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企業に期待される取組み

カーボンニュートラルへ向けた取組⼿順いま、「やらなければならない」こと

気候変動は、中⻑期的に企業に影響を及ぼし、企業の持続可能性にも直結する問題です。
(「気候変動問題とは?」−「気候変動による事業活動への影響」参照)
⼀⽅で、短期間で対応することは困難であることが多いため、各企業においては、
⽬標と計画を早期に定め、脱炭素に向けた着実な取組みが必要と考えられます。

気候変動に関連する影響は産業や地域ごとの特性等により異なり、個々の企業や地域の脱炭素化への道筋は必ずしも⼀様ではありません。
それらを踏まえ、企業と銀⾏双⽅が密な連携・協⼒を⾏いながら、気候変動対応を進めることが重要と考えられます(「銀⾏界における取組み」−「銀⾏の取組み」参照)。

1 経営の重要課題として認識する

まずは、気候変動対応を経営上の重要課題と認識することが⼤切です。様々な媒体を利⽤しながら情報収集を⾏い、検討に活かしていくことも有⽤です(「お役⽴ちリンク集」参照)。

全国銀行協会、全国地方銀行協会および第二地方銀行協会の3者で共同して取りまとめた「脱炭素経営に向けたはじめの一歩」や「CO2見える化とその先に」もぜひご活用ください(「参考となるガイドライン等」参照)。

2 温室効果ガス排出量の現状を把握する

準備段階として、⾃社の温室効果ガスの排出量を把握します。⾃社への影響や今後の⽬標・計画を策定するうえで、現状を認識することが不可⽋です。可視化することによって、エネルギーの無駄を把握したり、ステークホルダーからの求めに応じて⾃社の温室効果ガスの排出量を開⽰したりすることもできるようになります。

温室効果ガスの算定に当たっては、さまざまなソリューションが存在しています。⼀部の⾦融機関等が提供する温室効果ガス排出量算定サービスを利⽤することも考えられますが、⽇本商⼯会議所が提供する無償の「CO2チェックシート」を活⽤すれば、簡易的な算定が可能です。電⼒・灯油・都市ガス等のエネルギー種別ごとに毎⽉の使⽤量・料⾦を⼊⼒するだけで、CO2排出量やエネルギー使⽤量が⾃動で計算されます。

CO2チェックシートダウンロード
(「日商環境ナビ」ページへのリンク)

3 気候変動がもたらす⾃社リスク・機会を整理する

次に、気候変動がもたらす⾃社にとってのリスクおよび機会を整理し、⾃社への影響度や⾃社にとっての重要課題を特定します。

リスク・機会の洗出しポイント1

気候変動がもたらす影響は、産業や地域ごとにさまざまですが、まずは考えられる具体的なリスクおよび機会を洗い出し、⼀覧化します。それらを分類する際には、物理的リスク・機会および移⾏リスク・機会という切り⼝で検討することも有⽤です。

(出所:環境省「TCFDを活⽤した経営戦略⽴案のススメ〜気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド 2021年度版」)

定性的に評価ポイント2

⾃社へのリスクおよび機会を定量的に評価することは困難であることも多いため、まずは定性的な評価から始めます。
⾃社のビジネスモデル等を踏まえ、起こり得る影響は何かを検討し、影響の⼤きさも踏まえて、それぞれのリスクおよび機会の重要度を特定します。

シナリオ分析ポイント3

こうした評価をより詳しく⾏う場合には、シナリオ分析を⾏う⽅法もあります。
シナリオ分析とは、⾃社独⾃のシナリオや国際機関等が定めるシナリオに沿って、気候変動の⾃社への影響を詳細に分析する⼿法です。

すべての取組みを最初から⾏うことは困難であるため、まずはできるところからスタートし、段階的に発展させていくことが重要です。

4 各リスク・機会への対応を検討する

影響把握の分析結果を踏まえて、気候変動対応に係る戦略・⽅針・移⾏計画等を策定します。重要度に従って優先順位をつけることも有⽤です。

温室効果ガス排出量の削減を検討ポイント1

仮に⼗分な影響把握ができていない場合であっても、まずは⾒える化によって把握した⾃社の温室効果ガス排出量の削減を検討していくことが重要です。これにより、光熱費や燃料費の低減といった経営改善を図れるだけでなく、取引先からの脱炭素化への要請にも応えつつ、将来の気候変動リスクに備えることにもつながります。

取り組みやすい対策から着⼿ポイント2

まずは取り組みやすい対策から始め、中⻑期的に取り組んでいく対策についても、計画的に削減していく計画を⽴てることが望まれます。

温室効果ガス排出量削減対策の例

  • ⻑期的なエネルギー転換(エネルギーを温室効果ガス排出の⼩さいものに転換)
  • 省エネ対策(既存設備の運⽤改善、効率のよい設備の導⼊等)
  • 再⽣可能エネルギーの導⼊

など

こうした取組みを進めるに当たっては、専⾨的な⾒地からのアドバイスや資⾦調達も必要となり得ることから、企業と銀⾏双⽅で密な連携を取り、協⼒しながら対応を検討することが重要です。

5 策定した施策を推進する

策定した計画等に沿って、⾃社のカーボンニュートラル実現に向けた施策を進めていきます。

社内外に情報公開するポイント1

計画や対応状況等を社内外に積極的に開⽰することが望まれます。取組みを進めていくには社内の理解醸成や協⼒が不可⽋です。また、社外にも開⽰することで⾃社の取組みをアピールすることにもつながりますし、ステークホルダーとの建設的な対話や、事業の継続的な成⻑に向けた資⾦の調達にもつながります。

