以下は、都市銀行7行(みずほ、東京三菱、UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)53行、信託銀行8行(三菱信託、みずほ信託、UFJ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、三井アセット信託、りそな信託)、長期信用銀行2行の134行ベースで算出、分析したものである(なお、本年度から、東京スター銀行、三井アセット信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行を加えている)

経理基準の変更等

  1. 特定取引勘定を設置した銀行は、全体で27行となった。
  2. 平成10年9月期から、自己査定における破綻先および実質破綻先に対する担保・保証付債権については、債権額から担保の評価額および保証による回収が可能と認められる額を控除した残額を取立不能見込額として債権額から直接減額する経理処理が財務上可能とされているが、当期においては、都市銀行7行、地方銀行31行、第二地銀協地銀34行、信託銀行5行、長期信用銀行2行の計79行が実施している。なお、当該銀行の財務諸表上の貸出金およびリスク管理債権額は当該直接減額後の計数となっている。
  3. 平成13年6月の商法改正に関連して、平成14年2月21日に財務会計基準機構の企業会計基準委員会から、「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」が公表され、また、平成13年11月の商法改正により新株予約権の制度が創設されたこと等を受けて、資本の部は、剰余金を資本剰余金と利益剰余金に区分して記載することとされた。また、転換社債型の新株予約権付社債は、旧転換社債を含め、「新株予約権付社債」で処理することとされた。
  4. 日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」により、現金担保付債券貸借取引については、経過措置の終了により平成14年度から債券を担保とする金融取引として会計処理することとされた。
  5. 平成14年10月30日に金融庁がとりまとめた「金融再生プログラム」の要請に基づき、主要行等においてディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法が採用され、当期における採用行は19行であった。
  6. 法人事業税において外形標準課税を導入し、所得割の税率を引き下げる(9.6%→7.2%)「地方税法等の一部を改正する法律」が平成15年3月31日に公布されたため、当期において繰延税金資産の算定根拠となる法定実効税率が低下することとなった。
  7. 平成14年9月25日に財務会計基準機構の企業会計基準委員会から、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」が公表され、当期から適用されている。
  8. 平成14年10月9日に財務会計基準機構の企業会計基準委員会から、「デット・エクイティ・スワップ(DES)の実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第6号)、また平成15年3月13日には同委員会から、DES期末評価等に係る「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第10号)が公表され、当期から適用されている。

概況

以下は、銀行単体をベースにとりまとめたものである。

全国銀行の平成14年度決算をみると、まず、資金運用益は、9兆3,721億円(前年度比4,919億円、5.0%減)の減益となった。国内および海外において金利水準が低下したこと等から貸出金利息および預金利息が減少したことを主因に、資金運用収益および資金調達費用ともに減少したが、前者の減少額が後者のそれを上回ったため、資金運用益全体では減益となった。

経常利益は、株式等関係損益が大幅な損失超過となったことや貸倒引当金繰入等により、4兆8,087億円の赤字(前年度5兆6,326億円の赤字)となり、2年連続の赤字となった。また、当期利益は、4兆8,529億円の赤字(前年度4兆1,098億円の赤字)と、2年連続の赤字となった。

