12月20日(水)(3テーマを複数クラスで実施)

 身近で具体的な事例を通して、クレジットカードや電子マネーなどの普及によるキャッシュレス社会の進行、金融経済の多様化などについて学ぶことで、経済的主体として生きるために必要な知識・技能、思考力・判断力、表現力及び態度を養うことを目的として、全国銀行協会の職員による講師派遣授業が実施されました。当日は「金融犯罪の現状と対策」「社会に出て気をつけたいお金のこと」「ローン・クレジットのしくみとお金の使い方」の3テーマを複数クラスで実施していきました。

「金融犯罪の現状と対策」(同内容を3クラスで実施)

 本テーマでは、特殊詐欺の現状、特殊詐欺の手口・対策、その他の金融犯罪の手口と対策について学んでいきました。
 はじめに、消費者トラブルに遭う危険度を心理テストで確認し、自分にどのような傾向があるのかを知ったうえで講義に入っていきました。
 まずは、特殊詐欺の手口の内容について確認していきます。
 「特殊詐欺」は「振り込め詐欺」と「振り込め詐欺以外の特殊詐欺」の大きく2つに分けられます。「振り込め詐欺」には、「オレオレ詐欺」、「架空請求詐欺」、「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」などが含まれます。一方の「振り込め詐欺以外の特殊詐欺」には、「金融商品等取引名目の詐欺」、「ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺」、「異性との交際あっせん名目の詐欺」などが含まれます。
 全国の特殊詐欺被害の推移を見ると、被害件数は5年連続で増加しているものの、被害金額は直近では減少傾向にあります。1件当たりの被害金額が少なくなっているのは、特殊詐欺の手口の変化が理由の一つと考えられます。
 平成28年中の特殊詐欺の被害者を詳しく見てみると、70歳以上の女性が50%超で、70歳以上の男性は約15%です。また、被害者の41.5%は犯人に現金を手渡すか送付しており、口座に振り込ませる被害の42.4%に迫る勢いということが分かりました。

 続いて、特殊詐欺の典型的な手口や特徴、対策を確認していきました。

[オレオレ詐欺]
 息子や孫、警察官や弁護士などになりすましてお金を要求し、預貯金口座に振り込ませるなどして、だまし取る詐欺。

→特徴

  • 息子や孫などになりすまして電話をかけ、会社でのトラブル、横領の補てん名目、借金返済名目などで心配させて、いますぐお金が必要だという話を切り出す。
  • 警察官などになりすまして電話をかけ、犯罪に巻き込まれているなど、不安な気持ちにさせる。
  • 銀行員や銀行協会職員などになりすまして電話をかけ、キャッシュカードをだまし取る手口。


→被害に遭わないためには

 〔1〕固定電話は常に留守番電話に設定しておく

 〔2〕心当たりのない電話番号からの電話には出ない

 〔3〕息子などの元の携帯番号にかけ直す

 〔4〕必ず家族や友人など周囲の人に相談する

 〔5〕知らない人には現金を渡さない

[還付金等詐欺]
 犯人は、市区町村や年金事務所などの職員を装って、「医療費を還付します」「年金を還付します」などと電話をしてきて、金融機関の無人店舗のATMやコンビニのATMから振込みをさせる。その際、携帯電話でATM操作の指示出しをする。 

→被害に遭わないためには

 〔1〕ATMで還付金を返還することは絶対にない

 〔2〕「携帯電話を持ってATMへ」と言われたら詐欺

 〔3〕万一に備えATMの利用限度額を低く設定しておく

[架空請求詐欺]
 アダルトサイトや出会い系サイトの利用料など、身に覚えのない請求が手紙や電子メールなどで届いたり、スマートフォンの画面に表示されたりする。「職場や自宅に取り立てに行く」「裁判手続となる」などの脅迫文を盛り込み、不安をあおって支払いを要求する特徴がある。

→被害に遭わないためには

 〔1〕「すぐに連絡してください」などと書かれていても、焦って連絡しない

 〔2〕身に覚えのない請求には応じない

 〔3〕心当たりのないメールは開かず、怪しいと感じたら削除する

[金融商品等取引名目詐欺]

 電話やダイレクトメール等で、未公開株など架空の有価証券等について、購入すれば利益が得られるなどの虚偽の儲け話をもちかける手口。

→被害に遭わないためには

 〔1〕「名義を貸してくれたら謝礼を払う」「必ず儲かる」などといったうまい投資話を安易に信じない

 〔2〕「現金を宅配便やレターパックで送れ」などという話があれば、詐欺

 〔3〕儲け話の勧誘やトラブルに関する話があった場合、家族や消費生活センターなどに相談する

 上記の他、キャッシュカードの偽造・盗難、インターネットバンキングの不正利用などの金融犯罪についても説明がありました。
 それぞれの手口や特徴、被害に遭わないための具体策を確認していくなかで、生徒たちが金融犯罪の被害について自分事として考えている様子が見られました。
 最後に講師から、今日学んだことを家族や身近な人にも話して共有してもらい、金融犯罪被害の防止に役立ててもらいたいということが伝えられ、講義は終了しました。

