第1研究グループ

アジア経済圏における金融・資本市場の発展に向けた課題とわが国金融機関が果たすべき役割

提言(平成24年3月12日公表)

報告書(平成24年9月14日公表)

  • 提言「アジア経済圏における金融・資本市場の発展に向けた課題とわが国金融機関が果たすべき役割」

    当研究会の提言として、平成24年3月12日に事務局である全国銀行協会ウェブサイトで公表したものを再録している。
    本提言では、成長するアジア地域全体の成長に資する観点から、それぞれわが国金融機関への提言、わが国政府等への提言、アジア各国政府への提言として課題がまとめられている。

  • 第1章 アジア金融・資本市場の発展とわが国金融界の課題(清水啓典 一橋大学大学院商学研究科特任教授)

    世界の経済構造変化と世界の成長センターとしてのアジアにおける金融・資本市場の発展を展望したうえで、わが国金融界の課題として、日銀の課題としてはデフレの脱却、監督当局には国際的視野と国家戦略を持った監督規制、官民の協力すべき課題としてはアジア決済システム高度化への対応、金融機関については現地化とソフト情報の活用、という4つの優先課題を取り上げて対応を促している。

  • 第2章 東南アジア主要銀行の経営効率の変化と外資系銀行の特徴(奥田英信 一橋大学大学院経済学研究科教授)

    東南アジア諸国の主要銀行について、経営効率に関する実証分析を行い、経営環境が大きく変化する中で、国別に特徴はあるがおおむね効率的な経営を行っており、バラツキが少なく安定的でショックに対する頑健性を備えているとしている。また、外資系銀行は収益性を重視する傾向にあるなどの興味深い計測結果が紹介されている。

  • 第3章 構造改革後の韓国の金融市場と銀行経営の課題~ガバナンス構造と人的資源問題を中心に~(深川由起子 早稲田大学政治経済学術院教授)

    国内金融市場のインフラが十分に整備されないままに急速にグローバル化した韓国金融市場の現状と問題点を整理しており、課題として、金融危機後には社債市場よりも銀行の役割が増大したこと、財閥との関係で銀行のガバナンスのあり方および金融の専門人材不足の問題が指摘されている。

  • 第4章 外銀のアジア進出と収益性、効率性について(渡部和孝 慶應義塾大学商学部准教授)

    33カ国の商業銀行のデータにもとづき、外国銀行の収益性は国内銀行に比べて低く、合弁による進出の方が自前での進出より高い収益性が得られるため、邦銀がアジア進出を拡大する際には、自前での進出にこだわらず、合弁や買収といった進出方法を模索するべきとする結論を得ている。

  • 第5章 ASEAN経済共同体を見据えたわが国金融機関の役割(中川利香 東洋大学経済学部准教授)

    急速に一体化が進みつつあるASEAN諸国の経済動向を概観したうえで、邦銀の取り組むべきビジネスチャンスとして、中間層向け金融サービス、企業向け貿易関連サービス、証券関連ビジネス、インフラ整備資金調達、などの分野があることを指摘している。

第2研究グループ

国債市場の持続可能性

提言(平成24年2月24日公表)

報告書(平成24年9月14日公表)

  • 第1章 国債市場の持続可能性(提言)
    本年2月に取りまとめた当研究会の提言を再録している。具体的には、わが国の財政収支の推移から、財政赤字および公債残高が拡大した経緯と財政再建に向けた動きを概観するとともに、国債市場の現況・予想される情勢変化や国債市場におけるこれまでの取組みを踏まえて、今後の持続可能な国債市場の実現に向けた財政健全化への道筋、国債市場の中長期的な安定につながる取組みについて考え方を提起している。

  • 第2章 政府累積債務の帰結 危機か?再建か?(岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授)
    ギリシャをはじめとした欧州辺縁国で財政危機が深刻な問題となり、財政の持続可能性に世界の関心が集まっている。わが国の政府債務は、先進国では最高の水準(対GDP比)に達しており、危機を招くことなく財政の持続可能性を維持することは日本経済にとってきわめて重要な課題である。
    本稿では、政府債務残高が高水準に達した事例を抽出し、その後の帰結を「破綻」と「再建」に分類して、所得水準の違い、時期の違い、債務残高の違いのような要因にどのような影響を受けるのかを検討している。

  • 第3章 債務上限と財政維持可能性(櫻川昌哉 慶應義塾大学経済学部教授)
    90年代前半以降、GDPをはるかに上回るペースで国債は大量発行され、OECD諸国の中でも圧倒的に高い値を示すに至っている。政府は、2011年度に基礎的収支を黒字化するという目標を掲げたものの、リーマン・ショックによる世界同時不況の影響を受けて大幅な財政支出増をはかった結果、財政改革は大きく後退することとなった。
    本稿では、成長率と利子率の関係を日本経済の実情に合った形で定式化し、財政の維持可能性の検証を行うほか、債務上限の定義に関する検討を行っている。さらに、わが国の債務残高が巨額でありながら、国債金利が低位で安定している理由について考え方を述べている。

  • 第4章 公的債務と国債金利-金利低下は財政信認のシグナルか?-(小黒一正 一橋大学経済研究所准教授)
    近年、先進国では、公的債務(対GDP)が累増しつつある。そのような状況の中、急速に少子高齢化が進む日本の公的債務(対GDP)は、他の先進国と比較して突出しているが、国債金利は他の先進国よりも低い状況にある。しかも、日本の国債金利(長期金利)は公的債務の増加にもかかわらず、低下傾向にある。
    本稿では、簡単な理論モデルを構築し、Oguro and Sato(2011)モデルをベースに、国債金利が急騰する「閾値」との関係も含め、市場が抱く「財政規律の見通し」や「財政調整ルール」が国債金利に及ぼす影響を説明するほか、国債金利の低下と公的債務の増加との関係を明らかにしている。

  • 第5章 政府債務の利子率に関する中長期的推計(川出真清 日本大学経済学部・経済学研究科准教授)
    わが国はこれまで繰り返された際限のない財政支出によって、膨大な政府債務を抱えており、今後、少子高齢化の進展、世界的な金融不安、東日本大震災にも見舞われた厳しい環境のもとで、財政再建を進めなければならない。
    そこで、本稿では現状の日本の政府債務や財政運営を前提として、中長期的な政府債務が民間資産および政府債務の利子率に与える影響を評価している。特に利子率の面から内生化した世代重複型シミュレーションモデルを用いて、累増する政府債務が人口動態の中でどのように消化され、利子率にどう反映されるかを調査している。

 

(肩書きは、各研究グループともに平成24年3月現在)