業容面(末残ベース)では、預金が前年度末比で0.6%減少、貸出金は同5.5%の減少となった。また、資本金は、同17.0%の減少となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、9兆3,721億円(前年度比4,919億円、5.0%減)と前年度に引続き減益となった。
資金運用収益は12兆623億円(同2兆3,520億円、16.3%減)と減少した。貸出金利息が8兆8,864億円(同9,832億円、10.0%減)と減少したほか、有価証券利息配当金、預け金利息も大幅に減少した。この結果、資金運用収益全体では減少となった。
国内・国際業務部門別にみると、国内においては、金利水準の低下から貸出金利息が減少したほか、相対的に利回りの低い国債が増加し、株式が減少したことから、有価証券利息配当金も減少した。海外では金利水準の低下および運用量の減少から貸出金利息、有価証券利息配当金が減少したほか、預け金利息等も減少した。
資金調達費用は、2兆6,902億円(同1兆8,601億円、40.9%減)と減少した。預金利息は9,630億円(同1兆1,074億円、53.5%減)と大幅に減少したほか、金利スワップ支払利息、債券利息・差金償却、借用金利息等も大幅に減少した。この結果、資金調達費用全体では大幅な減少となった。
国内・国際業務部門別にみると、国内においては、預金利息は預金残高(平残)は増加したものの、金利水準の低下および定期性預金の減少から大幅に減少した。このほか、債券利息・差金償却や借用金利息も金利水準の低下等により大幅に減少した。海外では金利水準の低下および残高の減少から預金利息が大幅に減少したほか、金利スワップ支払利息、コールマネー利息等も減少した。なお、国内金利水準が既にほぼ下限にあったのに対し、海外金利水準は国内のそれを上回る下げ幅を示している。
役務取引等収益・費用
為替手数料収支、その他の役務収支がともに改善したことから、収益超過額は1兆3,248億円(前年度比895億円、7.2%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等債券関係の収益超過額が大幅に増加したことから、その他業務収益・費用全体では、収益超過額が1兆493億円(前年度比3,335億円、46.6%増)となった。
信託報酬
信託報酬は3,909億円(前年度比615億円、13.6%減)となった。
その他経常収益・費用
株式市況の悪化から株式等関係損益は3兆8,802億円の損失超過(前年度は2兆2,464億円の損失超過)となり、前年度を上回る大幅な損失超過となった。また、一般貸倒引当金繰入額が1兆2,454億円(前年度比1,167億円、10.3%増)と増加したほか、個別貸倒引当金純繰入額が2兆218億円(同1兆5,108億円、42.8%減)、貸出金償却は2兆912億円(同8,614億円、29.2%減)と、いずれも前年度は下回ったものの多額であった。以上の結果、その他経常収益・費用全体では、損失超過額が10兆4,505億円(前年度は11兆2,470億円の損失超過)と、前年度に引続き多額の損失超過となった。
営業経費
経営合理化努力により人件費が減少したことから、6兆9,933億円(前年度比247億円、0.4%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は17兆7,917億円(前年度比2兆4,261億円、12.0%減)、経常費用は22兆6,004億円(同3兆2,500億円、12.6%減)となり、経常利益は4兆8,087億円の赤字となった(前年度5兆6,326億円の赤字)(経常利益87行、経常損失47行)。当期利益は、法人税等調整額が増益要因となったものの前年度より減少したことから、4兆8,529億円の赤字であった(前年度4兆1,098億円の赤字)(当期利益86行、当期損失48行)。
なお、業務純益は、その他業務収支等の収益超過額の増加はあったものの、資金運用益の減益もあり、4兆6,711億円(前年度比2億円、0.0%増)と横這いであった(黒字129行、赤字5行)。

利回り・利鞘(国内業務部門)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して1.90%、有価証券利回りは同0.25%ポイント低下して0.87%、コールローン等利回りは同0.08%ポイント低下して0.21%となった。以上の結果に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、0.16%ポイント低下して1.53%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.07%ポイント低下して0.10%、コールマネー等利回りは0.23%ポイント低下して0.35%となった。また、人件費率が低下したことから、経費率は0.07%ポイント低下して1.14%となった。以上の結果に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は0.15%ポイント低下して1.17%となった。

以上のように、資金運用利回り、資金調達原価ともに低下したものの、前者の低下幅が後者のそれを上回ったため、総資金利鞘は0.01%ポイント縮小して0.36%となった。

資金調達

預金は、国内業務部門において、流動性預金の増加に対し定期性預金は減少する一方、国際業務部門では、海外業務の縮小等に伴う減少が見られた。この結果、末残では524兆9,957億円(前年度末比3兆492億円、0.6%減)となった。一方、平残では、流動性預金の増加から527兆6,138億円(前年度比30兆662億円、6.0%増)となった。