「社会に出て気をつけたいお金のこと」(同内容を2クラスで実施)

 本テーマでは、自立のために、お金を賢く管理できるようになるためのポイントを学んでいきました。
 はじめに、お金に関する三択クイズに挑戦していきました。

Q1.破けて3分の2になってしまった1,000円札を銀行に持っていくと、いくらで交換してくれる?
 → A1. 1,000円 (3分の2以上であれば、1,000円に交換してくれる)

Q2. 平成29年度の大学卒平均初任給は?
 → A2. 206,000円

Q3.湘南台駅周辺の一人暮らし向けアパート・マンションの家賃相場は?
 → A3. 月約59,000円

Q4.3大キャリアのスマートフォンの費用は平均いくら?
 → A4.  月7,900円

 ここで、社会に出るということは、お金を自分で稼ぎ、稼いだお金の支出を自分で管理することであるということ、本時では、自立のため、お金を賢く管理できるようになるための4つのポイントを学んでいくことが伝えられ、授業を進めていきました。

1.ちょっとずつでも貯める
 まずは「ちょっとずつでも貯める」ことについて考えていきました。
 ある調査によれば、仕事をしている30歳未満の独身の人の貯蓄額は約180万円、また、20歳代の若者約8割が毎月貯蓄をしているということです。貯蓄の目的(複数回答可)としては、「いざという時のため」が65.1%と最も多く、「旅行資金」が28.3%、「病気や事故の備え」が27.1%でした。ここで講師から、「旅行資金」など、貯蓄の目的が明確になっている方が、お金は貯めやすいということが伝えられました。
 続いて、人生のイベントにかかる具体的な費用(自分の学費、結婚、出産、住宅購入、子どもの教育費、老後の生活費など)を確認し、どの費用もすぐに貯めることは難しいので、就職をしてから少しずつ貯めていく必要があることが伝えられました。
 また、お金を貯める確実な方法として、収入から支出を引いた残りを貯めていくのではなく、収入からまず貯蓄分を先取りし、残ったお金で生活に必要な支出をしていく方法について説明がありました。具体的には、給与天引きの貯蓄、自動積立定期預金、給与振込口座と別に生活口座を作るといった方法が紹介されました。

2.金融サービスを賢く利用
 日常生活におけるお買い物など、商品やサービスを購入することは「契約をする」ということですが、そもそも「契約」とは何なのか、確認していきました。
 契約とは、法的責任を伴う約束のことで、いったん契約すると、その内容を守らなければいけません。日常生活の買い物も契約で、契約書などを取交さなくても契約は成立します。契約は、自分の都合で勝手にやめることはできないので、契約前に必要な情報を集めることが大切になります。
 契約前に必要な情報を集めることが大切なのは、金融サービスにおいても同じです。例として、新車を自動車ローンで購入するケースを考えていくことにしました。自動車ローンは、金融機関のほか、自動車販売店でも扱っている商品ですが、申込みのしやすさ、ローンを利用するための審査の厳しさ、金利の高低など、それぞれメリット・デメリットがあります。そのため、条件を比較検討したうえで活用することが大切になります。特に、金利の違いは、支払い総額の違いに直結するので、きちんと確認する必要があることが伝えられました。

3.クレジットの使い過ぎに注意
 クレジットカードは、消費者の信用(クレジット)にもとづいて発行されるカードであり、このカードを使うことで、代金後払いで商品購入などのサービスを受けることができます。
 これは三者間(購入者、加盟店、クレジット会社)の契約により成り立つ仕組みです。具体的には、購入者の商品購入代金をクレジット会社が加盟店に立て替え払いをし、購入者は後からクレジットカード会社にお金を支払う仕組みとなっています。
 クレジットカードは便利な反面、現金のやり取りではないのでお金を使っているという感覚が薄くなり、ついつい使い過ぎる心配もあります。
 ここで、クレジットカードでお金を使い過ぎてしまい多重債務に陥ってしまった大学生の動画を視聴し、クレジットカードのメリットとデメリット、注意点を具体的に確認していきました。
 クレジットカードを使った買い物は借金と同じであること、返済できず延滞すると個人信用情報機関に信用情報が登録され、最終的には自己破産などで債務整理しなければならない事態となる可能性もあるということが分かりました。

4.おいしい儲け話は危険
 お金にまつわるトラブルの一つに「銀行口座の売買」があります。簡単に高額なアルバイト代を手にすることができるため、犯罪に加担しているという意識がない場合もあるそうです。銀行口座の売買は犯罪なので絶対にしてはいけないということが伝えられました。
 また、銀行口座の売買以外にも、安易で不審なアルバイトの誘いには絶対に乗らないようにしてほしいということが講師から伝えられました。

 最後に、今日の講義で学んだ4つのポイントを理解して、これからの生活の中で、お金を賢く管理していってほしいということが講師から伝えられ、講義は終了しました。

「ローン・クレジットのしくみとお金の使い方」(同内容を2クラスで実施)

