都市銀行 (特定取引勘定設置銀行6行)

都市銀行の平成14年度決算をみると、資金運用益は、国内業務部門では利鞘の縮小を映じて小幅な減益となった一方、国際業務部門でも利鞘の縮小と業容の低下から減益となったことから、全体でも減益となった。
経常利益は、株式等関係損益が前年度を上回る大幅な損失超過となったことに加え、前年度を下回ったものの引続き多額の不良債権処理が行われた結果、4兆577億円の赤字と前年度に続く赤字となった。この結果、当期利益も4兆1,132億円の赤字と3年連続の赤字となった。
業容面をみると、資金調達では預金が前年度末比2.5%減、資金運用では貸出金が同8.8%減となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、4兆2,483億円(前年度比4,380億円、9.3%減)と減益となった。

国内業務部門

資金運用収益を見ると、貸出金の平残は増加(前年度比3.1%増)したものの、貸出金利回りが低下(前年度比0.13%ポイントの低下)したことにより、貸出金利息は3兆5,092億円(同1,841億円、5.0%減)と減少した。また有価証券の平残も増加(前年度比6.0%増)したものの有価証券利回りが大幅に低下(前年度比0.28%ポイントの低下)したことにより、有価証券利息配当金も4,704億円(同1,670億円、26.2%減)と減少した。以上の結果、全体では、4兆1,282億円(同3,010億円、6.8%減)と減少した。

他方、資金調達費用をみると、預金の平残は増加(前年度比20.8%増)したものの、定期性預金の減少、流動性預金の増加にともない預金利回りが低下(前年度比0.05%ポイントの低下)したことから預金利息は1,161億円(前年度比727億円、38.5%減)と減少した。また債券利息・差金償却が1,335億円(同596億円、30.9%減)と減少したほか、譲渡性預金利息も96億円(同149億円、60.7%減)と減少した。以上の結果、資金調達費用全体では5,230億円(同1,829億円、25.9%減)と大幅に減少した。

以上のとおり、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、資金運用益は3兆6,051億円(前年度比1,181億円、3.2%減)と減少した。

国際業務部門

資金運用収益をみると、貸出金利息が、海外業務の縮小に伴う貸出金の圧縮と円高の影響から貸出金の残高が減少(平残で前年度比20.2%の減少)したことや海外金利の水準が引続き低下したことから7,566億円(前年度比5,045億円、40.0%減)と大幅に減少したほか、有価証券利息配当金は5,245億円(同3,398億円、39.3%減)、金利スワップ受入利息が2,434億円(同768億円、24.0%減)預け金利息も1,889億円(同3,852億円、67.1%減)といずれも減少した。以上の結果、資金運用収益全体も1兆9,320億円(同1兆3,568億円、41.3%減)と大幅に減少した。

他方、資金調達費用をみると、預金残高の大幅な減少(平残で前年度比25.5%減)および海外の金利水準が引続き低下したことから、預金利息が4,662億円(前年度比6,883億円、59.6%減)と大幅に減少した。この結果、資金調達費用全体でも1兆2,830億円(同1兆483億円、45.3%減)と大幅に減少した。

以上のとおり、資金運用収益の減少額が、資金調達費用のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は6,490億円(前年度比3,085億円、32.2%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門において、為替手数料収支およびその他の役務収支の収益超過額がともに増大したことから、全体の収益超過額は、7,403億円(前年度比713億円、10.7%増)となった。
特定取引収益・費用
国内、国際業務部門のいずれにおいても運用収益が大幅に増加したことから、全体の収益超過額は、4,700億円(前年度比1,213億円、34.8%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が大幅に増加した結果、全体の収益超過額も8,031億円(前年度比3,230億円、67.3%増)と大幅に増加した。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株価が期中をとおして下落したことから、株式等売却益の減少、売却損の大幅な増加が生じたほか、株式の減損処理による株式等償却の大幅な増加が見られたことから、損失超過額は2兆6,230億円と前年度を大幅に上回った(前年度1兆254億円の損失超過)。
また、各行とも不良債権の処理をさらに進めたことにより、個別貸倒引当金純繰入額を9,239億円(前年度比1兆1,058億円、54.5%減)、一般貸倒引当金繰入額を1兆646億円(同1,739億円、19.5%増)、貸出金償却を1兆5,125億円(同7,168億円、32.2%減)、と全体として減少したものの、それぞれ多額の金額を計上した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は7兆2,747億円(前年度7兆3,138億円の損失超過)と前年度に引続き高い水準となった。
営業経費
営業経費は、人件費が1兆2,249億円(前年度比202億円、1.7%増)、物件費が1兆6,750億円(同906億円、5.7%増)、税金が1,526億円(同29億円、2.0%増)となり、全体では3兆525億円(前年度比、1,137億円、3.9%増)となった。(なお、実勢をみる観点から、一部銀行の合併について平成13年度の計数を遡及調整した場合には、前年度比較で、人件費が579億円、4.5%減、物件費が44億円、0.3%減、税金が81億円、5.0%減となり、全体では703億円、2.3%減となる。)
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は9兆3,610億円(前年度比1兆7,040億円、15.4%減)、経常費用は13兆4,187億円(同1兆6,723億円、11.1%減)となり、経常利益は4兆577億円の赤字(前年度4兆261億円の赤字)と前年度に引続く赤字となった(経常利益2行、経常損失5行)。この結果、当期利益も4兆1,132億円の赤字(前年度2兆7,788億円の赤字)と3年連続の赤字となった(当期利益2行、当期損失5行)。ただし、ディスクロージャー誌に基づき合併前の計数を含めた場合には、経常利益2行、当期利益2行のうち、1行はいずれも損失行となる。

