信託銀行

(新たに設立された大和銀信託銀行を含む8行:うち特定取引勘定設置銀行7行。なお、当期の平残の算出上、三菱信託銀行と合併前の日本信託銀行の計数は含まれていない。)

信託銀行の平成13年度決算では、信託報酬は減少(前年度比521億円、12.0%減)したものの、資金運用益が増加(同688億円、16.7%増)となったこと等から、業務純益は2年連続の増益(同601億円、15.3%増)となった。一方、株式等関係損益が損失超過となったことなどから、経常利益が8,405億円の赤字となり、当期利益も6,782億円の赤字となった。

業容面では、銀行勘定における預金は6年連続で増加(前年度末比3.6%増)した。他方、信託勘定については、金銭信託残高は減少(同14.6%減)し、貸付信託残高も9年連続で減少(同32.0%減)となった。また、貸出金は、銀行勘定では前年度の増加から減少(同3.2%減)となり、信託勘定でも20.6%減の大幅な減少となった。

損益状況

信託報酬 
長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)では、貸付信託残高の減少により信託報酬が減少した。財産管理部門(上記以外の信託)においては、年金信託残高が増加したものの、投資信託残高が大幅に減少したことから、信託報酬は減少となった。この結果、信託報酬全体では、3,835億円(前年度比521億円、12.0%減)と減少した。
資金運用益 
資金運用収益、資金調達費用ともに減少したが、後者の減少額が前者のそれを上回り、資金運用益は、4,802億円(前年度比688億円、16.7%増)と増加した。

資金運用収益は、国内業務部門では、国内金利水準の低下を受けて、貸出金利息(前年度比499億円、10.4%減)ならびに有価証券利息配当金(同347億円、17.8%減)がともに減少した。また、国際業務部門では、有価証券による運用の大幅な増加を反映して有価証券利息配当金が増加(同683億円、29.6%増)したものの、貸出金残高の減少を主因に貸出金利息が減少(同698億円、36.4%減)したほか、預け金利息も減少(同455億円、58.5%減)した。この結果、資金運用収益全体では、1兆1,362億円(同1,432億円、11.2%減)となった。

資金調達費用は、国内業務部門では、金利水準の低下から預金利息が減少(前年度比423億円、26.9%減)したほか、信託勘定借残高の減少(平残で同16.6%減)に伴う信託勘定借利息の減少を主因に、その他の支払利息が減少(同364億円、32.7%減)となった。また、国際業務部門では預金残高が増加(平残で同13.7%増)したものの、金利水準の低下から預金利息が減少(同426億円、23.3%減)した。また、金利スワップ支払利息も大幅な減少(同599億円、33.8%減)となった。この結果、資金調達費用全体では、6,560億円(同2,120億円、24.4%減)となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門におけるその他の受入手数料の増加を主因として、全体の収益超過額は1,770億円(前年度比66億円、3.9%増)となった。
特定取引収益・費用
国際業務部門において、特定取引収益が大きく減少したことなどから、全体の収益超過額も減少し、105億円(前年度比47億円、30.6%減)となった。
その他業務収益・費用
国債等債券関係損益の収益超過額が大幅な減少となったことから、全体の収益超過額は820億円(前年度比226億円、21.6%減)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益については、株式相場の低迷により株式等売却益が大幅に減少したことから、前年の収益超過(2,332億円)から5,676億円の損失超過に転じた。また、個別貸倒引当金の純繰入額は2,753億円(同1,446億円、110.7%増)と大幅に増加した。一方、貸出金償却は2,348億円(同302億円、11.4%減)と減少し、一般貸倒引当金繰入額も649億円(同276億円、29.9%減)と減少した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体では、損失超過額が大幅に増加し、1兆3,437億円の損失超過となった(前年度3,059億円の損失超過)。
営業経費
リストラ等、経営の効率化を進めたことから物件費、人件費がともに減少し、営業経費は6,301億円(前年度比343億円、5.2%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は2兆2,004億円(前年度比5,239億円、19.2%減)、経常費用は3兆408億円(同4,835億円、18.9%増)となり、経常利益は8,405億円の赤字と、前年度の黒字(1,669億円)から赤字に転じた(黒字転換1行、経常損失6行、初決算で利益を計上1行)。
当期利益は、法人税等調整額が2,164億円の増益要因となったものの、6,782億円の赤字となり、前年度の黒字(761億円)から赤字に転じた(黒字転換1行、当期損失6行、初決算で利益を計上1行)。

