第1研究グループ

金融市場の活性化に向けた総合金融サービス

提言(平成21年3月31日公表)

報告書(平成21年9月25日公表)

  • 提言「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」

    当研究会の提言として、平成21年3月31日に事務局である全国銀行協会ウェブサイトで公表したものを再録している。
    本提言は、平成19年10月に公表した「わが国金融産業の国際競争力強化に向けたロードマップ」に沿って、信頼に足る、安定的な総合金融サービスの提供により、これまで以上に利用者が安心して多様な金融商品・サービスを享受できる市場環境が実現されるよう、着実な歩みを続けることが重要と考えることの意義を認識したうえで、今後の課題について取りまとめたものである。

  • 第1章 ベター・レギュレーションと米国金融危機(清水啓典 一橋大学大学院商学研究科教授)

    世界的な金融危機を念頭に置きつつも、単に現時点での短期的な対応にのみ目を奪われることなく、今後とも変わることのないわが国の金融・資本市場の競争力強化のために、官民が協力しつつ取り組むべき課題について検討している。そのうえで、米国金融危機によって、資本市場を中心とする金融システムの弱点が明らかになり、欧米の大規模証券会社の全てが銀行の傘下に入った現在は、銀行中心の金融システムを持つわが国が、その経験を基礎に、世界的な場においてもその経験と強みを活かして、より安定的なグローバル金融市場構築のために目指すべき方向性を示している。

  • 第2章 多角化は企業価値を高めるか?-金融機関の場合を中心に-(金子隆 慶應義塾大学商学部教授)

    金融機関の総合金融サービス化の得失を検討するという視点から、文献サーベイを基礎に金融機関の多角化の成否を決定する諸要因の分析を行っている。そこでは、多角化が成功するためには多数の条件があり、一般的に総合金融サービスが望ましいとは言えないこと、また、銀行による証券業への進出はリスクを高める可能性があり、証券業への進出が成功するためには、利益相反を防ぎつつ、顧客情報共有をいかに行うかが重要である点などを指摘している。

  • 第3章 個人金融サービス提供の向上に向けて:行動経済学的アプローチ(晝間文彦 早稲田大学商学学術院教授)

    個人の過剰消費などの一見非合理的に見える行動も、本人の自覚しない将来効用の過小評価を想定すれば説明できる、新しい理論的アプローチの発展について概説している。そのうえで、金融機関が個人に対して、多様な金融サービスを総合的に提供する場合には、取引コストの低下だけでなく、多様な金融サービスの中から顧客が自分の金融ニーズをより明確に自覚し、その自覚にもとづいて最適な金融サービスを選択できるような形で金融サービスを開発すると同時に、正確でわかりやすい金融サービスの情報作成、およびその効果的な提供方法についても工夫に努めることが重要である点を指摘している。

  • 第4章 総合金融サービス提供のための今後の金融機関のあり方(柳川範之 東京大学大学院経済学研究科准教授)

    金融機関が総合金融サービスを提供することの意義を述べたうえで、そのためには、組織内に知識や人的資産がどれだけ蓄積されているかが決定的に重要であり、その組織づくりが必要である、という視点からの分析を行っている。そこでは、総合金融サービスに対する環境やニーズ変化を説明したうえで、顧客ニーズに合った金融商品の製造と販売には、それを可能とする組織変革や人事ローテーションの変革を含む、人材育成システムの改革が必要である点を指摘している。

  • 第5章 ユニバーサルバンキングの功罪(小西大 一橋大学大学院商学研究科准教授)

    銀行が証券業務を兼営する場合の功罪を整理し、情報生産機能の反復利用、範囲の経済性を通じた経営効率の向上、競争の向上をメリットとして、利益相反、コングロマリット・ディスカウント、過剰なリスク負担、タイイングを問題点として挙げている。そのうえで、証券業務を兼営する際の3つの組織(ユニバーサルバンキング方式、持株会社方式、子会社方式)を比較し、市場規律が十分に機能する環境下では、自由に組織形態を選択できることが望ましいとしている。最後に、わが国での実証分析を踏まえ、銀証兼営を許容した場合の社債の引受リスクに着目し、銀行が過剰なリスク負担を回避できていない可能性がある点を指摘している。

