都市銀行

特定取引勘定設置銀行7行。なお、当期の平残の算出上、三和銀行と合併前の東海銀行の計数は含まれていない。

都市銀行の平成13年度決算をみると、資金運用益は、国内業務部門では小幅な減益となったものの、国際業務部門では利鞘の拡大等から増益となり、全体では増益となった。
経常利益は、株式等関係損益が大幅な損失超過に転じたことに加え、個別貸倒引当金純繰入額が大幅に増加した結果、3兆5,873億円の赤字(前年度1,091億円の黒字)と黒字から赤字に転じた。また、当期利益を見ると、法人税等調整額が増益要因となったものの、2兆3,914億円の赤字(前年度1,328億円の赤字)と、2年連続の赤字となった。
業容面をみると、資金調達では預金が前年度末比3.2%増、資金運用では貸出金が同5.5%減となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、4兆4,329億円(前年度比2,123億円、5.0%増)と減益から増益に転じた。

国内業務部門

資金運用収益をみると、貸出金の減少(平残で前年度比8.6%減)および国内金利水準の低下により、貸出金利息は3兆4,122億円(同5,928億円、14.8%減)と減少した。また、有価証券残高の減少(平残で前年度比6.5%減)などにより、有価証券利息配当金も5,780億円(同454億円、7.3%減)と減少した。以上の結果、全体では4兆516億円(同6,452億円、13.7%減)と大幅に減少した。

一方の資金調達費用をみると、国内金利水準の低下に加え、預金残高の減少(平残で前年度比4.5%減)および定期性預金から流動性預金へのシフトが生じたことなどから、預金利息は1,873億円(前年度比1,882億円、50.1%減)と減少した。また、譲渡性預金利息も225億円(同630億円、73.7%減)と減少した。以上の結果、資金調達費用全体では5,090億円(同4,337億円、46.0%減)と大幅に減少した。

以上のとおり、資金運用収益、資金調達費用がともに減少したものの、前者の減少幅が後者のそれを上回ったため、資金運用益は3兆5,426億円(前年度比2,115億円、5.6%減)と減益となった。

国際業務部門

資金運用収益をみると、有価証券利息配当金および金利スワップ受入利息が、それぞれ7,246億円(前年度比1,899億円、35.5%増)、3,203億円(前年度比2,725億円、570.7%増)と大幅に増加したものの、海外業務の縮小に伴う貸出金の圧縮(平残で前年度比11.7%減)や海外金利水準の低下などにより、貸出金利息が1兆1,218億円(前年度比5,624億円、33.4%減)と大幅に減少し、預け金利息も5,618億円(前年度比3,207億円、36.3%減)と大幅に減少した。以上の結果、資金運用収益全体では2兆9,714億円(同5,625億円、15.9%減)と減少した。

一方の資金調達費用をみると、預金残高の大幅な減少(平残で前年度比19.2%減)および海外金利水準の低下などにより、預金利息が1兆759億円(前年度比9,151億円、46.0%減)と大幅に減少したことなどから、全体では2兆811億円(同9,862億円、32.2%減)と大幅に減少した。

以上のとおり、資金運用収益、資金調達費用ともに減少したものの、後者の減少幅が前者のそれを上回ったことから、資金運用益は8,904億円(前年度比4,237億円、90.8%増)と増益となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門において、為替手数料収支およびその他の役務収支の収益超過額がともに減少したことなどから、全体の収益超過額は6,090億円(前年度比195億円、3.1%減)となった。
特定取引収益・費用
国際業務部門において、特定金融派生商品収支の収益超過額が大幅に増加したことなどから、全体の収益超過額は3,111億円(前年度比700億円、29.0%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が大幅に増加した結果、全体の収益超過額は4,593億円(前年度比1,389億円、43.4%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式市況の低迷により、株式等売却益の大幅な減少や、株式の減損処理による株式等償却の大幅な増加などが見られたことから、全体では前年度の収益超過(1兆1,356億円)から大幅な損失超過(1兆202億円)に転じた。
また、特別検査の結果等により、各行とも不良債権の更なる処理を進めたことにより、個別貸倒引当金純繰入額が1兆9,312億円(前年度比8,761億円、83.0%増)と大幅に増加したほか、一般貸倒引当金繰入額および貸出金償却も、それぞれ8,069億円(同6,749億円、511.5%増)、1兆8,937億円(同1,320億円、7.5%増)と増加した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は6兆6,607億円(前年度比4兆2,340億円、174.5%増)となった。
営業経費
営業経費は、リストラ等経営全般にわたる合理化・効率化をより一層進めたことにより、前年度に引き続き人件費が大幅に減少し、物件費も減少したことから、2兆7,812億円(前年度比、1,485億円、5.1%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は10兆352億円(前年度比2兆545億円、17.0%減)、経常費用は13兆6,226億円(同1兆6,420億円、13.7%増)となり、経常利益は、3兆5,873億円の赤字(前年度1,091億円の黒字)と黒字から赤字に転じた(経常損失7行)。当期利益は、法人税等調整額が増益要因となったものの、2兆3,914億円の赤字(前年度1,328億円の赤字)と2年連続の赤字となった(当期損失7行)。

