授業のねらい

 「現代社会」の授業を担当していると、「財政」「税金」「金融機関のしくみ」などの単元において学ぶ経済に関する知識が「暗記すべき事項」としてのみ理解され、自分の人生と結び付て考えることができていないのではないかと思うことが多い。このことは、商業高校で商業科目を学ぶ本校の生徒においても同様で、普通科の生徒以上に多くの経済に関する知識を持ちながらもそれらを人生に生かせる知識として認識できていないのは残念なことであると思う。
 こうした認識にもとづき、現代社会や商業科目の復習を兼ねて、これまでに授業で学んだ知識を「実際に生活に使える知識」として認識し直すことを目的として、授業を構成することを試みた。

教材を活用した授業の実際

社会人のためのお金の知識① そもそもいくら必要なの?

社会人となって一人暮らしをすることを想定し、家賃・光熱水道費・食費その他必要経費・社会保険料・税金などがいくらくらいかかるのかを予想し、新入社員の平均収入と比較して、実際に生活できそうか考えてみる。そのうえで、預貯金の重要性や、今後の人生の中での借金の可能性について理解する。

社会人のためのお金の知識② お金を貯める、お金を増やす

金利についての知識、銀行口座の開き方、金融商品の種類などを学ぶ。テキストとして「ライフステージで学ぶ銀行」を利用し、金融庁DVD教材「はじめての金融ガイド」を視聴する。

社会人のためのお金の知識③ お金を借りる

ローンやクレジットの基礎知識と、返済方法について、そして多重債務の危険性について学ぶ。テキストとして「ライフステージで学ぶ銀行」を利用し、金融庁DVD教材「はじめての金融ガイド」を視聴する

社会人のためのお金の知識④ まとめ

授業のまとめとして、CD-ROM教材「私の夢&銀行」を使い、社会人として必要な知識や金融経済に関する基礎知識について確認を行う。

生徒の感想

お金のことは、今まで親に全て任せていたので、これからは自分で考えていこうと思いました。
金融については商業の授業でも習うので知っている言葉もたくさんあったが、自分の将来と結びつけて考えたことがなかったので、現代社会でも勉強できてよかった。銀行も、必要な時にきちんと利用したいと思った。
あまり興味のない分野だったが、将来必要になることなので、今から知ることができてよかった。銀行や保険のCMはよく見るけれど、実際にどのような内容か分からなかったので難しいイメージをもっていたが、そうではないということが分かった。

先生の感想

 毎年、労働法の学習とあわせて「お金の知識」についての学習を行っていますが、業界団体のHPや教材は非常に大きな助けになっていると感謝しています。  
 今年度利用させていただいた「ライフステージで学ぶ銀行」については、今後の人生の各段階をイメージする助けになったと感じています。しかし、テキストの中でイメージされる「普通の」人生が、生徒たちにとって自分の人生としてイメージし得るものと言えるのか、低賃金の非専門職・非正規雇用で職に就かなければならない場合もある中で、実際の状況と必ずしも一致しないのではないか、という点を懸念しています。  
 そうした点を、自作の教材などで補足していければと考えています。