業務純益は、資金運用益が減少したことなどから、2兆3,113億円(前年度比2,038億円、8.1%減)と減益となった。また、国内業務粗利益は、4兆5,534億円(前年度比2,641億円、6.2%増)、国際業務粗利益は、1兆5,618億円(同1,761億円、10.1%減)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.13%ポイント低下して1.66%、有価証券利回りは同0.28%ポイント低下して0.65%、コールローン等利回りは同0.25%ポイント低下して0.28%となった。また、資金運用利回り全体では、同0.20%ポイント低下して、1.31%となった。

他方、資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.07%ポイント低下して0.10%、コールマネー等利回りは同0.21%ポイント低下して0.28%となり、経費率は同0.04%ポイント低下して、0.92%となった。また、資金調達原価全体では、同0.14%ポイント低下して、0.91%となった。
以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.06%ポイント縮小して0.40%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは、前年度比1.02%ポイント低下して3.08%、有価証券利回りは同2.36%ポイント低下して3.42%、コールローン利回りは1.44%ポイント低下して2.05%となった。この結果、資金運用利回り全体では、1.36%ポイント低下して3.36%となった。

他方、資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比1.25%ポイント低下して1.48%、コールマネー利回りは同1.24%ポイント低下して2.12%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同1.16%ポイント低下して2.25%となった。
以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.20%ポイント縮小して1.12%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国内部門で定期性預金が減少したことから微減(前年度末比0.2%減)となったほか、国際部門で前年度に引続き大幅な減少(前年度末比17.1%減)となったことから、全体では248兆1,647億円(同6兆2,864億円、2.5%減)と減少となった。預金の内訳を見ると、定期預金は、88兆7,183億円(前年度末比11兆7,533億円、11.7%減)と減少したのに対し、普通預金は110兆2,176億円(同8兆5,694億円、8.4%増)、当座預金も前年度末比2.8%増と対照的な動きを見せている。

また平残では、国際部門は減少(前年度比25.5%減)したものの、国内部門の増加(同20.8%増)により、全体では257兆330億円(同27兆2,303億円、11.8%増)と増加した。 譲渡性預金は、末残では19兆7,355億円(前年度末比6兆4,153億円、24.5%減)、平残では23兆3,314億円(前年度比10兆7,739億円、31.6%減)と大幅に減少した。

資金運用

貸出金は、国内についてみると、住宅ローンは増加したものの、企業向け貸出が資金需要の低迷に加え、不良債権のオフバランス化の積極的推進により減少したこと等から、全体では、203兆1,248億円(前年度末比12兆4,761億円、5.8%減)と減少した。また、国際部門についても、20兆2,450億円(同8兆9,659億円、30.7%減)と大幅に減少した。この結果、貸出金全体の末残は223兆3,699億円(同21兆4,419億円、8.8%減)と6年連続で減少した。

なお、平残では、238兆8,094億円(前年度比529億円、0.0%減)と横這いであった。

リスク管理債権については、破綻先債権額は、銀行勘定で6,749億円(前年度末比4,528億円、40.2%減)、信託勘定で18億円(同4億円、17.9%減)、延滞債権額が、銀行勘定で6兆6,844億円(同4兆8,672億円、42.1%減)、信託勘定で79億円(同40億円、33.3%減)、3ヵ月以上延滞債権額が、銀行勘定で2,852億円(同563億円、16.5%減)、信託勘定で3億円(同16億円、80.7%減)、貸出条件緩和債権額が、銀行勘定で9兆6,879億円(同4,254億円、4.6%増)、信託勘定で229億円(同74億円、47.2%増)となった。リスク管理債権額の合計は、銀行勘定で17兆3,325億円(同4兆9,510億円、22.2%減)信託勘定で331億円(同14億円、4.5%減であった)(信託勘定については、元本補填契約のある信託勘定の計数)

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準ずる債権が1兆8,022億円(前年度末比9,586億円、34.7%減)、危険債権が5兆7,795億円(同4兆7,942億円、45.3%減)、要管理債権が9兆9,731億円(同3,690億円、3.8%増)、正常債権が227兆3.317億円(同25兆6,673億円、10.1%減)であった。不良債権のオフバランス化をはじめとする不良債権の処理が積極的に行われたことにより、不良債権残高はかなり減少している。

有価証券は、多額の保有株式の売却、減損処理により株式が大幅に減少(前年度末比33.8%減)したものの、前年度減少した国債が増加(24.4%増)に転じたことなどから、全体の末残は、85兆8,394億円(同5兆6,633億円、7.1%増)となった(平残では前年度比5.3%増)。

預け金は、国際部門で大幅に減少(前年度末比40.2%減)したことから、全体では20兆8,028億円(同5兆4,527億円、20.8%減)となった。また平残では、12兆9,981億円(前年度比5兆3,995億円、29.3%減)となった。

自己資本

資本金は、4行で増資が行われたものの、合併行において減少したことから、4兆4,896億円(前年度末比2兆1,079億円、31.9%減)となった。

資本剰余金は5兆6.970億円となったが、利益剰余金は1兆923億円の損失超過となった。以上のほか、株式等評価差額金が2,569億円の評価損(前年度末、7,226億円の評価損)となったこと等から、資本勘定全体では、9兆6,937億円(同4兆6,726億円、32.5%減)となった。