2005年2月22日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

 お手許に、昨年10月から12月における「盗難通帳による払出し件数・金額」および「いわゆる偽造キャッシュカードによる預金引出し」等に関する会員アンケートの集計結果をお配りしている。
 その最終頁が、偽造キャッシュカードによる預金等の引出しに関する集計結果であるが、平成16年10月から12月の間の件数は186件、金額は3億4,800万円となっており、7月から9月の間に比べて、件数では約3倍、金額では約30%の増加となっている。
 また、各銀行の本件への取組みについても併せてアンケートを行ったが、その結果をみると、(1)ICキャッシュカードの発行については、個人向けキャッシュカードを発行している銀行のうち6割強が「対応済み」、「対応予定」もしくは「検討中」となっている、(2)類推されやすい暗証番号の使用防止に関するお客さま向け呼びかけ、あるいはATM画面への覗き見防止の対策については、ほぼ全行で対応済み、(3)偽造キャッシュカードによる預金等引出しを対象とした補償の実績については、一部の会員において補償に応じている、ということであった。
 なお、この問題に関しては、先般、国税庁から、偽造キャッシュカードによる預金等引出しが、所得税申告の際の雑損控除の対象になるとの見解が示された。
 この申告手続をする際には被害届出証明が必要となるが、刑法上の被害者が銀行であるため、被害届出証明は、銀行が警察に請求し、お客様に取次ぐという取扱いを行うこととし、会員銀行に通知している。
 また、本日午前中に、金融庁から当協会に対して、偽造キャッシュカード問題に積極的な取組みを行うよう、要請を受けた。本日付で会員銀行にこの旨周知徹底するとともに、今後、当協会としても会員銀行の取組みへのサポート、環境整備に取り組んでいく所存である。


会長記者会見の模様


(問)
 偽造キャッシュカードの問題であるが、先月、協会の理事会で申し合わせをして1ヶ月経ったわけであるが、その後の会員行の取組状況についての評価と、今日、金融庁からの要請もあったと聞いているが、その辺も踏まえた今後の課題についてお聞かせ願いたい。
(答)
 アンケート結果はただいまご報告したとおりである。ご承知のとおり、全銀協としては、先月、申し合わせを行ったわけであるが、それは銀行界として一定の目線を示すことで各行の取組みを一層推進することを目的にやったわけであり、今回のアンケート結果をみても各銀行における不正取引防止対策の取組みが進んでいると受け止めている。本日、金融庁から本問題についての要請があったが、その内容も踏まえ、私どもとしては更に実効性のある対策を速やかに実行していく所存である。
 ご承知のように、被害に遭われた預金者に対する補償のあり方というものが、一つの大きなポイントであるが、私ども三井住友銀行も含めいくつかの銀行において、預金者に責任がないと判断できた場合は、犯人検挙の有無に拘らず補償を実施する旨の発表が行われており、この問題についても各行において真摯な対応への取組みが進んでいるものと認識している。
 なお、本日、金融庁において、監督局長の私的諮問機関として偽造キャッシュカードに関するスタディグループを設置するとの発表があった。このスタディグループには銀行界からも委員を出しているが、今後の補償のあり方等も含め、幅広い観点から議論・検討をしていただきたいと考えている。


(問)
 先日、金融審で銀行の代理店規制の緩和の方針が決まり、来年の夏にも施行という話であるが、この点について業界としての受け止め方、ないしは、今後の対応、経営への影響等、考えをお聞きしたい。
(答)
 銀行代理店については、ご承知のように現在は、法人代理店には銀行の100%出資や専業義務などの規制が課されている。このため、機動的な代理店の設置ということが困難となっており、銀行の商品・サービスを提供するチャネルとして十分に活用されているとは言い難いというのが実情だと思う。
 現在、検討されている代理店制度に関する規制緩和が実現されれば、他の事業者との提携等を通じて、代理店の機動的な設置が可能となる。例えば、代理店の活用によって従来のマーケット以外のマーケットへの出店ができれば、お客さまの利便性が向上するということにもなろうかと思う。私どもとしては、お客さまの様々なニーズにお応えするため、規制の見直しについては前向きに進めていただきたいと考えている。
 一方、決済システムの安定性確保、利用者保護、委託元銀行の財務・業務の健全性確保といった観点からは、代理店における業務の適切な遂行を確保することが不可欠である。今後、そのための具体的なルールの検討が進められることと思うが、その際には実務面にも十分ご配慮いただくことをお願いしたい。
 代理店を活用した具体的なビジネスモデルの検討は、制度見直しの内容が明らかになった後ということになると思うが、今後、個々の銀行において、それぞれの特色を活かした活用方法が検討されるのではないかと思う。


