将来のためにできること、それが資産形成
将来に対する不安はいろいろ。
準備した老後資金は足りるだろうか。これから物価はどうなるのだろうか。それに備えるのが「資産形成」。運用を部分的に取り入れ、効果的に資産を増やしていくことは、ライフプランを実現するための有効な手段なのです。
資産形成のための基礎知識
資産形成の必要性
少子高齢化は運用の必要性を高める要因に
日本人の平均寿命は過去から比べて大きく延びている一方で、年金の支え手が減り続けているため、公的年金はジワジワと目減りしています。このまま少子化が解消されないと、老後資金の必要額はますます増えていくのです。長生きがお金の面ではリスクとなってしまう現在、運用無くして、老後資金を準備するのは難しい時代となってきています。
インフレが継続するとお金の価値は下落していく
景気と物価の波は常に変動しています。この波は私達の家計にも関わっており、たとえばインフレになると、同じものを買うのにも多くのお金を払わなければなりません。つまりお金の価値が下落してしまったことになります。お金をただ保有しているだけではリスクもあるのです。
図のように1%ずつの物価上昇でも、 長い目で見ると、お金の価値が大きく下落してしまいます。
少子高齢化が進むことによる年金への不安、インフレによるお金の価値の下落など、私達のお金にはリスクがつきまといます。資産運用によってリスクを軽減し、効果的に資産を増やしていくことは、資産を守る有効な手段になります。
資産運用の世界におけるリスクとリターンの意味を知ろう
資産運用を始めるに当たっては、リスクとリターンの関係をしっかり理解することが大切です。なぜなら運用状況によって、投じた資金(元金)が減ってしまう可能性もあるからです。運用の世界のリスクとは、単に損失のことではなく、利益と損失の振れ幅を意味します。つまり、大きな利益を見込めるものは、大きな損失も出やすいということになります。
金融商品ごとのリスクとリターンを確認し、どの程度のリスクなら受け容れられるのか、よく考えてから始めましょう。
資産形成のための積立投資の基本
安定した投資に大切なのは、まず「長期運用」と「分散投資」です。コツコツ積み立てながら長期運用を行い、投資先を分散していくことで、リスクを抑えながらリターンを高めることを目指しましょう。投資で得られた利益を再投資して複利の力を活かすほか、ドル・コスト平均法を用いて、継続的に運用を行うことがポイントです。
長期運用の意義
短期では利益の振れ幅が大きい場合でも、運用期間が長くなればなるほど、平均的な利益率に収束していく傾向があり、安定的に利益を上げることが期待できます。
分散投資の意義
少数の限られた商品に集中して投資を行うと、損失が出たときの影響が非常に大きくなります。逆に様々な商品に分散して投資を行うことで、投資全体のリスクを軽減することができます。
分配金等を再投資して、複利の力を活かそう!
投資信託等で得られた利益を再投資して継続的に運用し、利益が利益を生む状況を作ることで、 大きなリターンが期待できます。複利は運用期間が長くなるほど効果が高まるため、なるべく早めに投資を始めることをおすすめします。
平均購入単価が安定する「ドル・コスト平均法」で買おう!
