1.金融情勢

平成14年度の金融・資本市場をみると、年度初の大手銀行におけるシステム障害の発生、10月下旬の銀行株価下落、3月の対イラク武力行使開始など流動性需要が増加する局面もあったものの、こうした状況に対応して日本銀行が潤沢に資金供給を行った結果、短期金利(無担保コールレート、オーバーナイト物)は、年間を通じて0.001~0.002%と極めて低い水準で安定的に推移した。

一方、長期金利(10年物国債流通利回り)をみると、期初から夏にかけて、1.3~1.4%程度で推移したが、夏以降は株価の下落や内外金利の低下等を受けて国債への買いが集まり、一時1.0%台まで低下した。年度後半は、景気の先行き不透明感から銀行を中心に国債の購入が増え、年明けにはイラク情勢を背景とした安全資産指向から一段と国債投資が進んだことから、年度末には0.7%まで低下した。マネーサプライ(M2+CD)は、民間資金需要の低迷によるマイナス要因があったものの、投資信託等からの資金シフトがプラスに働いたことで、年度始めでは3%台と経済活動との対比では高めの伸び率(前年度比)は維持したが、年度末には2%程度に低下した。

株価(日経平均株価)は、5月までは企業業績の回復期待を背景として堅調に推移したが、6月以降は、米国株価の下落を受けて国内株価も下落した。年度後半に入ってからも株価は下げ基調を続け、特に銀行株は大幅な下落となった。また、年度末にかけて厚生年金基金の代行返上による売り懸念やイラク情勢の緊迫化などから、3月11日には、バブル崩壊後最安値(終値で7,862円43銭)を記録した。年度末の日経平均株価は7,972円71銭となった。

外国為替相場(東京市場)は、年度初め、1ドル=130円台であったが、米国株価の下落やイラク情勢の緊迫化等から米ドルが軟調に推移したことから徐々に円高が進み、7月には115円台となった。年度後半に入り、円相場は一時軟化したものの、その後は緩やかな上昇基調を保ち、年度末にかけては、イラク情勢の一層の緊迫化や武力行使の長期化懸念などから米ドルが軟調に推移したことから、年度末の為替相場は、1ドル=119円02銭となった。

2.銀行の経営統合等の動き

平成14年度中に見られた経営統合等の動きは以下のとおりである。

[1] みずほフィナンシャルグループの再編
平成14年4月1日、(株)みずほホールディングスの完全子会社であった第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が「みずほ銀行」と「みずほコーポレート銀行」に統合・再編された。その後、平成15年3月12日、みずほフィナンシャルグループは事業再編を実施し、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行は、グループ全体の持株会社である(株)みずほフィナンシャルグループの下に置かれた中間持株会社である(株)みずほホールディングスの完全子会社として位置付けられた。また、平成14年4月1日に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行3行の子会社からみずほホールディングスの完全子会社となった「みずほ信託銀行」と、同日、富士銀行の子会社からみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の子会社となった「みずほアセット信託銀行」(旧名称:安田信託銀行)は、平成15年3月12日に合併し、「みずほ信託銀行」(みずほフィナンシャルグループの子会社)として発足した。
[2] 九州親和ホールディングスの設立
親和銀行と九州銀行は、平成14年4月1日、共同で銀行持株会社「(株)九州親和ホールディングス」を設立した。
[3] 三井住友フィナンシャルグループの設立
三井住友銀行は、平成14年12月2日、株式移転により銀行持株会社「(株)三井住友フィナンシャルグループ」を設立した。また、三井住友銀行とわかしお銀行は、平成15年3月17日、後者を存続銀行とし、商号を「三井住友銀行」として合併した。
[4] りそなグループの再編
(株)りそなホールディングス(平成14年10月に「(株)大和銀ホールディングス」から商号変更)傘下の大和銀行とあさひ銀行は、平成15年3月1日、分割および合併により、「りそな銀行」と「埼玉りそな銀行」に再編された。また、大和銀信託銀行は、平成14年9月9日にあさひ信託銀行(同10月1日に大和銀行と合併)から一部営業譲渡を受け、同10月15日に「りそな信託銀行」に名称変更した。
[5] あしぎんフィナンシャルグループの設立
足利銀行は、平成15年3月12日、北関東リース(株)との共同株式移転により「(株)あしぎんフィナンシャルグループ」を設立した。
[6] 石川銀行の営業譲渡
平成13年12月に預金保険法に基づく金融整理管財人による業務および財産の管理を命じられた石川銀行は、平成15年3月24日、日本承継銀行に営業譲渡を行った。石川銀行の営業を譲り受けた日本承継銀行は、同日付で、北陸銀行、北國銀行、富山第一銀行、金沢信用金庫および能登信用金庫に営業譲渡を行った。
[7] 中部銀行の営業譲渡
平成14年3月に預金保険法に基づく金融整理管財人による業務および財産の管理を命じられた中部銀行は、平成15年3月3日、日本承継銀行に営業譲渡を行った。中部銀行の営業を譲り受けた日本承継銀行は、同日付で、清水銀行、静岡中央銀行および東京スター銀行に営業譲渡を行った。