11月1日(金)実施

千葉県立佐倉東高等学校レポート1時間目

 全5時間授業の1時間目として、「職業生活を続けるうえで大切な条件を考えてみよう」の授業が実施されました。

 はじめに、大嶋先生からプリントが配布され、黒板に写されたスライド資料を元に、メモをとりながら授業を聞くように指示がありました。「今日は、働く前に皆さんに知っておいてほしいことについて、一緒に考えていきたいと思います。あこがれの会社に就職したとします。でもこんなとき、どうしますか」と先生から問題が提示されました。①会社で手を切って、全治1ヶ月の怪我をしてしまったとき。②がんと宣告され、しばらく入院することになったとき。③結婚し、子どもが生まれるので、産休を取ろうとしたとき。これらの場合、給料の支払いはどうなるのか。 
 生徒たちには見当もつかないようです。「このような場合にどうしたらよいのか、これから1つずつ見ていきます」ここから、企業内の諸制度について理解を深める授業が進んでいきました。 

 まず、「労働法」について。これは、働く人たちを守るための法律で、この法律のもとで、各種保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)が各職場には整備されていること。就職活動をするときに、会社がこれらの各種保険に加入しているかどうか、必ず確認する必要があることが伝えられました。 

 次に、それぞれの保険について確認していきました。「雇用保険」とは、労働者が失業した場合に、次の就職先が決まるまで、「失業給付」というお金を給付してもらえる保険制度のことで、保険料は会社(事業主)と自分(労働者)の双方が負担することが分かりました。ここで大嶋先生から、「給料」は全額もらえるわけではなく、雇用保険料をはじめ、各種の保険料や税金が毎月の給料から天引きされていることが伝えられました。 
 「労災保険」は、業務が原因で怪我、病気、事故、死亡などが発生した場合、国が会社に代わって給付を行う公的な制度で、給料から天引きされるものではなく、保険料は全額会社が負担することが伝えられました。 
 「健康保険」については、「皆さん病院へ行くときに、健康保険証を持っていきますね。健康保険証はなぜ必要なのでしょうか」と大嶋先生から質問を投げかけたところ、1人の生徒から「医療費が安くなるから」との回答がありました。健康保険証を持っていれば、本来かかる医療費の3割負担をするだけで済むこと、健康保険は職業によって何種類かに分かれること、健康保険料は職場(組織)によってそれぞれ異なるので、給料の天引き額にも差があり、手取りの金額に差が出ることが伝えられました。 
 「国民年金」は、労働者が高齢で働けなくなってから給付してもらうために払っていくもので、この年金が高齢化社会で問題になっていることも確認しました。年金の受取り額も、所属する職場(組織)によってそれぞれ異なることも分かりました。 

 次に、賃金のきまりについての説明です。「最低賃金法」という法律により、千葉県では時給の最低額が777円と定められていること、支払われ方にもきまりがあり、①通貨支払いの原則、②直接支払いの原則、③全額支払いの原則、④毎月1回以上の定期支払いの原則、という4つのきまりについて説明されました。「この原則に反している場合、いわゆるブラック企業かもしれません。労働相談センターなどに必ず相談するように」と大嶋先生から補足説明がありました。 

 労働時間のきまりについては、労働基準法で定められており、労働時間が1日8時間、1週間40時間以内、時間外労働(残業)をする場合は、割増賃金となります。 

 休憩時間・休日も定められており、労働時間が1日6時間を超える場合には45分、1日8時間を超える場合には60分の休憩が必要なこと、毎週少なくとも1日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないことになっています。「『完全週休2日制』がこれに相当します」と、先生から補足がありました。この他にも、年次有給休暇や育児休業、介護休業など、さまざまな制度があることも説明されました。 

 まとめでは、「今日学んだ制度の中で、特に強調したいのが『育児休業』です。子どもが出来たからといって、仕事を辞めなければならないわけではありません。育児休業給付金という、給料の50%以上支給される制度がありますので、この制度をきちんと活用するようにしてください。また、就職活動をするときに、その会社の人が育児休業などをとっているかどうか、実績をきちんと調べる必要もあります」と、特に女子の多い調理国際科の生徒へ向けて、大嶋先生が伝えていきました。育児休業に関しては、男性社員もとれているかどうかが、その会社で休暇制度が浸透しているかどうかを知るカギにもなるということでした。 

 最後に大嶋先生から「就職活動をするうえで、ただ『調理がやりたい!』だけではなく、『待遇や各種制度の整った職場』といった視点から職場を探すことも大切です」と伝えられ、授業は終了となりました。