譲渡性預金は、末残では27兆8,277億円(前年度末比6兆4,415億円、18.8%減)となった。一方、平残では32兆1,598億円(前年度比12兆4,652億円、27.9%減)となった。

債券は、末残では、15兆7,952億円(前年度末比6兆4,916億円、29.1%減)となった。また、平残では、18兆9,748億円(前年度比6兆8,273億円、26.5%減)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門では、個人向け貸出が住宅ローンの増加により増加したほか、地方公共団体向け貸出も増加した。一方、企業向け貸出は資金需要が引き続き低迷していることに加え、不良債権の売却・償却を積極的に進めたこと等から減少したため、全体としては減少した。また、国際業務部門でも、海外業務の縮小等から減少した。この結果、貸出金全体では、末残で439兆7,760億円(前年度末比25兆3,578億円、5.5%減)となった。また、平残では453兆9,333億円(前年度比3兆3,755億円、0.7%減)となった。

リスク管理債権額をみると、破綻先債権額は、銀行勘定で2兆1,625億円(前年度末比8,070億円、27.2%減)、信託勘定で408億円(同255億円、38.4%減)、延滞債権額は銀行勘定で15兆6,476億円(同6兆4,035億円、29.0%減)、信託勘定で1,067億円(同1,399億円、56.7%減)、3ヵ月以上延滞債権額は銀行勘定で4,917億円(同1,075億円、17.9%減)、信託勘定で66億円(同8億円、10.1%減)、貸出条件緩和債権額は銀行勘定で15兆9,247億円(同1,115億円、0.7%増)、信託勘定で2,154億円(同601億円、21.8%減)であった。

この結果、リスク管理債権額の総額は、銀行勘定で34兆2,267億円(同7兆2,064億円、17.4%減)、信託勘定で5,960億円(同2,263億円、38.0%減)となった。なお参考まで、金融庁が公表した全国銀行のリスク管理債権額は表1のとおりである。

  • 上記リスク管理債権額の計数は134行ベースであるが、金融庁公表の計数は131行ベースであるため、これらの計数は一致しない。

また、金融再生法第7条に基づき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が5兆6,012億円(同1兆6,564億円、22.8%減)、危険債権が12兆8,173億円(同6兆3,342億円、33.1%減)、要管理債権が16兆3,067億円(同935億円、0.6%増)、正常債権が432兆6,759億円(同28兆7,135億円、6.2%減)であった。なお参考まで、金融庁が公表した全国銀行の資産査定報告書集計結果は表2のとおりである。

  • 上記資産査定の計数は134行(銀行勘定)ベースであるが、金融庁公表の計数は131行(信託勘定を含む)ベースであるため、これらの計数は一致しない。

有価証券は、株式等が減少したものの、国債等の増加により、末残で166兆7,942億円(前年度末比6兆8,631億円、4.3%増)となった。一方、平残では169兆2,592億円(前年度比3兆9,633億円、2.4%増)となった。

自己資本

当期中、都市銀行4行、地方銀行2行、第二地銀協地銀8行、信託銀行2行が増資を行い、地方銀行5行、第二地銀協地銀4行、信託銀行2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われた。このほか、都市銀行において合併・会社分割に伴う資本金の減少があったことから、資本金は10兆2,106億円(前年度末比2兆851億円、17.0%減)となった。
資本勘定全体では、赤字決算に伴い当期未処理損失が3兆5,873億円となったこと等から、24兆8,382億円(同5兆6,395億円、18.5%減)と減少となった。