情報開⽰を⾏う場合も、最初から完璧である必要はなく、開⽰できる情報から取り組み、段階的にブラッシュアップしていくことが重要です。

事例

X社は、アスファルト合材の製造・販売、道路建設⼯事、建築・解体⼯事、燃料⽤チップの製造・販売等、さまざまな事業を⼿掛けています。アスファルト事業では、各種アスファルト合材の製造、舗装施⼯、リサイクルまでのサービスをワンストップで提供しています。
同社の CO2 排出量を⼤幅削減するためには、アスファルト合材製造過程に加熱⽤として使⽤している A 重油の対策が鍵となるため、モデル事業では A 重油の燃料転換を重点的に検討しました。燃料転換や省エネ対策による CO2 排出量削減の検討を踏まえ、SBT ⽬標を確実に達成するため、さらに再エネ電気の調達を検討しました。これらの対策により、CO2 排出量削減だけでなく、A 重油タンクの撤去により、安全性や作業効率性の向上、メンテナンス費⽤の削減といった効果やメリットが期待されます。


(出所:環境省「中⼩規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

6 参考となるガイドライン等

具体的な取組みを進めるに当たっては、以下のガイダンス等をご参照ください。
また、国や⾃治体においても、企業の取組みを⽀援するための補助制度(補助⾦・税制)や情報発信を⾏っています。詳しくは、「お役⽴ちリンク集」に掲載している関係ウェブサイトもご覧ください。

対応事項 ガイドライン等
リスク・機会の
整理・評価
環境認識
現状把握
全銀協・地銀協・第二地銀協「脱炭素経営に向けたはじめの一歩」
気候変動の基礎知識、脱炭素経営が必要な理由のほか、脱炭素経営セルフチェックリスト(例)により、自社の取組み状況を確認するためのガイド。
全銀協・地銀協・第二地銀協「CO2見える化とその先に」
主に中堅・中小企業における脱炭素経営の一助となることを目指し、脱炭素を巡る動向、脱炭素経営の必要性、脱炭素経営に向けた具体的な取組みのポイントを整理したもの。
環境省「中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック~これから脱炭素化へ取り組む事業者の皆様へ~」
これから脱炭素経営の取組みをスタートする中小規模事業者を対象に、脱炭素経営のメリットおよび取組方法について解説するもの。併せて参考ツールとして企業の取組事例やパンフレット、解説動画が掲載。
環境省「民間企業の方のための気候変動適応ガイド-気候リスクに備え、勝ち残るために-」
気候変動適応を推進する際に参考となる情報や考え方を紹介するもの。
⽇本商⼯会議所「CO2チェックシート」
企業活動におけるCO2排出量を把握し、対策を講じる場合にどこから着⼿すれば良いのかを検証するためのツール。
シナリオ分析 環境省「TCFDを活⽤した経営戦略⽴案のススメ〜気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド〜」
TCFD提⾔に沿った情報開⽰に向け、企業の気候関連リスク・機会に関するシナリオ分析を⾏う具体的な⼿順を解説したもの。
戦略・対応⽅針・
移⾏計画の検討
対応検討 環境省「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック」
企業が中⻑期的視点から全社⼀丸となって取り組むべく、成⻑戦略としての排出削減計画の策定に向けた検討の⼿順、視点、国内外企業の事例、参考データを整理したもの。
環境省「中⼩規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック-温室効果ガス削減目標を達成するために-」
中⼩企業における中⻑期の削減計画の策定に向け、中⼩企業が取り組むメリットを紹介するとともに、省エネや再エネの活⽤や削減対策の計画への取りまとめ等の検討⼿順を整理したもの。
環境省「温室効果ガス排出削減等指針」
環境省「脱炭素化に向けた取組実践ガイドブック(入門編)」
温室効果ガス排出削減等指針の概要と、部門別の対策メニューや参考資料等をまとめたもの。
経済産業省「トランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ」
温室効果ガス多排出産業の2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的な移⾏の⽅向性を⽰すもの。企業がトランジションファイナンスを活⽤した気候変動対策を検討するに当たり、本ロードマップを参照することが想定。
資⾦調達 環境省「グリーンボンドガイドライン」等(グリーンファイナンスポータル)
グリーンボンドに係る具体的対応を検討する際に、判断に迷う場合に参考とし得る具体的対応の例や国内の特性に即した解釈を整理したもの。グリーンファイナンスポータルでは、そのほかのグリーンファイナンスのガイドラインも掲載。
経済産業省等「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」
トランジションファイナンスの基本的な考え⽅や資⾦調達者に期待される事項と対応⽅法等を整理したもの。
経済産業省等「トランジション・ファイナンスにかかるフォローアップガイダンス ~資金調達者とのより良い対話に向けて~」
トランジションファイナンスの信頼性と実効性を向上することを目的として、特に資金供給後のトランジション戦略の着実な実行と企業価値向上への貢献を担保するための手引きとなるもの。
TCFDコンソーシアム「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活⽤ガイダンス2.0(グリーン投資ガイダンス2.0)」
投資家等が開⽰情報を読み解く際の視点を⽰したもの。本ガイダンスを通じて投資家等の視点に対する企業側の理解が深まることも期待。
実施・開⽰の充実 実施 環境省「脱炭素化事業⽀援情報サイト(エネ特ポータル)」
脱炭素化に向けた取組みを⽀援するための補助・委託事業を掲載したもの。企業において実施に当たり活⽤することが想定。
開⽰ TCFDコンソーシアム「気候関連財務情報開⽰に関するガイダンス3.0(TCFDガイダンス 3.0)」
TCFD提⾔への対応を進めるための第⼀歩を⽰すものとして、TCFD提⾔に沿った開⽰に向けた解説や業種別ガイダンスを⽰したもの。