平成30年1月15日(月)13:35~15:25

 高校卒業を前に、人生とお金との関わりを自分ごととして理解を深めていくために、「社会に出て気をつけたいお金のこと」をテーマに全銀協職員による講師派遣授業が実施されました。
この講義では、自立のために、お金を賢く管理できるようになるためのポイントを学んでいきました。

 はじめに、お金のことについてどれくらい知識を持っているのか三択クイズを通して確認していきました。
 Q1.破けて3分の2になってしまった1,000円札を銀行に持っていくと、いくらで交換してくれるか
  →A1. 1,000円  3分の2以上であれば、1,000円に交換してくれる 
 Q2.平成29年度の大学卒平均初任給は
  →A2. 206,000円
 Q3.広島駅周辺の一人暮らし向けアパート・マンションの家賃相場は
  →A3. 月67,000円
 Q4. 3大キャリアのスマートフォンの費用は平均いくら
  →A4.  月7,800円
 
 社会に出るということは、お金を自分で稼ぎ、稼いだお金の支出を自分で管理するということであり、本時では、自立のために、お金を賢く管理できるようになるための6つのポイントを学んでいくことが伝えられました。
 また、ワークシートの穴埋めをしながら各項目のポイントを理解していくよう講師から指示がありました。

1.人生に必要なお金を知ろう!

 はじめに、3年後、10年後にどのような生活をしていると思うか班で話し合ってみました。生徒からは、「就職をしている」、「結婚をしている」、「子育てをしながら働いている」といった意見がありました。
 人生にはさまざまなライフイベントがあり、ライフイベントごとにお金が必要になります。そこで、大学進学、奨学金、就職活動、結婚、出産、自動車の購入、人生の三大資金(子どもの教育費、住宅の購入、老後の生活費)について必要となる金額を確認していきました。
 奨学金については、日本学生支援機構の制度や奨学金の種類などを確認しました。特に、一定期間返済が滞ってしまった場合には個人信用情報機関に延滞情報が登録され、新たにローンやクレジットの契約ができなくなる可能性があることが説明されました。
 理想の人生にしていくために、ライフプランに必要な資金計画(マネープラン)を立てて、お金を準備していくことが重要であることが伝えられました。

2.働いてお金を稼ぐとは?

 日本の労働人口のうち約8割がサラリーマンという現状から、サラリーマンの初任給、正規雇用と非正規雇用それぞれの特徴、年収の違いを確認しました。
 働き方に優劣があるということではなく、それぞれの価値観によって選択していくべきこと、働くことでどのくらいの収入を得られるかは、基本的にはどのくらいの価値を提供できるかによるので、社会に出るまでに「将来どのような仕事をするのか」を考え、自分が提供できる価値を高めていくことが重要であることが講師から伝えられました。

3.家計管理をしよう!

 家計は収入と支出のバランスで成り立っていること、給与明細の見方を理解し、収入から非消費支出(税金・社会保険料)を引いた残りである手取り収入(可処分所得)の範囲で家計をやりくりすることが必要であることが伝えられました。
 賢いお金の使い方のポイントとして「必要なものか考える習慣をつける」「価格と条件を比べる」こと、「貯蓄をする際は給与から先取りで貯蓄をし、その残りを使えるお金として考えていく」とよいことが伝えられました。

4.いろいろな決済方法を知ろう!

 この1週間で買った物、その際の支払方法を班でまとめて発表していったところ、服や鞄、ゲームソフトを現金で購入したということでした。なお、支払いには使用していませんでしたが、ICOCAのような電子マネーは生徒たちも持っていました。
 買い物(取引)によって発生した義務を「債務」、権利を「債権」、債務・債権を通貨や財・サービスをやり取りすることで解消することを「決済」ということを確認し、いろいろな決済の方法を確認していきました。

  • プリペイドカード:プリペイドは「前払い」という意味で、プリペイドカードはコンビニなどでも手軽に手に入ります。
  • デビットカード:買い物と同時に銀行の口座から代金が引き落とされる仕組みで、口座に入っている金額まで支払いができます。
  • クレジットカード:買い物をした代金を後払いで支払う方法。手元や口座にお金がなくても買い物ができるメリットがありますが、支払能力がないと持つことができません。

 そのほか、銀行振り込みやコンビニでの支払い、代引きなどの決済方法も紹介がありました。
 これらを支払いのタイミングで分けると、

  • 前払い:プリペイドカード、コンビニで支払う、銀行振込み
  • 同時払い:デビットカード、代引き
  • 後払い:クレジットカード

となります。
 ここで、「あなたにとって安心な決済方法はどれですか。また、その理由も考えてみましょう」という質問があり、隣同士で話し合ってみました。話し合った結果を何人かに発表してもらったところ、全員「同時払い」で、理由は「商品とお金をその場でやり取りをするので安心だから」ということでした。
 講師から、「前払い」は商品の未着やサービスの未提供といったリスクがあること、「後払い」は手元に現金がない状態でも商品・サービス等を購入できるため、使い過ぎてしまう危険性があることを踏まえて、自分に合った決済方法を賢く選択する必要があることが伝えられました。

5.クレジットカードの利用は計画的に!

 クレジットカードは後払いの決済方法で、三者間(購入者・加盟店・クレジット会社)の契約により成り立っている仕組みです。クレジットカードを利用した買い物では、商品を購入した時点で購入者はお金を払わず、クレジット会社が加盟店に立替払いをします。その後、購入者がクレジット会社にお金を支払うこととなります。
 クレジットカードが申し込まれると、銀行やクレジット会社などは申込者の信用状況を調査します。個人信用情報機関には、自社だけでなく、他社の借入情報や返済が滞った履歴がないかも記録されており、「1.人生に必要なお金を知ろう」でも説明があったように、奨学金の延滞があった場合も記録されます。
 クレジットカードによる支払方法には、一括払い、分割払い、リボルビング払いがあります。ここで、分割払いとリボルビング払いの違いを、具体的な買い物の事例で考えていきました。3ヶ月間にクレジットカードで18万円分の買い物をした場合、リボルビング払いで毎月2万円ずつ支払うと、支払いが終るのは何ヶ月後になるか、隣同士で話し合い計算をしながら考えていきました(正解は9ヶ月後、手数料は省く)。
 講師からは、利用金額を月々の支払額で割ると答えが出ることが説明されました。
 また、クレジットカードは現金をたくさん持ち歩かなくてよく、分割払いにすれば一度に支払う金額は小さくすることができるなどメリットがある一方、使い過ぎる心配があったり、分割払いやリボルビング払いには手数料がかかるなどデメリットがあることを確認しました。

6.多重債務を考える

 ローンやクレジットの返済が滞り、借金を返済するために新たに借金をし、返済が困難になる状態を多重債務といいます。
 お金のキホン動画を視聴し、どのような理由で多重債務に陥ってしまうのか確認していきました。
 ローン・クレジットは、あくまで必ず返済しなければならない借金であることを理解し、本当に必要なものかよく考えること、また、借りられる金額ではなく返済できる金額の範囲で計画的に利用することの重要性が伝えられました。

 4月から進学や就職で自立した生活をはじめる生徒たちは、お金との関わり方を現実的・具体的に考える機会となったようでした。