「ドル・コスト平均法」(定額購入法)とは、投資信託などの価格が変動する商品を、「定期的に、一定の金額で」購入する方法のことを言います。例では、毎月1万円ずつ積み立てた場合、1万口あたり、平均で9,797円で購入することができ、毎月一定口数を購入する場合よりも、平均購入単価が安定していることがわかります。
- 上記は「ドル・コスト平均法」を活用することで平均購入単価が安定することを示した事例ですが、必ずしもすべての事例にあてはまるものではありません。また、購入時の手数料等は考慮していません。
- 「ドル・コスト平均法」は、将来の利益を約束したり、相場下落時における損失を防止するものではありません。
資産形成に役立つ制度「NISA(少額投資非課税制度)」
NISAのメリットは投資信託等の売却益などが非課税になること
NISAは、国民の安定的な資産形成を後押しするため、国が設けた少額投資非課税制度です。
NISAを活用すれば、NISA口座で投資した投資信託等の売却益、配当金・分配金にかかる税金が非課税になります。
NISAのポイント
- 恒久的な制度(投資可能期間)
- 非課税保有期間(投資信託等を非課税で持てる期間)が無期限
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能
- 年間投資枠は360万円(つみたて投資枠:120万円、成長投資枠:240万円)
- 非課税保有限度額は、全体で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)
- 非課税保有限度額は、簿価(購入価額)で管理され、売却後は空枠の再利用が可能
NISA口座を開設するには
- 日本国内に住んでいる18歳以上(※)の方ならどなたでも開設可能です。
(※)利用する年の1月1日時点で18歳以上の成人の方が対象。 - 口座は1人につき1口座のみ開設可能です。
- 金融機関変更は、年単位であれば可能です。
NISA口座開設までの手順
- なお、金融機関によって、取扱金融商品や各種手数料が異なります。
- 自身の考えに適した金融機関かどうか、事前にウェブサイトなどでよく確認しましょう。
投資信託の選び方
- 投資信託には、どのような国・地域に投資するか、どのような方針で運用するかなどによって分類されます。
- 自身の考えに適した投資信託なのか、しっかり理解したうえで選択することが大切です。
投資対象地域
- 国内
- 国内外
- 海外
- 先進国
- 新興国
- 特定の
エリア - 特定の国
投資対象資産
- 株式
- 債券
- その他
- バランス
- 株式
- 債券
- その他
運用方針
- インデックス運用指数の動きに連動するように運用
- アクティブ運用目安となる指数を上回る成績を目指す運用
購入タイミング
- 追加型いつもでも購入可能
- 単位型募集当初のみ購入可能
投資信託を購入する前に
- 投資信託を購入する前には、「交付目論見書」で、その投資信託の重要な情報を必ず確認しましょう。
- 「交付目論見書」を確認することで、投資信託の目的・特色、リスク、運用実績、手数料等について知ることができます。
確認できる主な項目
[1] 投資信託の目的・特色
どのような運用を目指すのか、どんな資産に投資するのか、どこに投資するのかなど、投資信託の「基本的な特徴」が分かります。自分の投資目的に合っている投資信託か確認しましょう。
[2] 投資リスク
価格変動リスクや金利変動リスク、為替変動リスクなど、投資信託の基準価額の変動に影響を与える「リスク」について確認できます。どのようなリスクがあるのかをしっかり確認しましょう。
[3] 運用実績
基準価額や純資産、分配金、年間収益率の推移など過去の運用実績をグラフなどを交えながら確認できます。
[4] 手続き・手数料等
購入や売却時の手続き、手数料等(※)について確認できます。
※主な手数料等
- 購入時
- 購入時手数料:購入時に販売会社に支払う費用。申込価額の数%をその費用として支払います。まれに換金時に支払うこともあります。ファンドや販売会社によってはこの費用がかからない場合もあり、購入時手数料がかからないことをノーロード、また、購入時手数料のかからない投資信託をノーロードファンドと呼びます。
- 保有時
- 運用管理費用(信託報酬):投資信託を保有している間、投資信託の保有額に応じて日々支払う費用。年率でいくら支払うのか、目論見書などに記載されています。
- 売却時
- 信託財産留保額:投資信託を購入または解約する際、手数料とは別に徴収される費用。販売会社が受け取るのではなく信託財産に留保されます。投資信託によって差し引かれるものと差し引かれないものがあります。
資産形成に役立つ制度「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
- iDeCoとは、公的年金に上乗せして給付を受けることができる私的年金制度の1つです。
- 毎月5,000円以上1,000円単位で掛金の積立を行い、自分で選んだ投資信託等の運用商品を活用し、資産を運用しながら老後資金を蓄えることができます。
iDeCoのメリットとは
- iDeCoのメリットは3つの税制優遇にあります。
- 一方で、原則として60歳までは引き出しができないため、教育資金や住宅資金などは他の方法で蓄える必要がある点に注意が必要です。
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- 拠出時掛金が全額所得控除に
- iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象になります。
サラリーマンの場合、毎月の給料の一定割合を所得税や住民税として国や地方自治体に納めていますが、基本的に、給料のうち、iDeCoの掛金に相当する分には、税金がかかりません。