(問)
 産業再生機構が支援決定を最終的に41件で、新規案件の受入を終了したが、再生機構の評価をお聞かせ願いたい。
(答)
 ご承知のように産業再生機構の買取期限はこの3月末までとなっており、残された期間を考えると、ご指摘のように事実上、新規案件の受入は終了したということではないかと思う。
 これまでを振り返ってみると、当初は銀行と産業再生機構との間の意思疎通が十分には図られていないという面もあり、いささかスムーズでなかった面もあったかと思うが、意見交換に努める等双方が努力を重ねたことにより、機構の新たな取組みに対する銀行の理解も深まり、最終的には双方の考え方に大きな隔たりは無くなったのではないかと思う。その結果として、昨年後半から支援案件が増加してきたと考えている。
 また、具体的な案件の面では、公的機関が関与する案件や債権者が非常に多数に及ぶ案件など、民間だけでは調整の難易度が高い案件について、機構の特徴を活かした高度な調整能力を発揮されたと思う。
 これらにより、ご指摘のように41件の支援決定がなされたわけであるが、この産業再生機構がこれまで果たしてこられた役割は、高く評価ができるものと考えている。
 これまで、高度な調整機能を必要とする案件について産業再生機構も活用してきたわけであるが、同時にこれと相前後して民間の再生ファンド等も多数創設されており、再生手法の選択肢も広がってきたと思う。 産業再生機構の最終的な評価は、3年後の全支援先企業の支援完了の時になされるということになると思うが、引き続き確実な企業再生に向けてのご努力を願いたいと考えている。


(問)
 偽造キャッシュカードの関連で2点伺いたい。今日、金融庁において、先ほど会長も言及されたスタディグループが開かれて、補償問題について、銀行の約款を見直す必要があるのではないかとの問題意識が提起されていると思う。この問題について、既に大手行それぞれの判断で対応を始めておられるわけであるが、約款の見直し等に踏み込む必要があるのかないのか、あるいは約款を見直す場合に実務的な観点などから問題があるのか、それを乗り越えることが可能なのかを伺いたい。
 それに付随して、大雑把な質問で恐縮だが、これまでの磁気カード中心で行われてきたキャッシュカードとその安全対策の枠組みだが、欧米の先進的な金融機関等のシステムと比べると、日本のこれまでの現状はどういった水準であったのか。ICカードの導入が始まっているが、そうすると、欧米を超えるのか、あるいは並ぶのか、認識を伺いたい。
(答)
 質問の前半の方であるが、補償問題については、私どもは現在の約款の運用によって、補償問題を解決できる、あるいは補償をすべきものについては補償ができると考えている。ご承知かと思うが、正確にいうと現在の約款は、お客さまの責に帰すべき事由がないと確認できたときは銀行は免責を主張しない、という文言になっている。これをもって、お客さまに責任がないということについて、お客さまサイドに立証責任があるというように堅く解釈するという傾向が当初はあったわけであるが、この文言をよく読んでみると、ここにお客さまサイドに立証責任があるとは必ずしも書かれていない。銀行が、お客さまからご事情や被害の状況をよくお聞きしたうえで、これはお客さまに責任がない、過失がない、あるいは銀行サイドに問題があると判断した場合は補償に応じます、こういうことを申しあげている。こうしたことについては、運用上の解決ができるのではないかと、現時点においては考えている。
 しかしながら、スタディグループが設置されて、各界の方々でご議論をいただくということになっているので、このスタディグループにおいて、幅広い観点から議論していただいて、結論を見出していただければありがたいと思っている。
 後段の方であるが、磁気カードシステムについて、全金融機関が参加するATMネットワークというものが、世界的に見ても決してレベルの低いものではないと私は思う。セキュリティー対策も、特に、この1年間にいろいろ実施されてきたと思う。残念ながら、その中の一部のものについては、犯罪の増加、被害の増加というものに対して、後追いになったという面は否めない。私どもの想定の範囲を大きく超えた犯罪が発生したという面もあって、後追いになったという側面は確かにあったと思う。
 しかしながら、今日、金融庁から具体的な要請があったわけであるが、各銀行において、要請内容については、既に取り組んだものも含め、更なるセキュリティー向上策の実施に向けて真剣に取り組んでいただいていると思う。前回も申しあげたと思うが、我が国はいわば現金社会である。決済に現金をお使いになるというボリュームは90数%に上るということであるが、欧米は逆で、現金による決済が少ない、従って現金を所持される量は非常に少ないという慣習の違いがあるので、一概に欧米との比較においてどうかということは申しあげられないと思う。