業務純益は、役務取引等収支を除く全ての業務収支が増益となり、経費も減少したものの、不良債権処理の更なる促進を図るため、一般貸倒引当金繰入額が大幅に増加したことから、2兆3,801億円(前年度比847億円、3.4%減)と減益となった(増益3行、減益4行)。また、国内業務粗利益は、4兆2,371億円(前年度比1,873億円、4.2%減)、国際業務粗利益は、1兆6,260億円(同5,676億円、53.6%増)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.14%ポイント低下して1.81%、有価証券利回りは同0.01%ポイント低下して0.92%、コールローン等利回りは同0.16%ポイント低下して0.52%となった。また、資金運用利回り全体では、同0.15%ポイント低下して1.53%となった。

一方の資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.11%ポイント低下して0.11%、コールマネー等利回りは同0.22%ポイント低下して0.52%となり、経費率は同0.04%ポイント低下して1.02%となった。また、資金調達原価全体では、同0.20%ポイント低下して1.04%となった。
以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.05%ポイント拡大して0.49%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは、前年度比1.33%ポイント低下して4.07%、有価証券利回りは同0.29%ポイント上昇して6.08%、コールローン利回りは同2.68%ポイント低下して3.29%となった。資金運用利回り全体では、同0.80%ポイント低下して4.78%となった。

一方の資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比1.66%ポイント低下して2.74%、コールマネー利回りは同2.72%ポイント低下して3.20%となった。資金調達利回り全体では、1.67%ポイント低下して3.42%となった。
以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.86%ポイント拡大して1.36%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国際部門で大幅な減少(前年度末比35.3%減)となったものの、国内部門で流動性預金を中心に大幅に増加(同12.6%増)したことから、全体では247兆7,498億円(同7兆6,138億円、3.2%増)と増加した。預金の内訳をみると、2002年4月の定期性預金のペイオフ解禁を控え、年度末にかけて定期性預金から流動性預金へのシフトが生じたことから、普通預金および定期預金は、それぞれ100兆746億円(前年度末比37兆3,772億円、59.6%増)、97兆1,729億円(22兆9,236億円、19.1%減)となった。また平残では、定期性預金を中心とした国内部門の減少(前年度比4.5%減)と、国際部門の減少(同19.2%減)の結果、223兆3,636億円(同15兆2,423億円、6.4%減)となった。

譲渡性預金は、末残では22兆8,604億円(前年度末比14兆9,220億円、39.5%減)となり、平残では、31兆2,267億円(前年度比1兆7,308億円、5.9%増)となった。

資金運用

貸出金は、国内についてみると、住宅ローンが増加したことから個人向け貸出は増加したものの、企業向け貸出は、資金需要が低迷したことに加え、不良債権のオフバランス化を積極的に進めたことなどから減少し、全体では199兆5,074億円(前年度末比9兆5,915億円、4.6%減)と減少した。また、国際部門についてみると、25兆7,329億円(同3兆5,877億円、12.2%減)と大幅に減少した。この結果、貸出金全体の末残は225兆2,403億円(同13兆1,792億円、5.5%減)と5年連続で減少した。なお、平残では216兆4,798億円(前年度比21兆5,047億円、9.0%減)となった。

リスク管理債権については、破綻先債権額は、銀行勘定で9,779億円(前年度末比278億円、2.9%増)、信託勘定で22億円(同6億円、35.7%増)、延滞債権額が、銀行勘定で11兆898億円(同3兆4,635億円、45.4%増)、信託勘定で119億円(同2億円、2.1%増)、3ヵ月以上延滞債権額が、銀行勘定で3,336億円(同1,310億円、28.2%減)、信託勘定で19億円(同2億円、10.1%増)、貸出条件緩和債権額が、銀行勘定で8兆7,466億円(同4兆9,115億円、128.1%増)、信託勘定で155億円(同125億円、402.9%増)となった。リスク管理債権額の合計は、銀行勘定で21兆1,480億円(同8兆2,717億円、64.2%増)、信託勘定で316億円(同135億円、74.1%増)であった(信託勘定については、元本補填契約のある信託勘定の計数)。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆5,216億円(前年度末比2,267億円、9.9%増)、危険債権が10兆1,782億円(同3兆3,355億円、48.7%増)、要管理債権が9兆802億円(同4兆7,804億円、111.2%増)、正常債権が228兆1,718億円(同25兆650億円、9.9%減)であった。

有価証券は、前年度急増した国債が減少に転じ(前年度末比21.2%減)、保有制限の導入が決まった株式も大幅に減少した(同22.9%減)ことなどから、全体の末残は、72兆2,268億円(同16兆4,840億円、18.6%減)となった(平残では前年度比2.1%減)。

預け金は、国際部門で大幅に減少(前年度末比35.5%減)したものの、日銀預け金の増加により国内部門において大幅に増加した(同537.2%減)ことから、末残は23兆4,585億円(同3兆2,165億円、15.9%増)となった。また、平残では、17兆1,707億円(前年度比3,786億円、2.2%減)となった。

自己資本

資本金は、期中に1行で転換社債の転換が行われたものの、合併(2行)および会社分割(1行)に伴う資本金の減少がみられたことから、5兆9,031億円(前年度末比1兆2,139億円、17.1%減)となった。

法定準備金は5兆9,206億円(前年度末比1兆1,507億円、16.3%減)となった。また、赤字決算に伴い、剰余金は9,783億円(同1兆3,030億円、57.1%減)となった。また、株式市況の低迷により、「その他有価証券」を時価評価したことによる評価差額金が大幅な評価損(5,288億円)となった。以上の結果、資本勘定全体では、13兆2,551億円(同4兆7,455億円、26.4%減)となった。