信託銀行

(三井アセット信託銀行を含む8行:うち特定取引勘定設置銀行6行。なお、当期の収益・平残の計数には合併前のみずほ信託銀行を除き、当期と比較する前期の計数には三井アセット信託銀行を含む。)

信託銀行の平成14年度決算では、信託報酬は減少(前年度比274億円、6.7%減)したものの、資金運用益が増加(同500億円、10.4%増)となったこと等から、業務純益は6,088億円(同1,518億円、33.2%増)と3年連続の増益となった。一方、株式等関係損益が6,407億円の損失超過となったことや不良債権処理の実施などから、経常利益は前年度に続き、4,691億円の赤字となり、当期利益も4,316億円の赤字となった。

業容面では、銀行勘定における預金は7年連続で増加(前年度末比4.5%増)した。信託勘定については、貸付信託が10年連続で減少(同39.3%減)となったが、金銭信託の増加(同8.2%増)等により、全体では増加(同1.1%増)した。また、貸出金は、銀行勘定、信託勘定ともに減少(同4.1%減、同2.8%減)となった。

損益状況

信託報酬 
長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)では、貸付信託残高の減少がみられ、財産管理部門(上記以外の信託)においては、金銭信託や金銭債権の信託等の残高が増加したものの、投資信託等の残高が減少したことから、信託報酬全体では、3,809億円(前年度比274億円、6.7%減)と、昨年度に引続き減少した。
資金運用益 
資金運用収益、資金調達費用ともに減少したが、後者の減少額が前者のそれを上回り、資金運用益は、5,306億円(前年度比500億円、10.4%増)と、前年度に引続き増加した。

資金運用収益は、国内業務部門では、国内金利の低下を受けて、有価証券利息配当金が大幅に減少(前年度比428億円、26.6%減)するとともに、貸出金利息も減少(同113億円、2.6%減)した。また、国際業務部門では、米国等の金利低下や貸出金残高等の減少を受けて、貸出金利息が大幅に減少(同549億円、45.0%減)したほか、有価証券利息配当金(同486億円、16.3%減)、金利スワップ受入利息(同293億円、68.4%減)なども減少した。この結果、資金運用収益全体では、9,333億円(同2,034億円、17.9%減)となった。

資金調達費用は、国内業務部門では、国内金利の低下を受けて預金利息が減少(前年度比277億円、24.0%減)したほか、信託勘定借残高の減少(平残で同36.5%減)に伴う信託勘定借利息の減少を主因にその他の支払利息が大幅に減少(同342億円、45.6%減)した。また、国際業務部門では、米国等の金利低下や預金残高の減少(平残で同21.8%減)等を受けて、預金利息が大幅に減少(同768億円、54.8%減)したほか、金利スワップ支払利息(同631億円、53.7%減)やその他の支払利息(同655億円、81.9%減)も大幅な減少となった。この結果、資金調達費用全体では、4,026億円(同2,534億円、38.6%減)となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門におけるその他の役務収益の減少を主因として、全体の収益超過額は1,459億円(前年度比134億円、8.4%減)となった。
特定取引収益・費用
国際業務部門において特定取引収益が改善したことから、全体の収益超過額も増加し、145億円(前年度比39億円、37.3%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したことから、全体の収益超過額も増加し、1,228億円(前年度比409億円、49.8%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益については、株式相場の低迷により株式等売却損が大幅に増加したこと等から、前年度を上回る6,407億円の損失超過となった。このほか、貸出金償却が1,801億円(前年度比546億円、23.3%減)、個別貸倒引当金の純繰入額が1,059億円(同1,694億円、61.5%減)と、いずれも前年度よりも縮小したものの依然高水準となった。
以上の結果、その他経常収益・費用全体では、1兆767億円の大幅な損失超過(同2,678億円改善)となった。
営業経費
リストラ等、経営の効率化を進めたことから人件費、物件費がともに減少し、営業経費は5,872億円(前年度比447億円、7.1%減)となった。
経常利益・当期利益
以上の結果、経常収益は1兆9,784億円(前年度比2,476億円、11.1%減)、経常費用は2兆4,475億円(同6,142億円、20.1%減)となり、経常利益は4,691億円の赤字と、前年度(8,357億円の赤字)と同じく赤字となったが、赤字幅は縮小した(増益1行、減益2行、経常損失5行)。
当期利益は、特別損益が496億円の損失超過となったものの、法人税等調整額が994億円の黒字要因となったことから、4,316億円の赤字となり、前年度(6,758億円の赤字)と同じく赤字となったが、赤字幅は縮小した(増益2行、当期損失6行)。

なお、業務純益は、信託報酬が減少したものの、資金運用益の増加や国債等債券関係損益の収益超過、一般貸倒引当金繰入額の減少などから、6,088億円(前年度比1,518億円、33.2%増)となった(増益7行、減益1行)。また、国内業務粗利益は1兆70億円(同240億円、2.4%増)、国際業務粗利益は1,885億円(同298億円、18.7%増)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度と同じ1.43%、有価証券利回りは前年度比0.11%ポイント低下して0.90%、コールローン等利回りは同0.04%ポイント低下して0.21%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.03%ポイント低下して1.18%となった。

資金調達利回りを見ると、預金債券等利回りは同0.10%ポイント低下して0.26%、コールマネー等利回りは、同0.22%ポイント低下して0.75%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)は、同0.11%ポイント低下して0.38%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、同0.08%ポイント拡大して0.80%となった。