 本テーマでは、いろいろな決済方法、ローン・クレジットを活用するときのポイントについて学んでいきました。
 「この1週間で何を買ったか、その際の支払い方法を教えてください」という質問から講義は始まりました。生徒からは「自動販売機で飲み物を購入し、支払いはPASMOで行った」という回答がありました。PASMOは現金ではなく、電子マネーの一つです。ここで、買い物(取引)によって発生した義務を「債務」、権利を「債権」、債務・債権を、通貨や財・サービスでやり取りすることで解消することを「決済」ということを確認し、色々な決済手段について以下のとおり説明がありました。

  • プリペイドカード:プリペイドは「前払」という意味で、コンビニなどで手軽に手に入る。
  • デビットカード:買い物をするのと同時に銀行の口座から代金が引き落とされる仕組みで、口座に入っている金額までなら現金を持たずに買い物ができる。
  • クレジットカード:買い物をした代金を後払いで支払う方法。手元や口座にお金がなくても買い物ができるメリットがあるが、支払い能力に信用がないと持つことができない。


 そのほか、銀行振り込みやコンビニでの支払い、代引きなどの決済方法もあり、支払いのタイミングで分けると、

  • 前払い:プリペイドカード、コンビニで支払う、銀行振込み
  • 同時払い:デビットカード、代引き
  • 後払い:クレジットカード

となります。
 ここで「あなたにとって安心な決済方法はどれですか」という質問があり、理由も併せて、隣の生徒同士で話し合っていきました。話合いが終わった後、何人かに発表してもらうと「同時払い」が多く、「その場でやり取りをするので安心だから」という理由があがりました。
 ここで講師から、「前払い」は商品の未着やサービスの未提供といったリスクがあること、「後払い」は手元に現金がない状態でも商品・サービス等を購入できるため使い過ぎてしまう可能性があることが説明され、メリット・デメリットを踏まえて自分に合った決済方法を賢く選択する必要があることが伝えられました。

 次に、クレジットカードの仕組みとメリット・デメリットについて確認をしていきました。
 クレジットカードは、後払いの決済方法で三者間契約(購入者・加盟店・クレジット会社)です。商品を購入した時点で購入者は代金を払わず、クレジットカード会社が加盟店にその代金を立替払いし、その後、購入者がクレジットカード会社に代金を支払うという仕組みです。
 クレジットカードが申し込まれると、銀行やクレジット会社などは申込者の信用を調査します。「個人信用情報機関」には、自社だけでなく、他社の借入れ情報や返済が滞った履歴がないかも記録されます。
 クレジットカードによる支払い方法には、一括払い、分割払い、リボルビング払いがあります。ここで、分割払いとリボルビング払いの違いを考えていきました。3ヶ月間にクレジットカードで18万円分の買い物をした場合(手数料は省く)、リボルビング払いで毎月2万円ずつ支払うと、支払いが終わるのは何ヶ月後になるか、隣同士で話し合い、計算していきました(正解は9ヶ月後)。
 クレジットカードは現金をたくさん持ち歩かなくてよく、分割払いにすれば一度に支払う金額は小さくすることができるなどメリットがある一方、使い過ぎる心配があったり、分割払いやリボルビング払いには手数料がかかるなどデメリットがあることを確認しました。

 続いて、ローンの仕組みについて確認していきました。
 生徒たちが持っているローンのイメージを発表してもらうと、「家を買う」、「35年ローン」などの意見が出ました。大きな買い物をする際に活用するものだというイメージを持っている生徒は多いようです。
 ここで、人生の中での大きな買い物(支出)について確認していきました。子どもの教育、住宅の購入、老後の生活にかかるお金は「人生の三大資金」と呼ばれ、それぞれ一般的に1,000万円以上の資金が必要となります。
 そういった資金を準備するには、貯蓄の他、ローンを活用するという方法もあります。ローンを活用すると、欲しいものを欲しい時に手に入れることができますが、金利をつけて返済しなければならず、自分の貯蓄で購入するよりも大きいお金が必要となるため、計画的に利用する必要があります。
 ここで、金利とはお金の使用料のことで、同じ種類のローンでも金融機関によって金利は異なること、金利は常に一定ではなく、国内の景気や物価等によって常に変動していることから、比較検討することが大切であることが伝えられました。
 代表的な例として、住宅ローンについて確認していきました。
 住宅購入時の「頭金」とは、住宅購入にあたって自分の貯蓄として準備するお金のことですが、この頭金を多く用意することで住宅ローンによる借入金額を減らすことができ、その分総支払額も減らすことができることが説明されました。生徒たちは、頭金をどのくらい用意するかがローンを活用する場合の一つのポイントとなることが分かった様子でした。
 ローンは、お金を借りて利息とともに後から少しずつ返していくことであり、活用する場合には、借入金額、期間、金利を考えてしっかり選ぶことの重要性が分かりました。

 最後に講師から、クレジットやローン利用する際には、今日学んだことを踏まえて賢く活用し、今後の人生を豊かにしていってほしいということが伝えられ、講義は終了しました。