平成30年11月1日(木)13:15~14:05

兵庫県立北条高等学校 公民科(1時間目)

 高校・大学卒業後、自立した生活を送るために、金融・経済の知識や家計管理、多重債務等お金に関する問題について理解し、お金に対する責任感や問題に直面した時の対応力を身に付けることを目的とした一連の授業が実施されました。

 1時間目は、資金を借りる企業の立場と融資をする銀行の立場になってロールプレイングを行い、融資における信用とは何かを考え、金融の仕組みや銀行の役割について理解することを目的に授業が行われました。

 はじめに既習内容である銀行の三大業務を確認していきました。
 生徒からは、「お金を預かってくれる」、「お金を貸してくれる」、「お金を送金してくれる」とすぐに正答が出ました。また、銀行がお金を貸し出すことを「融資」と呼ぶことが先生から補足されました。
 次に、「自分たちが会社の経営者だとしたら、銀行から融資を受けるために何をアピールするか」について班で話し合い、まとめるよう指示がありました。「借りたお金を返せないといけない」、「実績のある企業でないと貸してくれないのではないか」など意見を出し合っていきました。
 各班の意見がまとまったところで、融資を受けるためには、借りたお金を返済できる「信用」が最も大切であることを進行スライドで確認しました。また、銀行は複数のポイントで融資を行うかどうか審査をしているということをあなたと銀行のかかわり 映像教材 信用が支える金融のしくみ①本編を視聴して確認していきました。

 映像教材で説明があった銀行の審査のポイントは大きく分けて以下の4つです。

 事業内容(公共性):事業が社会に必要とされ、将来的にも継続して経営できるのか
 返済能力(安全性):事業や資金の計画が妥当か、どのくらいの期間で返せるのか、資産はあるか
 成長性:成長するための戦略、将来売上や利益を上げられる可能性があるのか、市場規模やシェアはどのくらいなのか
 経営者の考え方:会社の経営理念、経営者の熱意はどうなのか

 これらの点を踏まえ、融資を受けるためにどのようなことをアピールするかを企業の立場で考え、銀行にプレゼンテーションするロールプレイングを行っていきました。班に分かれて、あなたと銀行のかかわり ワークショップ2ワークシートを見て、自分の班が担当する企業の情報を確認し、まずは個人でワークシートの「成長性」の欄を埋めていきました。個人の意見が出そろったところで、班でそれらの内容をまとめながら、プレゼンテーションの原稿を考えていきました。
 各班のプレゼンテーションがまとまったところで、班の代表(社長)にプレゼンテーションを行ってもらい、他の班の生徒は銀行の融資係の立場から融資をするかしないか決めていきました。

【各班のプレゼン内容】
担当企業(班) プレゼンテーション内容
A(1班) 業界最大手で昨年度の利益が十分にあり、経済能力が高い。 海外進出により、自社のゲームがあまり認知されていない国の情報を得られるようになり、それぞれのニーズに合ったゲーム開発ができるようになる。
A(2班) 昨年度の利益が288億円で、しっかりと返済の見通しがついている。 今よりも多くの人達にゲームを楽しんでもらい、さらに海外の企業から刺激を受けることで新たなゲームソフト開発にもつながっていくと思う。
B(3班) スマホゲームの開発により、ターゲットにできる年齢層が広がることで、新たなユーザーを獲得できるようになる。その結果、今まで以上に利益を得ることができるようになる。
B(4班) 固定ファンは獲得しているので、利益は必ず出すことができる。それに加え、身近なスマホゲームの開発により、今まで以上に利用者が増えることが想定されるため、より一層利益を上げることができる。
C(5班) 世界中全ての年代の人に販売できるようになることで、シェアも拡大し、自社の認知度が上がることで次の事業にもつなげられるようになる。 全世界言語に対応しているので、国と国の架け橋になることができ、世界平和に貢献することができる。
C(6班) 国境を超えたコミュニケーションを生み出すことで、大企業や国同士の架け橋になることができる。 全世界言語に対応しているので、国と国の架け橋になることができ、世界平和に貢献することができる。
【融資の可否】
企業(班) 融資の可否 理由(抜粋)
A(1班) 可 23 ・ 否 0 とても素晴らしいプレゼンでした(可)
理由がしっかりしていた(可)
A(2班) 可 15 ・ 否 8 売上がさらに伸びると考えるから(可)
何ができるのかはっきり分からなかった(否)
B(3班) 可 20 ・ 否 3 キャラクターの特許があるから(可)
その会社だけの特別感がない(否)
B(4班) 可 20 ・ 否 3 どのようにユーザーが増えるのか、具体的だったから(可)
ゲームをしない人もいると思うから(否)
C(5班) 可 9 ・ 否 14 世界優秀アプリという実績があっても難しいと思うから(否)
実績がないので信用できない(否)
C(6班) 可 23 ・ 否 0 経営理念が具体的で、プレゼン内容も濃かった(可)
実現して欲しい商品であり、これから成長しそうだから(可)

 各班への融資可否の結果が出たところで、あなたと銀行のかかわり 映像教材 信用が支える金融のしくみ②解説編を視聴し、社会における「信用」の大切さと銀行の役割について確認しました。

  • 「信用」があるから、人々は銀行にお金を預け、銀行はお金を必要とする個人や企業に融資し、融資を受けた個人が家を購入したり、企業が社会に必要な商品やサービスを提供したりすることができる。
  • 「信用」にもとづいて銀行が融資することが、豊かな社会の実現につながっている。
  • 「信用」は相手が決めること。普段からの姿勢や行動が大切で、それは高校生の今でも、社会に出てからも変わらない。

 生徒たちは、企業と銀行のそれぞれの立場から融資を考える体験を通して、融資において「信用」がなぜ大切なのかを知り、金融のしくみや銀行の役割について実感を持って理解することができたようでした。

 最後に先生から、「この探究の時間は、みなさんが社会に出たとき実際に役立つ、実践的な力を身に付けるための取組みをしています。特にこの5時間は、一人ひとりがお金とどのように関わっていけばよいのかを考えられる時間にしていきたいと思っています」と伝えられ、授業は終了しました。