2005年4月14日

西川会長記者会見(三井住友銀行頭取)

斉藤常務理事報告

(なし)

会長記者会見の模様


(問)
 偽造キャッシュカード問題について、約款改定などの検討状況についてお聞かせいただきたい。また、併せて立法化に対する考え方についても伺いたい。
(答)
 まず、今のご質問に答えるにあたり、若干、これまでの経緯を申しあげる。
 ご承知のとおり、全銀協としては、銀行界として一定の目線を示すことで、各行のこの問題に対する取組みを一層推進すべく1月25日に「偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせ」を行った。
 その後、各行において、ICカード化や生体認証の導入、さらには積極的な補償への取組みが表明されたが、2月22日より金融庁に「偽造キャッシュカードに関するスタディグループ」が設置され、3月31日には、補償のあり方を中心とした中間報告が取りまとめられた。
 さらに、民主党や自民党などにおいても、2月から3月にかけて、この問題に対する精力的な検討が進められ、民主党は法案を、自民党は「偽造・盗難キャッシュカード被害対策について」という要請を取りまとめられた。
 一方、全銀協においても、先月の会見で申しあげたとおり、実際に補償が行われるまでには若干時間を要しているのが実情であることや、補償の公平性や透明性を確保する観点から、どのような場合が「預金者の責に帰すべき事由」となるのかを明示することを検討する必要もあることに鑑み、金融庁の「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ」の中間報告を見守りつつ、ご指摘のカード規定試案の改定作業を行ってきた。
 現在検討中のカード規定試案の改定案の方向性について申しあげる。
 まだ、正式に決定したものではないが、改定のポイントとしては3点ある。第1は、偽造キャッシュカード被害については、お客さまに責任がない限り、原則金融機関が補償する、第2は、お客様に責任がある事例はあらかじめ明示し、ルールの透明性・公平性を確保する、第3に、お客さまに責任がある事例の立証責任は金融機関が負う、というこの3点が明確になるような規定とするということである。
 お客様に責任がある事例として、金融庁のスタディグループの中間とりまとめの内容を踏まえて、具体的な例示を行う方向で検討を進めている。
 なお、お客さまにもカードおよび暗証について、しっかり管理していただきたいということから、今、申しあげたお客さまに責任がある事例のほか、金融機関が継続的にお客様に対して注意喚起していく項目なども会員銀行宛に通知する方向で検討している。
 最後に立法化に関して、私どもとしては、偽造キャッシュカード問題の緊急性に鑑み、まずは各金融機関が被害補償について約款の改正で対応することに加え、被害防止策を速やかに実行していくことが肝要であると考えるので、まずは、自主的な取組みを見守っていただきたいと考えている。預金者保護に資する結果に繋がるよう、しっかりと取組んでいく所存である。


(問)
 4月1日にペイオフの全面解禁が約10年ぶりに実施された。現時点では円滑に実施されたと見てよいかと思うが、ペイオフ全面解禁を受けた金融機関や預金者、金融市場の動向について、どのように見ているか伺いたい。
(答)
 ご承知のように4月1日にペイオフ解禁拡大が実施されたが、年度末における預金の動向は、ほぼ例年どおりの動きであり、特段の混乱もなく円滑に移行されたと認識している。これは、預金者やマーケットから、これまでの不良債権処理など信頼回復に向けた金融機関の取組みが評価され、金融システムが平時の状態に戻ったことを示しているのではないかと考えている。
 一方、ペイオフ解禁拡大は、一つの通過点であって、これから始まる新たな競争ステージへの出発点でもある。
 これからは、サービス業としての原点に立ち返って、より一層お客さまの多様なニーズに対応した商品・サービスを提供することに力を入れて、預金者から選ばれる銀行を目指してそれぞれ競争に勝ち抜いていくことが求められる。
 そのためにも、引き続き緊張感をもって、更なる財務体質の強化、そして収益力の向上に努めることが重要であると思う。


