都市銀行 (特定取引勘定設置銀行6行)

都市銀行の平成15年度決算をみると、資金運用益は、貸出金利息の減少等により資金運用収益が減少したこと等から減益となった。経常利益は、引き続き不良債権処理を進めたこと等から498億円の赤字と3年連続の赤字となったが、株式等関係損益の大幅な改善等により前年度の赤字額(4兆577億円の赤字)を大幅に下回った。また、当期純利益は6,526億円の赤字と4年連続の赤字となったが、前年度の赤字額(4兆1,132億円の赤字)を大幅に下回った。
業容面をみると、資金調達では預金が前年度末比3.5%増、資金運用では貸出金が同7.0%減となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆9,819億円(前年度比2,664億円、6.3%減)と減益となった。

国内業務部門

資金運用収益を見ると、貸出金利回りが上昇(前年度比0.03%ポイント上昇)したものの、残高(平残)が減少(同9.4%減)したことから、貸出金利息は3兆2,272億円(同2,820億円、8.0%減)と減少した。また金利水準の低下から有価証券利息配当金は4,476億円(同228億円、4.8%減)と減少し、金利スワップ受入利息も383億円(同366億円、48.9%減)と減少した。この結果、全体では3兆7,693億円(同3,589億円、8.7%減)と減少した。

資金調達費用をみると、金利水準の低下および残高(平残)の減少(前年度比3.9%減)から、預金利息は819億円(同343億円、29.5%減)と減少した。また債券利息・差金償却は959億円(同376億円、28.2%減)と減少したほか、借用金利息も993億円(同175億円、14.9%減)と減少した。この結果、全体では4,059億円(同1,171億円、22.4%減)と減少した。

以上の結果、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国内業務部門における資金運用益は3兆3,634億円(前年度比2,418億円、6.7%減)と減益となった。

国際業務部門

資金運用収益をみると、有価証券利息配当金は5,607億円(前年度比362億円、6.9%増)と増加したものの、貸出金利息が海外業務の縮小に伴う貸出金の圧縮等から残高(平残)が減少(同28.6%減)したことや海外金利水準の低下から貸出金利回りが低下(同0.46%ポイント低下)したことから4,598億円(同2,967億円、39.2%減)と減少したほか、金利スワップ受入利息も1,359億円(同1,075億円、44.2%減)と減少した。この結果、全体では1兆4,484億円(同4,836億円、25.0%減)と減少した。

資金調達費用をみると、海外金利水準の低下に加え、外貨預金は大幅に増加(平残で前年度比11.6%増)したものの預金全体の残高(平残)は減少(前年度比6.8%減)したことから、預金利息は2,956億円(同1,707億円、36.6%減)と減少した。また、その他の支払利息も839億円(同2,027億円、70.7%減)と減少した。この結果、全体では8,298億円(同4,532億円、35.3%減)と減少した。

以上の結果、全体では、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は6,186億円(前年度比304億円、4.7%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
投信・保険商品販売関連手数料の増加等からその他の役務収支の収益超過額が増加したほか、為替手数料収支の収益超過額も増加したことから、全体の収益超過額は8,625億円(前年度比1,223億円、16.5%増)と増加した。
特定取引収益・費用
特定取引収益・費用ともに増加したものの、前者の増加額が後者のそれを上回ったことから、全体の収益超過額は6,122億円(前年度比1,422億円、30.2%増)と増加した。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が大幅に減少した結果、その他業務収支全体の収益超過額も4,281億円(前年度比3,750億円、46.7%減)と減少した。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式市況の回復により、株式等償却や株式等売却損が大幅に減少したこと等から、収益超過額は5,583億円と前年度の損失超過から収益超過に転じた(前年度2兆6,230億円の損失超過)。
また、個別貸倒引当金純繰入額は1兆1,569億円(前年度比2,331億円、25.2%増)と増加したものの、不良債権の新規発生が減少し、債務者区分の改善もあったことから、一般貸倒引当金繰入額は2,684億円(同7,962億円、74.8%減)と前年度比大幅に減少した。また、貸出金償却も1兆4,014億円(同1,112億円、7.3%減)と減少した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は3兆508億円の損失超過と、前年度(7兆2,747億円の損失超過)に比べ大幅に減少した。
営業経費
営業経費は、人件費が1兆1,365億円(前年度比884億円、7.2%減)、物件費が1兆6,015億円(同735億円、4.4%減)、税金が1,507億円(同19億円、1.2%減)となり、全体では2兆8,887億円(同1,638億円、5.4%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は9兆2,149億円(前年度比1,461億円、1.6%減)、経常費用は9兆2,647億円(同4兆1,540億円、31.0%減)となり、経常利益は498億円の赤字(前年度4兆577億円の赤字)と3年連続の赤字となったものの、赤字額は大幅に減少した(増益1行、黒字転換4行、経常損失2行)。また、特別損失が4,163億円(前年度比660億円、18.8%増)あったものの、貸倒引当金の戻入れ益や東京都外形標準課税訴訟の和解に伴う事業税の還付金等および厚生年金基金の代行返上益等により特別利益が7,521億円(同6,125億円、438.8%増)と大幅に増加したこと等から、税引前当期純利益は2,860億円となった。しかし、株式市況の回復によりその他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債が増加したこと、および繰延税金資産の取崩し等により法人税等調整額が8,809億円となった(減益要因)ことから、当期純利益は6,526億円の赤字(前年度4兆1,132億円の赤字)と4年連続の赤字となった(増益1行、黒字転換4行、当期純損失2行)。