(問)
 個別行の問題も含まれるが、1点目は、約款についてであるが、運用の柔軟な対応ができるのであれば、なぜ過去にうまくいかなかったのか、預金者からみればそういう疑問もあるかと思うが、この点をどうお考えになるのかということである。2点目は、大手銀行はかなり対策がでていると思うが、例えば地銀を含めて日本の銀行全体として対応策での課題として何かあればお答えいただきたい。
(答)
 確かに、しばらく前までは補償について銀行は、私どもも含めて明確な考え方を示しておらず、カード約款だけということであったと思う。これを大きく変えたというのは、先に大規模な偽造グループが検挙されて、犯罪の模様が、まだまだ全貌が解明され、発表されていないとはいえ、初めての検挙であるが、現在までに分かっている事例を見ても、例えばゴルフ場におけるキャッシュカードの盗取、そしてスキミングといったことが明らかになってきたからである。そういった事実関係を参考としながら、私どもの対応についての判断を固めてきたということであり、これが大きく影響したということは事実だろうと思う。やはり、私どもとしては、いろいろと言われるが検挙事例がないということで明確な方針の打ち出しをためらったという面はあっただろうと思う。
 一方、銀行によって、特にメガバンクと地域金融機関との間で対策に違いが出てくるのではないかということであるが、先の全銀協の申し合わせも、冒頭に申しあげたとおり、銀行界として一定の目線を示していくということであって、各行の取組みの足並みを揃えていきたいということでやってきている。これは、お分かりのことと思うが、ATMネットワークを持った現行システムのセキュリティの向上ということになると、どうしても業界全体としての足並みをそろえた取組みが必要であり、それに向けて各行が努力をするということである。ただ、ICカード化であるとか、生体認証といったことになると、これは各行の業務戦略に深くかかわるものであるので、若干差が出るということはあると思うが、方向性としては異なることはないのではないかと考えている。


(問)
 先程のお話にも一部あったが、この偽造カード問題においては、カードがスキミングされてお金を引き出された預金者の方が被害者ではなく、法律上は銀行が被害者ということで、一般的な感覚からするとちょっとずれがあり、それが預金者の方と金融機関との間で心情的なねじれを深めてしまっている一つの理由になっているのではないかと思う。この状況を直すためには法改正なども必要になってくると思うが、すぐにとは言わないけれども、将来的には法改正も考える必要があるのか、あるいは約款の運用面で解決するだけでいいのか、この点については如何か。
(答)
 刑法上は、ATMによってお金を引き出された銀行が被害者ということであるが、これは、もちろん預金者・利用者の被害ということになっていく可能性もあるわけであるから、そこはあまり律儀に使い分けることは事実上はできないのではないかと思う。手続上は、例えば被害届は、その使われたATMを持っている銀行が提出するということになるが、実態は預金者・利用者の被害であるということは、当たり前のことである。 もう一つは民法上の問題であるが、これは民法でいう債権の準占有者への弁済というものの一形態ということであるが、その民法上の解釈をどうしていくのか、こういう偽造キャッシュカード問題の対応としてどのように考えるのかということについては、相当高度な法律論ということになってくる。先程申しあげたように、もし約款を変更する必要があるということになるのであれば、本日設置されたスタディグループにおいて、そういった観点からも専門的なご検討をいただきたいと思っている。
 ただし、その結論が出ないと動かないということでは決してなく、今起きている事柄については、補償問題を現行約款の運用上の取扱によって解決できるものが、相当数あるであろうと考えている。