(問)
 全銀協会長就任以来、1年が経過して、本日で全銀協会長としての最後の会見となるが、何か所感があれば伺いたい。
(答)
 長いようであっという間の1年でもあった。振り返ってみると、結構いろいろなことがあったなと思う。
 まず、2004年度は、金融再生プログラムの最終年度として、金融システムに対する信頼回復の仕上げの年であった。この数年間、主要行そして地域金融機関それぞれにおいて進めてきた不良債権問題からの最終的な脱却に向けた取組みの成果がしっかりと現れ、この4月のペイオフ解禁拡大を迎えることができたと考えている。その意味では、金融界にとって大きな転換点に当たる年であったと思う。
 一方、今もお話が出たように偽造キャッシュカード問題に代表されるように、銀行の預金口座やATMを利用した犯罪が大きな社会問題となった。これらの犯罪は、預金の安全性を脅かす重大な問題であり、引き続き、実効性のある対策を講じていくことが銀行の責務であると考えている。
 そして、誠に残念ながら銀行不祥事が相次いだ年でもあった。こうした事態については、極めて遺憾であり、お客さまからの信頼の回復を得ていくため協会、個々の銀行の双方で、法令遵守体制の強化に取組むことが重要であると考えている。
 また、郵政民営化や住宅金融公庫など、公的金融の改革に向けた検討が大きく前進したという面では非常に意義の大きい1年であったと思う。この点でもまた、金融界にとって大きな転換点に当たる年であったと言えるかと思う。懸案の郵政民営化に関しては、現在、政府と与党との間で調整が進められているが、本来の民営化の目的が実現できる改革となることを強く願っている。特に、本来あるべき公正な競争条件の確保と巨大な郵便貯金が抱える様々な問題の解決に繋がっていく改革となるよう期待をするとともに、民営化の結果が民業圧迫ということにならないようしっかりとした制度設計を願っているところである。
 こういったことに加えて、金融機関への証券仲介業務の解禁をはじめとする規制緩和も進展したが、銀行による保険商品の窓販拡大については、調整が長引き、内容が固まらないまま、当初、段階的解禁が行われる予定であった4月を迎えてしまったことは残念と言わざるを得ない。段階的解禁がなるべく早期に行われるよう、また、当初の計画どおり2007年4月に全面解禁が確実に行われるようお願いしたい。
 この2005年度は、個々の銀行の自主的な経営努力や創意工夫によって、収益力の向上、財務体質の強化に努めていく一年になると思う。そのためにも、制度面においては、是非、一段の規制緩和を進めていただきたいと思う。
 また、この4月から個人情報保護法が施行されたが、お客さまに安心してお取引いただけるよう、法令遵守やセキュリティの向上をはじめとする体制整備を行うということも重要な課題である。
 銀行界としては、こうした課題に全力で取組み、我が国の経済、社会へ貢献していくことが必要と考えている。