第2研究グループ

公的金融の現代的役割

提言(平成21年3月2日公表)

報告書(平成21年7月17日公表)

  • 第1章 公的金融の現代的役割(提言)
    本年3月に取りまとめた当研究会の提言を再録している。具体的には、公的金融の使命や中小企業に対する金融支援のあり方、金融危機への対応など、公的金融に係る改革の基本的な考え方を示したうえで、(1)株式会社日本政策金融公庫、(2)移行期における民営化金融機関(株式会社日本政策投資銀行、株式会社商工組合中央金庫、株式会社ゆうちょ銀行)、(3)その他の政策金融(地方公営企業等金融機構、独立行政法人住宅金融支援機構等)、といった個別機関ごとに公的金融のあり方を提言している。

  • 第2章 公的金融の現代的役割に関する諸論点(國枝繁樹 一橋大学国際・公共政策大学院准教授)
    現在の経済危機により政策金融改革を巡る環境は大きく変化しており、望ましい政策金融の中長期的なあり方について、改めて経済学や現代コーポレート・ガバナンス理論に基づいた考察を行うことが強く求められている。
    本稿では、公的金融改革を議論する上で十分考慮されてこなかった政府のリスク負担能力の問題について考察した後、中小企業に対する公的金融支援の例を取り上げ、政治経済学的な観点も含め、各支援方法の優劣について論じるとともに、政策金融機関のガバナンスの問題を現代コーポレート・ガバナンス理論の立場から論じている。

  • 第3章 政策金融機関のガバナンスをいかに確保するか?(広田真一 早稲田大学商学学術院教授)
    政策金融改革は、かつて特殊法人であった政策金融機関を株式会社化することによって、経営に規律を与えて効率的な事業運営を促すといったガバナンス強化の意図があったと考えられる。
    本稿では、コーポレート・ガバナンスの既存研究を踏まえて、日本の政策金融機関のガバナンスの有効性を理論的に検討する。より具体的には、株式会社のガバナンスが働くための条件を一般的に議論するとともに、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫、日本政策金融公庫それぞれについて、そのガバナンスが効果的かつ適切に働くのかどうかを考察している。

  • 第4章 信用保険制度のあり方に関する一考察(土居丈朗 慶應義塾大学経済学部准教授)
    公的金融の役割のひとつとして、日本政策金融公庫が運営する信用保険制度があるが、同制度の保険収支が恒常的に赤字になっていることを放置すれば、信用保険制度、ひいては信用保証制度も含めた信用補完制度の持続可能性に支障をきたすことになる。
    本稿では、プリンシパル・エージェント理論を応用して、我が国の信用補完制度に基づいた理論モデルを構築し、日本政策金融公庫の保険収支が恒常的に赤字にならないようにする保険料率の条件を導出した。それにより、保険収支を赤字にしない保険料率は、企業の事業成功確率と債務不履行時の回収納付金の期待値に依存していることを指摘している。

  • 第5章 取り残された政策金融改革(岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授)
    政策金融改革により、2008年10月に政策金融機関が新体制に移行した。しかし、これは組織機能ではなく、銀行・公庫という組織形態に着目して改革対象を決定するものであったことから、住宅金融支援機構、福祉医療機構、日本学生支援機構、奄美群島振興開発基金の4つの公的機関が対象外とされたほか、「国民経済計算」で公的金融企業と位置付けられている特別会計も検討の対象とならなかった。
    本稿では、公的金融機関のあり方の理論的な整理を行うとともに、政策金融改革から取り残されたこれらの機関にこれを当てはめ、必要な改革の方向性を議論している。

 

(肩書きは、各研究グループともに平成21年3月現在)