業務純益は、一般貸倒引当金繰入額が大幅に減少したこと等から、2兆9,609億円(前年度比6,496億円、28.1%増)と増益となった。また、国内業務粗利益は、4兆2,555億円(同2,979億円、6.5%減)、国際業務粗利益は、1兆6,408億円(同790億円、5.1%増)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.03%ポイント上昇して1.69%、有価証券利回りは同0.09%ポイント低下して0.56%、コールローン等利回りは同0.03%ポイント上昇して0.31%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.03%ポイント低下して、1.28%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.03%ポイント低下して0.07%、コールマネー等利回りは同0.02%ポイント低下して0.26%となり、経費率は同0.02%ポイント低下して0.90%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.05%ポイント低下して、0.86%となった。
以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.02%ポイント拡大して0.42%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.46%ポイント低下して2.62%、有価証券利回りは同0.01%ポイント上昇して3.43%、コールローン利回りは0.58%ポイント低下して1.47%となった。この結果、資金運用利回り全体では、0.49%ポイント低下して2.87%となった。

資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比0.47%ポイント低下して1.01%、コールマネー利回りは同0.82%ポイント低下して1.31%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.60%ポイント低下して1.64%となった。
以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.11%ポイント拡大して1.23%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国内部門で流動性預金が増加したほか、国際部門で外貨預金が増加したことから、全体では256兆7,727億円(前年度末比8兆6,080億円、3.5%増)と増加した。預金の内訳を見ると、定期預金は88兆4,782億円(同2,401億円、0.3%減)と減少したが、普通預金は117兆4,641億円(同7兆2,465億円、6.6%増)となった。一方、平残は、国内部門(前年度比3.9%減)および国際部門(同6.8%減)ともに減少したことから、全体では245兆8,531億円(同11兆1,799億円、4.3%減)と減少した。

譲渡性預金は、末残では21兆887億円(前年度末比1兆3,533億円、6.9%増)と増加し、平残は21兆3,130億円(前年度比2兆183億円、8.7%減)と減少した。

資金運用

貸出金は、国内についてみると、住宅ローンは増加したものの、企業向け貸出が引き続き低迷したことに加え、不良債権の売却・償却を進めたこと等から減少し、全体では191兆5,100億円(前年度末比11兆6,148億円、5.7%減)と減少した。また、国際部門についても、円高の影響等から16兆2,693億円(同3兆9,757億円、19.6%減)と減少した。この結果、貸出金全体の末残は207兆7,793億円(同15兆5,905億円、7.0%減)と7年連続で減少した。なお、平残は、211兆5,434億円(前年度比27兆2,661億円、11.4%減)と減少した。

リスク管理債権については、破綻先債権額が銀行勘定で2,256億円(前年度末比4,493億円、66.6%減)、信託勘定で3億円(同15億円、79.5%減)、延滞債権額が銀行勘定で4兆6,370億円(同2兆474億円、30.6%減)、信託勘定で82億円(同3億円、4.1%増)、3ヵ月以上延滞債権額が銀行勘定で2,085億円(同767億円、26.9%減)、信託勘定で8億円(同5億円、127.6%増)、貸出条件緩和債権額が銀行勘定で4兆9,570億円(同4兆7,308億円、48.8%減)、信託勘定で229億円(同0.1億円、0.1%増)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は銀行勘定で10兆283億円(同7兆3,042億円、42.1%減)、信託勘定で324億円(同7億円、2.0%減)であった(信託勘定については、元本補填契約のある信託勘定の計数)。

金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準ずる債権が1兆634億円(前年度末比7,388億円、41.0%減)、危険債権が4兆175億円(同1兆7,620億円、30.5%減)、要管理債権が5兆1,656億円(同4兆8,075億円、48.2%減)、正常債権が217兆7,673億円(同9兆5,644億円、4.2%減)であった。

有価証券は、国債(前年度末比18兆163億円、40.4%増)、株式(同3兆3,224億円、21.6%増)および社債(同2兆2,359億円、35.8%増)といずれも増加したことから、全体の末残は108兆2,004億円(同22兆3,610億円、26.0%増)となった(平残は前年度比9.1%増)。

預け金は、国内部門で減少(前年度末比5.2%減)したものの、国際部門で増加(同11.1%増)したことから、末残は20兆9,684億円(同1,657億円、0.8%増)となった。また平残は、8兆1,689億円(前年度比4兆8,292億円、37.2%減)となった。

自己資本

資本金は、1行で増資および減資が行われた結果、4兆3,264億円(前年度末比1,632億円、3.6%減)となった。
資本剰余金は5兆5,778億円(前年度末比1,191億円、2.1%減)となったが、利益剰余金は前年度の1兆923億円のマイナスから5,949億円のプラスに転じた。

以上のほか、株式等評価差額金が前年度の2,569億円の評価損から1兆3,210億円の評価益に転じたこと等から、資本勘定全体では12兆4,679億円(前年度末比2兆7,742億円、28.6%増)となった。

担当:小川