(問)
 偽造キャッシュカードの問題であるが、1つは、3月頃に一部の被害者がメガバンクを対象に和解がほぼ合意に達したという動きがあるが、全銀協としてまとめている被害補償の実績、例えば3月末でどれぐらい補償したか教えていただきたい。2つめが、昨日、会長が国会で参考人として答弁しておられたが、盗難の被害補償について各党から質問があったと思うが、保険商品が出てくればそういう対応も個人でとりうると思うが、今はほとんど出ていない中で、銀行界として、偽造と同じような対応は取れないにしても、盗難の補償について、何か方針なり出していく必要がないのかどうか、会長の考え方を伺いたい。3つめは話が違うが、最近の中国での反日運動について、これから銀行界は中国でのビジネスを拡大しようという矢先であったと思うが、このことについて全銀協としての、個社としてでも結構であるが、中国のビジネスに影響があるかないかお考えを伺いたい。
(答)
 まず偽造キャッシュカード被害の補償については、各行において真摯な対応をしてお客さまからよく事情をお伺いし、補償について検討をしていると思う。補償に際しては、お客さまからもご協力いただいて経緯の詳細をお伺いしたうえで銀行にて判断をして補償を実行していくということになろうかと思う。これまで発生した事案のすべてについて適切に対応するにはやはり若干の時間がかかろうかと思うが、各行において取組みが進んでいることは間違いないと思う。
 ただ、全銀協においてもまだ実績について数字をとりまとめるということはできていない。したがって、若干個別行の話になるが簡単に申しあげると、私どもは過去の偽造被害としてお申し出があった案件のほぼすべてについて、お客さまからいろいろとご説明を聞いた。一部、ご病気等でまだ聴けないケースもあるが、できるところは全部お聴きしている。そして、補償をした、あるいは補償の方針が確定したものが過半に達している。残りの内のごく一部は、補償が難しいという内容のものもある。その他のものは、もう少し説明をお聴きしたいというケースであり、お話の内容をよく検討したうえで補償に向けて進んでいくということになるであろうと思う。
 新しいカード規定試案が固まると、お客さまに責任があるという事例が明示されるということになる。これは、例えば暗証番号を他人に教えた、あるいはカード面に暗証番号を表記していたというようなケースであるが、そうした事例が明示されるということになるので、既に被害にあわれたお客さまの責任を判断するに際して重要な判断材料になってくると思う。規定改定前の被害であっても補償に応じるということになるものと考えている。そういうことから、既に被害にあわれたお客さまへの補償は、今後、一層進んでいくのであろうと考えている。 第2の質問である盗難キャッシュカードの問題であるが、偽造キャッシュカードと類似するという側面があり両者を区別する必要がないといったご意見があることも承知をしているが、やはり、盗難キャッシュカードというのは、一般的な盗難被害の一類型ということであって、お客さまの過失の度合いというものも様々であるし、なかなか一概に申しあげられないところである。したがって補償についても約款で規定すべきかどうかも含めて、今後、検討すべき課題が多いものと考えている。
 今、お話にもあった保険については、ひとつの考え方として、金融機関サイドで補償保険を付保する、金融機関サイドの負担で付保をするといういき方、これも補償のひとつの選択肢として考えられるのではないかと思っている。金融庁のスタディグループの中間とりまとめにおいても、盗難キャッシュカード問題については更なる検討が必要ではないかとされている。この問題については、今後検討すべき課題が多いと考えているが、スタディグループの検討も見据えつつ、全銀協においてもどういう対応が適切であるかということも含めて検討を進めていきたいと考えている。
 第3の中国における反日運動の拡大を受けてということであるが、全体を把握しているわけではないが、金融機関を含む日系企業の現地拠点で窓ガラスの破損などの物的被害があったといった報道もあることから、引き続き状況を注視してまいりたいと思っている。当行については、今のところ現地の拠点で影響が出ているとは聞いていない。いずれにしても、我が国にとって中国との経済関係は大変重要なものであって、我々としても事態を十分に見守ってまいりたいと思う。


