3時間目
平成30年11月8日(木)13:15~14:05
3時間目は、世界でキャッシュレス化が進んでいる中、日本の現状を知り、キャッシュレス決済のメリット・デメリットを理解して、今後の生活の中で適切なお金の管理・利用ができるようになることを目的とした授業が実施されました。
タイトルや分類が伏せられた棒グラフがスクリーンに投影され、「このグラフは何の割合を表しているものでしょうか」、という先生の問いかけから授業は始まりました。
高いものは90%程、低いものは15%程の割合が示されている棒グラフでしたが、生徒たちはなかなか見当がつかないようで「カード」と「スマートフォン」というヒントが出されても、答えがでてきませんでした。
正解は、「世界各国のキャッシュレス決済の比率」でした。キャッシュレス決済とは、物やサービスを購入する際に、現金以外で支払う手段のことです。
グラフからは、韓国は現金以外で物・サービスを購入することが多く、日本は現金で物・サービスを購入することが多いということなどが分かりました。
本時は「なぜ、日本ではキャッシュレス決済が進んでいないのか」、「キャッシュレス決済のメリット・デメリット」について考えていくことが先生から伝えられました。
はじめに、主なキャッシュレス決済の方法である、電子マネー、デビットカード、クレジットカード、モバイル決済の4種類について、支払いのタイミングと特徴を確認しました。
支払いのタイミング | キャッシュレス決済の種類 | 特徴 |
---|---|---|
前払い | 電子マネー | ・入金(チャージ)した金額が不足した場合、不足分は現金で支払う。 |
同時払い | デビットカード | ・銀行口座の預金残高が不足すると、引き落とし(支払い)ができない。ネットショッピングでは、商品購入前に支払いが発生する。 |
後払い | クレジットカード | ・支払日に銀行口座の預金残高が不足しないようにしておかなければならない。 ・一括・分割払いが可能。 |
同時・後払い | モバイル決済 | ・支払日に銀行口座の預金残高が不足しないようにしておかなければならない。 |
キャッシュレス決済の種類は1年家庭基礎での既習内容ですが、全て覚えている生徒はいないようでした。
続いて、日本人のクレジットカード保有率を確認していきました。
クレジットカード保有率は85.1%で、平均保有枚数は3.2枚となっています。北条高校の教員にアンケートを取ったところ、クレジットカード保有率は96.0%ということでした。
世界のクレジットカード平均保有枚数は2.24枚で、日本人の保有枚数の平均を下回っています。日本はクレジットカードの保有枚数は多いにもかかわらず、キャッシュレス決済が進んでいない現状があるということが見えてきました。
そこで、①日本でキャッシュレス決済が進まない理由、②キャッシュレス決済のメリット、③キャッシュレス決済のデメリットの3点について班で話し合いまとめるよう先生から指示がありました。話合いの中ではキャッシュレス決済のメリットよりもデメリットの方が意見を出しやすいようで、そのデメリットから日本でキャッシュレス決済が進まない理由を見つけようとする班もありました。
班の意見がまとまったところで黒板に書き出し、意見を共有しました。
①キャッシュレス化が進まない理由 | ②メリット | ③デメリット |
---|---|---|
|
|
|
ここで先生から、日本でキャッシュレス化が進まない理由として考えられることが2つ説明されました。
- 日本は治安が良いので、現金を持ち歩いても強盗など危険な目に遭う可能性が低い
- 日本はどこにでもATMがあるため、現金の入手が容易で、偽札の出回りも少ないことから現金に対する高い信頼がある
続いて、世界でキャッシュレス化が進められている理由、キャッシュレス化のメリットとして考えられることが4つ説明されました。
- 治安を良くするため(社会的視点):偽札やスリ、強盗などの問題を解決するため
- お金の製造・管理のコスト削減(政治的視点):日本紙幣でも約515億円の削減ができるとされている(紙幣のみで)
- 余分な仕事が省ける(事業者的視点):閉店後のレジ締めにかかる時間などを短縮できる
- とにかく楽(消費者視点):現金がなくても買い物ができる、大金を持ち歩く必要がない、ポイントがたまるなど(北条高校職員の意見)
キャッシュレス先進国の取組みを見てみると、スウェーデンでは「冬季の現金輸送が困難」、「現金を狙った強盗事件が後を絶たない」などの理由からキャッシュレス化が進められ、現金支払いを拒否する店舗が多く、Swishという電子決済システムが普及しています。また、銀行口座を持つ7歳以上の子どもはデビットカードを保有しているそうです。
中国では、「偽札の横行」、「脱税」、「紙幣の印刷や流通にかかるコスト」が社会問題になっていましたが、スマートフォン決済の拡大により、これらのリスクやコストを軽減することができるようになってきており、アリババのスマホ決済アプリ「アリペイ」の普及などにより、キャッシュレス化が急速に進んでいます。
次に、キャッシュレス化のデメリットとして考えられることが4つ説明されました。
- お金を使った感覚が鈍る・浪費する可能性がある
- スキミングなど第三者による不正利用の恐れがある
- ITや金融リテラシーなどについての個人差が出る可能性がある
- 手持ちのカードがどこでも使えるとは限らない、災害時に使えなくなる場合もある
ここで、日本のキャッシュレス決済に関する環境がどのように変化していくのか、この先行われる法律の改正や行事などから考えていくことにしました。
まず、2019年10月、消費税率が8%から10%に上がる予定ですが、消費が落ち込まないように、現在政府では、キャッシュレス決済を使った消費者に対して購入額の2%分をポイントで還元することが検討されています。
また、政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて、訪日外国人目標数を4,000万人としていますが、Visa社の委託調査によれば現金しか使えないことに不満を持つ外国人観光客は4割存在するとされ、現状のカード払いのインフラを改善しないと、2020年に訪日外国人数が4,000万人となった場合、約1.2兆円の機会損失が発生すると試算されています。
このような状況のもと、キャッシュレス決済の比率を2025年には40%、将来的には80%まで引き上げることを目標にしています。
先生からは、「これから先、キャッシュレス化に限らず今まで当たり前だったことが変わっていきます。今あるものが将来無くなることもあるかもしれません。その時に、変化を恐れるのではなく、正しい知識を身に付け、変化に対応できる人に、また、周りの人たちに正しい知識を伝える役割を担うことができる人になって欲しいと思います」と伝えられ、授業は終了しました。
*授業内のグラフ数値等は経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(平成30年4月)を参照