なお、業務純益は、信託報酬が減少したものの、資金運用益の増加や一般貸倒引当金繰入額の減少などから、4,515億円(前年度比601億円、15.3%増)となった(増益4行、減益3行、初決算で利益を計上1行)。また、国内業務粗利益は9,755億円(同685億円、6.6%減)、国際業務粗利益は1,587億円(同634億円、66.6%増)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度比0.18%ポイント低下して1.43%、有価証券等利回りは同0.20%ポイント低下して1.02%、コールローン等利回りは同0.12%ポイント低下して0.25%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.19%ポイント低下して、1.21%となった。

資金調達利回りを見ると、預金債券等利回りは同0.19%ポイント低下して、0.36%、コールマネー等利回りは、同0.54%ポイント低下して、0.97%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)は、同0.20%ポイント低下して、0.50%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、同0.01%ポイント拡大して0.71%となった。

国際業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度比1.82%ポイント低下して4.39%、有価証券利回りは同0.83%ポイント低下して5.13%、コールローン利回りは同2.84%ポイント低下して3.45%となった。この結果、資金運用利回りは、同1.01%ポイント低下して5.24%となった。

資金調達利回りを見ると、預金利回りが同1.63%ポイント低下して3.37%、譲渡性預金利回りは同2.51%ポイント低下して3.82%、コールマネー利回りは同3.51%ポイント低下して3.44%となった。この結果、資金調達利回りは、同1.56%ポイント低下して4.27%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、同0.55%ポイント拡大して0.97%となった。

資金調達

預金は、国際業務部門では、海外業務の縮小により減少(平残では増加)したものの、国内業務部門では、流動性預金を中心に増加したことから、全体では33兆208億円(前年度末比1兆1,525億円、3.6%増)と6年連続の増加となった。なお、平残では、31兆8,735億円(前年度比7,506億円、2.4%増)となった。譲渡性預金は、末残では4兆3,174億円(前年度末比1,598億円、3.8%増)、平残では5兆837億円(前年度比2兆8,638億円、129.0%増)となった。また、信託勘定借は、末残では10兆4,202億円(前年度末比4兆7,400億円、31.3%減)、平残では、13兆888億円(前年度比2兆6,012億円、16.6%減)とともに減少した。

信託勘定を見ると、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)は、65兆9,591億円(前年度末比11兆3,112億円、14.6%減)となった。また、年金信託は、28兆6,236億円(同4,923億円、1.8%増)と増加した。投資信託は、41兆7,652億円(同7兆5,467億円、15.3%減)、貸付信託は、12兆3,060億円(同5兆7,909億円、32.0%減)と大幅な減少となった。この結果、信託勘定の負債合計額は211兆9,529億円(同7兆469億円、3.2%減)と減少となった。

資金運用

貸出金は、国内をみると、末残では、29兆9,971億円(前年度末比5,944億円、1.9%減)と減少したが、平残では29兆9,675億円(前年度比2,373億円、0.8%増)と増加した。一方、海外をみると、末残では、2兆4,909億円(前年度末比4,660億円、15.8%減)と減少し、平残でも2兆7,776億円(前年度比3,106億円、10.1%減)と減少した。その結果、貸出金全体では、末残では、32兆4,881億円(前年度末比1兆604億円、3.2%減)と減少し、平残でも32兆7,451億円(前年度比732億円、0.2%減)と減少した。また、信託勘定をみると、貸出金は8兆2,134億円(前年度末比2兆1,254億円、20.6%減)と大幅に減少した。