(問)
 偽造カードや盗難カードの関連で若干お伺いさせていただきたい。まず偽造カードのカード規定の件で、5つの具体的なケースを明示して透明性を図るというお話だったが、例のスタディグループの中間とりまとめでは、生年月日を暗証番号にしたりすることについては、グレーゾーンというか、金融機関側の判断によっては過失を問えるかもしれないし、かなり微妙な領域だったように思うが、今回、注意喚起にとどめた判断の理由をまずお伺いしたい。
 次に、盗難カードについては厳密に考えると違うものであるというところもあるとは思うが、保険の負担を預金者ではなく銀行が払う、なぜ盗難だと保険で、直接だといけないのか、そのへんをわかりやすく伺いたい。
(答)
 預金者にご注意をいただきたいという項目は、例えば暗証番号に生年月日であるとか、電話番号であるとか、住所地番であるとか、こういったものを使わないように努めていただきたい、一例をあげるとそういったことを列挙しているということである。これは、例えば暗証番号に生年月日をお使いになっているということだけをもって預金者に責任ありというふうには言えないが、それにプラスして周辺状況を勘案すれば、全部が全部ではないが、その中には、預金者に重過失があるというようなケースも出てきかねない。したがって生年月日をお使いになるということはなるべく避けてくださいという注意喚起をしてくださいという意味で列挙をしているということである。この類のものをその他にいくつか列挙しようと考えている。まだ最終決定ではない。そういう内容のものである。
 盗難保険について、これはひとつの選択肢ということであって、そういう方向で今考えているということではない。ひとつの検討対象という位置付けということである。それをまずお断りしておく。盗難カードについても、金融機関の責任云々ということが主張されるので、これは預金者が自ら保険を掛けられるというのは、それぞれのご判断でやることで、それに頼るわけには我々としてはいかないので、盗難保険を銀行サイドで付保をし、万一、そういう被害が発生すれば保険で対応する、銀行も負担を分かちあっていくという考え方で、それも一つの方法になるのではないか、選択肢の一つではないかと申しあげているわけである。
 盗難カードについては、やはりキャッシュカードと暗証番号、この2つをもってATMを利用して預金の預け入れ、引き出しをやっていただいているわけであるが、手許にあるものとしてはこれがお客様の財産である。これらは、当然のことながら自己責任で管理をしていただかなくてはならないものであって、その管理についてまで金融機関サイドが責任を負っていくということは非常に難しいことである。例えば、株券。ご自宅で株券を置いておられると、もし窃盗に遭えば大変なことになるということで、金庫に保管されるとか、常に気を配っておられるということである。預金についても預金通帳と印鑑、それからキャッシュカードと暗証番号、この管理についてはやはりお客さまサイドで自分の財産として管理をしていただくということが、まず大前提ということになる。その中で、盗難ということが起きてくる。それについての被害の補償をどうするかという議論であるので、これは偽造カードの事態とは違うということになる。偽造カードというのは、スキミング技術、偽造技術が進化して、大変巧妙化している。それによって、銀行のATMシステムが、破られるというか、そこに問題が起きてくる。スキミングされるという事態において、問題が生じてくる。欠陥と言いたくはないのだが、欠陥と言われている方もいる。スキミングされることに問題があるという意味で銀行に責任がある。偽造されて被害に遭われた場合は、故意・過失・重過失がない限り、銀行で責任を負わなければいけないという考え方で、盗難と偽造とは似ているけれど違うということを申しあげているわけである。


(問)
 非常に噛み砕いて伺うが、社会あるいは代議士の先生方を含めて、差し障りがあるかもしれないが、盗難カードというと本当は責任はないのだけれども、色々見方によっては、金融機関側にも若干分かち合うだけの何らかの理由はあるかもしれないということか。
(答)
 例えば、前にも申しあげたかと思うが、スリに遭われたというケースで、その前に銀行でキャッシュカードを使ってお金を引き出された際に誰かが覗き見をしていた、そしてすられたというケースである。覗き見防止というのはやっているのだが、それが不十分で覗き見をされたことはまず間違いないだろうというようなケースについては、盗難ではあるけれども、やはり銀行に責任ありと判断をせざるを得ないケースももちろんある。その他、様々なことが考えられるので、いろいろなケースを想定してよく検討をしてまいりたい。


(問)
 先程中国の反日運動の関係で事態を見守りたいとご発言をされたが、日本と中国双方の政府当局者に対して、どう対処すべきかご要望があればお聞かせいただきたい。
 それともう一点、ペイオフ解禁で、金融システムが平時に戻ったというご発言があったが、不良債権処理も進展し、これに関連しても、平時に戻った時点で金融行政のあり方について、ご意見があれば、お聞かせいただきたい。
(答)
 前段の日中の政府に対するわれわれのお願いとか、要望といったものについては、全銀協会長の立場としては控えさせていただきたいと思うので、ご了解をいただきたい。
 金融システムが平時に戻ったということで、やはり各金融機関が自由な立場で競争をしていく、その切磋琢磨の中でお客さまの多様なニーズに的確にお応えできるようにしていくということをベースとして金融行政をお考えいただきたいということである。金融改革プログラムも基本的にはそういう考え方に則っておまとめになられたものであると認識しているが、中には、これは私の思い過ごしかもしれないが、また横並びということになりはしないかということが懸念されるような項目も、わずかではあるが、あるような感じもするので、自主的な経営、それによって経営のダイナミズムを確保していくということをぜひ尊重していただきたいと考えている。