(問)
 金融庁の調査では、被害に遭った208件のうち、暗証番号の状況では全体の57%が生年月日もしくは生年月日から類推可能な番号を使っていて被害に遭われているということなのだが、208件のうち60%近い方々がそのような状況であると、これまでの約款の運用、もしくはその後の会長の考え方を踏襲しても、この方々が救済されないのではないかという感触をもっているのだが、その後何かお考えに変わりはあるのか。
(答)
 必ずしもそうではない。磁気ストライプに書かれた情報と暗証番号、この2つがセットとなっており、暗証番号だけではなく、磁気ストライプのスキミングによって預金の引出しが不正に行われるということであるから、キャッシュカードの保管上の問題はなかったかいう観点から預金者の責任の有無、あるいは責任の度合いというものを考えていくということだと思う。
 もちろん暗証番号についても、われわれは早くから類推されやすい暗証番号を使わないで頂きたい、あるいは暗証番号を長く使わないで時々変更して頂きたいというキャンペーンを、ATMの画面等への表示も含めていろいろなかたちで行ってきているが、それによって皆さんが変更されるというものでもないし、これはなかなか強制できるものでもない。
 従って、暗証番号に生年月日を使っておられたということだけをもって預金者の責任と考えるのは、私はいかがなものであろうかと思っている。補償をさせていただくという結論に至るケースに、暗証番号は生年月日であったというケースもおそらく入ってくると思う。その辺のところは、ケースバイケースであるから、ここで体系的に申しあげられるものではないが、解釈としてはそういうことではないかと考える。


(問)
 偽造キャッシュカード対策の関係であるが、今、生体認証で手のひら静脈であるとか指先静脈であるとかある種デファクトスタンダードを競争するようなかたちになっているが、これは、先ほど会長が言われた「業界で足並みを揃えて」という部分と多少矛盾が生じるのではないかというような指摘もあるが、これについてはどう思われるか。また、全銀協でICカードについては大分前から標準仕様を定めていたわけであるが、その後の取り組み状況を見ると、もっと早くICカード化を進めていくことができなかったのかという疑問がある。これについてどう思われるか。あと、話が変わるが、ライブドアについて、今、証取法の問題も含めていろいろ議論になっているが、この件について会長の見解を伺いたい。
(答)
 まず最初の生体認証の件であるが、この生体認証に関する技術については、瞬間的かつ確実に本人確認をしたうえで大量の取引の処理をする業務、ATMによる引出し等もそうであるが、これに活用されるようになってきたのはまだ最近のことであって、この技術については、今まさに揺籃期にあるのではないかと考える。一般的にいうと、このような段階においては、各メーカーがそれぞれ開発した独自の認証技術を市場に提供して、お互いに切磋琢磨しながら競争することで更なる技術力の向上が図られていくものだと考える。そうした競争のなかで、利用者がニーズに合致する認証技術を選択していく過程で、自然と業界標準化の動きも出てくるのではないかと思う。こういうことであるので、今の段階で、特定のやり方を標準化していくことは難しいのではないかと思う。
 それから、IC化についても、もっと早くからやるべきではなかったのかというご指摘であるが、銀行によって若干の差はあるが、2年も前から取り組まれた銀行もある。カードをIC化するということは、同時に、ATM自体をIC対応にしていくという必要もあるわけであり、そういった大々的なIC化の動きというものは、やや遅れたといえば遅れたかもしれないが、ようやく足並みが揃いつつある。まだまだ、それほど幅広いものではないが、先ほどアンケート結果を報告したように、6割の銀行が実施あるいは検討しているという状況である。今後、IC対応のATMもおそらく急速に増加していくということになるのではないかと思う。
 最後のご質問のライブドアのニッポン放送株の大量購入の問題であるが、そのこと自体について如何かという質問であれば、それは個別の企業のことであるので、全銀協会長としてのコメントは差し控えさせていただきたいと思う。