リスク管理債権の残高について見ると、破綻先債権額は、銀行勘定で1,186億円(同810億円、40.6%減)、信託勘定で629億円(同345億円、35.4%減)となった。延滞債権額は、銀行勘定で1兆6,708億円(同3,155億円、23.3%増)、信託勘定で2,163億円(同381億円、15.0%減)、3ヶ月以上延滞債権額は、銀行勘定で124億円(同22億円、15.2%減)、信託勘定で53億円(同33億円、38.2%減)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で1兆4,595億円(同3,221億円、28.3%増)、信託勘定で2,538億円(同1,003億円、65.4%増)となった。以上の結果、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で3兆2,615億円、信託勘定で5,384億円となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。
 なお、金融再生法に基づき開示が義務づけられることとなった資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権額は3,026億円(同1,160億円、27.7%減)、危険債権額は1兆5,152億円(同3,074億円、25.4%増)、要管理債権額は1兆4,762億円(同3,527億円、31.4%増)、正常債権額は31兆1,022億円(同2兆290億円、6.1%減)であった。

有価証券は、銀行勘定では株式、外国証券、国債等が減少したことから、19兆5,197億円(前年度末比2兆7,506億円、12.4%減)となった(平残では、前年度比2兆1,303億円、10.9%増)。信託勘定では、株式や外国証券の減少から、51兆9,240億円(同27兆5,638億円、34.7%減)となった。

預け金は、銀行勘定では、3兆7,733億円(前年度末比1兆1,541億円、44.1%減)と大幅な増加となった。一方、平残では、国際部門での減少を主因に1兆6,002億円(前年度比9,275億円、36.7%減)となった。信託勘定では、5兆9,891億円(同1兆8,122億円、43.4%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に、3行で増資、1行で減資、2行で転換社債の転換が行われたほか、会社分割(1行)および合併(1行)に伴う資本の減少があったこと、設立(1行)があったことから、1兆6,067億円(前年度末比1,234億円、7.1%減)となった。

資本勘定をみると、当期損失となったことや、評価差額金が1,781億円の評価損(前年度945億円の評価益)となったことなどから、資本勘定全体では2兆7,672億円(同8,411億円、23.3%減)となった。

外銀信託・信託銀行子会社の決算状況

参考までに、外銀信託9行(注1)および信託銀行子会社11行(注2)の平成13年度の決算の特徴については、以下のとおりである。

外銀信託

  1. 損益状況を見ると、信託報酬はほぼ横ばいであったが、役務取引等収益が大幅に減少したことから、経常収益は401億円となった。一方、営業経費が大幅に減少したことを主因に経常費用は366億円となった。この結果、経常利益は35億円(前年度比21億円増)の増益となった。また、当期利益は、1億円の赤字(前年度35億円の赤字)となった。
  2. 信託財産残高は、19兆7,124億円(前年度末比7,713億円、4.1%増)となった。内訳を見ると、金銭信託が13兆8,724億円(同4,900億円、3.7%増)、年金信託が3兆2,537億円(同5,945億円、22.4%増)で、両者が全体の9割近くを占めている。この他では、包括信託が8,347億円(同5,579億円、201.5%増)、金銭信託以外の金銭の信託が8,130億円(同6,026億円、42.6%減)となった。

信託銀行子会社

  1. 損益状況を見ると、経常収益は802億円となり、その主な内訳は、信託報酬が549億円、資金運用収益が130億円となった。経常費用は702億円となり、その主な内訳は、営業経費が392億円、資金調達費用が49億円となった。この結果、経常利益は100億円となった。また、当期利益は44億円となった。
  2. 信託財産残高は、159兆9,644億円となった。内訳を見ると、包括信託が111兆9,645億円と、信託財産残高の70%を占め、続いて、金銭信託が17兆9,965億円、投資信託が7兆5,992億円、有価証券の信託が7兆2,891億円となった。
注1.
外銀信託9行
モルガン信託銀行、ドイチェ信託銀行、ステート・ストリート信託銀行、チェース信託銀行、シティトラスト信託銀行、ユー・ビー・エス信託銀行、クレディ・スイス信託銀行、バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行
注2.
信託銀行子会社11行
日興シティ信託銀行、しんきん信託銀行、あおぞら信託銀行、農中信託銀行、あさひ信託銀行、新生信託銀行、日証金信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、資産管理サービス信託銀行、三井アセット信託銀行