(問)
 昭和36年に銀行界に入られて以来、長い間銀行界に身を置いてこられて、今年はペイオフが全面解禁されて、象徴的で転換点になる年だと思うが、今後の銀行がどういうふうに変わっていかなければならないかということについて、どのように考えておられるかということがまず1点、そして2点めとして、変わっていくにしても、銀行家というか、バンカーとしての矜持として守っていかなければならないものがあるとしたらそれは何か、ということについて考えを伺いたい。
(答)
 今後の銀行というのは、まずは個人・法人を問わず、お客様のニーズが非常に多様化し高度化してくるので、このニーズに的確に応えられる銀行を作っていかなければならないということであろうと思う。それには、すべての銀行が同様というわけではないと思うが、我々も含めて、不断の改革を続けていかなければならない、ということである。そうでなければ、お客さまのニーズに的確に応えて、そのうえで収益を確保していくということが出来ないであろうと思う。その改革の強い意志と実行力というものが問われるのであろうと思う。これをやり遂げるということによって、はじめて国際的にも競争していける銀行を築いていくことができるのであろうと思っている。
 バンカーとしての矜持というものは、やはり信頼ということだと思う。お客さまからの信頼、そして市場からの信頼、社会からの信頼。この信頼をいかにして獲得していくか、最も信頼度の高い銀行になれるかということ、これが今後の銀行の経営者ならびに従業員の大きな課題、責務ということであろうと思う。


(問)
 カード問題について、政権与党である自民党が先月末に発表したカード問題対策において、全銀協に対して、第三者機関を設け、その第三者機関にすべての銀行がどのように約款を運用しているかをモニタリングしてもらって、しかもその結果を公表すべきであると自民党は言っているが、これについて全銀協はどう対応するのかというのが第1点。それから、同じく自民党の対策のなかで、なりすましの防止策を十分検討してくれるよう強く望むというかなり強いトーンでなりすましの防止策を求めているが、これについて現時点での考えをお聴きしたい。最後に、同じく自民党の対策のなかでは、ICカードとか生体認証の規格統一等あわせて10項目にもわたって4月中に党に報告してほしいというように要請されているが、10項目にわたって具体的な対応方針を党に報告することが可能かどうか、以上3点についてお聞きしたい。
(答)
 自民党は全銀協に対して、第三者機関を設立してすべての銀行における約款導入の結果を監視し、その結果を公表するようにという趣旨のご要請がある。このカード規定試案というのは、約款の方向性を示すという位置付けであり、全銀協がこの約款の導入を会員銀行に強制するということは独禁法上の問題もないわけではない。これは全銀協でなくて第三者機関が行ったところで同じことである。自民党が求めるような各金融機関における補償条項の導入に関する実効性の担保ということは、大変重要なことであろうと思う。しかし、第三者機関と言ったところでそういうことであるので、私どもとしては自民党からの要請の趣旨をよく踏まえて、今後全銀協としてどういう対応が可能か、真剣に検討してまいりたいと考えている。大事なことは、確かに実効性の担保ということである。すべての金融機関がきちんと実行するということを狙いに、いろいろ方策を講じていくことかと思う。
 なりすましの防止策ということについては、まずは被害にあわれたときはいち早く取引きの金融機関、取引店と、それから警察への通知をしていただくということが、まずもって必要なことであるということである。被害の状況等をお聴きしていくなかで、警察にどのように通知をされたかということもよくお聴きする必要があるということであり、これが結果的にはなりすましというものを防止していくひとつの方策ということになるのではないかと思う。
 それから、確かに10項目についてご要請がある。しかし、これは全銀協のみならず各金融機関、金融関係団体、政府となっており、すべてを全銀協で回答するという趣旨ではないと認識している。この10項目への対応については、全銀協としてすでに公表しているものもあると思う。これらを含めて関係者と十分打合せをして、きちんと対応していきたいというように考えている。