(問)
 ライブドアの件に関しては、時間外取引を活用した株式の取得が問題になっているが、そういう取引自体について問題があったと思われているのか、あるいは、敵対的買収に近いかたちということでの批判も依然としてあると思うが、今後のM&Aのあり方も踏まえて、ご見解を伺いたい。
(答)
 東証の立会外取引というのは、あくまでも場内の取引ということであり、株式の公開買付、TOBの制度とは違うわけである。ただ、東証の立会外取引によって、本当に短い時間に対象となった企業の経営支配に至るほどの取引が行われるということは、おそらく想定外のことではなかったのかと個人的に感じている。「立会外取引についても、こういった事態も踏まえてどうあるべきかを検討しなければならない」という政府当局者のご発言もあるので、この点については、検討が行われていくことになるのであろうと思う。
 それから、M&Aの問題であるが、企業買収そのものは、それによって経営者が交替し、内部の事業再編も行われて企業の活性化が進む、あるいは成長が促進されるということになれば、一般論としては、決して悪いことではないと考える。資本の自由化や経済のグローバル化という流れのなかで、いろいろな手法による企業買収が認められるということだと思う。しかし、その一方で、企業買収の狙いやその動機、そして買収後の対応というもの、これはケースバイケースであるわけであるが、いわゆる敵対的買収といわれるものが単に「対象企業の経営者がそれに同意をしない」ということだけをもって敵対的と決めつけられて良いのかどうか。そのことによって株主価値が上がり、その企業に働く従業員にとってもハッピーであるが、経営者だけが困るというようなケースもないわけではないので、何をもって敵対的と判断するのかという問題もあろうかと思う。そうしたことを踏まえると、企業買収への適切な対応策というものがどのようなものかということについて、いろいろと議論されていくことは意味があるのではないか。それが企業買収の正当性あるいは透明性というものの確保ということにも繋がっていくのではないかと思う。


(問)
 個別の問題であるが、先週金曜日に、三菱東京とUFJが、三井住友の統合比率提案から6ヶ月以上してようやく統合比率を提示したが、現時点での三井住友の今後のUFJへの対応に関する考え方を伺いたい。
(答)
 すでに先週金曜日に私どもの考え方をプレスリリースしているので、それをご覧いただきたい。現時点においては、そこに発表した内容と変わったものはない。


(問)
 盗難のカードについて、例えば、夜に盗まれてその後カードを止めたかったのだが銀行の窓口が開いていなくて、夜の間に引き出されてしまったというような同情すべきようなケースもいくつか見られるようである。盗難のケースについて、補償の対象としないというスタンスについて、個別ケースのみならず、今後どのように考えていくのか。
(答)
 盗難問題については、銀行の補償という観点からは、もう既にいくつかの銀行でも行われていることであるが、保険付きの預金というかたちで対応していくのがひとつの方法として考えられる。さらに、盗難の状況、あるいはその後のお客さまとのやり取り、今、ご指摘があったようなコールセンターに通じないといったような事実、こういった点も総合的に踏まえて補償問題を考えていくべきだと思う。例えばキャッシュカードをお使いになってATMから出金された、そのキャッシュカードをポケットに入れて銀行から出られた、そのあとスリに遭われ、そして直ちに銀行のATMから出金されてしまったというケース。おそらく銀行のATMの周辺で暗証番号を覗き見をしていたと推定されるわけであるが、このようなケースなども考えれば、これはやはり覗き見が可能な設備を設置している責任というものも銀行サイドにはあるわけである。特段の事情がある場合などには、盗難カードによる被害も銀行補償の対象外であるとは言い切れないということだと思う。これらは、全くケースバイケースで対応していかなくてはならないと思う。


(問)
 報道で一部出ているように、金融庁の特別検査であるが2002年3月期から続いてきたものが打ち止めになるということだが、特別検査に関しては金融再生プログラムに基づいて再実施されて、UFJの検査忌避であるとか、りそなが実質国有化に追い込まれるなどいろいろあったが、これに対する評価と今後の金融庁の検査がどのようにあるべきか、どういう方向であるべきか、この2点について意見を伺いたい。
(答)
 申すまでもなく、検査については、私どもは受ける立場であるので、一切コメントはしない。要は金融再生プログラムに基づく不良債権処理、不良債権問題の最終的な解決、これをこの3月末までに完了することによって金融システムの安定化を図るという大きな政策目標に基づいて、今ご指摘の特別検査等も実施されてきたということである。現時点においてはすでに金融再生プログラムで示された不良債権比率の半減目標の達成ということも確実視されるという状況になってきているという点からして、そうした検査もそのために役立った政策であったと申し上げて良いのではないかと思う。