国際業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度比1.30%ポイント低下して3.10%、有価証券利回りは同0.83%ポイント低下して4.30%、コールローン利回りは同1.43%ポイント低下して2.02%となった。この結果、資金運用利回りは、同1.47%ポイント低下して3.77%となった。

資金調達利回りを見ると、預金利回りが同1.42%ポイント低下して1.94%、譲渡性預金利回りは同1.34%ポイント低下して2.48%、コールマネー利回りは同1.43%ポイント低下して2.00%となった。この結果、資金調達利回りは、同2.02%ポイント低下して2.25%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、同0.55%ポイント拡大して1.52%となった。

資金調達

預金は、国際業務部門では、海外業務の縮小等により減少したものの、国内業務部門では、定期預金を中心に増加したことから、全体では34兆5,277億円(前年度末比1兆4,903億円、4.5%増)と7年連続の増加となった。なお、平残では、33兆4,613億円(前年度比1兆5,688億円、4.9%増)となった。譲渡性預金は、末残では3兆9,777億円(前年度末比4,397億円、10.0%減)、平残では4兆4,762億円(前年度比6,125億円、12.0%減)となった。また、信託勘定借は、末残では7兆1,630億円(前年度末比3兆4,823億円、32.7%減)、平残では、8兆3,149億円(前年度比4兆7,788億円、36.5%減)とともに大幅に減少した。

信託勘定を見ると、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)は、88兆2,118億円(前年度末比6兆6,720億円、8.2%増)、金銭債権の信託は、12兆8,670億円(同3兆2,819億円、34.2%増)と増加した。年金信託は、34兆8,621億円(同1,357億円、0.4%減)と微減した。また、貸付信託は、7兆4,684億円(同4兆8,377億円、39.3%減)と大幅に減少し、投資信託は、45兆2,771億円(同1兆7,269億円、3.7%減)と減少した。この結果、信託勘定の負債合計額は、245兆5,887億円(同2兆7,118億円、1.1%増)と増加した。

資金運用

貸出金は、国内業務部門を見ると、末残では、29兆1,793億円(前年度末比8,178億円、2.7%減)、平残では、29兆4,898億円(前年度比5,011億円、1.7%減)とともに減少した。また、国際業務部門を見ると、末残では、1兆9,792億円(前年度末比5,117億円、20.5%減)、平残では、2兆1,692億円(前年度比6,084億円、21.9%減)とともに大幅に減少した。この結果、貸出金全体では、末残では、31兆1,586億円(前年度末比1兆3,295億円、4.1%減)と減少し、平残でも、31兆6,589億円(前年度比1兆1,095億円、3.4%減)と減少した。また、信託勘定(末残)を見ても、貸出金は、7兆9,818億円(前年度末比2,315億円、2.8%減)と減少した。

リスク管理債権の残高について見ると、破綻先債権額は、銀行勘定で1,016億円(前年度末比170億円、14.4%減)、信託勘定で380億円(同249億円、39.6%減)とともに減少した。また、延滞債権額は、銀行勘定で8,062億円(同8,647億円、51.7%減)、信託勘定で836億円(同1,328億円、61.4%減)とともに大幅に減少した。3ヶ月以上延滞債権額は、銀行勘定で71億円(同53億円、42.5%減)、信託勘定で61億円(同8億円、14.3%増)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で1兆3,277億円(同1,317億円、9.0%減)、信託勘定で1,876億円(同661億円、26.0%減)となった。以上の結果、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で2兆2,428億円(同1兆187億円、31.2%減)、信託勘定で3,154億円(同2,230億円、41.4%減)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。

なお、金融再生法に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、それぞれ破産更生債権額は2,514億円(同513億円、16.9%減)、危険債権額は6,743億円(同8,409億円、55.5%減)、要管理債権額は1兆3,422億円(同1,340億円、9.1%減)といずれも減少した。また、正常債権額は30兆4,182億円(同6,840億円、2.2%減)であった。

有価証券は、銀行勘定では、末残で国債が増加(前年度末比7.2%増)したものの、株価下落等もあり、株式が大幅に減少(同41.4%減)したことから、17兆4,012億円(同2兆1,195億円、10.9%減)となった(平残では18兆9,379億円、前年度比2兆7,116億円、12.5%減)。一方、信託勘定では、株式(前年度末比17.7%減)、投資信託(同31.9%減)、国債(同9.7%減)など軒並み減少したことから、末残で65兆1,700億円(同9兆4,971億円、12.7%減)となった。

預け金は、銀行勘定では、末残で3兆4,722億円(前年度末比7,066億円、16.9%減)となった(平残では1兆3,289億円(前年度比2,713億円、17.0%減))。一方、信託勘定では、6兆1,526億円(前年度末比2,053億円、3.2%減)となった。

自己資本

資本金は、期中に2行で公募増資、2行で転換社債型新株予約権付社債の株式転換が行われたこと等から、1兆5,399億円(前年度末比778億円、4.8%減)となった。資本勘定をみると、当期損失(4,316億円)となったことや、株式等評価差額金が2,768億円の評価損となったこと等から、資本の部合計では2兆2,451億円(同5,572億円、19.9%減)となった。
(「外銀信託、信託銀行子会社の決算状況」は、当期から掲載をとり止めております。)