班も真剣に話し合いをしていました。意見を出し合いながら、購入する住居と費用、費用の支払い方法を決めていきました。
 保険に入るかどうかを決めた後、イベント&アクシデントカードを引きました。人生には不測の事態が起こる場合があることも体験できました。

 30歳代までの人生の疑似体験から、どんな人生だったか、この人生につけるタイトルを班で話し合ってもらいました。
 結果発表では班によって、収入や支出、結婚や子供の有無により貯蓄額や思い出ポイント(人生の満足度)が違いました。5つの班で結果が大きく違うことで、自分の班と他の班の結果を比較しながら、人生とお金との関わりや、人生の満足度などを話したり考えたりしました。

 最後に講師から、「お金にも時間にも限りがあるので、理想の人生を送るためには優先順位をつけなければいけない」こと、「収入と支出のバランスを考えないといけない」こと、「収入は、それぞれの努力によって増やすことができる」こと、「今日の体験をきっかけとして自分のこれからの人生を考えていって欲しい」ということが伝えられ、授業は終了となりました。

 授業終了後は、平成28年度企業等による体験型講座分科会が開かれ、学校・教育関係者約10名の参加がありました。
 始めに、中学生、高校生のお金に関する認識度について、三択クイズを通して確認していきました。生徒は生活の中でお金と密接に関わっているが、お金を使ったり自ら管理したりするという意識は乏しいこと、特に高校生になるとさらにお金との関わりは増えるが、暮らしで活かせる金融の知識は不足しているということを先生方に認識してもらいました。また、社会に出ても金融の知識を学ぶ機会は少ないことから、学校段階で「金融リテラシー」を身につける必要性があることが講師から伝えられました。
 「金融リテラシー」は、「金融知識」とそれを「暮らしに活かす力」であり、教科書だけでは自分とお金との関わりについて実感を持って学ばせることが難しい場合もあることから、政府、自治体、諸団体、企業等が提供する外部教材の活用が有効とされています。
 ここで、外部教材のひとつとして、今日の講座で生徒たちに体験してもらった「生活設計・マネープランゲーム」について詳しい説明がありました。班活動で、人生には様々な選択があることに気づかせると同時に、計画性を持って生活してく必要性があることを体感してもらうカードゲーム教材であること、1校時(50分)から実施可能なので、学校や生徒の状況に合わせた活用が可能ということでした。

 ここで、実際に「生活設計・マネープランゲーム」 を活用した授業を取り入れた興本扇学園扇中学校の櫻井先生から報告をしていただきました。

  • 中学校3年生の総合的な学習の時間を活用し、講師派遣授業(どこでも出張講座)という形式で実施。
  • 外部の専門的な知識を活かして、キャリア教育の観点(労働とその対価)を中心的なねらいとした。
  • 実施してみて、3年生での取組みでは遅いのではないかと感じている。現実的に進路を考えなければならない3年生ではなく、進路決定までの時間に余裕がある1,2年生での実施が効果的ではないかと思う。

 櫻井先生の報告と併せ、生活設計・マネープランゲームが各地でどのように活用されているのか講師から補足がありました。中学校・高校の家庭科・社会科に限らず、消費者教育やキャリア教育、非消費支出が社会でどのように使われているのかを考えるところから、主権者教育の導入としての活用事例もあることが伝えられました。

 参加された学校・教育関係者からは、講師派遣授業を希望する場合の日程調整や、教材の申し込み方法、小学校での活用可能性などについての質問や、小学校においても、保護者も一緒に参加してもらうことで、生活設計・マネープランゲームを効果的に実施できるのではないかというご意見もいただきました。

 最後に、全国銀行協会等、様々な組織・団体が提供する金融経済教育に関する支援を活用しながら、それぞれの学校の実情に合わせた金融経済教育を実施していって欲しい旨が伝えられ、分科会は終了しました。

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