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
  • ROA=当期利益/期中日数×365/(総資産-支払承諾見返)(平残)
  • ROE=当期利益/期中日数×365/資本の部(平残)
表1 リスク管理債権の状況(平成15年3月期) (単位:億円)
区分機関数貸出金リスク管理債権貸倒引当金
総額破綻先
債権
延滞
債権
3カ月
以上延
滞債権
貸出条件
緩和債権
総額個別貸倒
引当金
都市銀行62,192,100174,4807,05067,7602,80096,86067,13025,560
長期信用銀行269,4404,2702202,1507601,1404,1601,500
信託銀行5377,19025,5801,4008,89013015,1507,6802,960
都銀・長信銀・信託計132,638,740204,3308,67078,8103,690113,16078,97030,020
(うち主要11行)
112,569,300200,0608,45076,6502,930112,02074,81028,520
地方銀行641,354,950104,2309,17057,9001,03036,13034,55022,350
第二地方銀行53429,13038,2304,47021,67021011,88011,9808,290
地域銀行計1181,831,190144,16013,72080,3801,31048,74046,88030,790
全国銀行計1314,469,930348,49022,390159,1905,000161,900125,85060,810
協同組織金融機関計5891,265,560108,27013,74063,09092030,53033,31024,880
(うち信用金庫)
327727,40072,2907,74043,51055020,49018,67013,790
(うち信用組合)
19298,23015,1401,8507,9902305,0703,9103,050
合計(預金取扱金融機関)7205,735,480456,76036,130222,2805,920192,430159,16085,690
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 破綻公表済の金融機関を除く。
  • 「延滞債権」とは、「元本又は利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により元本又は利息の取立て又は弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかった貸出金であって、破綻先債権及び債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの以外のもの」であり、「3カ月以上延滞債権」とは、「元本又は利息の支払が約定支払日の翌日から3カ月以上遅延している貸出金であって、破綻先債権・延滞債権以外のもの」である。
  • 一部金融機関において部分直接償却(破綻先及び実質破綻先に対する担保・保証付債権について、担保等による回収が不可能な額(第4分類債権額)に対し、個別貸倒引当金の計上ではなく、直接償却すること)が行われており、それによる減少が7兆5,330億円である。
  • 主要11行は、都銀・長信銀・信託から新生銀行とあおぞら銀行を除いたものである。
  • UFJ銀行の不良債権残高については、UFJストラテジックパートナー社への分割分を加えたもの。
  • 地域銀行計には埼玉りそな銀行を含める。
表2 金融再生法開示債権の状況(平成15年3月期) (単位:億円)
区分機関数金融再生法開示債権正常債権合計
総額破産更生
債権及び
これらに
準ずる債権
危険債権要管理
債権
都市銀行6176,69018,50058,53099,6602,229,9802,406,670
長期信用銀行24,3604901,9201,94070,41074,770
信託銀行525,7503,1107,29015,350366,340392,090
都銀・長信銀・信託計13206,80022,10067,740116,9602,666,7302,873,530
(うち主要11行)
11202,44021,61065,820115,0102,596,3102,798,760
地方銀行64105,89024,66045,20036,0401,280,5501,386,450
第二地方銀行5338,99010,42016,58011,990399,130438,120
地域銀行計118146,60035,37062,39048,8401,725,6801,872,290
小計(全国銀行)131353,39057,470130,130165,7904,392,4104,745,810
協同組織金融機関計54191,68029,55036,07026,050853,530945,270
(うち信用金庫)
32774,17023,50030,21020,460672,600746,830
(うち信用組合)
19215,9805,7004,9605,33088,270104,270
合計(預金取扱金融機関)672445,07087,020166,200191,8405,245,9405,691,090
  • 金融再生法第六条に基づく資産査定等報告書の集計。
  • 計数は、億円を四捨五入し、10億円単位にまとめた。
  • 破綻公表済の金融機関を除く。
  • 主要11行は、都銀・長信銀・信託から新生銀行とあおぞら銀行を除いたもの。
  • UFJ銀行の不良債権残高については、UFJストラテジックパートナー社への分割分を加えたもの。
  • 地域銀行計には埼玉りそな銀行を含む。