(問)
 ちょっとテーマが大きいかもしれないが、不良債権問題というのは、一体何だったのか、銀行と融資される企業との関係はこれからどうあるべきか、ということについて伺いたい。
(答)
 不良債権問題というのは、いろいろな要因があったと思う。銀行の対応、与信取引における管理等銀行プロパーの問題、それから政策の問題、バブル期を経て政府・日銀のいろいろな政策の問題といったものもあったと思う。銀行プロパーの問題というものは大変大きなものがあるわけであるが、やはり銀行のリスク管理というものに対する考え方に甘さがあったということは、私は認めざるを得ないと思う。担保主義ということが言われるわけであるが、担保というものに、なかんずく不動産担保というものに大きく依存をしてきたということ、その結果、本来よく見ていかなければならない企業の実態、あるいはその将来というものに対する見方に甘さがあったということ。それから何よりも、大口集中という点において、管理の甘さ、考え方の甘さというものがあったということだと思う。これはすべての銀行に共通するとかあるいはすべての事案に共通するというものでは決してないと思うが、私の経験からして、やはりリスク管理というものはまずは分散ということが重要であり、集中リスクの排除ということはリスク管理の「イロハ」の「イ」である。これが十分になされなかったということが大きな反省点としてある。それが不良債権問題を増幅してしまったという恨みは確かにあると思う。不良債権問題ということになると、そういうことであろうかなというのが私の全く個人的な認識である。


(問)
 これからの金融界ということで、先ほど来、顧客のニーズが多様化していることを強調されていたと思うが、そうすると、銀行にとって更なるコングロマリット化、ユニバーサルバンク化というのは自然の流れなのか、行政もそういうことを容認すべきなのか、SMFGとしてもそういった方向を目指すのか、最後にそういった面での大和証券との今の話し合いはどのような状況にあるのかということを教えていただきたい。
(答)
 まず、一番最後におっしゃった大和証券との経営統合については、現状のところ全くそういう具体的な話はない。まずそれを申しあげておきたいと思う。
 顧客ニーズが多様化し高度化していくということで、それに銀行が的確に対応していかなければならないということが基本であると申しあげたが、私はそのために、いわゆるコングロマリット化をしなければならないということでは必ずしもないと思う。私はまずコングロマリット化ありきという考えはとるべきではないと考えている。我々は商業銀行であるが、商業銀行と例えば保険ということになると、それぞれ業種におけるリスクの性質がまったく違うわけである。違うリスクをひとつのエンティティでとっていく、あるいはひとつのグループでとっていくということは、非常にマネージメントの難しいことである。経営資源にも限りがあるわけであるから、選択と集中ということはどのレベルにおいても、どの時代においても欠かせないことだと思う。やはり、得意分野をきちんと作っていく、絶対負けない部分を作っていく、それをできるだけ多くしていくということが重要なのではないかと思っている。これは私のまったく個人的な考え方である。


(問)
 最後に、会長から何か一言お願いしたい。
(答)
 この1年間、皆さんにはいろいろ大変とお世話になった。改めて御礼を申しあげる。また、会長職を務めるにあたり、多くの方々に支えていただいた。この場を借りて感謝を申しあげたいと思う。
 来週には、みずほフィナンシャルグループの前田社長が会長に就任をされる。皆さんご存知のとおり、前田さんは、経済、金融、そして経営全般にわたり、卓越した見識をお持ちの方である。銀行界を力強くリードしていただけるものと私は確信している。前田新会長への一層のご支援をお願い申しあげる。 1年間、本当にありがとうございました。