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- 運用時運用時の課税はなし
- 通常、株や債券などの金融商品を運用する場合、その運用益に対して20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの運用時の運用益は非課税です。
積立金に対して年1.173%で課税する特別法人税は、現在、課税が停止されているため、運用時に課税されることはありません。
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- 受取時所得控除の対象に
- iDeCoの年金資産は原則として60歳から受け取りが可能です。年金として定期的に受け取る方法と一時金として一括で受け取る方法(またはその組み合わせ)がありますが、年金として受け取れば「公的年金等控除」、一時金で受け取れば「退職所得控除」の対象になります。
iDeCoの加入資格と拠出限度額
- 国民年金の被保険者であれば原則加入(※)できますが、就労状況により加入資格や拠出限度額が異なります。
- 掛金は月額5,000円以上から、1,000円単位で決められます。
- 就労状況等によっては、掛金の拠出を1年単位で考え、加入者が年1回以上任意に決めた月にまとめて拠出することも可能です。
(※)加入資格の詳細は、国民年金基金連合会ウェブサイト をご覧ください。
加入資格と拠出限度額の関係
加入資格 | 拠出限度額 | ||
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自営業者等(第1号被保険者・任意加入被保険者) | 月額6.8万円 (国民年金基金または国民年金付加保険料との合算枠) | ||
会社員・公務員 (第2号被保険者) | 会社に企業年金がない会社員 | 月額2.3万円 | |
企業型確定拠出年金のみに加入している会社員 | 月額5.5万円-(各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額+確定給付企業年金等の他制度掛金相当額)(ただし、月額2.0万円を上限) | ||
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に加入している会社員 | |||
確定給付企業年金のみに加入している会社員 | |||
公務員 | |||
専業主婦(夫)(第3号被保険者) | 月額2.3万円 |
金融機関(運営管理機関)の選び方
- iDeCoを始める際には、窓口となる金融機関を選ぶ必要があります。
- iDeCoは、銀行のほかに、証券会社や生命保険会社でも取り扱っていますが、それぞれ取り扱う商品や手数料等に違いがありますので、よく調べておきましょう。
- [1] 取扱商品
- iDeCoでは、自分でどの金融商品をどれくらいの割合で運用するか指定する必要があります。 そのため、選択する金融機関において、自分が指定したい金融商品(特に投資信託)を取り扱っているかよく調べておきましょう。
- [2] サポート体制
- コールセンターの対応時間や、書類・Webサイトの見やすさといった運営管理機関のサポート体制も重要な視点です。金融機関によっては、iDeCoを含めた資産形成に関するセミナー等も実施しています。
- [3] 手数料
- iDeCoの口座には、加入時手数料や口座管理手数料等の手数料がかかります。口座管理手数料については、運営管理機関によって金額が異なります。
また、[1]の取扱商品にも関係しますが、投資信託は商品によって信託報酬等の手数料が異なります。iDeCoは長期保有を前提とした制度ですので、運用中に発生する手数料についてもしっかり比較検討することが必要です。
iDeCo口座を開設するには
- iDeCo口座を開設するには、iDeCoを取り扱っている金融機関に「加入申出書」を提出する必要があります。
- 「加入申出書」は各金融機関から取り寄せることができますが、一部の金融機関では加入手続きをオンラインで行うことも可能です。
- 会社員の方で、勤務先を通じて拠出する場合は、事業主の証明書が必要になりますので、勤務先の担当部署などに確認しておきましょう。
銀行の店舗を探す
- 銀行の店舗は以下のリンクから探すことができます。
- 銀行によっては、NISAやiDeCoの取扱いをしていない場合がありますので、該当の銀行のウェブサイトをご確認ください。
よくあるご質問
資産形成の基礎について
Q1 資産形成を始めるために、まずは毎月しっかり貯蓄をしたいけど、なかなかできません。どうすれば毎月、計画的に貯蓄できますか?
無理な節約よりも効率的な家計の見直しを
毎月しっかりと貯蓄するには、まずは支出の中身を把握し、不要な支出を減らすことから始めましょう。
支出には、食費などの変動費と通信費(スマホ料金等)や住居費(家賃等)などの固定費があります。
家計を見直す場合は、固定費から手をつけるのがお勧めです。
毎月確実に必要となる支出だからこそ、それぞれの見直し額はわずかでも、一度の見直しで長期的な削減効果が見込めるからです。
「先取り貯蓄」の習慣付けがポイント
家計における貯蓄の基本は「収入-貯蓄=生活費」。すなわち、先に貯蓄分を引いてしまう、「先取り貯蓄」を実践することです。そして、残った資金=予算で生活をやりくりするよう家計管理をしていく、その習慣付けがとても重要です。
つみたてNISAやiDeCoを利用して毎月口座から自動的に引き落とす手段もありますし、「勤労者財産形成制度」を利用して、給与から直接天引きされるようにする手段もあります。普段使いしている口座に残高があるとつい使ってしまいがちな方にお勧めです。
(※お勤め先によっては、iDeCoの掛金を給与天引きすることも可能です。)
Q2 資産形成を始める必要性は分かったけど、実際にはどれくらいの金額を備えておく必要がありますか?
