地方銀行(特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成13年度決算をみると、資金運用益は、金利水準の低下により、資金運用収益および資金調達費用がともに減少したものの、資金運用収益の減少幅が資金調達費用のそれを上回ったため、前年度比1.3%の減少となった。

経常利益は、株式等関係損益が損失超過に転じたことに加え、貸出金償却が大幅に増加したことから、6,282億円の赤字と前年度の黒字(1,135億円)から赤字に転じた。また、当期利益は5,559億円の赤字で2年連続の赤字となった(前年度642億円の赤字)。
なお、業容面をみると、預金が前年度末比1.4%増、貸出金が同0.1%増となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆3,553億円(前年度比457億円、1.3%減)となり、5年連続の減益となった。

資金運用収益をみると、貸出金利息は、金利水準の低下から3兆65億円(前年度比1,784億円、5.6%減)と減少した。また、有価証券利息配当金も、金利水準の低下を受けて8,242億円(同1,162億円、12.4%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、3兆9,805億円(同3,381億円、7.8%減)となった。

次に資金調達費用をみると、預金利息は、金利水準の低下などにより減少し、3,210億円(前年度比2,087億円、39.4%減)となった。この結果、資金調達費用全体では、6,252億円(同2,924億円、31.9%減)となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門において、その他の役務収益が増加したことなどから、収益超過額は3,348億円(前年度比168億円、5.3%増)となった。特定取引収益・費用 特定取引収益が増加したことから、収益超過額は49億円(前年度比10億円、27.2%増)となった。
その他業務収益・費用
金融派生商品関係損益が前年度の損失超過(306億円)から81億円の収益超過に転じたことなどから、その他業務収益・費用は、1,086億円、前年度比415億円、61.9%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式市況の低迷を背景に大幅な減損処理を実施したため、前年度の収益超過(1,429億円)から4,989億円の損失超過に転じた。また、一般貸倒引当金繰入額は1,443億円(前年度比715億円、98.2%増)、貸出金償却は4,282億円(同1,582億円、58.6%増)といずれも大幅に増加した。この結果、その他経常収益・費用全体では、1兆9,559億円の損失超過となり、損失超過額は前年度(1兆1,809億円)に比べ拡大した。
営業経費
人件費などが減少したことから、2兆4,776億円(前年度比218億円、0.9%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は4兆9,903億円(前年度比4,016億円、7.4%減)、経常費用は5兆6,184億円(同3,401億円、6.4%増)となり、経常利益は6,282億円の赤字と前年度(1,135億円の黒字)の黒字から赤字に転じた(増益6行、黒字転換10行、減益27行、経常損失21行)。当期利益は、法人税等調整額が増益要因となったものの、5,559億円の赤字と前年度(642億円の赤字)を上回る赤字となった(増益9行、黒字転換8行、減益24行、当期損失23行)。

業務純益は、経費が人件費を中心に減少したものの、一般貸倒引当金繰入額が大幅に増加したことから1兆2,210億円(前年度比273億円、2.2%減)となった。(増益35行、減益28行、赤字1行)。また、国内業務粗利益は3兆6,595億円(同468億円、1.3%減)となり、国際業務粗利益は1,477億円(同576億円、62.3%増)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して2.23%となった。また、有価証券利回りも、同0.38%ポイント低下して1.48%となり、コールローン等利回りは、同0.18%ポイント低下して0.05%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.17%ポイント低下して1.92%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは、前年度比0.09%ポイント低下して0.12%となり、コールマネー等利回りは、同0.30%ポイント低下して1.18%となった。また、経費率は、人件費率の低下から同0.04%ポイント低下して1.34%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.14%ポイント低下して1.50%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.03%ポイント縮小して0.42%となった。

資金調達

預金は、定期性預金のペイオフ解禁を控え、定期性預金が減少したものの、流動性預金がそれを上回って増加したため、末残で181兆8,365億円(前年度末比2兆5,383億円、1.4%増)となった。また、平残では177兆2,191億円(前年度比6,198億円、0.4%増)となった。

譲渡性預金は、末残で2兆5,527億円(前年度末比7,397億円、22.5%減)と減少した。一方、平残では3兆6,787億円(前年度比2兆8,961億円、370.1%増)と大幅に増加した。

資金運用

貸出金は、個人向け貸出が住宅ローンを中心に堅調に推移し、地公体向けも増加したものの、一般法人向け貸出が減少したことから、末残で136兆1,902億円(前年度末比1,926億円、0.1%増)となった。また、平残では134兆1,508億円(前年度比284億円、0.0%増)となった。

リスク管理債権についてみると、破綻先債権額は、銀行勘定で1兆283億円(前年度末比551億円、5.1%減)、信託勘定で11億円(同8億円、39.6%減)となり、延滞債権額は、銀行勘定で5兆8,922億円(同5,486億円、10.3%増)、信託勘定で184億円(同38億円、17.2%減)、3カ月以上延滞債権額は、銀行勘定で1,206億円(同7億円、0.6%増)、信託勘定で1億円(同2億円、58.7%減)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で3兆4,207億円(同4,361億円、14.6%増)、信託勘定で61億円(同2億円、3.8%減)となった。この結果、リスク管理債権全体では、銀行勘定で10兆4,619億円(同9,302億円、9.8%増)、信託勘定で259億円(同50億円、16.2%減)となった。

なお、金融再生法に基づき開示が義務づけられることになった資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準じる債権は2兆7,459億円(前年度末比701億円、2.5%減)、危険債権は4兆6,330億円(同4,601億円、11.0%増)、要管理債権額は3兆3,862億円(同5,689億円、20.2%増)、正常債権は129兆4,495億円(同1兆2,112億円、0.9%減)となった(信託勘定の計数は除く)。

有価証券は、株式が大幅に減少したものの、国債および外国証券が増加したことから、末残で46兆7,651億円(前年度末比1兆1,040億円、2.4%増)となった。また、平残では46兆3,191億円(前年度比3兆7,947億円、8.9%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に8行で増資(うち1行は公的資金による株式の引受け)、6行で転換社債の転換が行われたことから、2兆3,811億円(前年度末比1,081億円、4.8%増)となった。

資本勘定をみると、評価差額金が8,341億円(同5,317億円、38.9%減)と減少したことなどから、資本勘定全体では、9兆7,542億円(同9,778億円、9.1%減)となった。