地方銀行(特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成14年度決算をみると、資金運用益は、金利水準の低下により、資金運用収益および資金調達費用がともに減少したものの、前者の減少額が後者のそれを上回ったため、前年度比2.0%の減少となった。

経常利益は、株式等関係損益が損失超過であったこと等から2年連続の赤字(1,522億円の赤字)となったが、前年度(6,282億円の赤字)と比べ、赤字幅は大幅に縮小した。また、当期利益は3年連続の赤字(2,088億円の赤字)となったが、経常利益と同様、前年度(5,559億円の赤字)と比べ、赤字幅は大幅に縮小した。
なお、業容面をみると、預金はほぼ横ばい、貸出金は微減となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆2,888億円(前年度比665億円、2.0%減)となり、6年連続の減益となった。

資金運用収益をみると、貸出金利息は、金利水準の低下等から2兆8,718億円(前年度比1,347億円、4.5%減)と減少した。また、有価証券利息配当金も、金利水準の低下から7,103億円(同1,139億円、13.8%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、3兆6,372億円(同3,434億円、8.6%減)となった。

次に資金調達費用をみると、預金利息が、金利水準の低下から1,489億円(前年度比1,722億円、53.6%減)となったこと等から、資金調達費用全体では、3,484億円(同2,768億円、44.3%減)となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門において、その他の役務収益が増加したことなどから、収益超過額は3,575億円(前年度比227億円、6.8%増)となった。
特定取引収益・費用
特定取引収益が増加したことから、収益超過額は74億円(前年度比25億円、50.9%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等債券関係損益の収益超過額が886億円(前年度比69億円、8.5%増)となったこと等から、その他業務収益・費用は、1,113億円(前年度比27億円、2.5%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式市況の低迷により4,518億円の損失超過と、前年度(4,989億円の損失超過)に続き損失超過となったが、株式等償却が大幅に減少したこと等から損失超過幅は縮小した。また、一般貸倒引当金繰入額が1,363億円(前年度比80億円、5.5%減)、個別貸倒引当金純繰入額が6,172億円(前年度比2,262億円、26.8%減)、貸出金償却が3,065億円(同1,217億円、28.4%減)といずれも減少した。この結果、その他経常収益・費用全体では、1兆5,127億円の損失超過となり、損失超過額は前年度(1兆9,559億円)に比べ減少した。
営業経費
人件費等が減少したことから、2兆4,065億円(前年度比711億円、2.9%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は4兆6,027億円(前年度比3,876億円、7.8%減)、経常費用は4兆7,548億円(同8,636億円、15.4%減)となり、経常利益は1,522億円の赤字と前年度(6,282億円の赤字)に引き続き赤字となったが、赤字幅は大幅に縮小した(増益18行、黒字転換16行、減益14行、経常損失16行)。当期利益は、2,088億円の赤字と前年度(5,559億円の赤字)に引き続き赤字となったが、赤字幅は大幅に縮小した(増益14行、黒字転換17行、減益16行、当期損失17行)。

業務純益は、経費が人件費を中心に減少したこと等から1兆2,928億円(前年度比718億円、5.9%増)と前年度の減益から増益に転じた。(増益32行、黒字転換1行、減益28行、赤字3行)。また、国内業務粗利益は3兆5,811億円(同784億円、2.1%減)となり、国際業務粗利益は1,873億円(同395億円、26.8%増)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.08%ポイント低下して2.15%、有価証券利回りは同0.24%ポイント低下して1.24%、コールローン等利回りは同0.03%ポイント低下して0.02%と、いずれも低下した。この結果、資金運用利回り全体では、同0.11%ポイント低下して1.81%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.06%ポイント低下して0.06%、コールマネー等利回りは同0.06%ポイント低下して1.12%となった。また、経費率は、人件費率が低下したこと等から同0.07%ポイント低下して1.27%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.13%ポイント低下して1.37%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.02%ポイント拡大して0.44%となった。

資金調達

預金は、流動性預金は増加したものの、定期性預金が減少したこと等から、末残で181兆7,493億円(前年度末比873億円、0.0%減)となった。また、平残では178兆2,838億円(前年度比3,816億円、0.2%増)となった。

譲渡性預金は、末残で3兆2,223億円(前年度末比6,695億円、26.2%増)と増加した。一方、平残では3兆2,609億円(前年度比3,593億円、9.9%減)と減少した。

資金運用

貸出金は、国内業務部門において個人向け貸出および地方公共団体向け貸出が増加したものの、資金需要の低迷から一般法人向け貸出が減少したほか、国際業務部門においても減少したことから、末残で135兆3,902億円(前年度末比8,000億円、0.6%減)となった。また、平残では133兆5,724億円(前年度比459億円、0.0%減)となった。

リスク管理債権についてみると、破綻先債権額は、銀行勘定で9,161億円(前年度末比1,122億円、10.9%減)、信託勘定で9億円(同2億円、16.1%減)となり、延滞債権額は、銀行勘定で5兆7,745億円(同1,177億円、2.0%減)、信託勘定で152億円(同32億円、17.4%減)、3カ月以上延滞債権額は、銀行勘定で1,028億円(同178億円、14.7%減)、信託勘定で1億円(同0.5億円、34.6%増)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で3兆6,080億円(同1,873億円、5.5%増)、信託勘定で48億円(同13億円、21.3%減)となった。この結果、リスク管理債権全体では、銀行勘定で10兆4,016億円(同604億円、0.6%減)、信託勘定で212億円(同47億円、18.0%減)となった。

なお、金融再生法に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準じる債権は2兆4,569億円(前年度末比2,890億円、10.5%減)、危険債権は4兆5,121億円(同1,209億円、2.6%減)、要管理債権額は3兆5,987億円(同2,125億円、6.3%増)、正常債権は127兆9,711億円(同1兆4,785億円、1.1%減)となった(信託勘定の計数は除く)。

有価証券は、株式が大幅に減少したものの、国債および社債が増加したことから、49兆994億円(前年度末比2兆3,344億円、5.0%増)となった。また、平残では47兆5,423億円(前年度比1兆8,965億円、4.2%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に2行で増資、5行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたことから、2兆3,854億円(前年度比42億円、0.2%増)となった。

資本勘定をみると、株式等評価差額金が6,232億円(同2,110億円、25.3%減)と減少したこと等から、資本勘定全体では、9兆2,284億円(同5,258億円、5.4%減)となった。