資産形成を考える上でまず知っておきたいのが、人の一生にはいろいろな「ライフイベント」があるということです。
若い人であれば、進学や就職などが該当します。そしてそれらイベントには、個々に差こそありますが、ほとんどの場合で資金が必要となります。中でも大きな額が必要とされるイベントが「住宅資金」「教育資金」そして「老後資金」です。これらは「人生の三大資金」とも言われています。
まずは「住宅資金」についてですが、新築の注文住宅や分譲マンションを取得するケースでは、平均で5,000万円弱の資金が必要といわれています。
次に「教育資金」は、授業料や入学金だけでなく、習い事や塾の月謝などが追加で必要なこともあります。幼稚園から大学卒業までの必要資金は、1人につき1,000万~2,500万円ともいわれます。
最後に「老後資金」ですが、老後の生活が始まるまでに2,000万円の準備が必要と試算されています。「教育資金」が不要となる場合であっても、ほぼすべての人に訪れる老後に備えた資金は、将来の介護費用などを含め、多めに用意しておきたいところです。また、賃貸住宅に住む選択をした場合は、老後の家賃分もしっかり準備しておくことが必要です。
NISAについて
Q3 NISA口座で生じた損益について、確定申告は必要ですか。
NISA口座で生じた利益は非課税となるため、確定申告の必要はありません。
なお、NISA口座で生じた損失は、税務上ないものとみなされます。
Q4 一度開設したNISA口座を別の金融機関に変更することはできますか。
変更できます。ただし、金融機関を変更する場合は、変更したい年の前年の10月1日から、変更したい年の9月30日までの間に、次の手続きを行う必要があります。
[1] 変更前の金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出し、「勘定廃止通知書」の交付を受ける。
[2] 変更しようとする金融機関に、「勘定廃止通知書」および「非課税口座開設届出書」を提出する。
なお、変更したい年の1月1日以降、変更前の金融機関のNISA口座で買付けを行った場合には、その年については金融機関を変更することはできません。
Q5 どこでNISA口座を開設していたか忘れてしまいました。調べる方法はありますか。
最寄りの税務署の窓口、または、郵送による照会で調べることができます。
過去にe-Taxで確定申告をした方で、利用者識別番号を所有し、かつ、当該確認を行うまでにマイナンバーを記載した申告書等を税務署へ提出したことがある方であれば、e-Taxのマイページでも確認することができます。
※国税庁ウェブサイト:NISA口座の開設状況をe-taxで確認できるようになりました
iDeCoについて
Q6 専業主婦(夫)ですが、iDeCoを始めるメリットはありますか。
iDeCoのメリットのひとつである、積み立て時の掛け金が全額所得控除されるという点について、専業主婦(夫)で、無収入、または収入が一定額以下の場合、そもそも所得税や住民税を払っていませんので、この所得控除のメリットを受けることは出来ません。 ですが、iDeCoの受給(掛け金の引出し)は、一時金として受け取れば「退職所得控除」、年金(5〜20年の有期年金)として受け取れば「公的年金等控除」が適用となります。前者は退職金、後者は公的年金との合算で税額を計算するため、それらの支給が多い場合は課税される場合がありますが、専業主婦は一般的に退職金はなく、公的年金の額は少ないため、受給時に課税されることなく受け取れる可能性が高いです。
Q7 引き落とし口座の残高不足で掛金の納付ができなかったのですが、翌月以降に追加納付できますか。
掛金の追納はできません。預金口座の残高不足などの理由で掛金が引落しされなかった場合、その月の掛金は追納することはできませんので、引き落とし日の前には口座残高を確認しておきましょう。
Q8 iDeCoを中途解約することはできますか。
iDeCoは、老後の資産形成を目的とした年金制度であることを理由に税制優遇措置が講じられており、一般の貯蓄等とは異なります。加入後は、原則、60歳以降の受給年齢に到達するまで、資産を引き出すことができません。
掛金の拠出の継続を希望されない場合は、iDeCoの加入者資格を喪失する手続きを行い、「運用指図者」として、それまでの積立金の運用を継続いただく必要があります。なお、例外として、脱退一時金の給付がありますが、国民年金の保険料免除者になるなどの一定の要件を全て満たした場合に限られます。
関連リンク
※ このページは、2024年1月1日現在の法令等にもとづき記載しています。